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私は変わると思っていた・・・いや、変われると。
 ここに来れば安らぎが得られると思ってやってきた、けど・・・ダメだったんだ。
怖かった父さん・・・勇気を出して・・・会って・・・わかったんだ。
父さんも私を愛してなかった・・・パイロットとしての私を呼んだのだから 
「私」はいらない子なのだから・・・だから・・・誰も・・・誰も・・・私を愛してくれないと知ってしまったから・・・
うずく・・・嫌いだ・・・ わたしは「私」が・・だい・・だいきらいだ・・病院のベットで泣いていた・・
そんな時に私に声をかけてくれた人がいた、それがミサトさんだった。
だから、私は今、尽くしている、ミサトさんに・・・・・・・私を人として扱ってくれる人に。 
初めて家族だと言ってくれた人だから・・・「私」を見てくれた人だから
でも、いつか捨てられるかもしれない。
必要とされなくなるかもしれない。
そんなことになったら、私は三鷹に戻らなくてはならない、それだけはいやだった。
あんなに辛かった日々はもう繰り返したくなかった。
人として扱われない。 
碇シンジは妻殺しの碇ゲンドウの子供だから・・と言われていた所に。 
エヴァにはもう2人パイロットが居るって
「私はね、あと2人も自分の復讐のために子供を犠牲にしてるのよ」
私が出したビールを飲みながらふざけた調子だったけど、自嘲気味に 悲しい瞳で話してくれた・・・
「私」はそれでも良かった、わたしに安らぎをくれた人だから。
ファーストチルドレン・綾波レイ・・・・・・蒼銀の髪と紅い瞳をもつ少女。
わたしが・・ 恐れる少女だと・・・思う。あまりにも似ていたから私に。
ここに来る前の私に。
ミサトさんに家族になって貰う前の私・・・惨めであった頃の感情を抑えた私に。
「あなたは知らないの?」
「だって、父さんは私のことなんてどうでも良く思ってる物・・」
 「信じられないの?」
でも、少し違ったんだ綾波は・・・綾波レイは感情を知らないんだ。
「シンジくぅーん、髪を切りましょうねー」
両手にハサミをもって近づいてくるミサトさん、逃げ場所がない。
私は泣いてしまった、しかも大声で・・・肩をふるわせびっくりしているミサトさん、
髪が女の子みたいに長いから切ろうって思ったんだろう。
男の子には普通、肩まで髪を伸ばさない。
体の線が細く女顔なのでどう見たって外見上女の子だ。
それも中性的な魅力をもった超美少女と言っても過言ではない、
実際ネルフでは男性職員から幾つか交際を申し込まれたほどだ、シンジが男の子だとわかっていても。
学校でもシンジは知らないだろうが相田ケンスケの生写真の注文が
男子、女子の双方からくる人物はシンジしか居なかった。
シンジはその証拠に交際を男子対女子、63対52で申し込まれている。
シンジは決して髪を切らない、最初は口には出さないミサトだったが 
「ねー、しんちゃん。髪長いわねー、切りましょうか?」
 良い理容師がこの辺りに少ないわけではない・・・ただ単に切りたかっただけだ・・・ミサトは。
女性だからだろうか?それとも シンジに対するひがみ?三十路に近いから?それともただ単にふざけ?
ともかく、真相はミサトの心の中だ。シンジが髪を切らないのはトラウマだ。
三鷹に居たときにいじめられたトラウマが まだ、消えないのだ。
女の子たちにからかわれ、体力的にも男の子たちと比べると 
弱く、先生にも何にも、髪を切りなさいとも言われなかった。
そのうちに女の子たちのいじめはエスカレートし、女の子は男の子よりえげつない。
蹴られて、殴られて・・・ そして誰かが言った
「あんたなんか、男の子じゃないわ!女の子でも一生やってればぁ?」
 「あははははは、そうよ。お似合いよぉ!」
 「だってさー、細くてひょろひょろしてるし。あたしたちに逆らおうともしない男がどこにいるの?」 
「でもさぁー、あの“碇ゲンドウの子供”よ?切れたらヤバいんじゃない」 
「ふん!親がどうであれ、こいつはこいつよ!」
三鷹ではこの美貌はさげずみの対象になった。
嫉妬、憎悪、軽蔑・・・・人の汚い部分がシンジにすべて向けられたのだ。 
まだ、成長過程の心と体・・・・傷は深かった。
体の隠されている部分全てに傷がある。
きっと、一生消えない・・・・シンジの心はギリギリの所にあった。
一度だけ、シンジは切れたことがあった。
6名の同い年の子を重傷にした。
三鷹ではシンジのような力のない体の子がそんなことをできるとは誰も思わず。
シンジは自分の心の中にその事実をしまった、以来、
シンジは本当の「自分」・・凶暴で狡く狡猾な「自分」を出さないように押さえていた。
もし・・・いつかまた「自分」が他人を傷つけるかもしれない・・・ 
わたしさえ耐えれば「自分」を押さえ続けれる・・・・・・それでいい。
女の子のような格好もいじめも耐え続けた。
ただ・・・そのたびに「自分」はますます力を持っていった。
「自分」は賢かった、知識をどんどん吸っていった、経済政治、格闘技術、高等数学、
生命工学 哲学、ありとあらゆる分野、森羅万象、深層心理、大衆心理、殺人技術、形而上学に及んでいった。 
シンジは止めれなくなっていった・・・そして、手紙が来た。
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・来い」
 とても短い手紙だったが「自分」はとても興味を持った。
いままで放っておいた人形になにが「・・・・来い」なのか?
