第3の使徒サキエル、襲来。
使徒に対する通常兵器の効果は認められず、国連軍は作戦の遂行を断念。
全指揮権を特務機関『ネルフ』へ委譲、3人目の適格者、碇シンジ。
エヴァンゲリオン初号機、初出撃。
第一次直上会戦、エヴァ初号機、頭部破損、制御不能。
完全に沈黙、後、暴走。
第3使徒及び初号機におけるATフィールドの発生を確認。
初号機、目標のATフィールドを侵食。
使徒、殲滅。
迎撃施設、一部破損。
同事件における被害者の有無は公表されず。
その結果として、我の損害が極めて大なりとはいえ、未知の目標に対し経験『0』の少年が初陣に挑み、
これを完墜せしめた事実。碇シンジ君の功績は、特筆に価するものである。
ただ、作戦課としてさらなる問題点を浮き彫りにし、多々の反省点を残す苦情の戦闘であった。
『第3新東京市市街戦』中間報告書責任者葛城ミサト
第4の使徒シャムシェル、襲来。
当時、第3新東京市の地対空迎撃システム稼働率48.2%。戦闘形態への移行率、96.8%。
使徒、第3新東京市上空へ到達。
第二次直上会戦、前回の会戦と大幅に異なり初号機の音速を軽く超える攻撃にて。
使徒、殲滅。
ネルフは原型をとどめた使徒のサンプルを入手、合わせて初号機の性能の調査も実施。
だが、分析結果の最終報告は未だ提出されず。
ただ、パイロットの資質の大幅な向上が少なからず影響を与えたものとの報告がなされた。
ワシの妹はまだ小学二年生です。この間の騒ぎでケガしたんです。
ワシはそないなアホな話し、とても納得できません。
あのロボットを作った大人に、妹の苦しみを、ワシの怒りを教えたろ思います。
鈴原トウジの作文より抜粋
いつも友達と学校とかで避難訓練ばっかりやってたから、今さらって感じで、実感なかったです。
男の子は遠足気分で騒いでいたし、私たちも恐いって感じはしませんでした。
洞木ヒカリの作文より抜粋
第5使徒ラミエル、襲来。
強力な過粒子砲を有し、初号機を不意打ちするが、エヴァ初号機のATフィールドによる攻撃にて。
使徒、殲滅。
これによりパイロットで唯一、自在にATフィールドを操れることが証明された。
しかし、ATフィールドの解明には結びつかず、ATフィールドの本質は未だ謎のままである。
誰とも触れ合わない、そして誰も気にしない、碇はそんな奴だ。
でも、エヴァのパイロットとはそんな物なのだろうか?人間なのだから怒ったりもするし、悲しんだりもする。
まぁ、碇はそれを極端に感情に出しているんだろう。
不器用なのかもしれないし、過去に何かあったのかもしれない。
綾波もなにもいわないけど、ちゃんと何かを考え、何かをオモっているはずだ。
ただ、エヴァのパイロットはその重要性から特殊な環境に居る、だからそうなってしまっているかもしれない。
トウジはまだ怒ってるみたいだけど、あまり感情的になるのはマズイとおもう。
相田ケンスケの個人資料から抜粋
第6の使徒ガギエルに、遭遇。
2人目の適格者、エヴァ弐号機専属操縦者、惣流・アスカ・ラングレー。
エヴァ弐号機にて、初出撃。海上での近接戦闘、及び、初の水中戦闘。旧伊東沖遭遇戦にて。
使徒、殲滅。
何よ、何よ、何よ!何様のつもり!アンタ、そうサードチルドレン!
ポッとでのチルドレンの癖に私の邪魔をするんじゃないっ!
私は選ばれたエリートパイロットなの、誰にも負けないの、常に一番でなきゃいけないのよ!
でも、私がアンタに負けたのも事実。
次こそは覚えてなさい、そうよ・・・。
エヴァ弐号機専属パイロットの手記より抜粋
第7の使徒イスラフェル襲来。
初の分離・合体能力を有す。
初のエヴァ2機による作戦の展開、しかし・・・敗戦。
ネルフは指揮権を国連に委譲。
使徒自己修復後、第3新東京市に侵攻、しかし、エヴァ初号機、同弐号機の二点同時過重攻撃にて。
使徒、殲滅。
初の敗戦はネルフ内でも大きな影響を与えるものと推測される、作戦部長としての任を勤めよう希望する。
しかもっ、あなた、それは加持君の案でしょ!?しっかりやりなさいよっ。
技術部長赤木リツコの日記より抜粋
第8の使徒サダルフォン、浅間山火口内にて発見。
ネルフ、指令A−17を発令。
全てに優先された状況下において、初の捕獲作戦を展開。
電磁光波柵内へ一時的に捕獲、だが―――。
電磁膜を寸断され、作戦は中断。
即座に作戦目的は、使徒殲滅へと変更される。
エヴァ弐号機、作戦を遂行。
使徒、殲滅。
今回の使徒は世界に大きな危機を招いた、それを黙認できるネルフの権限は計り知れない。
しかし、真実に近づくためには危険を犯さなければならない。
俺はどこまで知っている?そして、全てを知ったら・・・それをどう思うようになるのだろう?
監査部長加持リョウジの手記より抜粋
第9の使徒マトリエル、襲来。
エヴァ弐号機、零号機による初の同時作戦展開により、
使徒、殲滅。
こんな非常事態にもめげない高橋覗、高橋覗をよろしくおねがいします。
この第三新東京市の市長にはぜひとも、高橋、高橋覗。より良い政治を目指して高橋と共に・・・・
第三新東京市長選候補高橋覗の演説より抜粋
第10の使徒サハクィエル、襲来。
成層圏より飛来する目標に対し、初のエヴァ3機による同時作戦展開、直接要撃にて。
使徒、殲滅。
うんうん、いいねぇ。
あの娘のたべっぷりは見ていて気持ち良いもんだったよ、わきあいあいと4人とも綺麗だったね。
それに昼間、営業できなかったからね。
使徒?なんだいそりぁ?俺の知ったこっちゃないね。
屋台ラーメン屋のおっちゃんの世間話から抜粋
第11の使徒、襲来事実は現在未確認。
ネルフ本部へ直接浸入との流説あり


