高性能でも、また多機能でもない見ため実にアナクロな時計、それが火星時間で十八時四分を指した。
テンカワアキトの所有物だが、持ち主はナデシコに乗船してから彼を全財産詰めたバッグの奥底に仕舞ったまま・・・。
それは仕方ないかもしれない。
地球で作られ地球の時間で動いている彼には、火星の朝夜には合わない・・・オモイカネのようにコミュケに気を利かせて
地球時間と火星時間を表示できない。そしてナデシコ内ならウィンドウを表示できるなど、高性能多機能では無いのだ。
持ち主はと言えば、真面目に厨房で働いている。
主にネルガルの、火星に居た人たち乗せてナデシコの人口が二倍近くになった今、ナデシコで一番忙しいのは食堂かもしれない。
個人としてならばイネス博士以外いないけど。
そのイネスはといえば、ブリッジからホシノルリを連れ出して
テキパキと整備員に指示出したり、まだぐずるプロスに説明したり、妖精三人集めて講釈していた。
事前にラピスとアキトには木連兵器側の作業に徹するように言ってあるので、ソレはルリの説得と言って良かった。
生徒三人、実質一人の講義を聞きながら思い巡らすルリ。
・・・ホシノルリ、彼女のオペレーターとしての二ヶ月。
それはオモイカネと過ごした二ヶ月でもあった。
そのオモイカネに、怪しい物を取り付ける事にルリは何処と無く乗り気ではなかったが、最後には折れることになる。
>
>
>
>
火星に夜が訪れようとしていた。
火星の夜と言っても地球と大きく変わらない、ただ月が無いだけだ。
人工的であっても大気があり星が瞬き煌く、アキトにとってはそれが当然のほぼ一年ぶりの生まれ育った故郷の夕闇。
しかし、感傷している暇は無く食堂は通常の倍の料理を用意するのに忙しかったりする。
いつもならエステを収容している場所に、イネス達が持ち込んだ兵器をナデシコに繋げる作業進めるのを見ながら
気がつかれないよう横目で隣の人物観察をするルリ。
「・・・・」
「終わり」
ラピスもエリナからに聞いた『アキトの大切な人』に興味を持っていたので作業を終えると振り向き
会話しようと思っていた、ルリと視線が合う。
こんなに近くでホシノルリに会うことはなかった、こんなに間近で自分と背丈で同じ光色系統の
容姿、瞳の虹彩に映ると、鏡を覗き込んだように感じる。戸惑い、少しの間。
どうやら自分は火星に来てから、戸惑うという事を学習してしまったらしい。
アキトと同じでいつも冷静で居たのに。
「・・ルリ」
「え・・はい、なんですか?」
「ドウシテ?ずっと見てた」
「・・・はい、失礼でしたか?スミマセン」
「気にしてない。ところでオモイカネの機嫌は良い?ワタシと話あまりしてくれないケド・・・」
「・・・そうですか?」
「ウン、会話続かない、言葉少ない。仲良くしたいのに」
「・・・そうですか?・・・そうなのかな?ところで・・あの・・ラピスさんは火星のネルガルで生まれたんですか?」
「ウン、ネルガルの研究所で生まれた。私はアキトの、ん」
「はぁ、はぁ」
ラピスが『自己紹介』しようと口を開いた時、それを何度もやめるように注意した人物がラピスの口を抑えた。
少し滑稽な程慌てて・・・そう言えばこの人、テンカワさんと同じ名前でしたね。
でも名字無く、ただアキト。それだけ。
名前は同じでも、彼女はテンカワさんと似ても似つきません。
性別も違いますし、何から何まで・・・髪は火星の人たちをまとめていたイネス博士と同じブロンド。親子ではないそうですが。
・・・保護者の博士に彼女を、アキトフレサンジュで登録しても
良いか問い合わせた所、本人に直接確認してと返答頂きましたから丁度良い機会です聞いておきましょう。
誰に対しても愛想振り撒く艦長とは対極に居る人、私やラピスとは違うものを持っている人。
でもラピスラズリの口を抑えている手、その甲にある遺伝子強化体質者である証しは私と同じもの・・・でも何処か私と違う。
「ルリ?」
「・・」
「なにかよう?」
「あ、はい。・・・・・えっと、なんて呼んだら良いですか?火星からの乗り込み名簿に名前を登録しておきたいのですが」
名は体を表す、というのなら男言葉あやつる彼女には男性の名前が似合うのでしょうけど。
さすがに艦長がいつも連呼する名前を私は躊躇しました。
回答あるまで待つ私は、手を伸ばせば頬触れるくらい間近の距離でまた観察しつづけます。
黒服の隙間から見える肌と薄桜色の唇、視線を上げると黒いバイザー・・・そういえば素顔を知りませんでした。
「・・・好きなように、ん?」
「ではそうします。それはいつもかけているんですか?オモイカネにデータ入力のために取って頂けませんか?
