『危険な仲間達だけのディナー、フルコースをレトルトで』






    ファミレスで相席した切欠で知りあった佐天涙子。
    仲良くなったのは仲間内でひとり無能力者どうしだったからというのもあるし、フレンダが気にしてジロジロ、ちらちら と両思いのカップルみたいなことをしたせいでもある。
    あと、初対面でどう見ても年上、外人さんにもかかわらず話しかけてくれた勇気が好印象だったこともあり元々あった主 要登場人物に話しかけたい欲求が一気にふたりの距離を縮めることになった。

    「会いに行ったのは佐天って言いましたっけ?
    しかもあの御坂の友達なんですよね。フレンダは人たらし過ぎです、裏表関係なく手あたりしだいですよね」

    「でもそれがフレンダだからしかたないね。
    フラグをたてて放置するのは、きっと呼吸をするように自然なことなんだよ。まさに匠だね」

    ひどい誤解である。
    たとえ向けられた思慕のことごとくを回避し、撃沈させた数々の武勇伝があっても無知の罪はきっと軽い。

    「へぇ・・・孤児院はそんなことになってたんですか。
    あとでフレンダにきっちり聞いておかないとですね。
    しかし相談ってなんでしょう?いつの間にか近づいてた二人の距離・・・フレンダなら超納得ですけど」

    ふたりで話しながら電子レンジに弁当を入れる。
    今夜はフレンダが泊まりに行っていて滝壺理后が帰りに買ってきたものが並ぶ、飲み物はそれぞれ牛乳、スポーツドリン ク、お茶と三者三様だ。麦野は部屋に引きこもってなにやら調べ物していて、滝壺は満足げに早くも箸をとっている。
    相手の都合に合わせて、つい先日知り合ったばかりの女の子をアイテムより優先した。
    それが原因でオールレトルトの夕食になったのにフレンダに執着する二人が文句言わずにいるのは不思議だった。

    不思議と言えば、考えて見ればフレンダも相当不思議な人物だった。
    暗部という立場があって一般人の友人を持つのは難しいのに、それができてしまうところが不思議だし、リーダーの麦野 にやめろと命令されないのも不思議で、特別で、レベルゼロでありながら麦野が常に拘るゆえにアイテムでは決して無能 力者として軽視されない。

    「麦野はシャケ弁で私はミートボールのおいしそうな、これはどこで買ったんですか?」

    「もぐもぐ」

    「もう食べてるんですか、ふたつも・・・本当に健啖家ですよね。
    それで涙子っていうのは黒髪で背の高い、あの妙にフレンダに馴れ馴れしかった人ですか?」

    「今日わたしは会ってないけど、たぶんそう」

    彼女達のような表の少女たち、その中にネームバリューある御坂美琴や、一度会った麦野の顔を覚えていた風紀委員まで いたのが驚きだが、まぁ佐天涙子には警戒する必要もなさそうだし・・・と考える。

    彼女の無二の親友が風紀委員というのが気になったていどで、初春飾利というらしい。
    同い年というには幼い感じで涙子の成長が早いだけだと思うが、正直彼女はやたらと大きい花の髪飾りしか覚えてない。
    ひどいとは思うが第一印象は大切だ。
    涙子いわく、よくセクハラして遊んでしまうのだが許してくれる出来た人格の持ち主で、佐天のちょっぴり軽くて爽やか な性格と同僚とおなじ同性に向けるあやしい性癖を心配しているそうだ。
    常盤台中学の二人組とはどちらかというと胸をもんだりお風呂に乱入したりはしない常識的な交友だと聞いた。
    そんな彼女たちはまだまだ中学生、多感な時期であるはずで・・・。

    「にひひ・・・恋愛相談だったらおもしろそうですよねー。
    フレンダには麦野がいますしアイテムに居る限り、相手が生きていけるとは思えませんけど男性経験が皆無でどんなアド
    バイスする気なんでしょう」

    暗部で見るのは極端に危険な人間ばかりなのにフレンダは奇跡と言えるほど優しい性格だ、恋愛相談されたらどんなに面 白そうなことなるか興味がわいた。
    まさか、頼りになるお姉さんという感じに佐天涙子のピンチを颯爽と救ったとは知らない。
    無能力者に救って貰ったことは相当刺激的だったようで、学園都市で感じ悩んできたコンプレックスの相談相手としてぴ ったりだと考え、決心の末に手に入れた幻想御手まで話すことになることを知らない。
    こんな事態になるとは思わなかったフレンダもお泊りして涙子を元気付けることに成功する。・・・またフラグである。