山、重い山、時間を かけて変わるもの
空、青い空、                  目に見えるもの
水、気持ち良いこと、 碇司令?
花、同じものがいっぱい、                  いらないものもいっぱい
空、赤い、赤い空、 赤い色はキライ
       流れる水
血、血の匂い、        血を流さない女

      赤い土から作られた人間、男と女から作られた人間

                                街、ひとの作り出したもの、
                                エヴァ、ひとの作り出したもの

            人はなに?神様が作り   出したもの?
            人は人が作り    出したもの?
          
私にあるものは命、心、            心の入れ物
エントリープラグ、 それは、魂の座
これは誰?これは私、  私は誰?
私は何?
私は何?
私は何?
私は何?
                   
私は自分、この物体が自分、自分を作っている形、目に見える自分

でも私が私でない感じ、とても変

     体が溶けていく感じ、私がわからなくなる

私でない人を感じる、                       誰かいるの?この先に?

          碇君?この人知ってる、葛城三佐、赤木博士、
                 みんな、クラスメイト、弐号機パイロット、碇司令?

     あなた、だれ?
              あなた、だれ?
                       あなた、だれ?


「どう、レイ。始めて乗った初号機は?」
「碇君の匂いがする」


「シンジ君、どんな気分かしら?」
「ママのおっぱいはオイシイですかァ、シーンジ君?」
「アスカ、邪魔しないで」
「そのとおり、アスカのほうこそ弐号機はどうなのかなァ?」
シンジは面白そうに言う、アスカは何かを感じ取ったのか集中し始める。
「初号機の時とあまり変化ありませんね」
マヤがいう、ミサトはその言葉を聞き、ふと考える。
「どうして弐号機だけ違うのかしら」
ミサトのつぶやきに誰にも聞こえず、リツコがモニターを見て言う
「例の計画、実行できるわね」
「例の計画ですか?」
マヤに顔色を曇らせて答える。
「そう、備えは常に必要なのよ」
「それは分かります。先輩を尊敬はしますし、仕事もします・・・けど・・・納得はできません」
「潔癖症は辛いわよ。人の間で生きていくがね」
「・・・・」
「人間。汚れた時に分かるわ、それが」
黙々と無感情に言うリツコ、零号機内ではシンジが目を閉じ集中していた。
「何、この感じ?チガウの?綾波?」
赤く、漂う物。大きな瞳、人・・・何の?ダレの?青い髪、そして・・・白い素肌?
ダレ?へんなカオ、へんなカオ、へんなカオ・・・綾波?
ギョッと目を見開いているレイを眼の奥に感じながら、肩を震わせてクスクス笑うシンジ。
レイはヒトではないのだろうと感じ、知りはしていたがココ、零号に乗って体感できたことがウレシイらしい。
「パイロットの神経パルスに異常発生!」
「精神汚染が始まっています、ぁ?正常に戻ります」
「何?どうなっているの?」
停止した零号機をリツコとレイが冷たく見下ろしていた。
アスカ、目を閉じ集中している。エヴァから何かを少しでも感じ取ろうとしているようだ。
薄暗い部屋の中、顔をうつぶせにしてベットに寝ているアスカ。
「弐号機・・・・暖かい感じがする。・・・・ママ?」
ゆっくり眠りについていったアスカ、どんな夢を見るのだろう?


