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◎三話


初めてその話を聞いたときは、すぐに忘れる話題の一つになると軽く考えていた。
囲碁教室が終わり、生徒達・・・と言っても私より十以上も年上の方たちと茶飲み話をしていたときの事。
いつも三戦三勝を目的に来ている篠塚さんが、面白い事を聞いたと話した。
「この前、そう火曜にね、駅前の塔矢名人の碁会所に行ったんですよ。
声かけてくれた人には勝ちましたけど、辛勝でして・・・それで検討で話弾みましてね」
「そろそろ囲碁教室も卒業ですか?」
「いやいや〜腕試しに行っただけでまだ卒業なんて」
「へぇ、でもあそこに通うと上手くなりますよ。」
「そうですね、でも・・・あの碁会所ってほら、名人の息子さんが指導碁打ってくれる時があるらしいんですよ。
楽しみではあるけど、まだ自信持てないですよ。だからまだここで腕磨きますよ、先生」
これ以上腕上げられたら誰も歯が立たないですよ、と生徒達で会話する。
それに相槌を打つ白川だったが。
「それでですね、この前来てた女の子も行ったらしくて」
「女の子?もしかして藤崎さん?ああそうですね、たしか・・見に行くって言ってたな」
先日体験入学してきた藤崎あかり、今日来る予定はないけれど、今どき珍しい。碁を一人で習う女の子は。
友達や祖父、そんな誰かと碁会所に行っているのか
それとも彼女もあの年頃の例外ではなく、興味もつのも飽きるのも早いのだろうか?
「勝ったらしいです」
「へぇ・・・」
それきりだった。
深くは聞かなかったし、相手があの塔矢アキラと聞いたから
女性であることと慣れない手つきに『勝たせてあげた』と、推測するのみ。
生徒達との会話はまた、誰それの強さや次の名人戦へと流れてその場はお開きとなった。
白川は棋院が経営する教室の先生役をこなしているが、本業は棋士だ。
棋士と一言に言っても一線で活躍している人間は片手、もしくは両手で数える程度。
白川はそんな場所から少し離れていた、草食動物のような性格が災いしてるのか力不足なのか
高段にはまだ進んでいなかった。
それでも、碁には真剣で森下九段が開く研究会には顔出している。
「こんにちわ」
「あ、お久しぶりです」
馴染みではあるが一ヶ月ほどぶりの院生と挨拶して、森下が来るまで


「







白川は碁の普及に努める棋士の一人、勝負の世界に生きているにしては段位に拘っていない珍しい人間。草食獣。
その対極にある森下九段と親交あるのも不思議な話。
高段棋士たちとの対極、碁会所よりも囲碁教室やイベントをこなすのが処世と思ってた。









」


P2
囲碁大会イベントをあかりでこなして、緒方や行洋に才気溢れる娘として記憶に残される。

一般的に女性枠があることからも、碁界では女性はまだ男性の格下の存在で
幼い頃から名人から直接指導を受けて育ってアキラの敗北は、緒方白川の耳に入る。
・・・アキラの二度目の敗北はヒカルが対局を断るのでありえないけど。
緒方や白川がアキラに会う機会あれば、話聞かないわけには。
大都会東京と言えども碁界に住まう人間同士。偶然必然に話できるだろう。
「」「」「」



P2+a
囲碁教室、あかり視点。
ヒカルとカップルに見られるのはちょっと恥ずかしい、幼馴染って言葉で自己紹介。




P3
なるべく碁会所には近づかないようにしていた、何故なら佐為がぬか喜びしてそのたびに煩いから。
「お金も馬鹿になんないし、囲碁教室の方がいいな。白川先生とも顔見知りになったしさ」
一回目だったので無料にしてくれたし、同じ子供がいて打てたけど本当は見学してるだけで良かった。
やっぱりもう行かないと思う。

だっていつまでも佐為に付き合って碁してると、あかりが。
元に戻りたいのは二人の共通の希望。

塔矢が五月蝿いので、プロを馬鹿にした言葉を。
「君はどうしてそんな事が言えるんだ」
「何だよもう、一回打っただけなのにどうしてそんなに怒ってるんだよ?碁にそんなに興味ないんだよ」
はた迷惑であったなら許せるが進んで関わりたくない、幽霊なんて・・・消えると思ったのに。
「・・く」
「オレに負けたお前がプロになれるなんて、碁のプロなんてたいしたこと無いんだな」
「認めない、君に負けたなんて」
「それに飽きたの、碁なんて。お前の勝手、知るか、碁よりも大切な事があるの!」
それは元に戻る事、事在る事に言葉交わす仲の少女の体でいる事は気苦労が絶えない。
やんちゃであまり人の気持ち考えないヒカルでも、両親、友達を騙すことは良心の呵責あるのだ。
あかりにもこんな気持ちさせてる罪悪感、ましてこの頃は碁を始めて忙しいだけでなく。このアキラとか摩擦がたえない。
「あれだけ打てるのに」
まだ熱いアキラの片思いに振り回されたくない。と断言。
『進藤ヒカル』ならともかく『藤崎あかり』なら、体格で有利、走りって逃げていけた。



P3_+a
そしてようやく原因に。
「あの蔵には佐為が住み着いていた碁盤以外にも曰く有りげな物があるかも?」
今度あかりとふたりで行ってみよう。