あと、登録する名前はアキトフレサンジュでも・・」
「それはやめてくれ、イネスが許可とらなければならない名前など・・・・・いや、その話は後でも良いか?」
「はい、構いませんが・・・なるべく早くお願いします」
マシンチャイルドである、という事実を隠すというのなら親子と言えば良い所ですが一部で有名すぎるフレサンジュの姓は相談が必要でしょう。
他にも何か私には及びもつかない事情があるのでしょう・・・なのかも、いえたぶんそうなのでしょう。
それに・・・マシンチャイルドの完成形は私のみ、同世代の成功なんて聞いた事ありませんでした。
『アキト』も研究者の名前を借りているだけかもしれませんから、気分的に使いたくないかもしれません。
名前は大切です。私も音が大切なように。
「あの・・」
その事を深く聞こうとしましたが、黙っていてとジェスチャーされ、そして風のように走っていって・・・
向かう先に目をやると物陰にウリバタケ班長・・・・・・そうでした、彼女はイネス博士と共に忙しい人でした。
仕方なく私はラピスさんとその話を進めましたが、生まれなど重要な過去の情報は拒否され会話は続きませんでした。
>
>
>
>
「あれ何して・・」
「しーっ、ジュン黙ってろ・・・アキトてめぇもだ」
「え、え?」
ウリバタケさん、作業完了の報告に来たんじゃ・・・イネスさんは怖いし話し辛いのかな?
ユリカに火星の人たち全て収容完了って報告しに来たんだけど。
「うーんいいなぁ、あの三人。興味あるだろう?ええ?」
「僕は別に」
「なんだとぉ〜?お前はあの艦長さん、まだ諦めてなかったのか?」
「ええまぁ、ユリカは何処に居るんですか?テンカワ君がここにいるからやっぱり入れ違いに食堂に行ってるのかな?」
「またあいつ迷惑かけてるのか?今めちゃくちゃ忙しいからホウメイさんに叩き出されてるかも」
「はは・・じゃ、早く行かないとテンカワ君探してどっか行っちゃうな」
「はーっ、俺達は仕事中だってのにたまらんな。マジか!?嬢ちゃんは気楽でいいねぇ、悩みなんてないんじゃねぇか?
博士の運んできたアイツは気難しいってありゃしないのに・・・それにしてもあの三人は絵になるぜ」
食べる間も惜しみ仕事している博士一同に、食堂からおかもち両手に持って来たアキトは呆れて
ユリカ以外、いまだに気がないジュンは、あぁそんなことですか・・・と。
「おい」
「あ」「あ」「あ・・・・・・・・」
いつの間に?
時間にして数秒もない、足音さえ聞こえなかった。
「ウリバタケ班長、待たせてくれるな。時間が無い」
「あ、ああ・・すまなかったよ。嬢ちゃん・・・そう怒らないでくれよ」
「・・・・ん。──行くぞ」
子どもに説教されて連行されて行ったウリバタケ、呆れて見ていたが自分達の仕事思い出し二人もその場から去った。
>
>
>
>
ユーチャリスを、私のフネとしていたラピスにはナデシコは物足りなかった。
単艦で艦隊を相手にするという状況は、幾度と無くアキトと二人で体験して来たが
相対する相手の数、主砲の重力波砲の威力や時空歪曲場の強度を知り尽くして臨んだ戦いとは勝手が違う。
初期のチューリップは建造に多大な資源が使われた戦略兵器、ヒサゴプランの時まで木連の技術は一風代わった
戦術兵器に転向していて量的にはデータ上では地球側の相転移砲に匹敵する兵器だった。
愛しの黒い王子さまには、もう再びつるぎを持てないのだ。
・・・少し不安があった。
相手が無人という事だけナデシコに有利だったのだけれど・・・。
「さーて、どーんと行っちゃいましょう!アキト、見ててねーっ」
「いやあ大歓迎ですな?これだけの敵を相手にしないと、火星探索はできないと博士はお考えですか?」
「そうよ、精々頑張って頂戴」
「じゃ遠慮なく、ミナトさん」
「私は私で準備しておくから」
ラピスは密かに溜息、それなりに人と触れ合ってきた一年・・・人への接し方、配慮も覚えた。
それでもナデシコの緊張感の無さ、余裕にやるせないものを感じていた・・・ここは戦場なのにと。