冬月は将棋をひとりでうちながらゲンドウに尋ねる。
「アダム計画はどうなんだ?」
「2%の遅れもない、順調に進んでいる」
「委員会もうるさく言ってきているぞ、いいのか?」
「やつらは喚く事だけしかできないさ、いわせておけばいい」
「ロンギヌスの槍は?」
「問題ない、作業はレイが行っている」
「あとは、初号機だけか・・・」
「・・・・・・」
「あと、零号機のこともある。もう零号機は戦力として期待できそうもないそうだ」
「もう、時がないと言う事か・・・」
「コアを廃棄するしかないと言う事だが・・だが、ダミープラグの方はどうする?」
「続ける」
「何!?だが、初号機には搭載できないぞ?」
「この際、仕方あるまい、弐号機に搭載するしか道はない」
ゲンドウの声がその部屋に重く、響いた。
 


「アスカ、どうかしたの?」
「・・シンジィィ!あいつぅぅっっ」
アスカは開けた弁当箱の中身を見て叫ぶ。ヒカリがその中を見るとセロリと山芋づくしだった。
「くぅぅ、むっかつくぅっ!昨日のこと根にもってるわねぇー」
アスカはキライなものばかり入れたシンジに文句言うため、3バカを探す。
いない、屋上だろうか?いやそこも違う、今日はシンジの発案で3バカは中庭で昼食を取っていた。
そう、その原因は昨日の夕食時にさかのぼる。
「フン、フンフン。タン、タン、タン。るんん、るるん」
シンジがエプロンを着こなし夕食を作っている、
アスカはリビングで雑誌などめくってゴロンとなんにーもしてない。
ちょっとは手伝うという気は起きないのだろうか?
同居が決まって初日はミサトの夕食だった、アスカは次の日の朝からすぐに出て行く決意をしていた。
が、次の日の朝食はシンジの作ったものだった。
まさに地獄から天国、ミサト、シンジの話しから
当番制は形骸化していることを知ったアスカの心の中のそろばんは簡単な暗算をした。
そのシンジの似合いすぎるエプロン姿を何気なく見てみるアスカ、長すぎる髪が背中の帯に挟まっている。
「フン、フン。タン、タン、タッ」
そんなことは気にしてないシンジ、アスカはちょっといたずらをしたくなった。
「男のくせに私のより長い髪ねぇ・・・」
つぶやき、キッチンに入っていく。
「今日は何?」
「あっ、えっとねぇー。サカナだよ、骨がいっっぱいあるらしいから食べるの大変そうだけどね」
何気なくシンジに近づき髪を触っていう
「そう、いっっぱいねぇ?アンタ、ホント長いわねーー。三つ編みしてあげるわ、ちょっと椅子に座って」
「え、そう?あとは並べるだけだど」
お皿を用意したり箸を出して来たりとキッチン内を動き回る、アスカはもうすでに編み始めていた。
シンジの後をついて歩きながら編む。
「アスカ?なにしてんの・・」
帰って来たミサトはシンジの後を、金魚のフンみたいについて歩くアスカを見ていった。
「あ、おかえりミサト。見てワカンナイ?髪を編んであげてるのよ」
「そう、まぁいいわ。アスカもたまには女の子らしいことすんのね」
そういって部屋に入っていった、アスカは憮然とした表情。その言葉はミサト自身にもあてはまる。
ここまでの所には何の問題もなかったのだが、アスカはその後1時間近くもシンジの髪をいじりつづけた。
そうしてシンジがお風呂に入る時になる、もちろん髪を洗うわけでアスカに長い髪を1時間も弄くられた結果・・・。
「もぅ、ほどくのに何時間かかるのよぅ・・」
シンジに泣き言を言わせるほど、難解な編み方でアスカは笑いながら風呂をあがって部屋に消えていった。
シンジが寝たのはそのあと2時間後だったという・・・。
そして今日の朝、シンジはアスカに仕返しをすることを誓い。
その第一段階として、お弁当を中身を大幅に変更した。
いつも入れている肉類ではなく野菜中心の・・・、しかもアスカが嫌いなぬるぬるしたもの、
どうしても慣れない苦いもの、そんなものでお弁当箱の中は占領されていた。
「くぅ、どこいったのよぅぅ!あんの、バカァァァァ!?」
悔しがるアスカ、ヒカリのお弁当を分けてもらいながら叫ぶ。
ヒカリはヒカリでシンジの作った復讐弁当を食べながら闘志を燃やしていた。
「うん、この隠し味は何なのかしら・・・」
じっくり食べて今後の参項にする、トウジ絡みならアスカ以上にシンジに敵意をもつ人物がここにいた。


マヤとリツコが仕事をしている、そろそろ休憩に入るらしい。
そこへすでに休憩し始めたミサトがコーヒーをもって現れた。
「明日、何着てく?」
ミサトの問いに振り向きもせずに答える。
「黒の奴よ、ミサトは?」
マヤに指示を出し、早く仕事を一段落させ休憩に入るつもりらしい。
「んーーー、どーしょっかなぁ・・・」
頭の中で持っている服を思い浮かべ答えを探す、なかなか見つからない。
「オレンジの奴は?この頃着てないでしょ」
リツコの提案、ミサトはコーヒーを一口飲む。
「アレはぁー・・ちょっちワケありで・・」
言葉を選びながら却下するミサト、額に汗をひとつ流している。
「きついの?」
リツコの容赦ない言葉がとぶ。