「自分」は楽しそうだった・・・・そして、初号機、使徒、約束された戦いが始まった。
「髪を切る・・・・!?」
私の髪を切るの?私はこうしていないと・・・こんな格好をしてないと・・・・自分を保てない。
私は自分を人だとは思ってなかった、思えなかったし
そんな・・人だって認めたら、今までのことに耐えられない、きっとこれからのことも・・
ミサトさん・・・私を見捨てないよね?
私を家族としてみてくれるんでしょ?
ほら、ミサトさんだって嫌いなのさ・・・本当は使徒を倒せせれば良いんだよ。
だから「家族」という甘美な言葉でひきとめたのさ・・・
ささやきかける・・・「自分」
それに・・・何人コロシタ?まさか、あれだけ破壊して死人がでない分けないだろ!?
・・・そ、そんな!私は・・私は誰も傷つけない、
そうすれば誰かいつか・・いつか・・・私を好きなってくれると思ってきたのに・・・いやぁぁぁぁーーーーー
あらら?案外もろいものね・・・それともこいつは・・・・意図的に弱くされてたのかな?
おもしろそうに壊れゆく「今までのシンジ」を見る「シンジの中の本当の自分」・・・
「うふふっ、ワタシは自由なのね。「今までのシンジ」ごくろうさまぁーーー、
ワタシを押さえ込むなんて立派だったわ、あはははははははははははははははは・・・・・・」
心の中で起こる一つの変化・・・・「今までのシンジ」は心を閉ざしてしまった・・・
だって現実は厳しすぎる物だったから、だれも愛してくれなかったから・・・・・・
「シンジの中の本当の自分」は現実にでれることに狂喜した。
とまどうミサト・・・シンジがやっと泣きやむと 
「ご、ごめんね。私もそんなに嫌がるとは・・・」
 「いいの、なんでもないのよ」
「!!!しん・・ちゃん?」
ミサトが聞くとシンジは口の端で笑い、そのまま家を出ていく・・・慌てて、ミサトは後を追う。
様子のおかしいシンジをほかってはおけない。
「ねぇ、どこいくの?」
「とりあえず・・レイのところ」
シンジはご機嫌のようだ・・・だからおかしい。
さっき、あれほど泣いていたのに・・・
「どうして、そこにいくの?」
シンジは可笑しそうに妖しい笑みを浮かべるといった
「真実に一番の近道みたいだから・・・よ」
aaa2
走ってゆくシンジの後をミサトは追いかけていた。
「おかしいわね?私の方が走るのは速かったはずだけど・・」
ミサトは全速力でシンジに引き離されまいと走りながらつぶやいた。
やがて、廃墟のようなマンション群が見えてくる、
静かな第三新東京市に風がザザッと吹き抜ける・・・・・おもわず立ち止まるミサト。
目を開けるとシンジはもうマンションに入ったらしく姿は消えていた。
「えっーと・・・・・レイの部屋は・・・・」
わからない・・・・・・・・・・立ちつくしているミサト・・・
風と闇と静かにたたずむ建物たち・・・・突然鳴る携帯、慌ててとるとリツコからだった。
「ミサト?今日のテストの事後処理はあなたがするって言ったはずよね?それから、明日・・・・・・・・・・」
「ええ、わかってるわ。それで・・・・綾波レイの部屋って何号室なの?」
「なぜそんなことをきくの?」
「今は急いでるの、ねぇ、何号室?」
たったったったっ・・・・・・階段を2段飛ばしでどんどん上がってゆくシンジ、息は少し切れかけている。
「はあっ、はあっ、はあっ、ちっ・・・鍛えておかなかったのが裏目に出かしら」
薄暗いどころではない真っ暗なマンションの中・・・・
月が出ていないだからだろう迷うことなくある場所に向かうシンジ・・・・
「ここか・・・・」
綾波と書いた薄汚れた表札らしきプレートがあるがこのマンション全体に感じることだが人の気配がしない
・・・・ザザッと小さな街頭がボッーと所々にある木々を白いシルエットで黒く浮かび上がらせている。
「えっーと、ベルは・・・・・壊れてる。」
言葉で言うなら「妖艶」だろうか・・・・本当におもしろそうに状況分析をするシンジ。
(手紙はたまっているし、ベルは壊れてる、それにここは・・・・・・ヒトでは住めそうにないな)
「まずはノックかな・・・」
トントン!トントン!
「気づきやしない・・・・・・か。」
ダンッ。
扉を開けスタスタと部屋に入っていく。
「レイさーん。いるぅー?」
キョロキョロと部屋のそこかしこを観察しながら奥に向かう。
「レイ?」
ベットに寝ているレイ。
「ねぇ?ちょっといーい?」
レイを揺すって起こさせる。
「???」
いまいち自分の置かれた状況が解らないレイ。
「レイさん、あなた何か知ってるでしょ?父さんが何してるのか」
サードチルドレン・碇シンジ・司令の息子・親子・・・・・
「なに?」
カーテンの隙間から月明かりが差し込むときがあるのだろう・・・今日は月は出てはいない。
「なぜ、そんなことを聞くの?」
「だってあなたが一番知っていそうだったもの・・・」
まだ、ニコニコ微笑んで嬉しそうに聞く
「教えることはできないわ」
「そう、じゃ。エヴァってなに?」
「それも教えれないわ」
「そう、また聞きに来るから」
「時が来たらわかるわ」
「そう、ありがとっ」
シンジは一通り聞きたいことは聞いてしまったわけではないが
これ以上聞き出すことは無理だと分かり帰ることにした。
確かにレイは何か知っているようだった・・・あと知っていそうなのはリツコさんか・・・
レイの部屋から出てくると片手をポケットに突っ込み一枚のカードを取り出す。
周りに耳を澄ますと誰かが走ってくるのが解る、おそらくミサトだ。
シンジは素早く身を隠すとやがてやってきたミサトの背後を取り有無を言わさず気を失わせる。
そして、カードをミサトの懐にしまう。
ミサトを背負うと家に向かって歩き出す。
次の日、ミサトは起きると昨日のことを思い出し・・・レイの部屋に向かう途中、
何者かに背後を取られて・・・周りを見回すと見慣れた自分の部屋だと解る、シンジはあれからどうしたんだろう?
