お話その一 午後、窓の外には夕焼け色に染まっているジオフロントが見える喫茶店で。 ココの所かなり仕事漬けだった赤木リツコはコーヒーを静かに飲んでいた、あまり人も近寄らない。 色んな噂のせいも多分にあるが、この時間にココに居る人間は少ないアリの様に真面目に仕事をしているからだ。 そんな色々な意味で独り者の彼女に。 「ハーイッ!リツコ!」 陽気に声をかける人物が居た。 間違えるはずもない、明らかに独特のイントネーションと声色。 夕日に輝く金髪と、大きな透明な水色の瞳がその人物を惣流アスカラングレーと明確に示していた。 これがリツコらしい思考感覚なのだ・・・ 「あら、そうなの?ミサトの飼育係も大変ね?」 「そうなのよ、分かるわねっー!さすが親友、といった所・・・」 アスカはミルクティー、リツコはサンドイッチを注文して談笑している。 このメンツは珍しい事この上ない、あの後・・・ たまたま、ネルフを訪れたと言い張っているアスカにリツコが一緒にどう?と誘ったのだ。 個人の赤木リツコとしても、また科学者としてもアスカとシンジの恋愛レベルの測定をしなければと考えていたところだったらしい。 アスカがミサトの悪口をいい、相槌をうつリツコと話は進んだ。 「まったくミサトは・・・どーしてああ、間がわるいのかしら?ねぇ?」 大人の女の見せる色気というか、その雰囲気にアスカは合わせて受け答えする。 彼女も成長したものだ。 「そーねぇ・・神様が与えたんじゃないの?一物も二物も」 「もって生まれた凄い才能と性格、正直私はちょっとだけあのノー天気さが羨ましいわ」 「そぉなの?アレがねぇ・・・凄いというならシンジじゃない?」 リツコの説明にアスカが呆れ、そして近頃本当に凄いと思う事を正直に話してしまう。 それにリツコが驚いたという風にリァクションする。 「へぇ、どーいうふうに?」 聞かなきゃ良かった、後でリツコはそう後悔する。 「シンジの凄い所?いただきますとごちそうさま、いってくれるしぃ♪」 「?・・アスカ、料理してあげたの?まさか・・」 自爆して俯き一言も喋らなくなったアスカに、鬱がはいるリツコ。 「・・・・」 「もう・・・そーいうことは私に言ってからして欲しかったわ・・・しょーがないわね」 「・・だってぇ・・・」 「ところで・・シンジくんの凄いところだけど、ミサトに比べたらまだまだね」 「?」 「一週間ぶっ続けで大学休んだときの理由、アレなのよ?」 「!」 「しかも、大学の打ち上げでつけていった『私脱いでもすごいんです』っていうバッチを未だに大切に保管してところかしらね・・、 過去の栄光に縋って生きているのよ。女ってものはね、アスカ。貴方もそうなるのよ、おほほほほほほ。」 「・」 内心、アスカはリツコだってそうじゃんと思っていたが、怒らすと怖いので言わず。無言。 「それに・・」 「ナニよ、まだあるっていうの?ミサトも年よねーー」 リツコに対して不味い一言を吐いてしまったのに、アスカは気がついていない。 リツコは努めて冷静に続けた。 「それに」 「あれっ?アスカも、どうしたの・リツコさんも」 シンジがたまたまと通りかかった、アスカも実を言えばシンジの更衣室へ潜り込んでみようとか 待ち合わせしてデートしようかな、それともいつもみたいにしようかなとネルフに来ていたのだ。 リツコを見つけて談笑してしまった、本来の目的を忘れていた。 「アンタッ!駄目じゃない、私がわざわざむかいに来てやったのよっ。更衣室で待ってなさいよ」 「で、でも・・・」 「怒ってなんかないのっ、私と一緒に帰るのよっ。