ヘリにのっている冬月とゲンドウの会話。
「あの男はいいのか?」
「まだ、使える。ただ・・初号機のことが気にかかる」
「そうか、計画の遂行にはかかせないものだからな」
「・・・」
それっきり、沈黙が2人の間にながれた。
キィィ、古ぼけたドアが開く。
「わたしだ」
「あんたか」
「マルドゥックの機関とつながる108の企業のうち106がダミーだったよ」
「そしてここが107個目というわけか」
「この会社の登記簿だ」
見知った名が連なる。
「貴様の仕事はネルフの密偵だ。マルドゥックに顔を出すのはマズイ」
「ま、何事もね。自分の目で確かめないと気がすまないタチだから」


「ねぇー、ミサト。香水かしてよ」
「ダメ、コドモのするもんじゃないわ」
アスカはリビングでペンペンとゴロンと転がりながらミサトに言う。
ミサトはシンジの様子を見に行く、何しろ明日は墓参りなのだから・・・心配していたのだ。
「しんちゃん、明日ちゃんとし・・」
「あっ、こっちとこっちどっちがいいとおもいますー?」
部屋にいっぱい服を散らかしてはしゃいでいた、そう、ミサトの心配は現実の物となったのだった。
「おとなしい服にしなさいよ・・・」
そんな言葉をかけたミサト、はたして効果があるのかは甚だ疑問だったが・・・。
「じゃ」「いって」「きますっ♪」
ミサト、アスカ、シンジとペンペンに声をかけて出かけていった。
3人とも着飾っている、シンジは墓参りなのにとてもハイテンションだ。
ちなみにその次がアスカで最後のミサトはあまり行きたくないようだ。
30が目前迫り、多くの結婚式をこなさなければならないことに嫌気がさしているらしい。
今朝も結婚式にきていく服を最終的に2つにしぼった所、シンジに意見でも聞こうかと持っていくと。
「どっちが良いとおもう?」
「着れるの?」と、切り返されてしまった。
しかし、しょうがない。
この家で一番女らしいのはシンジなのだから・・・。
アスカ、容姿はアイドル並み。
性格はとてもきつい。
成績は大卒だが日本語の読み書きの関係で下の中。
ミサト、容姿はサービス可能。
性格はとてもズボラ。
仕事はいままでのところ優秀。
シンジ、容姿は不思議な魅力がある。
性格は残忍な天気屋。
成績はトップ。
まぁ、シンジは妖艶的に女らしいトコロもあるし女らしいといればそうなる。
アスカはねこ被っていた時期は転校時の自己紹介から数日だけだったし、
ミサトと共に暮らし今はミサトに近づいてきている。
「しんちゃーん、後片付け頼んだわよーん♪」
「シンジ、ちゃんと片付けときなさいよ!」
言い方は違えど中身は同じなのである、どちらも女性ながら・・・イヤ、手伝うことすらしない。


シンジは広い墓地を歩き、ユイの墓を探す。
見つけると腰を落とし、手に持っていた花束をそなえる。
ちょうど声が背後からかかる。
「なんだ、その格好は?」
ゲンドウはいつもの表情で、しかし気づく人なら気づくという程度眉をひそめて言った。
「ああ、父さん。似合う?」
シンジは黒い喪服と言うよりはドレスの裾を持って言う。
「そういう問題ではない。ユイの墓参りには相応しくない」
「・・・そうだね、でもここの場所さえ忘れちゃって。さがしたよ」
「何年ぶりだ?ここに来たのは?」
「来てないわけじゃないと思うけど憶えてないな、それにピンと来ないよ、母さんの顔も、声も、憶えてないし」
シンジは振り向き、ゲンドウを見る。
「人は思い出を忘れることで生きていける。だが決して・」
ゲンドウの口元を見ながら、もしかしたら思考を先読みしながら、かもしれない。
「忘れてはいけないことがある、それを・・母さんが教えてくれたんだね?」
内心、驚きながらも無表情、無感情に答える。
「・・ああ、私はそれを確認するために来ている。」
「写真とかないの?」
「残っていない、この墓もただの飾りだ、遺体はない」
「そう、現実にはもう、母さんに関係あるカタチあるものは何もないんだね。」
「そうだ、すべては心の中だ。今はそれで良い」
「そう、心の中に閉まってしまったんだ?」
シンジの問いには答えず待機させてあるVOLTに向かうゲンドウ、振り向き一言問う。
「シンジ、何を考えている?」
「さぁね」
ふぅん、恐ろしいの、ワタシが?
ゲンドウを見送る、VOLTにはレイが搭乗していてこちらを見ていた。
アスカが玄関からリビングに向かう、その音の元を求める様に。
夕日が差しこむキッチンでチェロを弾くシンジ。
「ふぅーん、アンタそんなの持ってたんだ?アンタのイメージじゃないわね」
「そう?これでもイケルほうだとおもうよ」
「そう、ペンペンは気持ちよさそうにしてるわね。どうだったのよ、墓まいりは?」
「どうってことなかった。うん、でも、父さんと話せて良かったよ」
シンジはじわじわと胸の奥から笑いがこみ上げて、ついに笑い出してしまった。
「?」
リビングで寝転がったアスカは、不思議そうに笑うシンジを見ていた。
ペンペンはあったかい夕焼けに眠ってしまった、シンジが夕食を作っていると電話が鳴る。
「だれから?」
風呂から上がったアスカ、シンジに電話の相手を尋ねる。
「ミサトさんから、遅くなるからって。牛って夜行性じゃないのに」
アスカは苦笑しながらいう、瞳は何かの意思が宿っていた。
「きっつぅ、オトコでもあさってるのかしらね」
「引っかからないっ、だってあのズボラさじゃね」