「シンジくん?」
なにやらキッチンから物音がする、フライパンで卵焼きを作っているようだ。
安心した・・・昨日の態度のおかしいシンジじゃない・・・
「しんちゃん、今日何かしら?」
「ええっと、今日はですね・・・」
いつもの朝の光景だ、そういえば今日から学校だっけ?
「しんちゃん、今日からお待ちかねの学校よ!」
「ええっ、そうですか」
少しシンジは気が重くなる・・・昨日はちょっとしたことで
現実に危険な自分が出てきてしまったがミサトさんに手を出したところで
「助けなきゃ!!!」
と言う気持ちが強くなってまた、現実に戻ってこれた。
しかし、学校でまたいじめられれば自分の心は耐えれるだろうか?
また、現実に本当の自分が出てしまわないか?
自分の心の弱さを知っているシンジは学校へは行きたくなかったが
ミサトさんによけいな気を使わせたくないと思い学校へ向かった。
「転校生、ちょっとええか・・・」
そう呼ばれてついていくことにした、また繰り返してしまうことになるとは思いもしなかった。
「妹はなぁ、敵じゃなく味方にやられたんじゃ・・・もっとうまくやらんかい!!!」
えっ!僕が・・・やっぱり傷つけたの・・・・どうして?
僕がこんなめに・・・・せっかく使徒を倒したのに・・・・誰も僕のことなんか・・・・心配してくれないの?
どうしてみんな僕を傷つけるの・・・僕はなにも間違ったこと・・・してないよ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
ニヤッ
そして・・・・悪魔が・・・・・・・・・・・
微笑んだ。
「殴ったのはいけないわ・・・・」
「なんやと!おまえがゆるせんのやっ」
「顔は女の命よ」
「けっ、気色悪いわ。女のかっこなんざしおって」
「そう・・・・」
殴られてうつむきだった顔を上げるケンスケもトウジも以外だったのは、
その顔は異常なほどきれいに微笑んでいたことだ。
「ちょっと・・・」
シンジはそういってトウジの左腕を掴む
「な、なんやっ!」
うろたえるトウジ、ケンスケは気づいたがもう遅かったシンジの瞳の奥が邪悪な色に変わったことを・・・・・・・・・・・・
「(こ、こいつ気でもふれてしもうたんか?)」
「この左手に・・・・・・・さよなら言わないとねっ!」
シンジがそう言ってにっこり笑みを深める、そして・・・・左膝をトウジの左手に向かって振り上げる。
それて一瞬のうちの出来事だった、トウジの左手とシンジの
左膝を支点としてトウジの体が宙を舞い・・・・・ボキッと、骨の折れる音がした、
シンジはトウジの様子は気にかけずにそのままステップを踏みケンスケの眼前で止まる。
冷や汗を流すケンスケシンジの顔が眼前で微笑んでいる。
「ケンスケくんは僕の顔を傷つけないよね?」
なおも微笑みながら聞くシンジ。ケンスケはふるえながら首を縦に振る、それを見て
「あっ、そう。じゃ、僕がしたことは内緒だよっ。もし、誰かに言ったら君もああなるからねっ。」
トウジはさっき飛ばされるときに地面に落ちる前に気絶させられたらしく、
もがき苦しんでいないが一刻も早く病院に連れていかなければ後遺症が残るかもしれない。
「じゃ、あとよろしくっ。」
駆け去るシンジ、慌ててトウジを担ぎ連れていくケンスケ。
「ねぇ、諜報部さんっ、出てこないの?じゃ、私から行くね」
シンジは車の鍵をヘアピンでかるく開けると中にいる数人の男たちが出てきて問う
「何か用か?」
「さっきのことはなかったことにして欲しいの」
「だめだ、我々の仕事だからな」
シンジは手近にいた一人の首にしなだれかかると
「ねぇっ、おねがい〜。じゃなきゃ、消えて貰うよ。」
「なにをばかにこと・・・グウッ」
首を絞め始める・・・とっさに熟練した体術で当て身をくらわせようとする。
シンジはそれをよけ首を抱え込むように締め上げる。
「早くしないと、ホントに死んじゃうよ?いいの?」
もう、顔が真っ青になっている。
「解った、配慮しよう・・・」
「それから、携帯もひとつでいいから頂戴。これから用があるときはこれで連絡取るからねっ。」
「ゲホッ、ゲホッ、ゲホッ・・・・ハアッ、ハアッ、ハアッ」
やっと腕の力を緩める、素早く立ち去っていくシンジ。
「あいつ、本気でしめてましたよ」
「ああ、そうだな。それに、おまえ銃あるか?」
「な、ない。ないですよっ!」
「あいつはおまえの首を絞めながら銃を盗んで俺に向けていたんだぞ、我々は奴になめられたんだ」
忌々そうにサードチルドレン報告書を燃やし捨てる。
「いいんですか?そんなことして・・・」
「フンッ!この礼はしてやる・・・・・」
そう言って男は車に乗り去った。
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「人類を守る」か、いい響き・・・、そして・・・・・・良い口実ね。
実際このネルフ内で自分を「悪」と考えている人間がゼロに近いのも事実だろう
ネルフに潜伏するスパイさえ自分の属する組織のために働いているのだろうから・・・
シンジはスタスタと初号機のエントリープラグに近づいて準備をする。
今度の奴は正八面体か・・・・前回のイカもどきは瞬殺だった。
ATフィールドか・・・いい切れ味ね、生身の時も使えたら料理も簡単に作れそうねぇ
倒した後のミサトさんの顔が目に浮かぶ・・・とまどっているっていうより唖然としてたわねぇ。
でも、大変だったな・・・あのあとはリツコさんにせめられたしな・・・父さんも凝視していたみたいだし
あんなヒゲオヤジに見つめられたら、鳥肌立つわよ・・・こんなカッコしてるけど男よ?