絶対!わかった?」 「わかったよ、それじゃ・・リツコさん失礼します」 面白そうに二人の事を見ていたリツコ、シンジが去ろうとすると引き止める。 「あら、シンジくんも少し休んでいかない?アスカは邪魔者が居るのが気にいらないみたいだけど・・・」 ニヤリ、と笑うリツコ。 「別にイイですけど」 「そ、そんなことないわよ・・・・・・」 シンジがお誘いに乗ってしまったのでアスカも席に戻る。 アスカはシンジとリツコの間に席を取る、シンジがアイスミルクを頼んで話を始めた。 「それで・・珍しいね、アスカがリツコさんと何話していたの?」 「べっつにー、ミサトのだらしなさとか?」 気が乗らないただひとりの人物はやる気なさげにはなした。 「そうね、個人的なことよ。いつも難しい事ばかり話してるわけじゃないわ、アスカなら多少私の話も分かると思うけど」 「あー、無理無理。買いかぶらないで、いくら私でもリツコの話なんてまだ無理」 アスカがリツコの話に乗ってこない、シンジが居るだけでずいぶんと変わってしまうねのだ。 「ふぅーん、謙虚になっちゃったものね?セカンドチルドレンさんも、『女』になると」 流し目でアスカを捕らえてニヤニヤする、冷笑よりはいいけれどミサトみたいだ。しっかり類友しているリツコ。 「?」 「アンタねー、性に合わないわよ。そんな話ばかり、信じられないっ!」 「だからプライベートだっていっているでしょ?私を血も涙もない冷徹な科学者だと思っていたの?」 面白そうにいう、アスカがからかわれている・・・シンジは少し意外そうに二人を見ていた。 「じゃあ、ミサトさんつながりで加持さんの話しなんてどうです?」 「あら、分かるじゃない?シンジ君のほうがアスカより優秀ね、話がわかるじゃない?」 以前ならすぐに怒りだしていた質問、今は自分のパートナーが褒められるのは悪い気はしない、アスカは静観の構え。 「加持君はね」 考えこむ・・・あの男は・・・ 「いろんな意味でつまみ食い、食い逃げしている所かしら?」 加持のアレな話。 「大人なら分かるだろ?」 「つまんない大人だなぁ」 「そうね」 かつて憧れていたアスカも冷たい、シンジは続けて惚気る。 「絶対離したくなかったですし、手早く捕まえちゃいましたよ」 となりにいる本人は真っ赤になって、椅子をコトコト動かしシンジに近づいて寄り添う。 アスカ。きゃん♪二人のラブな様子に青筋少しのリツコ。 帰り際にシンジにプレゼント。←あくまで笑顔で。 りっちゃん製クッキー、3日間眠れないお薬計画発動。 こちらとら忙しいのに黄色い太陽見せちゃるぅーー!! 目の下に二人共々隈作っていたら、みんなに冷やかされるだろうとのリツコの計算。←もっと頭脳有効利用しろよ。 戦地では役立つと開発したが、ネルフが戦争するあてもなくマッドのリツコは手持ち部沙汰だった。 そして、リツコ(の薬)が巻き起こす喜劇、悲劇。←本当に起きるのか?起きないと話にならんから作者的陰謀で起きるとしよう。 休日、涼しくイイ朝。アスカとシンジはいつものラブラブな様子。 昨日の夜のせいで不機嫌なミサトは、障子の隙間から半眼で二人が去るのを待つ。 しかし、午前中は家にいる様子。仕方なく、もそもそと出てきてビール。 ちっ、いつもなら二人して出かけやがるのに。 デートのしすぎで資金がなくなったようだ、家ですごすつもりらしい。 そこへ来客、妹となったレイがアスカとシンジに会いきた。 アスカ、リツコから貰ったとは知らないクッキーを茶菓子に出す。 シンジとレイは仲良く談笑、アスカもそれくらいではもう嫉妬はしない。 