シンジは雑誌に目を落として、アスカは何を考えているのか机にべたっと突っ伏している。
「シンジ、キスしない?」
アスカがいきなり顔を上げて言う。
「キス?どうして?」
アスカに顔を向けようともせず、目は相変わらず雑誌の文字を追いかけている。
内心はすこし興味を引かれたが・・・。
「暇だからよ、こっち見なさいよ」
「暇だからって、そんなに飢えてたの?牛さんみたいに?」
シンジはアスカにニヤアアァァァっと笑い聞く、アスカの本能はその笑いに何かしらの危険を感じたが言う。
シンジはただ楽しそうに微笑む。
「飢えて何かないわよ。絶対キスするわよ、ミサトと一緒にしないでよ!」
「それもそーかな、そう、しよっか?」
「ええ、いくわよ」
アスカは立ちあがりシンジに近づいていく、シンジも立ち上がった。
「歯、みがいてるわよね?」
「うん」
「・・・・目閉じなさいよ」
「気にしないよ」
「わたしは気にするの!」
「アスカが閉じればいいんじゃない?」
「・・・いいから、閉じなさい!」
なんだか膨れながらもしぶしぶ目を閉じるシンジ。
「鼻息こそばゆいから息しないで」
シンジの鼻をつまむとアスカはそう言って唇を重ねた。
「んっ!?」
ピチャ、水音?
「!」
ダンッ、ドサッ・・・何の音だろう?
「んぐっ、んぐぅ・・・」
ピチャ、ピチャ、ピチャ???
「はぁ、ん・・・・はぁはぁはぁ」
ダッと洗面所に駆けこむアスカ。
「なによぅ、もぅ・・・」
キッチンで立ち上がりながら乱れた髪を整えるシンジ。
「頭、床にぶつけちゃったじゃない」
ぶつぶつと文句を言っていると玄関のほうからお呼びがかかる。
「シンジ君、ちょっと手伝ってェーー」
タタタッと行くと、汗だくのミサトが引っ張っているものがある。
良く見ると加持のようだ。
結婚式であった友人にまたもや結婚式の招待状を手渡されたらしい。
しかも、ネルフのお偉いさんということで仲人という大役を仰せつかったのである。
「くぅぅぅ、仲人なんてバッくれてヤルゥ!!!」
ミサトは結婚式のはしごはとてもキライなお年頃なのであった。
「葛城、もうその辺にしといたほうが・・・」
「あんですってぇぇぇっっつ、のめ、のめぇぇぇ!」
・・・・と、加持が潰されてしまった様だ。
しらふなミサトは、本当に珍しくほっておくのを止め家に持ち帰ってきたと言う事らしい。
「だれ?」
「しんちゃーん、じゃ、あとはたのんだわよーん」
奥からアスカが出てくる、入れ違いにミサトが風呂に入っていった。
「加持さん」
「クワクワッ」
シンジが答えながらリビングのソファーまで引っ張っていく、ペンペンが冷蔵庫から出てきた。
「加持さん!ミサトの仕業ね、加持さんも大変ね・・・」
ちらっと加持の醜態を見たアスカ、憧れの人のその姿は見たくないらしく早々に部屋に帰っていった。
「あららぁ?嫌われましたね、加持さん」
ペンペンはとことこ歩いて風呂に向かって行った。
「ああ、その様だな」
ぐったりしていた加持がそう言った、相当の狸だ。
「・・で、なにか話したい事でもあるんでょ?」
「まあ、な・・・その前にちょっと風呂借りるよ」
シンジと話したかったのだが、酒の匂いを取るほうが優先された。
「ええいいですよ、ペンペンが入りましたけど」
この家の主はすでにシンジのようだ、ミサトの許可は取らないらしい。
「ああ、そうかい。この匂いをさっさと取りたいからね」
酒くさい背広を手早く脱ぎ、扉に手を開ける。中ではなにか音がする。
リビングで加持の背広などをまとめながら、昇進祝いにトウジからミサトに送られたジャージをとりだす。
加持の代わりの着替えはこれしかない、あとはまともに女物ばかりの衣服しかない。
「あ、・」
シンジは何かさっきから心の片隅で引っかかっていたことを思いだした。そのとき、加持は風呂の扉を開けた。
「クワッ」
扉を開けたと同時にペンペンが加持の足を突つく、おもわず加持はペンペンの頭を撫でてやる。
「このスケベ!死ねー!」
ミサトの叫び声。
バコッッ、破壊音。
ぐたっっっっ、加持。
慌てて加持の後を追ってきたシンジの見たものは、すでに頭にたんこぶを2桁はつけている加持と、
体にバスタオルも巻かないでとどめの一撃を刺そうとしているミサトだった。
「ミサトさん、その・」
「えっ、きゃゃゃゃぁぁぁ!?」
慌ててお風呂に逃げ込むミサト、
シンジは気絶した加持をリビングに引っ張っていくと言う雑務をこなさなければならなかった。
 