「シンジくん?それじゃ射出するわよ?」
「いつでもかまいませんよ?」
強力な重力がかかる!
それとともに自分の中の不安が膨れ上がっていく・・・どうしたんだ?
おかしい、このわたしが不安だなんて・・・・・第六感だったのだろう、
初号機は射出口に達するとともに拘束具を自力で排除するとともに・・・・・・・
大きく空中に跳躍する、そのまま使徒の本体を越えて背面?に着地する。
使徒を蹴り上げて拳で叩く・・・そのうち正八面体であったものが判別もつかないほど崩れていく・・・・・
「・・・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・・・?」
私は戦闘時は無口だ、べつにしゃべる必要がないから・・・
「これって・・・・・・」
いぶかしげに使徒の中心にあるものに調べる、俗にコアと呼ばれるものだ。
直感的にこれが、おもしろくて・・・・重要だと感じた。
だから・・・ATフィールドを使ってコピーをした、ATフィールドはまさに私の手足となるものだ。
前回の戦闘時に気づいたのだが、シンジと私とではATフィールドの強度に差はほとんどないが
種類が違うことに気づいた、あとでリツコさんにATフィールドについて聞いたのだが曖昧な答えを返してくれた
・・・・シンジならはぐらかされたと思ったのだろうが、今は私だもの・・・
「心の壁・・・・・」
そう言ってくれた・・・・だから理解できた。
シンジは徹底的に他人を拒絶することがATフィールドに影響している・・・・
私は違う、シンジは他人を拒絶しながらも寂しさを恐れている。
私はそんなことはないから、たとえこの世界に自分しかいなくても探していける・・・何を?
って・・・・おもしろいこと、ゾクゾクするような危険なこと、
はしゃいでしまうような楽しいこと・・・私は基本的に人生楽しければいい!
なんて考え方しかできないしね。 知的好奇心旺盛なのね・・・・って、自分を分析してしまった。
学校・・・・義務教育で通うもの。
朝・・登校すると端末を開いてそのまま・・・・・お昼まで何をしているかというと、プログラミングだ。
リツコがマギをシステムアップしたように私も優秀なマザーコンピューターを作成している・・・
ハードの方はどうしよう?そのうち、加持さんにでも調達してもらえばいいか・・・・・
私自身はネルフのレベル1のカードがあるのでマギにアクセスして、
いろいろ調べている。その中で知れることに限界を感じた時に・・・加持さんのデータを見つけた。
ちょうど、日本に出張だったらしいけど、私がぎりぎり捕えたなんて相当のプロ・・・
「J・A?」
「ジェット・アローン。それが完成したらしくてさ」
「ロボット・・・・ですか?」
私はロボットかぁ、たのしそう・・・・・と思った。
「そぅ、日本重化学工業共同体だっけ?そこに招待されているのよねーあんまり行く気ないんだけどねぇ、
リツコも行くって言っていたっけ?」
「その僕も行っていいですか?」
思わず口に出して頼んでみたけど・・・
「しんちゃんも?うーん・・・・・リツコに頼んでみるわ」
「おいしー、しんちゃん。また腕上げたわねー」
片手にビールを持ってつまみをつついている・・・・・おやじだ。
「あっと、それとOKみたいよ。ロボットの件」
「えっえー!?ほんとぅですかぁ?」
弾む調子で言ってしまった、私って子供かも・・・・・・
そういえば・・・加持さんも言っていたっけ・・・J・Aが何とかって?
「加持さんですか?」
「誰だ!?」
加持がJAにプログラムの書き換えをし終わってタラップを降りてくるときに暗闇の中から声がした、
とっさに懐の銃に手を伸ばす。
「はじめまして、サードチルドレンの碇シンジです」
闇に目が慣れている加持は少し離れたところに小柄な人影を見つけた。
「ほぅ、これも碇司令の仕組んだことかい?」
いくら目が慣れたからと言っても表情までは伺い知れないのだが言葉の端々に言外のプレッシャーを感じる。
「いいえ、これは私自身が仕組んだことですよぅ」
ちゃかすように・・・・にゃっと口をゆがめる。
「・・・・・それで俺にどんな用なのかい?」
「私に協力してくださいませんか?」
そんなふうに軽く微笑して言うシンジに加持は異常な恐怖を感じていた。
なぜだ?俺が怖いと思っているのか?ただの中学生じゃないと言うことか・・・・司令の懐刀か?