    「おや暖まったみたいですね。
    並べますよー。麦野ー、猫みたいに寝てないで手伝ってくださいよー」

    「待ちなさい。ゴロゴロなんてしてないっ、今お出かけの計画たてて・・うーん」

    「もぐもぐ」

    「さっきから滝壺さんはそれ、なにを食べて・・・ああっ!?
    フレンダの作ってくれたおかずじゃないですか?全部食べちゃわないで私にもわけてくださいよ!」

    「はやいものがち、あいはうばいとるもの。
    戦場に遅れるなど亭主関白の麦野には隙しかなかった」

    「なに出来たの?えーと箸は・・・絹旗あんたなんで泣いてんの?まぁいいわ座りなさい」

    したたかな滝壺理后に涙目になってる絹旗最愛、やっと部屋から出てきた麦野沈利が不思議そうに声をかけた。
    こうして三人が揃い夕食となる。

    この居残り組みアイテム三人の夕食が、久々に「ひどかった」と滝壺理后は後に言った。
    麦のんのサケ弁はともかく、フレンダが妙な食品缶詰フリークになっていないせいか和洋中を問わずデザートまで作り始 めた結果なのか、出会ったばかりの滝壺理后にはなかった属性がてんこ盛りの事態に戸惑いを隠せない。
    絹旗とは別の意味で、別人じゃないの?、と思うほどアグレッシブなのだ。

    話は戻るが、単に手料理が食べれなくて残念だ、と言ったらしい。
    案の条フレンダは何かを勘違いして顔を青くしてオシオキと呟いていた。
    ただし、フレンダ抜きの三人だと会話がいつもおかしくなっていて嫁には聞かせられたものじゃないのは確かだった。

    「じゃ、「「いただきます」」」

    「ここ最近じゃ珍しいですね、家で弁当なんて。
    フレンダがいないのも・・・そう言えば麦野に言いたいことがありました。いくら超フレンダが鈍いとはいえやりすぎで すよ毎日ふわふわの髪をさわって撫でて羨ましいです。でも眠ってるフレンダに悪戯までするのは変態ですよ?」

    「むぎのじじゅう」

    「ちょっと、なんでそれ知ってるのよ!?」

    「ごくしぜんにスカートに手をいれてたのをみたよ」

    「顔をなでたり髪を梳いたりまでは私も見ましたが、手を入れたりというのは・・・見てみぬふりも二度三度と続くなら 釘を刺しておかないとバレたときにフレンダに嫌われますよ」

    「・・・あ〜、あれは違う。ちゃんと奴隷が小奇麗にしてるかチェックしてるだけよ?
    どこぞのお子様みたいに野暮ったいパンツはいてないか確認を、滝壺まで・・・なんだってのよ。文句あるの?」

    「大丈夫ふれんだは麦野がちょっと手に負えない変態でも表面上きらったりしないよ。
    でも別居の申し出は覚悟したほうがいいね」

    「本人の意識がないときにするのはちょっと・・・。
    セクハラぐらいフレンダは許してくれますよ。
    でも、本人の前で妙にカッコつけちゃうから、引っこみがつかない麦野は滝壺さんの言うとおり変態を超極めてますよね」

    「・・・ぎ、ぬはだぁっ、てめぇ。
    地獄行きてぇのか!わたしは、だから、違うっての!!」

    変態変態と言いたい放題の二人。思わずぶち切れそうになるが今はイライラをぶつける相手がいない。
    仲間同士の喧嘩とはいえ、能力すら使わない無手の滝壺理后には勝てた試しがない。
    食事時になると瞬殺とすらなっていて、それなら絹旗最愛が小さくて八つ当たりに丁度いいと思うだろうがキャットファ イトやりすぎるとフレンダにつげ口するんだ、このょぅι゛ょ。
    その後、あからさまによそよそしくフレンダが笑顔を見せてくれなくなるのだ。それがマジつらい。

    「だーからー、わたしは奴隷が怠けてないか確認していただけよ!
    この頃ちょっとそつなく仕事できるようになったからって喜んじゃって、何だかフレンダの癖に生意気だから躾てるだけ じゃないの!二人して私だけが苛めてるようなことを言わないで頂戴、滝壺も絹旗もフレンダに甘いわ!」