「あれ?しんちゃん、おだしかえた?」
「ええ、リツコさんに貰った奴」
ミサトは朝からビールを片手にキープしながらお味噌汁を飲んで言う。
「・・・・」
シンジは最強の敵を睨みながらため息をひとつつく、
もちろんその敵というのはミサトの片手ががっちりキープしているもののことだ。
家計を預かる身としては自称保護者の大好きなえびちゅの消費量を少しでも減らしたい・・・が、
このことで以前、シンジの持つ体術でミサトと相対したことが何度もあったが
ミサトの自称酔拳に何故か一度も勝利をおさめられないのである。
「つっめたぁーい、何よこれー沸かしてないじゃない!」
バスタオル一枚で飛び出してきてシンジに人差し指をむけるアスカ、シンジはきょとんとしている。
「アンタ、ちゃぁぁんとしておいてよね!」
「お風呂に入りたかったら自分でやっておけば?」
「何よ、このくらいのことできないとお嫁に行けないわよ!」
シンジの鼻先に指を突きつけて、男のシンジに何か意味のないことをのたまう
「アスカ・・・・アンタはどうなのよ?」
ミサトが突っ込む、シンジは心得ているらしく心の中で「(行き遅れ決定が、2人っと・・・)」と静かに悟る。
それ以前の問題としてミサトの自覚のない質問にはあきれてしまう。

「どう?シンジ君のシンクロ率、回復した?」
「・・・・これです」
マヤがちょっと臆病に指差す。
「・・・なにコレ?今までの中で最低じゃない」
「シンジ君、ちゃんとやっているの!?居残りね」
リツコのヒステリックにいう、司令からつつかれているのだ。初号機を常に安定した状態にしておけと。
「はい、やってます」
目をとじて静かに答える、焦っている様には見えない。
「このテストは遊びじゃないのよ!?」
リツコにはその落ち着いた顔がしゃくに障ったようだ、
集中しているのではなく、眠っているのではないか?と疑問をもつようなそんな顔だったからだろう。
と、唐突にその顔が歪んだ。
「うっ、くぅぅぅぅぅぅぅ。うぁぁぁぁぁ!!」
シンジの叫び声、ミサトが声をあげる。
「何!?どうしたの!」
リツコが考えられる最悪の事態を口走る。
「まさか、エヴァからの汚染!?」
マヤが報告する、騒がしくなる。
「いえ、違います。このままではパイロットの状態は危険です!」
「何、どうしたの!?」
アスカが慌てて尋ねる、レイはすっと目を開けただけだ。
「パイロット、意識を失いました、脈拍などは正常です」
「プラグ、インジェクトして!」
「救護班、はやくして」
ミサトが走って出ていった、リツコは深く思考の海に沈んでいた。
その視線の先には初号機のシンクロ率の記録が表示されてあった。
「なぜ?・・・」
そうつぶやくリツコに声をかける人物がいた、マヤである。
「先輩、急ぎましょう」
「えっ、ええ」
気を取りなおし初号機のデータの解析を始めたリツコ。





結局、原因が不明なまま数日が過ぎていった。
「ねぇ、レイも一緒に行きましょ」
アスカが物凄くご機嫌になり、レイ、ヒカリと一緒にいることが多くなった。
「まぁ、気を落とすなって・・」
「そや、気にすることあらへん」
ケンスケ、トウジはシンジをなぐさめていた。
ただ・・ケンスケにはヒカリの刺すような視線が痛かったらしいのだが。
当の本人は、と言えば・・・終始シンジのまわりにいた。
「ゲーセン、いこうや。落ち込んどるなんてシンジに似合いやせんて」
と、普通なら女の子にいうような台詞を頻繁にシンジにかけていた。

使徒、襲来。その使徒は突然現れ、ただ宙に浮いていた。
「富士の電波観測所は?」
「感知していません、突然。第3新東京市上空に現れました」

「作戦は?」
アスカがミサトに問う、様子見しかないだろう。ミサトの思考はそう弾き出した。

「3機とも様子を見るだけね・・・敵の攻撃方法がわかんないから」
作戦部長としては消極的な作戦をだすしか手はなかった。

「僕が先行しましょうか?」
シンジがいう、レイはちらっとシンジのかおを覗き見た。

「そうねぇー、シンちゃん。あとがないもんね」
アスカが挑発する様にいう、余裕があるからだろう。シンクロ率に。
使徒の殲滅を最優先にして来たが、余裕が出来た彼女は
『私が一番であり、私は懐刀。それでいい』と思うようになってきていた、
レイとも行動を共にする所を見れば周囲も彼女の考えている事がわかるだろう。
シンジしかり、ミサトしかりであった。

