その結果、というか無事に進級できたシオン。上級生たちには小さな体を馬鹿にされていたが跳ね返すため
一段と闇に染まってしまい、表の光までくすんできていた。
行動力と活力が良い方向には向かわず、折角の体の成長は主にヤクザさんたちとの付き合い・・・夜の飲料と
昼の喧嘩のために使われた。無駄に安定しなかった体質の改善は免疫というより耐性が出来て、プラスが
マイナスにも働きナイトウォーカーとして名を知られるようにもなる。

『あっつい・・冬なのに。ああ、またこの夢?』

いまでは不自由を感じるのは虎がらみと夢がらみの場合だけだ。
夢。
これは本当にどうにもならない、医者にかかるほどでもなかったし相談する相手もいなかった。
変化無く、寸分のくるいも無く同じことの繰り返し。
10年前。
その大災害は数日前から晴天つづきで空っ風が吹いていたとしても、人為的なものでなければ説明がつかないほど
火の拡がり方が異常に速かった火災だった。今朝見た住宅地とはまるで別の場所にでも来てしまったかようだ。

『見覚えないけど、天涯孤独になる前は住んでいたところなんだよな・・』

見ているだけしかないので、あらかじめラストを知っている映画の観客のように退屈だ。

燃え盛る火で地面はとても明るいのに、空は暗いかったのでゆっくりと視線をあげて見上げた。
なにか太陽の代わりに、円形の穴から真っ黒なドロドロしたものが溢れている。
見ていると気分が悪くなる。
目をそらして見なかったことにしたかった、それでも、やはり熱い。体が暑い。火傷が痛い。

目がさめた。

静かな朝だ、喉渇いたので水を飲みに立ち上がると電話が鳴る。
珍しい。
学校からか・・・一度、二度、ベルが続いたのでタイガーのイタズラじゃなさそうだ。

「はい衛宮」

「シオンっ!おっきくなったのに遅刻しないでよーもー、ホームルームには来ててよ。
しっかりしてよー遅刻なのー?ねー?」

「そうだけど何?いつものことでしょ藤村タイガー」

「虎とよぶなーっ!!!!!!!あっすみません葛木先生、あの大丈夫ですか?
物を大切に・・・します、はい。・・・はい・・・ぅー」

「・・・・説教された?くっ・・・ふっふふ・・」

「笑わないっ、授業に出て真面目にしなよ。
二年目なのに落ち着いたりしないよね、シオンは何処か部活に所属しないの?夜出歩くのも心配してるんだよ」

「バイトしてるって言っておいたけど?」

「・・・わかってるよ。そりゃーシオンがお姉ちゃん以上に大食いで食費がかさむからって独立心旺盛なのはね。
でも学校のことも考えてくれないかなーシオンのお姉さんの私が哀れんだ目でねー、ねーってば?聞いてる?
教頭先生あたりが、このヒヨッコめが、部の顧問など任せておけませんな。内心笑ってるに違いないのよ!
うーっ、シオンだから大人しく」

「うるさいぞっ!寸胴仲間に私を引っ張り込むな、私に姉なんていないし藤村は藤村、大河は雷河の孫娘でしょ!
私とはそのうち関係変えて・・・今は言わないけどさ。学校?やだね。勝手に笑われてれば?」

まだ話の途中だったがそう言って電話を切ってやった、毎度ひつこく教師の立場で言ってくるので仕方無しに
テーマパークのチケットやらを私の駒たちから寄付させてプレゼントしている。
つまり賄賂。
あれの親は早くに鉄砲玉にドカンと車ごとらしいので同情はするけど、あんたは甘ったれだろう?
組は私が乗っ取った方が幸せに違いないので着々と人望買い漁ってるんだよ、なーんにも知らないだろ?

「タイガーめ、ガキんちょめ。だから嫌いなんだ嫌われてるの理解しろよ」

ぷるる...『穂波学園 XXX-XX-XXXX』
またかひつこいな何か他に用でもあるのか?

「なに?」

「弁当持ってきてよ忘れちゃったの、朝寝てたシオンが悪い。以上」

がちゃん...

