■プロローグ■




ふと目を覚ます。闇の中に一人きり、一人は怖いから家の中を人影もとめて歩き回った。
けど不思議な事にどこもかしこも空部屋で、みんな何処に行ってしまったんだろうと屋敷の庭へ出る。
するとみんなの楽しそうな声が森から聞こえた、僕も行かないと。
それにしても・・・夜目にうつる原色の森と草原はあまりにも幻想的で、自分がまだ夢の中にいるような気がした。



ちょうど草原に居た赤い人が森の中へと入って行く。
おいで、と言われたような気がして、あとを追った。
急いで来たけど追うべき赤い人はもう見当たらなくて、子どもの走りでは追いつけないからみんなのいるだろう広場へ向かう。
森の中は本当に真っ暗で、さっきまでとはまた違う夢に迷い込んだ気がしたけど。
それでもやっぱり一人きりは、寒くて、冷たくて、怖くて、はやくみんなの所に行かないと泣いてしまいそうだった。
でも遅れてきた僕には誰も声をかけてくれない。



確かなことはみんなの手足がバラバラで、だからみんな一様に赤くて・・・動いてはくれないということ。
熟れ過ぎたトマトが大量に落ちてできた池が広がっていた、そんな赤の世界が広がっていた。



・・・わからない。



この世界で唯一人で立っていて赤いひとが、ゆっくり振り向いて僕をバラバラにするために近づいてきた。
でも誰かが代わりにバラバラにされる・・・とても悪い夢。



でもぼくはこどもだから、わからない。



そのお母さんと呼ばれる人に口付けされて緋色が目に焼きついてしまったけど、
仰向けになると、今さっきまでの事を忘れ去ってしまうほど綺麗なものが目に入って来た。



ああ、こんやは、こんなにも―――つきが、きれい―――――だ―――。




★この夢を何回か志貴は見ている、「ひとつめの夢」と名づけている。
見慣れた夢、何か忘れてしまった・・・そう恐怖と悲鳴が欠けているのだから俺は怖がなくてはならない。
ガタガタと。
それができないってことは、











■第一夜■

「・・・志貴」
聞きなれた女性の声に呼ばれたような気がした、目をあけるといつもの風景がうつる。
「・・・啓子さんじゃなかったし、あの夢でもなかった。・・・誰なんだ?また忘れているのか、俺は」
思考の海に潜り記憶を探っていたが、やがて何かに耐え切れなくなったのか、顔を顰めて片手をメガネに伸ばす。
今日は特に酷い、十秒と裸眼ではいられない。
細いところまで枝分かれが三回もしているラクガキ、めがねをかけると消えてくれた。
見慣れた自分の部屋、八年も世話になった有間家での最後の朝は変な夢から目覚めて始まった。

朝食をとり玄関へあとから


引越しのため本当に何も無い、元々ものが少なかったこともあるが
有間家

いくら何千の魔を滅したとはいえナイフは所詮ナイフ、それに『直死の魔眼』は死んでしまったから手に入れたものにすぎない。
その血こそ、どれだけ光写す宝石より価値あるもの。
遠野槙久はそれを消し去ることを、気まぐれにやめた。
七夜という苗字は奪われ、志貴という子どもになった。
翡翠と琥珀のように。


学校と、そして回想と、


<本文>

登校早々珍しく後ろから肩を叩かれた、振り向くと怪しい風体の男。
本名は乾有彦となっているらしいが、俺は悪友、親友、仇敵と呼び合う関係を続けている。
いわゆる腐れ縁だ。

「」




弓塚さつき

「静と動、対極にあるもの同士。
「羊の遠野しか知らんが、そこまでの静がお前の中に存在しているなら、お前には必ず狼の動がある」

時々鋭い。

こいつとは認めたくないが近いのだろう、同類とまでは行かないが
人生の何処かの交差点ですれ違うだけだったのに、こいつは何故か俺と話したがって・・・。




















<本文>

遠野志貴としての記憶のはじまりは病院からだった。
目を覚ますと白一色の部屋の中、ベッドから起き上がると医師たちが駆けつけてきて僕の体を調べ、何が起こったのか説明を始めた。
見ると何処もかしこも変なラクガキだらけ、見慣れない、いや見慣れた風景?
デジャビュと呼ぶべき感覚が自分の中に自然にあった。

「はい、そうですか」

いいかげんな返事をして事のあらましを聞き流す、だって何故かそれが嘘だとわかってしまっていたから。
そうして一日が過ぎ、夜の帳が下りる頃、こっそりと病院の探検に出かけた。
隊員は僕一人だったけど子どもの好奇心は不気味な場所へも足を向けさせる。

