ふたりのカスール
















ラクウェル先生



「はい。では今日はおしまいです。 みんな、さようなら」 「「「「ありがとうございました〜」」」」 扉閉まるとニコニコ笑っていた顔が一気に反転。 伊達メガネがずり落ちてどよーんとした雰囲気で足取りも重い。本当によくがんばったのだ。 シャノンにラクウェルの演技ができるのかと問われれば当然無理だといえる、緊張の糸が切れてもうクタクタだ。 魔法をいくら身体が覚えてる部分があるとはいえ、一朝一夕に出来たり慣れたりしない。 ルンルンと何処か楽しそうに魔術行使をするだなんてシャノンにそれを求めるのは酷というもの。 講堂に入るまではテキストどおりにやればいいと気楽でいたのに、入ってからは冷や汗流してかしましい生徒たちに 振り回された。本来ならラクウェルが振り回すのだろうがシャノンなのだ、いま床に崩れないだけ褒めてあげてほしい。 「気力半減したな・・・少し休憩していくか」 「終わったのかね、どうじゃ寄っていかんか?銘酒が手に入ったんだが土産に分けてやろうと思うのだが」 「ああ、そうですか。しかし今回は」 「あらお爺様、ラクウェルさんに何用ですか」 ラクウェル姿のシャノンが講義終えて部屋から出てくると待っていたのだろう、ひとりの男性・・・ このご老人は時々カスール家で話に出てきていて知っている、確か教えている生徒の祖父だ。 とある地方の領主で地酒をこよなく愛してらしい。 ただ少しボケが入っているのかラクウェルを死んだ妹と間違えて屋敷に連れ帰ろうとしたことがある。 今ちょうど、ラクウェルを追いかけ出てきた孫娘が手を引いていった。 「もう酔ってらっしゃる、ごめんなさいカスールさま私はこれで失礼します」 「はいそれでは」 魔術の講師の間や一般的な場所ではカスールさま、カスール嬢と言われて そのあとの華やかなお茶の時間、また私的な場所ではラクウェルさんと呼ばれているようだ。 「うまくやりすごせたのかな、ラクウェルの真似なんて出来ないから失敗は目に見えてたことなんだが せめて今だけでも断わっておこう。買い物、なにを買うんだ?しかし・・・」 人に教えるのは苦手だった。ぶっきらぼうで笑みのひとつでも浮かべれば・・・・パシフィカに気味悪がられて 蹴られたり喧嘩売られたりしていたので年頃の女の子と仲良く話した記憶は少ない。 そもそも教師の真似事できる自信もなかった。 発端は魔法の使い手としてラクウェルの実力をかってくれた人物が現れたこと、もうかなり老齢の彼女は引退して いたのだが、王宮に顔出しはしていたらしい。知り合って意気投合し今回の講師の仕事を引き受けたのだ。 学校のような場所でなくて塾のような私設の教育機関とはいえ、ラクウェルとパシフィカも少しは手伝って作った テキストを使っての授業。本来ならラクウェル本人が来ているべきところにカスール家の一大騒動が重なってしまった。 「はぁ、気分転換に剣でも見ていくか。 いつも行く場所よっていけば落ち着くだろう」 今回に限らずシャノンはカスールの家族以外に親しくした女性など過去に居なかった、どんな因果か生徒たちが 女性ばかりだったと知らされたのがここに着いてから。辞退したかった。 それでも、頼まれたのはラクウェルなので無責任に放り出すわけにはいかない。あいつを怒らさせると厄介だ。 ぶっきらぼうに始めて終わらせようとしてしまった。 その失敗を自覚したのは、いつのまにか始まったティータイムで・・・・思い浮かんだパシフィカの 悪戯顔にしかえししてやろうと思ったが、相手は小娘だし自分はラクウェルだ。 ここはニコニコ笑ってか、悲しそうにするべきなのか・・・・。 「やめなさい、あなたたち!珍しく真面目に講師なされたカスールさまに」 「ええ?!」 「でも喜んでたじゃない、変なぬいぐるみが・・っ・・て」 「まずい」 「出るよ、あれ?」 「出でよとぉーるぅ、は?ええっ!?出ないのーっ本格的におかしいよー先生ーっ」 「これこれです。泣かないで下さい私が悪かったです、先生がなくしたと思ってたやつですよ。 なんて鳴くんでした?ぐぅ?きゅ?ぴぃ?わっわっ間違えました?」 スーピィ君人形を手にもたされた、そして鳴き真似する娘は小さい子をあやすように話し掛けてくる。 いつも何をしてるんだラクウェル?半分納得し半分呆れて聞いてしまう。 「は?とぉーるってそんなのいつも出してる・・・のか?」 「ご自分でされてたことも忘れてるんですか、転んで頭打ってきませんでしたか?今も寝ながら 講師して喋ってるんじゃないですか?夢遊病ですか?まずいですよぉ」 「半分はあなたのじい様の責任だった、酔わせて」 「」 まず、不信 でも、やはり血の繋がるカスール兄姉 教え方に違いあってもわかりやすさと、確実な習得への筋道は確かなもの。 最後、面白がられてしまった。 ラクウェルもシャノンもゆっくりのんぴりタイプだが、個性はあって どちらかと言えば、身体動かしてるほうが良いし 庭で若い騎士の卵、見習たち 挑戦して、華麗に、で・・・目つけられ 吹き飛ばされ落とした武器をようやくつかむ、だが振り向くとにっこり笑ってとどめを刺される。 びゅんと振り下ろされ 「調子に乗りすぎだバカ」 「ひっ」 「だっぁぁぁっ、ふーっ。威力はたいしたことないのに気絶する奴があるか、口だけの男に興味はない」 「うそだろ・・・おい、大丈夫か!白目剥いてる。た、担架!持ってこーい」 「実践的じゃない」 だってそうだ。 呪文が必要なときにわざわざ合図して相手を警戒させるのか?違うだろ、それは高位でも 初歩でも同じことだ。そうして家族を守ってきたのだ。 「やっと揃った、あのじいさんが商品の在庫ぐらい確認しておけば 噴水のベンチででボーッと出来たのに。ん、ん、ん・・・あんた邪魔だ」 トコトン面倒くさがりやのシャノン・カスールらしい発言をしつつ、街の中を歩いていると人とぶつかる。 