「あ、あの虎・・・二日目だっていっておいたろぉ」

怒りで震える声と細められた目は心臓の悪い人間には見せられない、その反論する前に切られた。
あんなヘボ虎よりよっぽどその筋のお嬢さんらしい豹変をする衛宮シオン。
ぎりっと歯軋りすると頭痛に顔をしかめる。

二日酔いとか月経とか初日は無理しても平気だが、二日目寝て起きた後は人並み以上に苦しんでいる。
今日の夜になればまた飲める、へんちくりんな夜型の体質だ。
昨日の宴会、本来なら藤村大河が出て行って周囲の極道さんと親睦深めるべきだった。

「夜任せて昼遊んでるならガキと同じ、じーさんも何考えてるんだ?」

相手居ないのは冬木の虎と呼ばれた学生時代だけにしとかねーと、大人の男にコロリと騙されるぜ。
あーそうか、うちの親父に・・・ご愁傷さま。

「弁当は、これか。私のも一応持っていくか、晴れてる学校の屋上で食べるのも久しぶりだし、誰か
一緒に話し相手を適当に見繕うかな。私から逃げた女とか?面白いなァ」

私は少し同性を好む趣味があり、裏切ったりして修羅場を作らせるのも好きで泣き顔も好みだったりする。

タイガーは性格が私とは正反対であるのにエゴイストという点はでは同じだった、
女の私を狙ってんじゃねーだろうな・・・料理しようとしないし家事もしない。男性とは仲良くしていた
ほうが特なのに、女の武器を使おうとしない虎なんて爪無し牙無しの醜い生物じゃないか。
私なんて遊ぶ金欲しさにバイトもしているし、あの親父の知り合いに極道の爺にバイク修理するついでに
その道のつて使わさせてもらって、街で暴れるイカレたガキを好き勝手利用させてもらっている。

「いつまでも物騒なこと考えててもな、行くか」

いつものように遅く学園に行く準備をしはじめた。
わたし、衛宮シオンが普段遅刻や早退をするのは全くめずらしくない。現場を見られたって喫煙飲酒で
文句言うのは会長くらいのものである。
筋金入りの不良少女。
そう言われてはや数年、毎日会話する友人らしい友人はいない。片手で学校で口聞く人間の数足りる。
なんたって気に入らない女の子はいじめるし平気で傷物にするし。脅すし潰すし転校させたり家族ごと追い
出したりはすくないが、噂ではなく本当にしているのだから恐れられる。
街でも学園でも、喧嘩は日常茶飯事で敵は両手で数えるのが馬鹿に思えるぐらい多い。
でも私の持つ人脈に恐れをなして距離とるやつらばかりになってきている。
時には刺しに来るのもいるが、その報復は過激にヤってヤってるからますます危険視されていた。

ヤクザの娘のタイガーがそうあるべきだったのに、老衰で死んだ爺くさい親父のひもトークに
引っかかって凡人になり下がってさ・・・・でも哀れんだ私に飼われてて幸せだよね。
素敵なご主人様でよかったね。

「爺も組を守れとか無理ばかりするなとか私が若いからか?私の気性だって言ってるだろうに
将来を期待されてウゼーんだけど、爺さんの遺書に私の名前があった時のこと考えれば・・・ケケケ」

「何を笑ってる?エミヤ」

「氷室か、気にするな三枝とは相変わらず仲良いようだな。
それより顔合わせるたびに突っかかってくる、君んとこの楓ちゃんどーにかしてくれる?」

「知ったことか。お前には他に可愛がってる女の子がいるだろう、ちょっかいだすな」

「あの子たちは好き勝手してるよ、私は知らないね」

私の生き方に惚れっぽい男なんて眼中に無し、今年の目標は三枝を囲うことだったりする。
言っておくがレズじゃない。
けれど、氷室と蒔寺のガードで夏休みも手を出せなかったし気軽に話せるから囲っておきたいだけだ。
天然のかわいい子だから好きなんだ、男でもできたらあのタイプは私から離れていって話もしなくなる。
汚い手を使っても良かったがクラスメイトを二人同時に相手するのは面倒だったし、昼間は遊び半分で
喧嘩口調でしゃべっているのが心地よかった。本気じゃなかった。

「次の標的にかえたらどうだ?どうせ軽く捨てるのだろ?例えばそうだな」

「おや酷いことを言う、三枝に聞かせて感想聞きたいなー。
氷室の冷たい肌の感触とかー」

「やめろっ、近づくな」

「はぁーん照れてる?でも残念そろそろ行くわ、保健室って虎に言っておいて」

「ん、分かったよ・・・」

夜になったら本気で街に火遊びをしに行くので、昼間は保健室の住人になっていることが多い。時たま間桐の
兄がとなりでお楽しみだったりしていたが、無視していたら胸に手を伸ばして来たので貧相な所に蹴りを入れ
てやるとぎゃーぎゃー女とわめいて逃げていったりした。