「それから、このことは誰にもしゃべらないでくださいね。もちろん司令にも・・・」
「いいだろう、それで交換条件はないのかい?」
「ないです」
「おいおいそれじゃ、デメリットばかりじゃないか。
俺はメリットのない取引はしないんでね、俺の中の真実に近づくための情報がほしいしな」
「しょうがないですね・・・コードナンバー707を調べてみてください」
「・・・・・!。そうかい、わかったよ。取引は成立だ、俺は何をすればいいんだい?」
「そうですね・・・・とりあえずあるものを調達してほしいんです。」
自分の部屋を調べてみると、20個ちかく盗聴器があった。
しょうがない・・・あきらめ気味でミサトさんに手渡そうとミサトさんの部屋に行く。
さすがに小さいとはいえ20個も両手に持っていくのはきつい・・・・おっとっと。
案の定と言うのかミサトさんの部屋に入ったときに落としてしまった、
ミサトさんはいなかった・・・・この時間帯だと風呂かな?
盗聴器を拾い集めながら、ふと目を止めるものがあった
「サードチルドレン観察日誌 No1」
・・・・へぇ、よく調べてあるね。でも、まだシンジじゃなく「私」が出てきたことは気づいていない・・・
はぁ・・・・・・・・・・・・・・・それにしても、この部屋って盗聴器仕掛けるのに
苦労しないわねここまで、乱雑な部屋は・・・ぐぅの音もでないとはこういうことを言うのね。
翌日、トーストという簡単な食事をとっている・・・・ペンペンは美味しそうに魚を飲み込んでいる。
きりっとした服装のミサトが現れて唖然とするペンペン・・・・仕事か何か・・・かな?
そう、考えてみるけど・・・・・・・じゃ、ネルフは仕事じゃないの?って疑問に思ってしまった。
そのままミサトさんを送り出した後、たいして行く気もない学校に行く。
そういえば・・・この前、殴りかかってきた人ってどうなったのかな?
「ロボットって、今日でしたっけ?」
「あらら?しんちゃん自分から頼んでおいて忘れちゃったの?」
私ってどこかぬけているのかなぁ?
「模擬戦闘!?」
「そうよっ、保安部からの要請でね」
「でも、エヴァのパイロットって言っても・・・まだ、中学生なのよ。
それなのに、プロの戦闘訓練をつんだ保安部となんて許可できないわ!」
「そうね・・・でも、実践では使徒との戦闘にかなりプラスになるわ
パイロット自身の資質を高めることによって、エヴァの力も上がることが分かっているから、
なおのこと、この要請は不許可にはできなかったのよ・・・わかる?」
「・・・・・・・・・・・・・・シンジくんには私から言うわ」
「そう・・・・・・じゃ頼んだわよ」
「はじめっ!」
かけ声とともに繰り出されるキックを防御するシンジ、すかさず間合いを取る。
保安部でこの前シンジにメンツをつぶされた男たちが5.6人襲いかかってくる。
誰の思惑かすぐに分かってしまう。
顔がニタつくのをこらえて近くに来た1人のパンチつかむと受け流して
シンジの体に触れる直前にしゃがみ込んで横に投げ飛ばす2人目、3人目と戦闘不能にすると残り少なくなった
保安部たちは左右に分かれて同時攻撃を試みるが二人とも気絶させられてしまう・・・・・・・
残りは1人。最初からただ者ではないことを悟っていたが
こんなにも軽く保安部の凄腕たちを倒されるとは思っていなかった、冷静になれ・・・と自分に言い聞かせる。
「はあああ・・・・・」
呼吸を整えて姿勢をあいてと同じくらいに低く保つ、
なにぶんシンジは中学二年生であり、背も中程で頑強な体を持つ保安部の大人たちと違う
力もそんな強い部類には入らない、唯一素早さがあると言うことぐらいだろう。
「どうぞ・・・・こないの?」
シンジも姿勢を保とうとする、最後の一人だしちょっと痛い目に遭わせてみようと思ったらしい。
距離を縮めて力の限り素早くローを放つ、シンジの体がふっとかき消える。
「!!!!」
驚愕に目をめいっぱい見開く男。
にゅっと下から2本の白くて細い手が洗われて顔をつかむ・・・・・男の意識はそこで消えた。
「「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」」
「・・・・・・すごい」
「し、シンジくん?」
あたりに倒れている保安部の男たちのなかに最後に倒した男から手を離して立ち上がるシンジに声をかけるミサト。
はじめはシンジの心配をしていたミサトだったが、残り3人になったところで
シンジの心配よりもどこまでシンジが強いのか?ということが気になっていた。
ミサトも実際に以前に何度かシンジのトレーニングにつき合っていたが
ここまで異常なほど強いということはなく、ふつうの中学生の少し下程度だったからだ。
シンジは体型から見ても運動神経が格段によい様に見えないし、
なにより普段から護衛をしている保安部を5.6人まとめて叩きつぶす程の実力を持っているとは思っていなかった、
隠していたとしても普段のシンジの生活習慣やそぶりを見ているミサトは唖然として口がふさがらなかった。
aaa4
ばだばたと手を振ろうとするゼンマイ仕掛けの機械人形の様な奴・・・
つまりジェット・アローンと呼称されるロボットのことだ、初号機のATフィールドで易々と手足を切断される、
あとはもがくこともできなくなる臨界直前の核施設と化してしまった。
「案外、おもしろくないな・・・後はミサトさんに任せて帰ろうかな?」
「シンジくん?悪い冗談言わないでくれる?」
「ええ、冗談ですよ(回線つながったままだっけ・・)」
薄情なシンジにミサトは少ししか茶化すことができない、
もとよりメルトダウンの危険があるジェット・アローンに乗り込もうとしているのだからそんな余裕はなかった。
ミサトは防護服を着込んでいる、中はかなりの暑さだ。
通路を駆け抜けて制御室に入る、キーボードに向かい「希望」と打ち込む・・・
エラー・・・もう一度打ち込む・・・
エラー・・・時間が迫ってくる、自力で制御棒を押し込む。
「奇跡は用意されていたのよ、だれかにね・・・」
ジェット・アローンの暴走が止まった後、ミサトの独白とも言うべき言葉を聞き内心、おもしろくないシンジ。
加持さん教えてくれれば良かったのに・・・そうすれば
私がプログラムを書き換えてエヴァに対抗するこの人形を作った奴ごと
関東を死の世界に変えてあげれたのに・・・・つまないの。
「あら、しんちゃん。どうしたのつまんなさそうな顔して?」
「べぇつにぃー、ロボットがあんまり面白くなかったから(ドッカーンって爆発しなかったから・・・)」
「まだまだ、こどもねー。明後日は太平洋を豪華なお船でクルージングよ!