「私は・・」
レイはこの所、自分をつれまわす彼女に好意的な感情を抱いていた。
道具としてしか見てくれなかった人々よりも、すでに彼女は確実に上であった。
だからと言ってゲンドウにはむかうなどと無某な事はせず
アスカとのコミュニケーションで沢山の物を得ていくことが
嬉しいと感じていた。そんなレイではあったが不安もしていた、
彼女と離れる事、彼女が自分を否定する事など、その原因になりうる
自分の『道具』としての部分にいらつき始めていたのだ。
だからこそ、自分の居場所を求めていた。アスカの側に。

「さらに後方の支援ね・・・」
リツコは気づき始めていたレイの変化を。
しかし、ゲンドウの意にそぐわなくなってもいいと思っていた。
妬み・・・彼女にとってレイのゲンドウ離れは歓迎すべき事態なのだから
あのゲンドウにとって、妻の亡霊を今だ追い続ける男にとって、
レイの拒絶は計り知れない打撃であろうから・・自分の切り札をレイに期待していた。
アスカとレイ、この組み合わせがリツコにとっての使徒や司令に対する
最強のタッグになってきていた。だからこそレイの姿勢を静観していた。
シンジはリツコにとってジョーカーになりえる人物であったが、
まだリツコはそれほど注意してはいなかった。
なぜならシンジほど分からないものは・・・関わらないほうが良いのだ。
リツコの科学者的な考え方では到底、許容できることではなかったが。

「使徒は直径600mまでになり、市街の一部を飲み込んで停止。
その後、沈黙を守っています」
マヤの報告、カタカタとノートパソコンを叩きながら眼下の使徒をみる

「どういうこと?」
ミサトの質問、身を少し乗り出し使徒を睨みながらいう

「今はまだ分かりません、先輩が説明するそうです」
マヤの返答、夕日が沈みつつある。この都市も薄暗くなりつつあった。

「そう・・・」
強風がミサトの髪を遊ぶ、眼下の黒い使徒を睨みながら思い出していた。

じりじり近寄っていく、使徒に変化はない。
「足止めします」
そうシンジは、いって使徒に向けて銃をはなった
「消えた!?」
ミサトは主モニターを見ていった、掻き消えた使徒と思われるもの。
「使徒発見、初号機の直下です!」
「なんですって!」
急速に広がっていく黒い陰、ずぶずぶと沈み始めた。
「攻撃がききませんよ!」
シンジが何発も撃ち込むが変化なし、アスカ、レイが駆けつけた頃には
ちよっとした湖ぐらいの大きさになっていた。
「なによ、これ!?」
陰が弐号機の足元に広がってきた、零号機と共にビルに貼りつくがビルも沈み始めた。
体半分沈んでしまった初号機、シンジは唇を一度なめてじっとしていた。
「どうにもならない・・・」
絶望というよりは自分を飲み込みつつある使徒への好奇心が大きく心の中を占めていた。
「「シンジ君!」」
「シンジ!ちょっと、ねぇ!?」
「後退よ・・」
「でもまだシンジが・」
「後退しなさい!」
くっ、と俯いてミサトはそう命令した。





「時間がなくなってきているわね、ここまでかぁ」
おきらくなことを言っているシンジ、闇に落ちてから時間の感覚がわからない。
「1日も経っていないのね・・・」
エントリープラグ内で時間を知る方法がないわけではない。
「ん?浄化も限界かぁ」
時計をみているとにごってきているLCLに気がついた。
目をとじる、意識が鈍くなってきていた。