「おやあんたエミヤの、うちの副部長に何かしたの?」

「何処の部に所属してんのか知らんけど、頑張ってたよ♪でも反則負け♪スポーツマンシップに則ってね」

「あーいいんだ。痛い目にあったって遊びで弓道してる奴だからね、性格悪いし」

「なんだそうなの、私みたいな女の子に手出すだけあるね。
相当捻くれてるなあ女の愛し方ぐらい身につけてからじゃないと選別眼養えないってのに」

男の誘いかた身についてるシオンからすると間桐慎二はまだまだ尻の青い男だった。
美綴綾子、そう名乗ったので女那須与一みたいだと思った。
シオンは自分の目指す理想の体形と身長にかなり近いんじゃないかと服の上から観察する。

「あんたに手出すなんてヤケドじゃすまないってのに、慎二のやつ増長しすぎ」

「確か妹がいたよね」

「やめて。いいやつなんだ毒牙にかけるってなら私が相手になるよ、それに藤村先生の教え子さ」

「ちっ・・・・」

情に厚いというかタイガーが絡んでくるなら今は一歩引かなければ、最終的に勝てない。
あまりカタギばかり相手していても弱くなっちゃうし。

「構って欲しがったの兄だけだし、いーよ迷惑はかけない」

「わかってくれたの?ありがと」

「礼言われることじゃない、じゃな」

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幼かった頃・・・世界が綺麗に見えていたのは一瞬だけだった。
病院から大きな家に来て満足し、知り合いに藤村さんという大家族がいると誤解していた時までは自分は
なんて幸せだ。幸運だと思ってた。
それも半年で考えを変えたし、私の性格も変わった。
藤村さんが極道をやっていて組に出入りする人たちは、恐い人だと知ったし私の大きな家も事情ありの
屋敷だと分かった、時々やってくる別棟を使ってのお話とか取引では切嗣も参加しいた。
それが悪巧みだと知って驚きもした、私には来た人が教えてくれた。

「外道だよなお前の親父って、お前より小さな子をはした金で買い叩いてカルトに売ってるってさ」

私は素直で利口な子だ。
知らないし、聞かなかったことにした。

「藤村さんにかわいがってもらってるかい?シオン」

「うん、やっと当てたよ。今度面白いハンティングに連れて行ってくれるって、人間も撃てるのかなー」

「どうだろうね。もしかしたらただのショッピングになるかもしれないよ。
そしたら僕も正義の味方として、貧しい人たちの子どもを救いに行かないと」

「あははー面白い、頭のおかしなお金持ちの味方って、正義の味方って言うのね。
たべられたり生贄にされちゃう子は可哀相だねー♪」

「しょうがないよ。貧しいのは悪なんだから。人のものを盗んだり
しないようにお金をあげないと。その代価として子どもを買ってでもねーあははー♪」

ぶっとんだ愉快な親子の会話をしていたと思う。
いつまた孤児院に入れられるのか、お金持ちに売られるため躾られるのか毎日考えて暮らしていた。

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またある日、突然やってきた綺麗な宝石を身に付けたお姉さんが私に言った。

「このジャリ!その貧相な身体でキリツグを咥えみやがって、腑抜けた殺人マシンなんてゴミクズ以下だよ!」

「あんなのが欲しいならあげるけど」

「その顔の火傷・・・なんだ勘違いかい。てっきりアンタと逃げたとばかり・・・まぁいい帰るまで待たせてもらう」

女の顔は命、髪は命、一体幾つあるのか知らないけど醜い火傷の痕を見て納得する女。
酷い言いがかりだ、私の魅力はこんなもので損なわれるんか?
家事能力は高いと自負していたし、気立てもいいし、男をたててあげてる・・・この年でおさんどんさせてる親のせいだ。

裂け目と牙をむき出して悪魔のように恐い顔で肩に乗せてる猫が喋った。
私は幼心に・・・珍しい猫さんだからきっと高値で売れると思っていたのだが相手は気がつかなかった。