    「それフレンダを褒めてるんですか?
    あれ、ちょっと!それ!フレンダの箸ですよ、麦野のはこれですよ!交換してください!」

    「ぁ、あらー?間違えちゃったわね。
    そうよ、間違えたのよ。でも仕方ないからこのままで」

    「くるしいよ。かえて」

    「・・・う、うるさいっ。わかったわ!ほらコレでいいでしょう」

    「投げないでくださいって、すぐ暴力を振るうのは悪い癖ですよ。
    フレンダみたいな細い体に打撃は・・・・あれ?見たことないですね。頬はつねったりしてますけど」

    「そう、麦野はどうしてフレンダには寝技ばかりかけてるの?
    むしろおおいにもっとやれ」

    滝壺はイイこと言ったとばかりにたらこスパゲッティからんだフォークを持ったまま親指を立てた。

    「グッジョブじゃありませんよ滝壺さん!麦野もです。
    べったり抱きついて構ってもらっておきながら脅してフレンダを超独占しないでください!
    スキンシップ禁止!禁止です!」

    「駄目よ!奴隷という立場を忘れて思い上がるかもしれないじゃない!
    私たちにこんな不味いもの食べさせて、きっとそのサテンって娘にも手料理振舞ってるわ。畜生!
    見なさい、レトルトばかりで!レンジで暖めてもおいしくない!サケ弁なのに!」

    学園都市といえども暗部なんて食事風景はだいたいこんなもんである。
    ・・・寂しく冷たく慎ましやか過ぎると感じてしまうのはフレンダのせいだろう。
    その愛情たっぷりの作り置きが冷蔵庫にあったのだが、珍しくコンビニ袋持ってあわてて帰宅してきた滝壺がすばやく確 保して既に腹の中だった。育ち盛りの絹旗涙目の理由である。
    いつもの食事の豪華さはちょっと異常である。
    そのことに三人は気がついてはいるものの、フレンダが私たちの嫁状態なので今更だった。

    「今回だってフレンダの優しさにつけこんで悪い虫が『また』ついたに決まってる。
    私だけが特別ってわけじゃないんだから・・・仕方ないんだけどさ、でもご主人サマはわたしなんだから。ウフフ」

    「顔にやけてますよ」

    「ここまで言っておいて、たとえば身近な他の誰かにフレンダを盗られたら・・・楽しみ。
    悔しがる麦野はきっと超かわいい」

    タイミングを謀ったのだろう、悦に入ってる麦野には滝壺の妙にしっかりとした腹黒発言は聞こえていないらしい。
    それを私に聞かせる意図はどこにあるのか。
    考えたくもないが共犯者になれ、と言うのかフレンダを独占する気はないからというのは考えすぎなのか。
    ・・・本当に自重すべきは滝壺なのかもしれない、私は常識人だと最愛はなにかを諦めつつ思った。

    「ああ・・・そうですね。
    はぁ・・・その話はもういいです」





    ◆




    一息をつくと意外と口の中があまく、不愉快に感じたのでお茶を滝壺に譲って貰う。本当は水でもよかったけど大きなペ ットボトルで緑茶を買ってきていたので残っていた分でちょうどよかった。

    「まずいわけじゃないですが味付けが甘すぎるとか辛すぎるんですよね。そこのところ、いつもは違うんですが・・・ そんなこと言っても、まぁ今回はフレンダ抜きで外食してもハブっているみたいで楽しくないですし、滝壺さんが麦野の 好みを選んでくれたんですからいいんじゃないですか?」

    「そーだけどね」

    たとえ美味しくなくても基本的にサケ弁はモグモグする麦野、つまらなさそうに滝壺の相手をしている。
    からかって楽しいのは表情に出る相手で、今の麦野では満足できないのか滝壺は口を閉じてしまった。
    他に話題は・・・。

    「そうだ。ちょうど本人も居ませんし、以前から麦野に超聞きたいことがあったんですよ」

    「なによ絹旗」

    「いつもフレンダだけにオシオキってなにしてるんですか?
    翌朝聞いてみてもブルブル震えるだけで答えてくれないんですが超酷いことしてませんよね。
    疲れも、体に傷もなかったみたいですし・・・?」