「増えてる」

だんだん太く、増えていく線をたどって行くと『霊安室』と書かれた場所にたどり着く。
生憎、カギがかかっていてその日はベッドに戻った。
暗い部屋の中、月光が綺麗でぼぉっと光るお月様を見上げて眠りについた。
次の日、精密検査というのを受けに行く途中、あの『霊安室』の前を通ったのでここは何かと聞くと死んだ人がいると教えてくれた。
一度も僕にだけ見える線が何なのか疑問に思わなかったけど、答えに納得する。
他の病棟へ行くと重病患者と普通の人は線の数形が違っていたし、古い病棟は線が多く新しい病棟は少ない。

「線?」
「ラクガキみたいにいっぱい」
「やはり脳が・・あの傷だ、やはりショックが大きい。もう少し様子を見よう」

・・・大人たちには相手にされなかった。
空に浮かぶモノにさえ、ラクガキがあるように思えるというのに・・・僕にだけ見えるのは不公平だなと思った。
それから、遠い・・・青色の空を見ている日々が続いた。
ふとこの建物から出かける事を思いつく。

「はあ」

あの屋敷からは誰一人訪れないので、毎日変わらない。
遊びたくて仕方が無かったが、線のことには触れては駄目と誰に言われていたようなことを思い出して
あれ以来、医者たちにも遠野家からくる人間達にも本当に誰にも喋ってはいない。
でも話する相手もいないので、ついに部屋の中にある線を弄ぶ。
でも飽きてしまった。
走り回る事の出来ないここから外出して、町外れまで来ても、誰ひとりいない。
嘘の事故で怪我を胸にして、話し相手も遊び相手も消えてしまった、つまらない、それに疲れた。草原で横になる。

「君、そんなとこで寝てると蹴り飛ばされるよ」





先生は魔眼が世界に及ぼす影響を感じ引かれて来て、魔眼に関してのみ、志貴を救い教え導いた。
聖人君子とその血脈は相容れないものだと知りながら勇気づけた。



先輩、シエル、そして誰かの記憶・・・過去視、そして未来視。
未来視とは過去視の発展版、回避は可能。
















<本文>
■第二夜■

欧州を拠点とする基督教、その影響が薄まる地は傍系の正教もしくは異教の回教や仏教の地。
どの宗教とであろうと信仰というものは、熱くて・・・。
この凍りついた大地は・・・。



ゆっくりと雪の中、露西亜の大地の何処かに転生したはずのロアを追う。
白き姫は薄い日光の中、ざくりざくりと積もった雪を踏み進んでいく。
雪は・・・降ってはいない、この土地にしては珍しく穏やかな天候状況、それでも雪は移動を阻む。

「はぁ・・・」

吐息、白く、凍る。
白い大地、白い人影、白い世界・・・そんな白ばかりの世界に血が転々と落ちていた。

「戦争か、血と混乱には事欠かない季節だな」

血痕の先には無名兵士の亡骸があった、血を見たせいだろう、自然と禍々しくなる視線をそれから外すと。
と、銃弾と爆発音が遠くから聞こえた。
露西亜の地で誕生した革命政府が西欧諸国の干渉を受けている真っ最中、故に移動手段は少ない。仕入れた知識にある事象を反復。
もう一週間も足で奴を追う。
今までで一番活動期間が長くなりそうだ。
これからはこんな事は無いだろう・・・ここまで広大な大地でも短時間で長距離移動を可能にする手段ができていたから。
ほんの二百年で人間達は凄く便利な物を作っていた、自動車、鉄道、飛行機。
やはり時が止まる者と進む者の差は開く、それでもその尺度では計れないこともある。
しかし、ロアも考える。転生先を欧州以外にしたりするなど、これまでなかった。

「・・・はぁ」

人間達が殺人を厭わなくなる季節では、私は影のように動かなければならない。
捕食者の立場にいる自分に対してまで殺気立って来られては困る、見つかったら厄介だという程度の話だが。
そろそろ朝、睡眠がとれる場所を・・・探す、この町唯一のホテルらしき所を見つけて入る。