「よくもこんな姿にしてくれたな、ちんけな雇い魔術師が我が家の血筋たちを売り飛ばし消し去りやがって!
その血で払ってもらう、恨み果たしに来たぜ!切り刻んでネズミの餌にしてやる、出て来い!エミヤ!」

「・・・変な猫」

けど私は子どもだから、そう言った奴らに脅されて仕方なくキリツグの部屋に案内して不意打ちをする。
後ろから頭部に二発ずつ打ち込む、油断したのが悪いんだよ。
断末魔あげる猫と宝石女は倒れてビクッと痙攣したあと死んだ、大きな風穴開いた頭部から飛んだ血が顔にかかる。

こんな風に昔の因縁を面倒くさがる親父に処理を代行させられることもあった、キリツグは耶蘇会にも
関わりがあったらしく、殺生の後には十字を切りアーメンと唱えていたので何となく私も真似る。
意味は知らない。
別に恐いとか駄目だとか知らされるまで、知ってからもどうってことなかった。人間は生もの殺し食べて生きているのだ。

「やーやーごくろー。うわ汚いっ!ごしごしっと。
あーまた派手に腕上げたなぁー、血が繋がってないけど我が子らしくて良い!グッド」

「この脳足りん頭撫でるな、コラ人の服で付いた血糊を拭くな」

その後、血臭漂う部屋で薬きょうでおはじき遊びしてたのは孤独な思い出だ、ある時にタイガーが
姉面して怒ってきたのでやめていたが、言うこと聞いていたのは冷たくなった彼らを隠れていた
キリツグが始末していたからだ。・・・私を囮と実行犯にしたのだから綺麗に後片付けしないと怒ってやった。
不思議な気持ちになれると藤村の若い、今は消えた兄さんがくれた薬を食事に入れるぐらいに。

別れの最後の日はあっけなくやってきて、すぎていった。

「目指していたんだ」

「何を?」

「かっこいい正義の味方ってやつ、みんなにありがたがられてチヤホヤされる。特に可愛い女の子にね」

「・・・ああそう、それでなれたのかよ」

明らかにアンタ悪人だろうに。世迷言を聞き流す。
立派な大人のいう言葉じゃなかったので胡散臭そうに見ていたが、もう手遅れのような気がしたので
適当に相づちをうって先を促した。私はいい子なのでそんなふうに親孝行する。

「うん。若い頃は馬鹿なこと言っても誤魔化しも効いたけど、おじさんになったら渋いセリフで
お土産も辞退しないとならなくなってね。折角手に入れた可愛い子も長続きしなくなってきちゃった」

「そうだろうね、あの虎は最後の挑戦なんでしょ?」

魔法使いだよーあははー、と藤村の爺の孫。
女子中学生を相手に必死だった親父には大変失望させていだきました。

「まさか、違うよ」

お前の言動不一致は承知済みなんだが・・・このホラ吹き。
私を引き取ったあと、一体どうやって育てるつもりだったのか言ってみな。藤村の爺の所のお手伝いさんに
家事を教えてもらいに行った。家の修理は組の若い奴らと一緒に私が汗を流した。お前は爺と将棋してた。

酷いものだったと思う。
家庭つくれない不能の癖に女に手出しては、修羅場を作るから私が荒れるのも当然だ。
駄目親の見本みたいなバカヤロウだったから、ピュアな私は冷めた夕食を投げてた。涙の味つけだ。

「こんな時間まで何処で誰と飲んできた!この大馬鹿ヤロー!!
死ねぇくたばりやがれっ、ちょっこまかとネズミかゴキブリか?!殺す!」

「ごめんよー。今日は公園で寝てくるから勘弁して。じゃ、じゃあよろしくね。
シオン、明日は馬を見に行って来るから帰らないからー」

私が切れて家を破壊し始めても放って競馬に行くと言って逃げた、回数は片手で足りない。
最初の頃は一応、魔法とか言ってライターで火の玉作ったりして不思議現象で魔法使いだぞ〜と
恐がらせて父親の威厳出そうとしていたが、私がドスを持ち出すようになると逃げ回った肝玉無しだ。

「二度もそのちゃちな手品がきくか!その手焼いてやる、無能のゴミヤロー!コラ!」

舐め腐りやがって、手品で誤魔化そうったって許せるもんか!
堪忍袋の緒がブチンと切れてた、頭に血がのぼって破壊衝動に身を任せた。

「はぁーはぁーはーぁーー」

気が付いたら家を半壊させてた。もの凄い怪力に少し落ち込む。とても女の子とはいえない。
けど、これでいい。
新しい女や昔の女がやってきて修羅場作られるよりは一人で、ガスと水道直したりしてサバイバルして
いた方が気が楽だ。今日は庭にある蔵にでも寝止って修理は明日にしよう。