    「興味ある」

    「・・・な、なんだっていいでしょ?二人にはしてないんだから!」

    「性的な意味ですねわかります」

    「滝壺さんは知ってるんですか?
    え、知らないって知らないのに自信ありげに言わないでくださいよ!」

    「でもわかる。ギシギシしてたから」

    「ぎくっ」

    「シてた」

    「ううっ」

    「ギシ?」

    「てめ、滝壺ぉ」

    ニヤリと人の悪い笑顔で、いつになく弱気の麦野沈利にねぇねぇ今どんな気持ち?を実行している理后さんマジ外道。

    「盗み聞きしたんですか、麦野はフレンダにどんな虐待をしてたんですか教えてください。
    駄目ってどういうことですか、はやいってどういうことですか!」

    絹旗の追求には白々しく答えた。

    「かべにみみをつけてただけ、盗聴なんてわたしはそんなことしてないよ」

    「ちげぇってのっ!あれはな、記憶がないのは・・・」

    心配させる原因は麦野のフレンダに対する態度にある、完全にフレンダサイドと言える絹旗には毎回記憶がなくなるまで オシオキと称して何をされているのか不安で仕方なかった。
    優しくて本当は荒事だって嫌いで、本来ならフレンダは無能力者として表に居るほうが自然なのに。アイテムの一員とし て一緒にいてくれるだけで絹旗最愛の小さな胸はポッと温かくなるのに。

    「ふたりして私だけ超除け者なんてひどいです。・・・そりゃフレンダは無能力者で作戦にはたいして役にたってくれま せんけど。ですけど!フレンダが居なかったらわたしは」

    フレンダに情操教育をされた結果、かなり性格改造された最愛。
    最年少のこの娘の慕いっぷりは中々ほほえましいものがある、それに気がついた二人は生温い視線を向ける。
    絹旗かわいいよ絹旗。

    「あんたはいつまでもきれいなままでいなさい?フレンダと一緒に」

    「・・・いいなぁ」

    「いいね、若いって」

    「おいっ、今わたしまでババアみたいな風に言うな。
    若いしその証拠にフレンダをたっぷり」

    「「たっぷり?」」

    「わ、わからない奴らねっ!?」

    「「?」」

    「ああそうだよ・・・ヤってるッてんだよ!わたしのモンだ!
    あんなに無防備なのが悪いに決まってんだろ、最初はほんの驚かせてやろうとしただけで」

    「え」

    ぽかんと口を開けて驚く絹旗。
    てっきり精神的な苦痛だとかトラウマだと思ってたオシオキの内容が、生々しい妄想に置き換わる。
    扇情的な下着とボディで麦野と肌をかさねるフレンダ、それはとても魅力的だった。
    麦野沈利なら口の悪さや性格から経験豊富なんだからと納得ができるが、いつも絹旗最愛に悪戯っぽく笑いかけてくれる フレンダが女同士でなんて考えられなかった。やっぱり力で麦野が無理やり・・・。

    「ホントに?
    ほんとうにヤっちゃったの?だってわたしのふれんだは嘘言わないよ?
    いつもみたいに虚勢張ってるなら今ならウソだっていってもいいよ?絹旗も知りたいよね?」

    「た、たきつぼさん?え、えっと麦野がおかしなことを言って・・・あはは」

    「わたしはうそつきはきらいだよ」

    「き、嫌いになったらどうなっちゃうのよ?なんで笑ってるのよぅ・・・う、うそじゃない」

    フレンダが麦野に■■■された。
    そんなことは分かりたくない聞きたくないと現実逃避する最愛と、そこに容赦なく突っ込みをいれる滝壺の様子もおかし く、むしろ嫁の純潔を証明しようと必死。突きつけるフォークもプルプル震えていた。

    「ウソつきがどうなるかしりたい?」

    「言わないでっ!いいから、うそじゃないわ。だから、ね。
    そのフォーク下げてっ!折れるっ!折れるっ!折れてるぅっ!?金属のフォークが、ひぃ、どんな握力よぅ」

    「・・・・ちっ」

    「舌打ちされた!?もしかしなくても私を見下してるんじゃないわよ・・ね、ごめんなさい。
    だから腕をホールドしないでねっ、折れる!今度は腕っ節を見せてあげるって、怖い言い方やめてよっ!?」