右に避けたら右に。 左に避けたら左に。 方向転換して道路の壁際まで歩いていっても通せんぼする背の高い相手を見上げた。 ラクウェルになって多少縮んだとはいえ背のとびきり高い相手は大抵、相性の悪いテンションの変な男。 「待ちたまえ、カスールの姉君と見受ける。わたしは※※※※※※※※・※※※※※※※・※※だが 探していた、あの試合を見て思ったのだ。ぜひ今すぐに婚約して欲しい我が家に入ってくれ」 「あん?・・・・・・はぁ?」 「君は強い男ならかまわないのだろ、俺は強い!そして行動力も伴っている指輪を注文してきたぞ、勿論 君の魔法の生徒たちに聞いたから間違ってはいないぞ」 激濃のベルケンスと勘違い見習い騎士レオを合わせような発言だった。 こんなのは無視するに限る。 「間に合ってます」 「なに相手が居るのか!?やはりそうか・・・君のような華麗で知的な女性を男どもは放ってはおかん」 優男ラクウェルとフラグ立てる人物を、魔法得意だから回復系を何処かの少女の 手助けしたりして・・・かなり良さそうな気がする。崖から落ちたり、川に流されたり 威力大きな魔法でなら、川を割ったりできビジュアル的にかなり良い。 勇ましい女剣士シャノンにレオのような人物を、定期的に行われている試合で 華麗に五人抜きをして、基礎体力のため。次は棄権したが、それを見初められる。 同行者はレオ、だったのでそれをだしに婚約者とか嘘偽りは簡単に見破られるし。 確かに姉兄の性格反転は奇妙なものであったが、慣れてしまえば・・・慣れなかった。 少なくともシャノンとパシフィカは。 「宝珠は食べ物だったんですねー、だから・・・でもそれには、二人が同時に口にしないと」 「飴?」 「ええ、一見しただけでは確かに飴でしたけど直接触れてみれば 触感で間違えてしまう恐れなかったんですけど・・・どうやらあの状況では相当誰もがああなる恐れあったと」 思い出せばポワンした騎士のタマゴが、異国の珍しい菓子を廃棄王女に土産にたくさん持ってきていた。 料理とお酒、あの時のテーブルには食べ物が山ほど沢山用意されていた。 お酒は珍しいものを選んでセーネスが持っていったもの、それを飲んで半分こずつね♪と酒に酔ったラクウェルが 歯で砕き、宝珠をシャノンに食べさせる様子がありありと想像できた。 本性かどうかは長く親しいわけではないので知らないが、意外と強引なところがあるようだ。 彼女にか家族にか基本的に甘すぎのシャノン。 「ペアのそれで元に戻せるのか?遠まわしの言い方はやめてくれ、わたしは嫌いだ」 「できないかもしれない、としか言えません。 できると言えるのは、あの状況を作り出せる方法が分かったと言う事だけです」 「また名前聞くのを失念していたわ、そのうちまた会えるでしょう」 ここでまた二章の少女と邂逅、交流は続いていることを記載。あといつか助けたりしてフラグ ここから下------------------4話にしようと思う。 優雅な時間、その貴婦人はとても大切にしていた。 昔は兄によって邪魔されることが多かった、離れて暮らしている今はそれも少なくなった。 兄の性格はとても魅力あると思うが、領主としての立ち振る舞いとしてはいささか適当とは言えなかった。 黙って下々の者たちに命令できる威厳がまだまだ若いこともあり、備わっていない。 その代わり才能豊かで出世は出自だけではない、と身内ながら嬉しく思っていた。 ちなみに結婚はしていない、好物件でいい噂ばかり聞くが本人にその気はないのが常々残念がらせる。 既に二十歳にして嫁いでいる自分は、少しお節介になっているのかもしれなかった。 「今日はなんです?」 「ん?来ていたのか、若い奴らと一緒に観光がてらな・・・・本当は武具を見て回りたかったが」 「じいや気を利かせてくれたんですね、本当に登城なさろうと思わない人なんて兄さんだけですよ」 「だが用も無いのに」 「いつも兵士たちと酒場でがやがやしているより、普通の方はお城へ女性たちとお話しにくるものです」 まったく浮いた噂の一つでも立てなければ、浮名とまでは行かなくても一族の中で浮いた存在になってしまう。 恋多き運命と武功に彩られた父親の長男らしくない。 「どうもしっくり来ないと考える、俺の話し相手としてお城でお前と仲良くしている人とはなあ・・・」 「ああもう、こう突然ではお茶会の約束の一つも取り付けられません。 兄さんは軍の訓練で飛び回っていらっしゃるから、今度はいつなら時間が取れます?」 「まぁなんだ、挨拶しに来ただけで。じゃあな、いつもの所に居るから」 「・・・」 文句の一つでも言おうとしたが逃げられた、また兵舎で鍛錬でもしに行くのだろう。 だから剣の強さは安心していられるが、恋の技量上げて極めるのはいつになることか。 タイトル・空白 「では行きますよ」 「じゃあ行ってくる、ラクウェルさんで通せ。 間違っても他の呼び方をしてみろ、明日まで寝れない体にして」 数日の日程、定期的な王都への旅に出かけることとなった。 以前のように三人揃っては行かないが、今回の同行者にレオがいる。 四六時中パシフィカを追いかけているわけではないのだ、時々一族の仕事ためと 貴族の責務として軍へと顔を出したりしているらしい。今はパシフィカ一直線だが。 「ラクウェルさん、でいいんですよね?」 「あーもうシャノン兄はすぐレオと揉めないでよ、本当に大丈夫かなー?」 「いいのよシャノンしっかりしてるから」 「・・・でも」 「じゃあ立ち寄る場所のメモと、話す内容とお買い物お願いね」 「ああ」 魔法と貴重品の購入をラクウェルに頼まれ、パシフィカに宥められて王都へと向かった。 ◇◇◇◇◇◆◆◆◆10◇◇◇◇◇◆◆◆◆20◇◇◇◇◇◆◆◆◆30◇◇◇◇◇◆◆◆◆40◇◇◇◇◇◆◆◆◆50◇◇◇◇◇ ◆◆◆◆60◇◇◇◇◇◆◆←文はここまで。