友達でも連れてきなさい、何たって大勢の方が楽しいからねー」
「友達かぁーー」
この前の件いらい、学校でシンジに話しかける生徒はいない。
学校に来てみるが、これといって顔見知りの程度でしかない生徒がいる。
「どおしよ・・・」
周りをぐるっと見渡してみると机の上で戦闘機の模型をいじっている生徒が居た。
「あ、相田くんだ・・・・どうしよ?」
シンジの思考がゆれる、ケンスケを誘ってみようか?
脅して連れていくか?
どちらにしても巻き込むつもりで、ケンスケの意志など関係ないようだ。
近寄っていく、ケンスケがシンジに気づき目を向けて警戒する。
「ねぇ、私と太平洋を豪華なお船でクルージングしない?」
「はぁ?」
トウジのことで警戒していたケンスケだが、突然の誘いに困惑する。
「だから、ネルフの関係で太平洋まで出かけるの!」
「何で、俺まで・・」
「私も連れていって!」
突然の声に振り向くとシンジを睨むヒカリと目が合う。
どういう理由で行く気になったのかさっぱり分からないシンジだったが
人数は多い方がよいと思い、連れていくことにした。
「あの碇、俺も行くよ(ネルフ関係だと軍艦だろうな・・・トウジには悪いけど、楽しみだぁ)」
どうシンジのことを呼ぼうか考えたケンスケだったが、無難に名字で呼んだ。
「うん、そう。じゃ、明日の8時に家に来てね」
その夜の会話・・・
「しんちゃん、で?」
「ええ。2人誘いましたよ」
ビールを片手につまみを食べながらミサトが聞く。
「へぇ、友達居たんだ?誰からも電話かかってこないからいないと思っていたのに」
結構辛烈な言葉だが、シンジが変わって以来シンジのほうが毒舌になっていたのでシンジも軽くかえす、
ミサトの気にしていることはすくないが・・・
「そんなに食べて・・・豚になりますよ。」
「そんなわけないじゃない!私はもっと高級な和牛よ、輸入品なんかとは違うのよ、
国産なの、国産!ステーキなのよっ」
「・・・・・ホルスタイン」
ぼそりとシンジが呟く、ミサトの耳が過敏に反応する。
「そうっ!そうなのっ!ほらほら、おっきいでしょう?サービスしてあげよっかぁ?」
「いいです。牛さんっ、お腹まで牛さんなんだから・・・」
むぅーーとした顔になるミサト、ビールも多分に入って酔っている。
「紹介するわ、エヴァンゲリオン弐号機専属パイロット。惣流・アスカ・ラングレーよっ!」
強風が吹きアスカのスカートをまくり上げる。
パンッ
ケンスケの頬を叩く、そのままシンジに向かいその手がシンジの頬をとらえたかに見えた。
「なっっ!?」
アスカの手を防ぎ、そのままつかんで一本背負いに持ち込む
「きゃぁあああ!?」
もし、少しでも力の加減をアスカがゆるめていたら体落としに持ち込まれていたんだろう。
「あっちゃっー、しんちゃん。そろそろ、やめてあげたら?」
シンジは一本背負いからアスカの体を甲板にたたきつけずに後から羽交い締めにしている。
シンジの力量をこの前の模擬訓練で知ったミサトらしい感想だった。
「いたたたた、離しなさいよっ!」
シンジが離してやると警戒しながら離れるアスカ、同年代の一見、
線の細い少年にいきなりとはいえ、羽交い締めにされたことがショックだったのだろう。
「でぇ?サードチルドレンはどれなの、まさか・・・」
「そう、彼がエヴァンゲリオン初号機のパイロット。碇シンジよ」
露骨に警戒し、嫌悪をあらわにする。
「こんな凶暴な奴が?」
「惣流さん、あなた程じゃないよ・・・」
「げぇ、最悪ぅー。女装したら似合うんじゃない?」
今のシンジはいつもの姿ではなく、強風が予想される太平洋上の
ここには男子学生服を着てやってきている、アスカの嫌みももっともだが・・・・
「アスカ、しんちゃんはいつも女装してるわよ?」
ミサトの言葉に引きつるアスカ、これから追い落とす予定だったチルドレンとはいえ
女装癖のあると聞かされると、いろいろと悩む。
しかも、今のシンジはアスカの性格と比較しても相手は引けを取らない、激しい気性の持ち主なのだから・・・
少しうしろでその様子を眺めていた、ヒカリはトウジの敵討ちしようと思い来たのだが
シンジのあまりの気性の激しさを見て、正攻法では無理だとわかり思い悩んだ。
ケンスケは心の中で碇には逆らわないようにしようと決めた、そして、トウジにも伝えておこうと決める。
「よぉ、ひさしぶり。相変わらず凛々しいな」
加持がシンジとミサトに声をかける、ミサトはゲゲッと顔を歪ませる。
「加持さーん、聞いてよ。あいつよ!あいつっ!レディーに対して失礼すぎるのよっ、サードチルドレンが。」
「おやおや、碇シンジくんだね?」
一応、これが表面上初対面ということなので聞く加持。
「ええ、どうして知っているんですか?」
「有名だからね、何の訓練もなくエヴァを動かしたチルドレン」
「いえ、動くのは分かっていましたから?」
そんな09システムと呼ばれていたのに!?