    「あーぁ。泣いた・・・滝壺さん、食事中なのであとにしませんか?
    麦野もこんなですし、フレンダがどうこうという寝言はこのあとリビングでしっかり聞いてあげましょうよ」

    「そうだね」

    「ぁは、あぅうぅ・・・はあ・・はあ、助かったの?」

    すでに食べ終えていた滝壺が洗い物をはじめると、ほっと息を吐く。
    おとなしく食べ終えると珍しく自分の分の食器を洗って絹旗に促されソファに移動した。
    テレビはつけずそのまま家族会議という流れらしい。

    「それで?」

    「なにから話せばいいの?」

    一度途切れた話なので三人とも喧嘩腰にはならない、ただいつもより少し絹旗が不機嫌で滝壺のぼんやりとした視線が鋭 くて、麦野はほんのすこし二人と距離を置いていた。すこしだけ。
    怖がってなんかないよ?本当よ!第四位とあろうものが格下の二人にビビるわけないジャない!
    ・・・二人でなにをこそこそ話してるのよ?

    「そう、ですね。
    おねがいします滝壺さんから聞いてくれませんか?」

    「うん。わかった。
    むぎのしょうじきに答えてね?・・・むぎのさんはおんなの子がすきなんですか?もちろん性的な意味で。
    だとするとわたしたちもつきあいをかんがえ」

    「あ、あたま腐ってんじゃねぇーの?
    てめーオイッ!こら、ちが、ちがうからなっ!体庇って離れようとしないでよっ。・・・今の反応はひどいわよ」

    「そ、そうですよね安心しました。
    だってアイテムに男がいないのって、そういう・・・趣味嗜好があるのかと」

    「わたしはむぎのを信じてたよ」

    学園都市第四位としてのプライドと共につまらない嫉妬と敵意、避けられたことや暗部では本物の殺意があったけど今の たった一言に敵うショックはなかった。珍しく言いよどんだ滝壺に敬称つけられたのも初めて!であり、後付けフォロー が追い討ちに聞こえて仕方ない。確かにフレンダに悪い虫がつかないように男はアイテムに引き入れようとしなかった。
    誤解・・・だったんだけどねー。うん。

    「・・・まぁ、でもそうね。あのばかに私が本気になるわけじゃないけど、妙に怖がって嗜虐そそるんだから、ちょっと くらい乗せられちゃった感じでオシオキが過激になったのは認めるわ」

    「どんなことをしたんですか?」

    「にゃーんだぁ、気になる?気になるんだ?」

    「いえコレはけっしてやましい気持ちからじゃなくてですね」

    にゃんにゃん言っていつもの調子を取り戻そうとしたのだが、それを許さない人物がいた。
    パッシーン!と猫だましを静から動への、一瞬の動きで喰らわせて不意をつかれた麦野容疑者はフギャンと悲鳴をあげて ソファから転がって、床でまるまって震えた。それを追撃してズタボロにする滝壺さん容赦ねェ。

    「だまってきぬはた。
    フレンダが心配、わたしはフレンダの肉体がきれいなままなのかをいちばん心配しているの」

    「それは大丈夫よ!わたしだって合意もなしに手を出すほど外道じゃないっ、綺麗なままよ。同性なんだからキスくらい 親愛の証として当然よね?挨拶代わりに!あいつ外見ドコからどう見ても欧米人だし・・・むしろ今までフレンダからキ スしてくれなかったのが悪いんじゃないかしら!?そうよね!?そうなのよ!」

    「フレンダの体をもてあそんだのは間違いないんだよね。がっかりしたよ。麦野はわたしとおなじ反応を楽しむ通だと思 ってたのに体目当てだったなんて・・・。舌であじわったんでしょ?」

    「えっと、そうなんだけど・・・おなじ?」

    「それはいいから。どこに?」

    「味・・・ってキスは普通、口にするでしょう滝壺さん?」

    「どこにシたの?」

    生まれたての小鹿みたいにプルプルしてる麦のん、絶対にフレンダには見せられない情けない姿にされていた。
    悔しそうに従い、ゆっくり恐る恐る視線を上げては氷のような理后の視線に気がついて慌てて下を向く。