基本

●パロディ1

起 平和な朝と夜、シャノン、ラクウェル、パシフィカ。
承 原因と朝食、魔法とゼフィー、獣姫の土産の秘密、片方の宝珠、元々は一つのもの。帰国と対策。
転 一ヶ月、髪を結い上げ剣士への再途上のシャノンと髪を下ろした温和な魔道士ラクウェル。お城へ行こう! 騒動と何故かジューンブライド。
結 幸せの行方、危機と結末への助走、「力の差だろうが負けは認めよう」。兄弟酒の罠、 「付き合えないなら家族とは認めません」、そしてあい変わらずの景色。

★お約束のご都合主義的に、様々なキャラクターを詰め込み予定。

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詳細

第一幕
80% 朝から昼までの時間移行と、家族と相談。秘密を作って秘密を探る。仲間と戦友を語る姫、庇う姫、お暑い二人の花に
20% 説明をされても、しかし急いで帰国、準備ままならぬまま

第二幕
10% 帰路途中の姫と従者
70% カスールの双子。それぞれの得意な物、好きな物の違いに
20% 整理整頓をしないと、倉庫の窓を壊して、探し物を見つけた

第三幕
70% 登城通知、やっぱり秘密のまま、女性の微笑を、そして「背筋に電流が走ったのです」「寒気よきっと」 名声のカスール、富のレオナルド、商家として貴族として
30% 大きなものの一部、作業中の混乱、解析と結論。戻って戻すぞと

第四幕
30% 二人は不在、二人の姫、説得の説得
70% 城での出来事、戦士としてのシャノン、レオのおじ、血筋、家系・・・武術の腕とプロポーズ、シャノンも現われて 勝負、でも勝負は勝負でも飲み比べ
+a_ 変わらずの景色。「居着かないかしら?」野良犬の話をするように求婚相手の話をするラクウェル、レオナルドは 諦めていない様子。しかしラクウェルにその気はない

特定の動作がシンクロすると、あくびやくしゃみでも良い。 二回連続すると距離関係なく心と体が入れ替わってしまう、対処の方法はみつかってない。 双子ゆえにそんな場合は多い。 予定30kbyteでもよし、シャノンの受難ぶりが一番の見せ場だし、後半は長くなりそ・・・・