気が付いたら白装束に着替えさせられていた。
シクシクシク。
泣きベソかいてる景太郎、和服に下着は、まして日本伝統固く守ってそうな鶴子ということで
・・・・・現実逃避してみるが目の前には川。
流れる先は消えてて滝になっている。
身を清めるらしい。
「めそめそ男がしなはんな」
「目の前の現実が手を振って遠いところに行っちゃってるのに・・・泣けずいられますかっ」
「よーやく気がついたんか、清水の舞台から飛び降りる準備は出来てん。
なーにあそこも生還率は高いんやこの鶴子の胸に身預けてみぃ」
「それでドコなんですかここは。何で服、それでどーしろと」
ゴドドドドッッッと凄まじい音、落差が数メートルどころではないし水量も多すぎるんですが・・・。
武者修行で死んだらトーダイ目指せませんよ?鶴子さん。
「あの、普通、滝打ちって瞑想するんじゃないんですか?」
「一気に108の災を落とすんどす、ついでに浦島はんの縁絶ちせへんとね。
手間と時間節約しまっせ。
もーどこ見てはるん?景はんのえっちぃ煩悩退散どすえ。ほな、おはようおかえりやす」
「あの何かひも、とかないと流されたり沈んだままみたいな嫌な予感がするんですけど。
いくらなんでも高いですのでぇぇぇ、いやぁーーぎゃあーーー」
ちょっぴり過激に激流だったらしい、滝壷に落ちていって浮かんでこない俺を助けるため
飛び込んできて引っ張りあげてくれた鶴子さんを見た気がした。俺の手を離さずにいてくれた。
「・・・・白・・・・はだわい・・・・がくっ」
それは、よこしまな妄想だったかもしれない。その罰か、三途の川向こうに綺麗なお花畑を見た。
実は結構経験済みだったりする、いつもひなたばあちゃんに引っ張られ戻されていたけど。
その次の日。
気が付いたらまた装備万全だった・・・・シクシクシク。
男の子だからって、だからって・・・結局山を登っていた、霊峰と呼ばれる山脈を幾つも乗り越えた。
「午前は晴れたのに天候変わりやすいおすなぁ、吹雪は切り開きますえ、きばりや!ありゃ?
無理だったみたいやわ、おまけにこの地鳴りはなんでっしゃろ?」
「ドゴゴゴゴッッッって地鳴りじゃなくて雪崩じゃ?今度こそ死んだ。死ぬ。うわーーーーーっ」
どうも三日間寝込んだらしい。
晴れて朝日差し込むまで暗闇の中、吹雪去るまで洞窟に避難して暖めてくれたことを憶えてない。
でも・・・衰弱激しすぎる霞む意識の中で思う。
この人、お肌つやつやだったりするのは何故なんだろう?がくり。
「わかってるくせにぃ。おませさんやなー景タロはんは」
/03
鶴子(修行
仕上げに闇夜に紛れて、舟で滅多やたらに早い海流にのって四国に上陸。
人里離れた霊地を目指し獣道進んで、48霊場めぐりの裏街道に入って三日目。
「ここや。着きましたえ?魂だしてる場合やないどす」
「あー・・・はい」
疲れて頼りっぱなしだったので反論する気持ち失せてた、まともに鶴子さんの顔が見れなかった。
恥ずかしくて、加護がどうとか言っている話の内容は右から左へ。東大がどうとか言ってた気がするけど。
「ここで不死身に近いもん身につけて東大行くまで願掛けしとくんや、そうすれば景はんが
約束と引き換えに幸せを手にすることもできるようになるんや」
「とにかく挨拶してお邪魔しましょうよ。・・・ごめんくださーい」
なにやら突然ぬっと現れたような老人、何処となく雰囲気がだれかに似てた。
夕飯時だったこともあって出された料理を口にしたところ・・・何時の間にかこうなってた。
「そないピーピー泣きなはんな」
「またですかー・・・ううっ酷い。
だってこれは一体どういう状況なんですか?ゴーゴー火焚いて、怪しすぎの祭壇の中央に
据え付けられてる俺は生贄?サバト!?修行と言ってた今までのは全部料理の下ごしらえ?!