疑問に思う加持とミサト、そんな2人を気にもかけずに移動しようとするシンジ。
「ところで今、葛城と同居して居るんだって?寝相は悪いままかい、それとも直ったのかな?」
「いえ、まだ悪いままです。寝起きは目も当てられないですねぇ」
「な、なっにを言ってるのよっ!?」
パンッと机を叩いて叫び睨む、周りは・・・・・固まったままだ。
「それに下着姿で動き回るんですよ?私のこと男だとわかってないんですよ」
「な、なにっいてるのよっ。そんなことしていないでしょう!?」
「冗談ですよ、まったくもぅ・・・ちゃんと日記も付けないといけませんよ?」
「な、な!?そ、そのねアレは・・・」
話はうやむやになったが、心が重くなったミサト・・・
もしかしたらシンジは私がシンジを家族として見ていないと感じているのではないか?
それで無責任なほど明るく振る舞っていたのではないか?
そんな疑問がミサトを苦しめていた・・・・・しかし、今のシンジにその心配は無用だ。
「赤いね、血の色みたい・・・」
「な、なによっ!?変な表現の仕方ね・・・この弐号機は言わば制式タイプのエヴァなのよっ!」
「うわぁっと・・・水中衝撃波?」
「いったぁーい」
アスカは弐号機から落ちてしまったようだ、どこか打ったんだろう。
「使徒?」
「あれが?」
「チャーンス!」
「なによっ!?手を離しなさいよっ、わたしの弐号機なのよっ?」
「ばーかっ、うまく操れないんじゃねぇ?」
「な、なんですってぇっ!?」
激昂したアスカはシンジと狭いエントリープラグ内で喧嘩する。
「うっるさいなぁ、とっ」
アスカを羽交い締めにして操縦桿に手をおく、ジタバタするアスカを後目に
「よぉしっ、これをこうして・・・」
普段はアスカも使わないエヴァの調整用キーボードを取り出しアスカとシンジのハーモニクスを調整する、
弐号機をシンクロ率起動指数ぎりぎりで再起動するシンジ、
使徒の食われたことを良いことにATフィールドでコアを切り裂く、そのシンジの様子を見ているアスカ。
「な、なによぉ・・・」
とても弱気な声で俯きながらシンジに言う、感情を抑えたような押さえた小さな声で
「私の弐号機に・・・なにするのよっ!!!」
と言って、飛びかかってシンジの首を閉めようとする。
「使徒を倒すのは遊びじゃないよ?」
シンジの声にはっとするアスカ・・・確かに弐号機に乗せたのも私だった、
シンジよりもエヴァをうまく操れないのも・・・
確かにキャリアは私の方が上でぽっと出のチルドレンを軽視していたのも、
事実であり、ほかのチルドレンは敵だと見ていた・・・敵は使徒なのに。
私は・・・どうしたらいいのだろう?
「でも、これから一緒に戦うんでしょ?よろしくね」
そういって手を差し出す、ポカンとするアスカ。
「あ、あの・・・そうね」
とまどいながら手を握るアスカに面白そうな目を向けるシンジ。
内心は・・・綺麗な子ねぇ、でもどうしてそこまで弐号機にこだわるのだろう?
それに妙に高慢な態度をするわねって思ったら、
今はおとなしいし・・・興味深い人物だわ、いったいどんな精神構造しているのかしら? 
aaa5
「今日も休みか・・・トウジの奴」
相田ケンスケは主の居ない机を眺めて呟いた、同じように洞木ヒカリもトウジの机を眺めながらため息をつく。
そして、ちらっとその原因の人物を横目で見ると、ぐぅぐぅと眠って夢に住人と化しているから手に負えない。
隙をつこうとしても嫌がらせをしようとしても巧くかわされてしまい、自分の方が窮地に陥ってしまう。
体術ではネルフでの訓練のおかげだろうか?クラスであの細身の少年に勝てるものは居ない。
「今日は転校生が来るらしいな・・・誰だろ?こんな時期に物好きな奴。」
呟いても1人、ケンスケの相方は今、ここにいないのだ。
端末を操って趣味の軍事関係の資料の観覧をする、他にすることがない・・・
だからといってシンジと話すことはあり得ない。
「今日、転校生が来るんだってさ」
ヒカリがケンスケに話しかけることは珍しいが、
シンジに対して良い感情を持たない者同士気が合うようになっている。
「え?俺知らないぜ、誰から聞いたの。委員長?」
花瓶を置いて、花を整えながら振り向いてしゃべる。
「職員室で聞いたの、このクラスに来るんだって」
「誰が来るのかな?」
はっと振り向くとシンジが窓にもたれ掛かって外を眺めながら話しかけていた
「・・・!?。さあな、俺は知らないぜ」
「私もハッキリ聞いた訳じゃないわ」
努めて冷静な声で受け答えするケンスケと、どこか突き放した感じのヒカリの声。
クラスのシンジに対する反応は、トウジの件以来こんな感じだ。
冷たい反応と裏で囁かれている噂に気づいているのだろうか?