    「言えないわ、言ったら笑うでしょ」

    「ふつうじゃないんだよ絹旗、だからいえないんだよね?
    それにわらってほしいならわらうよ?」

    「だって!
    だって、ねぇ・・・だから私が子供みたいにペロペロ舐めてるなんて言えないのよ、わかるでしょ?」

    わかる?では無くわかってほしい、お願いだからね?と甘えた声を出してまで聞かないでほしいと滝壺と絹旗を相手にプ ライドをかけて分の悪い賭けをした。冷や汗を流して追求から逃げようとするけど、しっかり肩を両手で掴んで平坦な笑 い声で脅された。

    「あはははははははははははははは」

    「こわっ!?こわいんだってあんた無表情でやめてよ・・・」

    「いいよ、やめる。だから言えるよね。きぬはたも麦野をわらわないよね?」

    「ペロペロ・・・麦野がペロペロとか想像もつきませんがフレンダを傷モノにしてないならいいんです。
    もう色々となかったことにした方が、今後の日常生活のためにも良かった気がしますけど・・・まぁ首や耳なら」

    「あ、・・あし。
    もも!もも、ふともも!綺麗なとこよねっ?アリでしょ、いきなり指とかどんな変態だっての!」

    「ふともも。基本だね」

    「・・・えーと?キスを・・・えーと?麦野がフレンダに足にキスしろと言ったんじゃなくて?
    滝壺さんっ!?基本なんですか!?わ、わかりません」

    「あぁん?絹旗なによ、フレンダの体に汚いとこなんてないわよね。
    なんたってわたしのものだから、毎日チェックしてあげてるのちゃんと磨いてるか怠けてないかってね!」

    滝壺への恐怖を克服して、フレンダの(体の)自慢話をうれしそうに語ってくれた。
    それを聞きつつ内心ではふたりとも同じような感想をもつ。

    「指・・・」

    「(否定しませんでしたね、指・・・いつかチャレンジしてそうで怖いですね)」

    「あの羨ま憎らしい肉付きと肌触りはいつも清潔にするように、わたしがスカートを強制したおかげなのよ!
    健康的な色の素肌を鑑賞できるのよ。感謝してよ」

    「もういいよ、おっぱいは?」

    「え?スルー、なの?滝壺はあの脚線美に頬擦りしたくならないのねー。まぁいいけど。
    スレンダーだから当然小さかったけどしっかり揉めたわ、御坂といい勝負ね」

    「とうぜんだよ。ふれんだの巨乳化はわたしがふせぐ」

    「じゃあ、わたしは手慰みに絹旗をロリ巨乳に育てるわ」

    「え゛」

    滝壺が一歩引いて聞く態勢に回っていたと思ったらいつのまにか二人が意気投合していた。

    なんなんですか?アイテムっていつから残念な美人の集まりになったんですか?私狙われてたんですか?
    どーして私の胸をむぎのんが育てるんですか?アイテムのリーダーがこんなで大丈夫なんですか?
    すげェ、あ、超。
    超、イヤなんですが。
    カチンときましたよ、綺麗な笑顔でナニを言ってるンですか?温厚な私でも怒りますよ二人とも。

    「二人とも変態、変態です!変態、変態、変態ッ!!変態ッ!!!
    それにお二方はイイですよねえ、豊かな物持ちの余裕ですかァ?」

    「ふぅん?べつにフレンダのほど興味ねぇよ勝手におおきくなってなさい。
    怒ったのかよ、誰がするかっての。冗談よ」

    「きぬはたはフレンダが育ててるとおもう、ここにきたときより確実に大きくなってるよ」

    「世話好きだものね。今回の寝泊りも言い出したのはフレンダからだと思うわ。
    まぁそのおかげで貸しひとつ得したし」

    「貸し?」

    「?・・・外泊をむぎのが許可したから!やくとくだね」

    「そうよ悪いけど私はあいつのご主人さまだから、オシオキだってするし誰かに貸したりするなら私の許可が必要なの」

    横暴な・・・そう思っていると呟きが聞こえた。
    距離的に麦野には聞こえないだろう大きさで確かに言った。

    「・・・ふー、さいしょはびっくりしたけど麦野の言ったところはすべて私も堪能済みだった」

    「え゛?」

    「してないの絹旗だけだね、今度いっしょにしよう」

    最後に滝壺が特大の爆弾を投下した。それをただ固まるだけで反応できない絹旗最愛、共犯者がふたり楽しそうにフレン ダの綺麗な体の部位談義をはじめても固まったままだった。





    ◆