「・・・ここにしよう」
「誰だ?」
「・・・」

あまり良い内装とは思わなかったが、風雨がしのげれば良いのだ。
戦争中に戦地真っ只中に女一人で、怪しがられたものの、さくっと魔眼で仮宿を得る。
人形のようになったホテルの主人はふらふらと、キーをアルクェイドに渡してから昏倒した。
それから三日後、二十の川を渡り谷を抜けて、たどり着いた辺境の村。
奴の調査の必要は五分といったところ、調査対象は二人・・・一人目の男は地位はあったが身体が悪い。
二人目は女、この地域の軍閥の血縁らしいが地位などないに等しい。
どちらにしろまだ表に出てきていない、だが私がすることは壊すのみ。さあ夜を待とう。
落ちる太陽。
目を覚ます、じとっとした空気が周囲に流れていた、これは・・・目覚めたのか?
崖に登り村を見ると、死の世界が広がっていた。
死に切れないもの達が蠢いていた。



人間まで血を欲する時代には軍隊まで相手にしないといけない、空想具現化で目に見える世界ごと圧縮し潰すという手段が有効。
眠り、そして起きて死都作り出したシエル殺しに。
次は、日本、蘇生してエクソシストとなったシエルと何回かの接触のあと。
ついに今代のロアのいるだろう三咲町へ。
そして、死徒を狩る。
心が志貴に殺されるまで数日・・・。



















<本文>
■第三夜■

あの夏の日にやり残したことを成す為に坂の上の屋敷へ、あの場所に戻る・・・思い出していると俺は が疼くのを止めれない。
  としての気持ちのまま、あの場所へは立てない。
教室に残って夕日が傾くまで空虚な心になるまでに、時間が流れるのを待つ。





遠野志貴さまですよね?よかったー、なかなかいらっしゃらないものだから、うちの庭で迷子になってらっしゃるのかと」

いくら広大であろうとソレ扱いはないだろう、冗談の通じる人間がこの屋敷にもいて安心するが戸惑う。
時代錯誤、と言うか洋館に着物の女性とはいったい?
それよりもさっきから何か酷く場違いなものを感じている、自分がここの屋敷の住人であることや目の前の彼女からも強く感じるものがある。
顔を伺う志貴、霞みがかった記憶の一つと目の前の人物を比べる。
「・・・」
この瞳の色、彼女との一度限りの出会いを覚えている、確か大きな木の下でリボンを渡されたはず。
けれど名前だけはどうしてもわからない。
過去と夢で聞いた幾つかの女性の声と比べてみるが、俺は彼女をなんて呼んでいたんだ?
「あの、さ・・・確かこの家に八年前いたよね?」
「は、はい?・・・覚えてらっしゃるんですか、変ですね。そんなはず」
「間違えてないと思うけど、確か・・・」
何処にしまったものだったか、あのリボンは・・・少ない手荷物の中にはないのだからきっと有間の家から送った私物の中にあるのだろう。
あとでも渡すことは出来るだろう、今は秋葉に会わなくては来た意味がない。
表情がくるくるとまわる元気な割烹着の女性は何か呟いていたが、やがて案内を再開してくれた。
「あ、はい、お久しぶりです。秋葉さまをお待たせしてはいけませんから、どうぞーこちらです」












「・・・兄さん?」

秋葉、そう秋葉だ。
彼女は遠野の当主として八年間過ごしているものの、闇の近くにはいなかった。
闇を知っているとは言いがたい。
血筋は正統であるものの、俺の  の対象には足りない存在。おっと返事しないと。

「ああ、久しぶりだな。秋葉」




■ゆめ

人里離れたとある場所に人とは違う特別な能力を持つ一族がいた、彼らの生業は魔を狩ること。
もう十何世代にも渡って、この国の人々が目を背けていたものを相手に戦い続けて来た。
・・・ほんの数十年前まで、この里には少ないながらも人が住み一応の栄えを得て、
慎ましく存在していたが、時というものは残酷で、七夜と呼ばれる彼ら一族は衰えを感じていた。
箱庭は変わらないのに七夜は減る、七夜でありながら能力持たない者が産まれているのだ。
この国が近代化する以前には年に数百在った仕事も減ったこともあろう、だが直接の原因は違うようだった。
長たちは考えていた、原因は濃すぎる血のせいだろうかと。
・・・より純粋に、研ぎ澄まされていく刀身は身を細めて
より完全完璧へと少数に選別されていく、戦いの中で、不意の事故で、産まれる前から・・・。
実験と呼ばれるべきそれが、神の見えざる手によって行われていたようだと長たちが悟るまで時間はかからなかった。
この国が開けて外部勢力からの干渉が強くなったというのに、この地は変わらない。
雨も空も、動物も水も、ただ人間だけがぽつりぽつりと確実に減っていった。何十年もかけてゆっくりと。