シンジは自分のポーズを崩さず、気にとめていないようだった。
だれでも自分の噂には多少でも気にとめたり、
噂によっては気分を害するものだがシンジは全くと言っていいほど反応を示さなかった。
ホームルームになり生徒達が席に着くと先生が教壇に立ち連絡事項を告げる。
もちろん、転校生の紹介もあるわけで・・・
「今日は転校生を紹介します、惣流さん入ってきて下さい」
ガラッと教室の扉開けて入ってくるアスカ、教室がしんと静まってアスカが自己紹介をする
「惣流・アスカ・ラングレーです、よろしくっ!」
元気よく挨拶する、強気な視線の先にはシンジがいた。
「では、惣流さんの席は・・・」
教師が見渡し席を探す、アスカは席を希望する
「あの席、いいですか?」
「洞木さんの隣ですか、ではそこにしてください」
特に気にもせず教師は席を決定する、その席の斜め前にはシンジの席があるわけで・・・。
アスカのテンションは戻っていた、シンジに味合わされた使徒戦での屈辱を返すつもりのようだ。
「(サードチルドレン!いじめ抜いてやる、あの時の事は気の迷いだったのよ、私に敗北は許されないんだから!)」
内心は酷いことを考えながら、ヒカリに営業用の笑顔であいさつする。
「よろしくね、洞木さん。アスカって呼んでくれて良いわよ」
アスカは自分のもつ明晰な頭脳でシンジと自分との価値の差を思い知らせる作戦を練っていた。
「んっ?」
シンジの制服はクラスの生徒達とは違ったものを身につけているのに気がつくアスカ、
ネルフの制服だろうか?と考えてみることにした。
「でも・・・ファーストはどこなのかしら?」
「ふぁーすと?アスカさん、何それ?」
「アスカでいいわっ、さんを付けなくても・・」
「じゃ、アスカ。ふぁーすとって、もしかしてパイロットのこと?」
「ええ、みんな知ってるの?」
「ええ、碇くんや綾波さんがパイロットだってこと、ぐらいまではね」
「ふぅーん、じゃ綾波って娘はここのクラスじゃないのかしら?」
「いいえ、休んでいると思う・・・ほら、あそこの窓際の席」
ヒカリが端末を操っていた手を休めて指を指す。ちらっとアスカが覗き見る、
授業は進んで暑い午前が過ぎていく・・・
「アスカ、一緒に帰らない?」
ヒカリが誘う、アスカに接してみてパイロットもそう、変な奴ばかりじゃないのねと納得したからだろう。
「今日はネルフ本部に用があって・・」
「また今度誘ってもいい?」
「いいわ、この町のことも知りたいしね」
かばんを持って学校を去っていく、
出て行く際に何人もの男子生徒に羨望の眼差しで見られて良い気分のアスカだった。
しかし、アスカの機嫌を一気に悪くする存在に、ネルフ本部の入り口で出会ってしまった。
「誰?・・・」
「(あーもう、なんでこんな奴らが同じチルドレンなのよっ)」
「セカンドチルドレン・惣流・アス」
「あっ、綾波。今日ちょっといいかな?」
アスカを完全に無視した形でシンジの声が辺りに響く、レイは律儀にも振り向いて受け答えする。
「テストが終わってからなら・・・」
「ありがとっ、じゃねっ。」
何を急いでいるのか走って本部に入ろうとするシンジをアスカが肩をぐっとつかんで止める。
「なによっ、あんた。私を無視するんじゃないわよっ!」
前回の反省をしていない辺りがアスカの弱点とも思えるし、直線的な性格上しかたがないともとれる行動だ。
もし、攻撃をしていたらシンジの反撃を受けて、アスカは少しだけシンジに対して肉弾戦を控えるだろうが・・・
少しだけと言うところがアスカのアスカたるゆえんである。
「何、急いでるんだけど・・」
立ち止まるのを躊躇したが、結局アスカに向かい合う。
「だからっ、ファーストと話しているのは私なのっ!あんたはしゃしゃり出てくるんじゃないっ!」
そんなアスカの激昂ぶりに肩透かしを食らわすようにレイが本部に入っていった。
「あっ、ファーストッ。まちなさいっ!?」
シンジをポイッと捨てていくと言う表現が実行されカードを通し、本部に入っていくアスカ。
ここで話は前後するがレイの欠席について述べておこう、
エヴァのパイロットである限りテストというものはシステムの安定のために日常的に行う必要がある。
レイにも疲労とかその類のものはもちろんある。
リツコの指示でランダムに時間に関係なく行われるテストは深夜にも及ぶことがあり、
翌日はパイロットは正午まで半ば強制的に身体を休むことになっている。
まだまだ、身体の機能が未成熟な年ゆえの対策として葛城一尉から申請されたものだ。