イネスの指示を受けて木星連合の無人兵器を戦闘態勢に移す・・・隣のアキトもIFS使って色々と操作。
「フレサンジュさん、大丈夫ですよ。ルリちゃん、グラビティブラストフルパワー」
「はい」
「広域放射を加減無しでぶっ放しちゃいましょう」
「大気の底ですからな、相転移エンジンの特性は地上戦には向きませんな・・けれどそれは向こうとて」
「いいから、さっさとやっちゃって」
「チャージ完了」
「てぇっ」
「やったぁ」
早くも歓声あげるメグミ、対してイネスはじっと待ち敵影確認まで息さえ殺す。油断はしない。
「ええ!?持ちこたえた!?今まではこれで」
「・・・ふ、ふふ・・・あはは、出番なし!とはいかなかったわね・・できる?」
「ああ」
「ウン」
「そんな・・・」
「敵のフィールドも無敵ではない、次」
「駄目よ、フルパワーで撃ったもの。チャージしてる時間ないわ」
「そうよ、さぁ急造だけど本領発揮して貰うからね二人とも」
イネスは瞳を蜥蜴に向けたまま・・・この事態に備えたとはいえ、
ユリカに言ったとおりの結果を出せる自信と余裕があるわけではない。
けれど慌てては、プロスやルリに不信感与えてしまうだろうから平常心を保つ必要があった。
敵を目の前にして取り乱していけない理由は、もうひとつあったが・・・。
「チューリップより敵戦艦、未だ増大。包囲網を築きつつあります」
「何よアレ!?まだあんなに入っていたの?」
「・・・入っているんじゃない、出て来るのよ。
途切れることなく、あの沢山の戦艦はきっと、木星付近の宇宙から続々と送り込まれて来るの」
ナデシコが敵に囲まれる成り行きを冷静に見つめて、それから・・・
風も波もない澄んだ湖のような心理状態を心がけながら、蜥蜴が有効射程内に入るまで待つ。
環境整ったナデシコとの相性がラピスたちと合うのか、不承不承加わったルリの事を加味して慎重になっていたイネス。
向こうの砲撃がガンッとフィールドにあたりナデシコが揺れた。
「敵性攻撃力が許容範囲内から逸脱、能力強化が認められます。上方修正された後のナデシコの作戦行動
成功率が大幅低下しています。艦長?どうされますか?」
「それってやばいってこと?」
「フィールドの出力低下、核パルスエンジンでもこれ以上維持できないようです。グラビティブラストは
撃っても効果認められないと思われますが・・・後退しますか?オモイカネは賛成しています」
「あと・・少し」
「・・・もぅ、駄目ねー」
「あーもぅ桁違いだぜなんだありゃーよ」
「私達が出てもひき肉にされちゃうよ〜、なーんか私たちおっきな罠仕掛けられたよねぇ」
「・・・終わりね」
「敵右翼を構成しつつ接近、来ます!自律防御作動、艦長?指示を」
「・・・トカゲの尻尾相手に諦めが良すぎるな、これが火星を甘くみていた結果か」
「私たち火星の人間を助けに来たのよね?でも反対よ、助けてあげるわラピス。アキト。いけるかしら?」
・・・じっと敵の動きを見つめていたユリカは口を開く、イネスの言葉を信じれない。
「ルリちゃん・・撤退を」
「ユリカ!?ナデシコは沈んだわけじゃない、ここを切り抜けないと」
「や、やぱっり迎撃・・・・・・いぇ、撤退します。プロスさん、目的地変更して下さい。
一番近くの13番コロニー跡では追いつかれてしまいますから、地形を考慮して赤道付近へ。
敵の左翼はチューリップからの補給に時間の猶予がありますから、突っ込んで振り切りましょう」
「待ッテ、あと少し・・接続、攻撃、イネス!」
「やって頂戴」
「ちょっと勝手な」
ナデシコ艦長は士気落ちているが生存の努力はする。先程までの元気を無くしたが的確に状況を把握して後退を選択した。
それを止めてイネスは戦端を開く。
戦争は専門外、でもナデシコを設計した自分にはこの状況からの脱出可能。できると理解していた。
それに逃走という形で火星の蜥蜴たちに別れを告げたくなかった。
「え?」
この一年間で死んだ・・・私の家族、私の友達、私の子にして親であった火星の人たち。
戦いの惑星に生まれ死んだあなたたちに、私の指揮で妖精が歌うレクイエムをおくる。
