コードレス電話片手に、ぽかぽか陽気の庭先に来ている近所のネコの相手している景太郎。
妹のカナコもよくこうしてるが、フワフワとぶ不思議な黒猫も時々混ざってるらしい。
・・・祖母のペットかもしれない。
「やっぱり合格してから東大行って見ると違うのかな、発表する場所も見つからなかったし
人がいっぱいいるのかと思ってた。
あ・・・でね占い師?みたいな人には占ってもらえなかったんだ。そうなんだよ、だからはるか・・さん」
「ん?なんて言おうとしたんだ景太郎?兄貴たちに私の口から説得して欲しいんだろ、女心ぐらい
どーにかなる何て軽く考えてるんじゃないぞ。
それにな普段はただの通路だ合格者は・・・まぁ両親ぐらい説得しないと厳しいぞ。
・・・それで心当たりはないのか?お前色々約束しまくってるだろ、東大に旅館に他には私に貸しがいくつか」
たまたま、ひなたばあちゃんに用があるとかで電話してきたはるかおばさん。←コラ。
・・・ちょっと言い直します、おねえちゃん。・・・。
で、まだ頑固に反対している両親のことを東大卒業者に話してみる。
「はるかさんはどうだったの?反対とかされなかった?
今、何処で何してるんだっけ・・・あ、後継者」
「ほぉーーーっ、死にたいのか・・・だれが私とあの人が、くっ!
あいつか・・いじわるばかりするばあさんだ」
今でも十分若いけど、ヒナタばあちゃんの血が一番濃く受け継がれてると父さんに聞いてる。
なんでも、すでに七大陸を駆け巡って国際的な犯罪組織とドンパチしていたらしい。
すごい眉唾だが、小さい頃よくしてもらったし、自分も懐いていた記憶があるので頼りがいあるのは知ってる。
あと二つ名を持っていると聞いたのがそれ、コタツ話しにばあちゃんが名づけたのは秘密だと言ってた。
仲・・・悪いのかな?いじわるばーさんとか呟いてるし。
「ま、いいさ。若気の至りだし誰に聞いたかも大体わかる、カナコには言うなよ。化けて出そうだ。
電話越しで良かったな、景太郎。
それはそうとまだ兄さんはいるか?また代わってくれないか、ちょっとしたことなんだが
思い出したら聞いておきたくてな」
「いえ、十分ガクガクきました。冷えましたんで父さんに代わります」
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景太郎(再会
和菓子屋に顔を出してから図書館へ行くことにした。
ばあちゃんや母さんに声をかけてて玄関に行くと、ついこの間できた妹がいた。
「行ってくるよ。いい子にしてるんだよ」
「はい、いってらしゃっい兄さん。あの」
「ん?」
つい頭を撫でてしまうのは猫かわいがりできない男らしい照れくささで、別にいつもしてるわけじゃない。
「・・・」
「ああ、そうか?!わかった。
早く帰ってくるよーっ。ちゃんと見つけてくるからねー」
「え?待っ、兄さん・・はい今日は待っています。はやく帰ってきてくださいね」
付いて行ってもいい、と言えない加奈子をどう誤解したのか元気出してとび出し行ってしまった景太郎。
以前は塩が切れてると誤解し、つい先日は何故か可愛い雨傘を買ってきていた。
髪飾りとかプレゼントする練習だと父に言われても、男子中学生が恥ずかしかったろうに。
なかなか妹思いの兄ではあるのだが、失敗は愛嬌、そんな兄と会えたことを加奈子はいないと
思ってた神様に感謝する。
「はあっはあっ、何処にあるんだろ・・街の中にあると思ったんだけど」
当初の目的、図書館をすっかり忘れている景太郎。
商店街をまわって二回ほど同じ質問を同じ人にして、とぼとぼ歩いていた。萌え。←またへんなものに目覚めた。
「うせもの占いで探してあげます」
「あっ、ツルの占い師さん?どうして」
「流しって言うたやろ、そのメガネでぽやっぽやっとしてはるのは景太郎はん。
何やアンタの近所だったんか、こない偶然とは言えまへんなあ、運命ってあるんやねえー」
「しみじみ言われても・・・えっ、えーと。そのあれは恥ずかしいですから、もうそれにはじめてが
女の人からって・・・え・・えっえっと、そうだ。別に失せ物違うんです、妹のカナコに」
ファーストキスを奪った人。おデコだけど。
思い出して頬赤くなっていたのをさますように、一歩後退して説明する。
「妹がいてるんか。うちと同じやね、でもその子とは契約してあらへんのやろ?
この前でぼほちんにつけた口付けのまじない効果ないようやし案外奥深やね。
・・・師匠んとこ行くしかないやろか」
「えーと、ツルさん?