「ここから去った者は過去五十年で二桁を越えた、殆どの者は適切な処置をしたが」
「何故だ、土地は変わらぬし魔は在る」
「定め・・・だろう。しかし闇は夜と共に在る、我ら一族の基礎は揺れもせぬ、闇は我らを影としてくれる」
「しかし、当主殿も道逸れる事多き人。次代に希望を見出すしかないのでは?」

一時的に、その願いは叶ったのか七夜の仕事はその苛烈さから注目を集めることとなった。
当主となったその者の仕事は、魔を狩る者にして魔そのものと評され
その肉親も冷静な仕事振りから七夜の名を飾った。
しかし、形あるものは奪われてしまう、崩れ壊されてしまう。
七夜黄理が深く関わった事件によって、七夜家は滅亡への道を歩み始めることとなる。

「遠野?知らんな」
「その私兵が五十ほど取り囲んでいるようです、襲撃は計画的に行われており下への道も危険でしょう」





これは一番最初の記憶だ、深い森の中にある家の時の・・・。
何かを飲まされて寝込んでいたような気がする、熱い体・・・熱い頭、息が苦しい。
「・・・は・・」

封印されし能力、七夜の全て。
父の能力や祖先が身に付けていた一代限りのもの、多くの七夜を受け継ぐもの。
優れた身体能力も勿論、七夜黄理が持っていた感情把握能力その他にも多くの能力が備わっている。

★この夢は遠野屋敷初日の夜、ネロの犬が五月蝿かった時に、見た夢。「はじめのゆめ」と呼ぶ。
















■第四夜■

◆だいいちのゆめ◆
「志貴さま、おはようございます」

「ぁ、ああ、おはよう翡翠」
曖昧に受け答えする、メイドに起こされる違和感ではない何かが心にわだかまっている。
何だ?
そうか、恐怖だ。死に対する時に出るはずの悲鳴が夢にはなかった、酷く現実感欠いた夢である理由はこれか。
あの時に感じたのは、月の対する畏敬のみ。
遠野家から遠ざかる原因となった事故に遭ってから、胸にぽっかり穴があいていて、そこにかつてあった何かや
そこから流れ出る大切な何かに時々気が付いて何ともいえない気分になることがあった。
今もそう。
日常の作業は俺の心を置いて進んでいく、朝の挨拶をするためリビングルームに入る。
ああ、今日は









★重要
秋葉
価値観の違い、目に見えるものだけがすべてではない。
魔の血があれば変容も可能で、秋葉は・・・変装とは言わないな、アレは。
八年間、次期当主として育てられ自由の身にはならなかった。七夜の者と接触を許されなかった。
隠れて会いに行こうなんてできない自分の行動全て制約受けているから、それに秋葉は裏技苦手であるし。
絡め手を得意としないわけではない、けれど彼女は遠野秋葉なわけで・・・遠野家の当主なわけで、常識と規律を良しとする人間だし。