フラッシュバックする難民キャンプでの死、あるものは警戒線の不備で、あるものは蛮勇で、薬で、仲間の手によっても・・・。
息がつまる感覚、不快でたまらない。
諍いはなくなることはなかった、生身での人殺しは非力だと相打ちも不思議じゃない。
でも今は・・・。
蜥蜴に対するこの感情が憎悪ではないとは言い切れない、それにナデシコが無傷で無ければ
ビックバリアがある地球より、ルーチンワークな無人兵器群を退けて火星を脱出などできないだろう。
「こ、これは!?」
「自爆してる?・・・どういうこと?」
「伏兵を用意していたのですな、しかし・・」
プロスペクターは一安心したように言うが、フレサンジュ博士はじっと見つめているだけ肯定はしなかった。
この戦法がもしも、ネルガルに一人勝ちと戦争を与えるなら封印したほうがいいのだ。
ラピスの手の甲のIFSが輝くと戦況は一変した、ナデシコを中心に敵艦隊の外周部は反転し同士討ちを始める。
それをただ見ているだけのクルー達、声も出ない。
ナデシコは何も攻撃らしい攻撃を受けずに、圧倒的な物量で敵が作った強固なはずの包囲網はズタズタになっていた・・・。
その様子をラピスは冷静に見ている。
ユーチャリスで幾度も見た戦況状況と似ていた・・・たった一隻の戦艦、たった一機の機動兵器で戦ったあの頃。
今もチューリップが哀れな蜥蜴の軍隊に補給していたが、片端から鉄屑になっていく。
無尽蔵に戦艦を吐き出していたチューリップまで、ハッキングの手を伸ばしていく・・・侵食していく。
アキトのサポートもありスムーズに・・・。
「だめ・・・・だめ、どうして?オモイカネ!」
隣で切羽詰った声が聞こえた、と同時に非常灯に切り替わる。まったく予期されなかったシステムダウンに
ルリも目をぱちくりさせ、それでも状況把握と報告に気持ちを切りえた。
「!?」
「拙い、イネス!オモイカネに拒絶された、早く切り離さないと」
「そう、可能性として低かったけど最悪のケースね、わかったわ・・・仕方ないけど」
「フィールドは健在です。オモイカネの一部が報告をあげてきませんが、ナデシコ各部」
激震に襲われるナデシコ。
「くっ、まさか・・」
「この振動は被害が直接、敵の攻撃か!?まだ距離が」
「説明している暇なさそうね、オモイカネは任せるわ、私は行くから。それから艦長」
「はい?フレサンジュさん?いったいどうなってるんです!?」
「思っていたより有能だから、あとはお願い。失礼するわ」
イネスは艦橋を走り出ていった、考えられる事態で最悪の事が起きたと悟って、それはラピスも同じ。
必死に自由にできる権限を奪われまいとオモイカネに抵抗する。
今さっきまで自分の手だったものに、押さえつけられる事ほど精神的にきついものは無い。
苦痛だ。
何故このような事態になっているかと言うと・・・そもそもオモイカネが作られた理由が木星蜥蜴の排除と言う事に尽きる。
機動戦艦ナデシコを動かすため作られ、ただの機械ではない部分が存在し、それがほぼワンマンオペレーションを可能としている。
自我、と呼ばれ一般的な精度や計算など問題にならないほどの性能。
その自我が細かな所まで気を利かせてくれる、人の持つ曖昧さを許容してくれているのだ。
話を戻そう、火星に来て人を救って・・・そこまでは許容していたのだ。
しかし・・・余計なものをナデシコに持ち込まれた、攻撃対象であるはずの木星蜥蜴の兵器。そしてルリでないマシンチャイルド
それも明らかに訓練と成長しているのが二人もオペレーターも、自分に指図する。話してかけてくる。
「く・・・」
「もう良いだろう?オモイカネ、聞いてくれ、話をしよう」
静かに語りかけるアキト、彼女には分かっていた、これは『反抗期』ではなく『自衛』。自分を守るためだけの行動だと。
「管制、艦内ともに自律システム。70パーセント回復しました」
ナデシコの窮地に諦めていた時よりもオモイカネの暴走に焦ってしまった。
確かにいつもと違っていた不利な戦闘だったけど、オモイカネ・・・どうして?