もう俺行きますね、早く帰るって約束してるんで見つからなかったって
言って謝っておきますよ。占いはいいです」
がしっ
「まいどおーきに♪はじめての常連さんやから鶴子、そう呼びや。
やっぱり気になっとったけど、景はん女難て言うてましたけど加奈子さんとか身近な女性と
大きな決まりごと、家系になんやあるんとちごうますか?それで悩みはってん?」
「え・・・約束は、東大に行くって約束はしましたけど。
両親に反対されているんです、それでこの前も実際行ってみて決意固めてきたんですけどね」
「まかしとき。即解決したる」
前回のようにビルの隙間、有無を言わさずに連れ去られた。
「また占いでって、あれ?
ツルさん道具はどこにあるんですか、お札とか使うんですか?」
「ま、慌てんと一太刀でな。斬魔剣 無見、解決っと」
景太郎が何も無い袋小路を見て振り向く。その一瞬で抜き、切り、収める。チンッ
「んっ、外したんか?変やなあ・・・。
んー、どうでっしゃろ。まだトーダイ行きたいどすか?」
「当ったり前でしょう。どーして切りかかったりするんですっ。
しかもはやくて見えなかったし、もう帰ります。帰してください」
どこも痛くないが、占いじゃないの知って警戒している景太郎に問い掛けてみて理解した。
「・・・そーか、間違えとったのはうちか。
あれは景太郎はんの精神に寄生するものやない、うちの剣で切れんもんは真の心そのものやないか。
ああ、だからこそうちらに再会があったんか」
産まれた時に歩むと言われた道、そこには出会いと別れが青山鶴子を育て一期一会ではない運命に
結ばれると言われた。久しく考えなかった人生設計に乱入してきた楽しみを持つ人との再会、無茶もしたくなる。
「おもろいなあ」
「って、手切りませんでしたか今。・・・あれ」
「切ったんは邪気どす、でもな違いました。
うちの勘違いおしたから謝ります」
ごめんなさい。と頭下げられて、恐縮してしまう景太郎。
「じゃもうおしまいですよね、帰り」
「帰しまへん」
「はい?」
「じぃっくり祓って、時価と出世払いの代金おかわりコースやね。
ほなうちと修行まいりまひょ」
脱兎。
今回は経験がものをいい逃げることできた、そのあとを追い駆けてくる。
「うわー、ばあちゃんと同じだったなんてー」
「待ってーな」
暴走する祖母と似ていると思えた途端、体は正直に逃げ出す絶妙のタイミングで動けた。
前回は色気に痺れていたが、浦島景太郎は素人ではなかなかできる。
「早いなぁ、どーこ行きはった」
雑居ビルの裏、二階曲がると既に姿見えなかった。
こんな獲物は久しぶりだ、楽しそうに笑う鶴子は魔物追うときのような高揚をおぼえる。
一方、逃亡することには慣れていたし近所で地の利もあったが
落とし穴も用意されていた。
「もう追って来ないよね、でも待てよツルさん俺の家の住所知ってるかも
和菓子屋で浦島は有名だからなあ・・・しばらく帰れない。イテッこんな狭い道通るんじゃなかった。
あれ・・・変だなこんなところにどーしてあるんだ、しかもレアっぽいぞ」
プリントクラブ、もう自宅近くは制覇していたはずなのに。
東京に出て行ったときも粗方有名なところは撮ってまわった、ささやかだが男子中学生の趣味らしくない。
見つけたからには是非一枚撮りたい。
けど、まだ近くに居るんだ逃げなきゃ今度こそ帰れなくなりそう。修行って何か知らないけど。
「アハ、捕まえましたで」
「あー迷ってる場合じゃなかったのに、うわーん!
どーしてこんな所にプリクラがあるんだよー、婆ちゃんの罠だー」
「ぷりくら?ほう?」
「あ、集めてるんですよっ!悪いですか、男が一人で、寂しいとか言うんでしょ」
「寂しいんなら一緒にどうどす?」
何故か二人でとることになってしまった。
頬ずいっと寄せて、まるで仲の良い姉弟のように。
「景太郎はんはホンにかわいいおひとや、もう逃がしまへん」
不意打ち。
「わわっ今っっき、きす・・っっ」
ぼぉっと火照る顔・・・出来上がったそれを慌てて渡す。
頬にキスされたところを撮られてしまった、宝物になるだろうけど危なくて持ち帰れない。
「貰ってよろしいんか?目閉じてください代金どす」
素直に閉じるのはどうかと思う。
けど仕方ない、ずっと捕まりっぱなし、抱擁されっぱなしなんだから、とまぶたに口付けられた。
でも何故か急にまぶたが重くなって開けていられなくなってきた。
「ええ夢みいや寝とるうちに出発しときますえ着いたら・・る・・・・よっ・・・」
ドコに?
決まってる武者修行の・・旅?・・・えぇ〜・・Zzz