レイがクッキーを食べてしまう、アスカとシンジも。 複合的なストレスから食い意地のはってきたミサトはもちろん沢山。 そのストレスとは、 アスカの大きな声と加持の浮気性、リツコのゲンドウとの幸福論から、部下三人の三角関係、と多岐にわたっている。 十年後、アスカの幸せ太り・・・「やぁん、また増えちゃったよーーー」「アスカ心配要らないよ、ミサトさんと違って」 「ビール腹じゃないから」「もしかして三ヶ月目かも・・・」 「アスカめー」「ダイエットしたら腹より胸が縮んじゃう年かもね」「このやろーー!!」 「キャー、シンジミサトが怒ったーー♪」「 「ミサト、ダイエットしたら?」「めんどくさー、リツコ何か作ってよ」「痩せ薬よこれのめば」 「ありがとー」 「ふふふ、恐ろしい薬よぉ♪胸をちぢめーるクンバージョン2なのよ、おほほほほほほ」 まだ下書き、いつか清書を。 お話その二 「あれっ?おかしーなー」 事件始まりはシンジのその一声からだった、シンジの困った声に反応してかアスカが部屋から出てきた。 ちなみにまだ食事の時間でもない、しかし憎からず想っている少年の困った顔が好きな少女は まだ夕食の時間にならないというのに思わずシンジの近くに来ていた。 「どーしたのよ?冷蔵庫に何かあったの?」 「あ、うん。壊れたみたいなんだ」 「ったくミサトの奴でしょ?昨日酔っ払って絡んでいたモン、冷蔵庫もミサトに絡まれちゃ堪んないわよ」 「ふーん」 絡まれただけで壊れるなんて、シンジは冷や汗を垂らしながら 今後はミサトを電化製品及び家の構造物の全てに極力近づけないことに決めた。 「修理に出しておかないと、まだまだ新しいから買い換えるなんてもってほかだしね。そおいえば・・・ これってネルフの支給品なのかな?メーカーのところのマークがネルフになってているし」 「連絡入れてみれば?Telは・・コレの番号って技術部?」 「じゃ入れておくよ」 その次の日 「あーれー!?ナニよこれぇっっっっ!!!」 「ふんふんっ!おらっ、くぉのぉぉぉぉぉ!!!」 バシン、ドシン!バキバキ、どっかーーーんっ! 衝撃音の後、大きな破壊音が続いている。 「なにやってるんですかーー、ミサトさん?」 「あっ、しんちゃん。聞いていてよ、この冷蔵庫開かないのよーーー、うぇぇぇーーーーん!えびちゅがーーー」 禁断症状か、泣き出したしまったミサト。 シンジは昨日大急ぎで直してもらった冷蔵庫に近寄る、見ると表面がへこんでいた。 「はぁぁ・・・直してもらったのに。また壊れたのかな?」 がちゃっ 「あれ?開きますよ」 なんとシンジかあけると簡単に開いた、野菜庫だが・・・ 「どーしてぇ?」 「まぁーた、リツコが関わっているじゃないのォ?その冷蔵庫」 アスカの呆れた声が耳に届いた、見ればラフな格好でシンジの作っておいた野菜ジュースを飲んでいる。 カロリーコントロールしている、ネルフでの診断によりドイツにいたときよりもカロリー摂取が増えたといわれたためだ。 「まさか?」 「リツコ?リツコならやりかねないわ・・この冷蔵庫怪しいわっ!調査よ!」 ミサトはシンジに開けてもらった酒庫から手に入れたえびちゅを片手に冷蔵庫の背後に回る。 「どーでもいいけど、シンジが管理してるんでしょ?シンジが開けれるんなら私は関係ないわー」 アスカは椅子に座って、シンジは立ったままミサトの行動を心配そうに見ている。心配なのはこの場合、冷蔵庫。 「だめよっ、私なんかシンジくんが寝ているときに飲む時だってあるのよっ!」 「はっ、どーせ。