結局、親父はそのまま帰ってこなかった。
馬に蹴られて死んだのだろう、遺書らしきものは何処か外国から送られてきた死体解剖の結果報告のみだ。
たぶん馬で負けた金を取り返そうとやばい人に金借りて、女を泣かせて作らせた挙句・・・海外逃亡して
ひも生活を外国でも楽しんでいたのだろう。
後日この推理は八割方、調査した藤村の爺に当たっていたと言われた。

「あんた誰、ここわたしの家なんだけど」

「衛宮切嗣の遺産を渡せ、貴様には勿体無い」

初対面の手品師にそう言われて、はいそうですかと渡せるか・・・つーか借金しか残さなかったんですけど。
それに黒マントに白い仮面してお前は何処の阿呆だ。

「娘がいたとは知らなかった。お前は魔術師か、まあいい死ね」

あーあ、手光らせてる。
魔術師とか魔法使いとか言うし、親父は頭のネジがとんでるのとしか会話できなかったのだろうか。
それは意外とかわいそうなのかもしれないなー。
でも私にも一言いって欲しかった。
仮にも親子だったんだから恥ずかしいだろうけど、女の子にはいえない病名での入院歴があったとか。

以前、親父に教えられた手品で一度家を燃やしそうになったことがあった私衛宮シオンは、
だから私衛宮シオンは、そいつを思い切り殴り飛ばした。
数メートル飛んでいく奴は見事に体勢を立て直して火炎を飛ばしてきた、いくつか光が私の身体を
通過していったけど、プラズマを知らないと恐がるとでも思っているのか?
困った大人だ。

「うぐぉっ、何故呪いが効かない?」

「・・・全くどこの宗教団体よ。もう取引はちゃんと済ませてるって雷河も言っていたのに・・・拳銃は
掃除に出しちゃってるし、切嗣は死んじゃったし藤村組を頼るか」

買い物の帰り、護身用のナイフしか武器らしい武器はない。
ちょうど手にもってた塩の袋切り裂いて投げつけて目潰しにして、走り玄関に行って傘立てから1本手にとる。
後ろからとんでくるイヤにピカピカ光る火を避けて、傘を盾にして近づく。

「だからもー、うわっ、火遊びすんなよーいい年して」

「戦いなれているとは・・・衛宮め、後継ぎがこんな小娘だと侮っていたぞ。こうなったら氷の」

「はい死んで」

「け、げ・・げげ、がっ」

ぐさりと刺さる傘。
あんたが何か知らないけど、私は正義の味方でもなければ悪の親玉でもないから悠長に待ってなどいない。
喋ってるのって隙だらけでしょ。
キリツグもこれで随分苦労したらしいよ、時計を進めたり遅くしたりするマジック・・・こゆーときせいぎょ
漢字は苦手なのよ。ふん。それでもわたしには通じなかったけど、ぶん殴ってやったよ?
女子ども限定の平和主義者だったから、家庭内暴力反対なんて言わなかったけど。哀れだったねー。

脚力には自信があるし気合を入れると何故だか超人とか言われる私、伊達にヤクザ数人ぼこっていない。
体格では学生ではある為に油断も誘えるし・・・なんていうか無敵だよ?
結論、職業としての魔法使いは不便だ。
あまり口に出さないほうがいいよ、恥ずかしいから。
私には誇れるほど賢く見えない。
むしろ同い年の勉強できる子の方が賢いように思えて仕方ない。

「傘ひとつおじゃんになったな、まだ使えるかな」

開いてさしてみると、赤い液体がピトッピトと垂れてきて落ちた。雨漏りなし。よし。
ぐさっぐさっ
何度か刺してとどめを刺しておく、火遊びしていたしダイナマイトでも身体に縛り付けていたらイヤだなー。
念のため足と腕もボキッと折っておいた。
警察が来る前に携帯で、その筋の動いてくれるやつに電話して来て貰い謝礼を払う。
また出費だ。
お得意さんを二人ぐらい増やさないと首回らないかも、身体はひとつしかないんだけどねー。
他の子輪しますかー。