琥珀
価値観の違い、遠野志貴と簡単に接触できた人。 同じ町内だし、もしかしたら翡翠や秋葉、アルクェイド、シエルを一番最初に出し抜けた人。策略家であるし・・・仕込みの時間はあった。 どうしてそうしなかったのだろう?恨んでいたから? 記憶を槙久に操作されていたのだから志貴とは初対面で、恋人になれたかも・・・簡単に。 ((( 遠野志貴 死の点は必ずしも攻撃しやすい場所にあるわけではない、力さえいらなくたって 相手に警戒されてしまったら「遠野志貴」では吸血鬼に勝ち目薄い、薄氷の勝利だろう。いつも。ネロのときもそうだった。 勝てたのは少し七夜が入っていた状態だったから。 七夜志貴 「七夜志貴」であったなら、たとえ月夜でもアルクエイドを狩れるだろう。 スピードは脅威だろう、けど本当に恐ろしいのは蜘蛛のような人外の動きを行う事。 殺すということを確実に達成する、冷徹なまでの行動力。 遠野が反転を体験して力を得るように、七夜は殺人を行って本当の闇に君臨できる。 殺す、殺害する、死を与える、命を奪う、大量に、多くの、生物から、魔から、そこに在るということを ただ否定する。それが七夜である。それをやめた者は七夜ではない、またはじめた者は七夜となる。 「線」はモノの壊れやすいところで「点」はモノの死、「点」は見つけにくいけど。 ))) 遠野だった二年間、有間だった八年間、志貴には他にも幾つかの選択肢が用意されていたけど 本能が還る場所を選ぶなら、やはり七夜の里のみ。 ■第五夜■ ◆ゆめ◆ 夢、誰かの夢、殺し殺される夢、忘れていた・・・僕の夢。 森の中、大きな木の根元に体を押し込み息を潜めた。 何人もいるはずだ、僕を追っているはずだ、でも物音ひとつ聞こえやしない。 寒く冷たい、暗くでも見える。 その目は誰よりも有利、だけど殺し合いには向かない目。 「は」 拙い事をした、息を。 何人もの大人たちに追跡されて、影の中から現れた人間に後ろから息の根を止められた・・・そんな恐怖が舞い踊るような夢。 不思議と悪夢とは感じない、それがあたりまえのような自分の感覚があるだけ。 いち、に、さん・・・もうひとつ。 死体が出来上がる、僕が死んだ後なのに、誰の目で誰の手でこれを行ったというのか。 鏡に映った殺人貴はきょとんとしていた、手は紅い。 手は・・・。 その孤独が何時まで続くのか、生きる事も死ぬ事も叶わない。 「はぁっ・・あぁ・・はぁはぁ、何だ?今のは」 ★ 逢う魔が刻 片一方の世界 ■「月蝕」■ 先生は魔眼が世界に及ぼす影響を感じ引かれて来て、魔眼に関してのみ、志貴を救い教え導いた。 聖人君子と七夜は相容れないものだと知りながら、勇気づけた。 まっすぐ生きて欲しいと、でも・・・それは茨の道。 普通の人は進む先に避けて通れる痛みがあるなら、何処かで自分の心と折り合いをつけて曲がる決断を下すでしょう? それができないってことは綺麗な心を持っているということ、誰もが心惹かれる素敵な人間だということ。 直死の魔眼に引かれて来る人間は、結果として捻くれた人間ばかりで志貴は不幸になってしまうかもしれない。 でも、それでも彼は幸せだという。 「まいったな」 そう、彼には本当に負けてしまった。 私が羨ましがってしまっている、やましい気持ちなんて持てない、完全に私の負けだ。 「先生、ありがとう」 私から見たら不幸の足音聞こえる耳を持つ彼、拘ってしまいそうになる。 そんなことを私に言ってくれた。 彼だけが見える、世界の壊れやすさ。 それは私の持つ力とある意味同種のもの、だが彼は殺すということを深く忌み嫌っているのだ。 だから、彼女たちは危ない道を月も出ないような夜に進む彼に何かしてあげていたいのだろう。 私もそう、志貴に別れは告げられない。 「またね」 ■■設定■■ 教会 ヴァチカン、基督、子会社、異端狩りの埋葬機関に下克上気味の今日この頃。協会と敵対。 埋葬機関 シエルはここの第七、素敵な素数であるため転生を否定する。予備一の計八名だが、第十三まであればネタになる使徒は十二、ユダもその一人。 協会 法術、アルクェイドと親交、先生の勤め先・・・ちなみに先生は魔法使いだが魔術も使用可。 遠野の一族たち 槙久、当主、地は薄かったようだ。 四季、ロアの転生先、反転済み、人格が琥珀によって壊されていればロアは表に現れない。 秋葉、視界が届く範囲に物理的な敵なし。ただしそれすなわち目が弱点。 軋間、当主紅摩が紅赤朱となり、七夜を滅ぼした。 久我峰、長男、経済では支えとなる。血は・・・もはや。 刀崎、腕一本かけて武器を作る、普段は特別な人間ではなく血もそれほど危険視されない。 シエル 1976年フランスのパン屋の子として産まれる。東洋人の母を持つハーフ。 1992年、16歳の誕生日にロアとなりアルクェイドに滅ぼされる。 1995年、回収した教会によって蘇生、埋葬機関第七司教となる。 2000年、ロアを追い日本に来た。 姿は17歳あたり、実年齢は26あたり、生きた数え年で23あたり。 ミハイル・ロア・バルダムヨォン 転生体の死徒、 直死の魔眼 受け継がれる七夜の力ではない、七夜は一代ごとに異なる力を発現させることもある、血によって。 受け継がれるのは暗殺術である。受け継がれるのは身体能力である。得物は受け継がれない。 ナイフを志貴は手にしたけれど直死の魔眼にはそれは必要不可欠というわけではない。 直死の魔眼の力持つ志貴、その手で「死」を攻撃されれば赤子の手を捻るよりたやすく死を与えられる。 シオン シオン・エルトナム・アトラシア、アトラスの錬金術師。