寝酒でしょ、くだんない。ミサトみたいにビールで太りたくないわねー」 「そうね」 「「「だれ?」」」 顔を見合わせる三人と一匹、アンタもいたのかペンペン。 「三人とも驚いてくれるなんて科学者冥利につきるわ」 電子音声がこたえる、確かにその声は冷蔵庫から聞こえる・・・リツコのよーな口調だ。 「アンタ、冷蔵庫に成りたかったの? 親友の私も知らなかったわ・・・自分を冷蔵庫に改造するなんて一言相談してくれればよかったのに」 「あ、あ、あんたバカァ?何、人ん家の冷蔵庫になってんのよっ?」 「リツコさん、ですか?そのそろそろ夕食作らないといけないんで豆腐を出してもいいですか?」 「くわっくわっ、くわわわ(なんだなんだぁ?)」 唯一シンジだけが現実的な判断を下していたが、この際どーでもよかった。 「どーしちゃったのよ、リツコ?そんな私の家の冷蔵庫にあこがれていたの?」 「アスカじゃないけれど、あなたバカね。改造はしたけれど私自身じゃないのよ」 「ま、まさか、マヤ?リツコ、アンタ鬼よ!生命を冒涜しているわ」 「ですから、この話は後でいいですから。今日の夕食は麻婆豆腐なんですよ、確か・・二段目に」 「くわわわくわわわわ(突付いてやるぞ、冷蔵庫のくせにぃーーー)」 シンジが開けて豆腐を探すと 「ああっ、そこよ。二段目のチーズの奥よ」 「リツコ、本当に部下を好き勝手にしちゃっていいとおもってんの?」 ガシッと冷蔵庫のふたを掴んで詰め寄るミサトを軽く無視してシンジに助言する。 「アンタっ!何様のつもりよっ、冷蔵庫の癖にシンジにかまってもらっちゃってぇぇぇ!!きぃぃぃぃ!!」 ゴンゴン、コンゴゴゴンっ! 「くわわわ、くわわわわわわわわ(魚を出せぇーーー魚ーーー)」 さすが鳥頭、くちばしで突付いて攻撃しているうちに、何時の間にか冷蔵庫の中にある食べ物のことしか頭にないようです。 「これじゃあビールが飲めないじゃない!リツコ開けなさいよ!」 「何言ってるのミサト、今日からこの家のカロリー計算は私がしてあげるのよ?感謝なさい」 案外おせっかいな性格、改造した冷蔵庫に自分の性格を書き込んだのだ。 シンジはミサトよりリツコを常識人と思っていたから冷静に物事を考えていたのだ。 適当に相槌を打って、アスカを褒めて戦線から離脱させる。 「それは賛成ですね、ほら喚いてないで手伝ってくれない?アスカがいないと駄目なんだ」 「し、しょうがないわねーシンジ♪リツコ、じゃあ私は?シンジしか開けられないわけじゃないでしぉ?育ち盛りだし」 「そうね、あえて言えばミサトの飲酒の監視のためだけにこうしたんだから」 シンジに相手してもらって機嫌が良くなるアスカ、分かりやすい性格。 そんなアスカの扱いに慣れたシンジは調理していく、この二人はすでに新婚さんみたいだ。 「いいじゃないプライベートでいくら飲んでもっ!」 「駄目よ、ミサトは際限がないんだから。だから私がこーして冷蔵庫を管理してあげるんだから」 「りつこのけちぃっ、私の私のえびちゅーーーーちょーだい、ちょーだいよぉ」 それにくらべてこちらの二人?は成長していない。 ミサトは取っ手に力をこめて引っ張るが開かない、言葉が幼児化して禁断症状のレベルが一段上がったようだ。 リツコはそんなミサトの飼育係のような立場だ。 「シンジ、これはぁ?」 「ああ、それはこっちに持ってきて熱いから気をつけてね」 「わかっているわよ」 調理続ける二人はイイ雰囲気、酒のつまみにいい。 しかし、酒がないミサトは冷蔵庫リツコに泣きすがる。 そのあとどーなったのかはしらない。