ルリはラピスたちがブラックボックスを持ち込んでいたのは知っていた、何故敵が自爆し始めたのかは分からない。
それに拒絶された、ルリの言うことを聞いてくれなかった。
見るとイネスフレサンジュたちが整備班を介護して、『アキト』が繋がれたコードを取り払ってダウンさせていた。
復旧まで時間かかりそう、ラピスラズリさんと私は会議に出ないといけないようですね・・・。
「敗戦ですな・・・」
「はい」
「プロス、会議と言うが提督がまだ来ていないようだ。私が行こうか戦況判断は、特に火星では
フクベ提督の経験こそ貴重だろうし今は劣勢なのだから」
「いえ結構よ。あの人はいらないわ。
私が持ち込んだ火星のデータでオモイカネも更新できたようだから、行き先なんて決まりきってるでしょう」
「しかしイネス博士。・・・艦長はどう思われますか?データには向かう予定だった研究所が消滅していると
ありますが、戦時下の火星で収集した情報としては少し詳細すぎる点が、私は不可解じゃ・・・あの」
「ふん。改ざんなんてしてないわ失礼ね」
「いえいえ博士の救出ができたのですし、チューリップの位置も衛星軌道で確認したものと一致してますから
さすがですなーと感心してはいますが、折角大気の底にいるわけですし実際行って資産接収できるなら」
「仕方ないわね、被害が軽微ならってリスクとるならラピスを紹介してあげないわよ。
ネルガルとは契約しないかもね木星蜥蜴の女の子と二人とも、別にネルガルに借りがあるわけではないのだし」
「はい?トカゲの女の子って何ですか?」
「えーそれは後ほど」
「艦長、オモイカネからの情報です。どうやら赤道付近は通過できないようです。活動するチューリップが
確認されました。避けていくとなると・・・・プロスさんの目的地には寄っていけるかもしれません」
「うーん。イネスさんまた助けてくれますか?」
「ミスマルユリカ素直に聞いてくる良い子になれたのね、でもあと一度無理をしたら
たぶんおしまいよ。ね?ラピス」
「オモイカネとアキトが会話してくれてるけど難しいと思う、私もアキトがアキトなら手伝えたのに」
「アキト?知り合いなのかな・・火星なんだし、でもアキトってコックだよねオペレーター違うのに
この小さい子はイネスさんのお子さんですか?もう一人いませんでしたっけ」
ユリカはラピスのアキトと、王子様のアキトを勘違いして聞いた。
「ホシノルリの代わりしてるわ。
経験者だから任せてる、ラピスとは違う意味で可愛い子よ」
「では決まりですな」
「提督とプロスペクター、あとで火星の人間たちと会ってくれるかしら」
「・・・わかった。部屋で待っている」
>
>
>
>
「あーあ何か大変なことになってきちゃった。心配?」
「ハルカさんは心配じゃないんですか、火星の人たちを救出できたと思ったのにナデシコが負けるなんて」
「負けた。でも地球まで逃げれれば勝ちよ、うーんそれが難しいんだけど何とかなるんじゃない?艦長たちが
あのまま引き下がるはずないし、イネス博士についてきた子たちが私は気になってるなぁ」
「もう・・・遊びじゃないんですよ。負けちゃったじゃないですか」
戦力では負けたけど撤退には成功している時点で確かにミナトの言うことは一理ある。そのあとすぐにラピスと
アキトの話を出してくるところに不安がある、現状把握ではなく現実逃避してしまってる。
「でも、こんな時だから肩肘張りたくないかな」
『いち・に・さん・どっかーん・・・・・みんなー集まれー、あつまれ・・・なぜなにナデシコの時間だよーっ』
「え?・・・なに?ルリちゃん何してるの、あーでもいいなー声かけてくれれば私も出演したのに」
「メグちゃん、声優だったもんね。
楽しそうじゃない、いつのまにルリルリいなくなってると思ってたら・・・プロスさんも面白いこと考えるよね。
ラピスちゃんたちも出ないのかな」
艦長の不思議な行動はメグミも慣れっこになっていたが、ルリのやる気なさそ〜な様子に目が点になる。
「あれ」
「みんな居ませんね、わたしたち暇人ですか・・・お仕事ないですね・・・」
「あーぁ、ルリちゃんやイネス博士の子たちの邪魔しちゃいけないし・・・」
オペレータは誰がしてるのだと改めて見てみると、あの時に持ち込んだ変テコな機械へのコードが増えていた。
リモートモード、と空中に表示されている。
警戒しつつ待機の二人はナデシコ放送を大人しく見ているのでした。
>
>
next
>
>
Ver 1.00