鶴子さんの裏切りものーっ!」
「まあ・・・たべると言われりゃ、そりゃ、間違いやおまへんけど(ごくりっ」
鶴子のほほ笑みはいつも見てきたが今回のそれは言っては何だが似合わない。柔らかくなく、深い。
目に力入ってて背筋ぞくりとさせる。
こちらの反応に気がついたのか慌てて言い直すが、視線さ迷わせて言葉ぽつぽつ言い訳にしか見えない。
まわりの火のためだけではない頬の紅潮が恥かしがっているのだと示していた。
そのあと、思い切り勢いつけて御託並べ。
真剣な顔で誤魔化された。
「しもた・・・思わず。
これは、これはやね・・・。
景はんの為ですえ!
並大抵やないことに立ち向かいますやろ!
パワーアップが必要や!
でなければトーダイは討ち取れへんで!!
まぁ・・・・・内助の功や(はーと)ややわぁーもー、この幸せもん!!」
あわせて照れ隠しに突きを見舞われ、見た目より強烈な攻撃だと理解していたが意識飛ばされる。
「倒すんじゃなく、合格がっ・ぎゃぴーーー・・・はにゅー」
「ほな始めましょか」
「あいかわらず問答無用なのだな青山鶴子、まぁー本人も納得していたから何も言わん」
意見とか抵抗とか、景太郎の意識が戻るまでぽいっと棄て置かれることになった。
ぽけーっと気絶してるが構わず儀式終える。
「おはよーさん、起きてや」
「ん・ぁあれ?」
ぺちぺち頬をはたかれて起きる景太郎。
特に何も体にされていないのを不思議がるが、上から鶴子にのしかかれたまま。頬に両手置かれたまま。
起き上がらせてもらえない。
傍らに置いてあった刀は抜き身でへたな抵抗はできない。素手でも同じだろうけど。
「日本有数の呪術師のセンセにお願いしましたんや、でも終わりやあらへん。始まりや。
ビシバシうちが鍛えたるさかい覚悟しといてや。
けど・・・女やもん鬼違いますから、あのな、そや!
お代立て替えたる代わりに景はんのハジメテをおくれやす、わやどすか?」
「駄目っっこ、っ、刀を首に突きつけないでくださーいっ、ひぃっ冷たい。刀動かさないでええーーー」
駄目・・・と言うと反転眼でつつうーと流し目される。加虐的だ。
着流し肌蹴させられ指這わせられて、景太郎には鶴子の本気を止める意気地なし。
先立つ不幸をお許しくださいなどと、父さん、母さん、加奈子、約束の女の子、ついでにばーちゃん。
報告ついでに祈る景太郎。
「お邪魔虫は出て行くからあとは若い人に二人で頑張ってな」
「ハイな先生ありがとう、うちかて我慢限界やってん。
初めてなんは同じ、トーダイ祓って祝言あげたる」
「はっきりと記憶してない無意識下でもそのオナゴとの約束破れないほど、単純な呪いなのだがね。
最早、ちょっとやそっとでは景太郎は怪我病気に負けないはずだ、鶴子が天国か地獄に連れてって
くれても帰ってこれるて。ああもぅまだ諦めへんとは業が深い」
気を利かせて退席してくれる日本の呪術界できっと一番偉い人。あの約束は自縄自縛、呪いとまで言われて
しまうと悲しいが、馬鹿には出来ない一言だと思えた。でも止めてはくれないんですか?
「あわわわ、落ち着きましょうよーっ」
「ウチはようさん冷静どす、待たせんとはよう寄越しぃ」
目すわってるのに何処が!?ドキドキ熱に浮かされてますよっ。
じたばた
「観念せい♪」
「ああぁぁぁぁ・・・」
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「兄さんが家出?」
そんなはずない、でも家族に反対されて家を継げと言われていた兄さん。勢い余って出て行くにしても
当てなく一人で実行できることじゃない!おばあちゃんは力を貸してないと言うし・・・わからない。
でも、旅館をしようと約束していた。
今は女子寮になってる日向荘に行こう。
わたしと兄さんと約束する前、他の女との夢物語り・・・本当に癪だけど東大を目指せば絶対に会える。
カナコに東大目指す理由ができました。