がたん、ごとん・・・・

目に光が入る、夕焼けのひかりらしい・・・

黒いかげ、だれかの・・・両手で体を抱き、顔を俯かせていた

「誰?」
席を立つ、そしてその人物の目の前に立ちいう

「君、ここに来たの?ここは寂しいよ、でも傷つく事もない」
俯いていたひとが顔をあげる、シンジだ。

「ああ、『シンジ』か。ありがとうお礼をいっておくワ」
きょとんとした後、その顔を認識した

「お礼?僕には君を止めれなかった。それだけだよ・・ミサトさん、元気?」
また顔を俯かせた、ミサトのことが気になったらしくきく。

「『家族』か気になるんだ?シンジ」
コドモが新しいおもちゃを手に入れた時のようにワラウ。

「・・どうでもいいだろ」
ビクッと体を震わせる、トラウマが一瞬よみがえった様だ。

「記憶をよんでみてよ」
唇を一回だけ舐める、シンジに手を伸ばし、長い髪のかかる肩から手を入り込ませた。

「・・・な・・・・に?」
体を逃がそうとする、ワタシは強引に押し倒す。シンジの髪留めが外れて落ちた。

「だから、んっ」
シンジの怯えた顔を掴む、涙が溜まっていた。怯えていた。怖くて。

「!?」
唇がかさなる、くちゅ、くゅっと音がもれる、ぎゅっと体を抱かれるシンジ。

「はっ、んっ・・・どう?きおくの味は」
体をはなす、乱れた髪に夕日が暖かそう当たっていた。

「ぅっ・・うっ・・・うぁぁぁぁ」
涙が後から後からあふれてくる、凄く怖かった。でも、嬉しかったのだ。

「どーぅ?ミサトさん元気だったよ」
自分の髪を整えたら、シンジの髪留めを拾った。

「      」
声が出ないほど涙を流し続けた、嬉しすぎて、抱きしめられたことが。

「・・・・・・」
そんなシンジを見つめていた2つの目、手を伸ばすシンジに。

「      」
誰にも、誰にも抱きしめられたことなかった。
痛くて仕方ないのに蹴られて、刺されて、酷いことされて・・・冷たかった。

「とめてあげる」
手がふれるとビクッする、構わず髪をさわって髪留めをとめる。

「・・・・・・・・・・・・・・ありがとう」
抱きしめられたことに、髪をとめてくれたことに、お礼をいった。

「じゃね、ギブアンドていく、ココのこと教えて!」
ワタシは微笑んで言った。その言葉に従いシンジはポツポツと話始めた・・・・。

シンジの髪留めは夕日に当たり光を反射させていた





「何、これ?こんなものに乗っているの・・・私」
恐れつぶやく、しかし疑問にもおもった。エヴァのこのあたたかさを。
「なんてものをコピーしてしまったの、私達は」
視線がはずせないまま、リツコはそうつぶやいた。
「エヴァがただのコピーじゃないのはわかる、でも・・・
全てがおわった後、ネルフはエヴァをどうするつもりなの」
ミサトは使徒の血をあびながら雄たけびを上げるエヴァを見ながらいった。




「使徒に心の概念があるのか不明ですから」
「しかし、今回の事件にはエヴァを取り込もうとした新しい要素がある」
暗闇の中で尋問を受けるミサト、こんなことに付き合わされる破目になった原因はというと・・・。
「むにゃ、むにゃ・・」
寝返りをうつ、だらしなくよだれを垂らす・・手でぬぐった、と、ベットで快眠中だった。



「消滅!たしかに消滅したんだな、第2支部が」
電話をとって冬月が再度確認する。
「はい、確かに消滅です」
青葉がモニターを見ていった。

「3、2、1・・」
マヤのカウントの後、画面いっぱいに爆発による光が満ちる。
「タイムスケジュールから推測して、ドイツで修復したS2機関の搭載実験中の事故だとおもわれます」
暗く広い部屋の中、床に設置した大きなモニターを見て説明する。
「よくわかんないものを無理して使うからよ」
ミサトのその言葉にリツコがこたえるように言う
「それはエヴァも同じだわ」

長いエスカレーター、ミサトとリツコがのっている
「参号機、どうすんの?」
「まだ決まってないわ」
ダミーシステムのことを詳しく知りたいかったミサトだが、リツコからは聞き出せなかった様だ。
後で加持にでも尋ねるだろう。



ゲンドウが赤いプラグを見上げている、うしろにはリツコが立って説明していた。
「まだ、微調整が必要ですが・・」
質問する、振り返りもせず。リツコの目も見ず。
「それで、エヴァ弐号機には搭載可能なのか?」
いつものこと、ただ答える。
「これは機械であり、パイロットの真似しか出来ません」
ゲンドウの目はプラグを見据えたまま
「かまわん、エヴァが動けばそれで良い」
ゲンドウはあくまで実質だけを求めていた

場所はうつる、巨大な空間に。
「レイ、食事にしよう」
ゲンドウは、中央の黄色い液体が満たされた管の中にいるレイに声をかけた
「はい」
リツコは冷たくその様子を見ていた、床からの光でその顔には不気味な陰影がついていた。



「なんや、そないなこといってもな。おんなんちに一人で行くのもなぁ・・・センセ!」
「・・・じゃ、わたしが・」
トウジがシンジを呼ぶ、ヒカリは心にかなりの負荷がかかった。
「綾波んち、一緒にきてくれへんか?」
なに?と近づいてきたシンジ、トウジの誘いにほんの少しだけ笑って了承した。
「ん、いいよぉー」
「・・鈴原」
2人で教室を出ていってしまった、アスカがいつものようにヒカリに声をかけ一緒に帰ろうとする。
「ヒッカリー、帰ろ」
「・・なんで・・・・」
気づかないヒカリ、アスカは肩を掴みゆする。
「ねっ、ヒカリってば?」
「・・・アスカ?」
気がついたようだ、アスカはほっとしヒカリの手を持って、教室の出口に向かおうとする。
「アスカッ」
ヒカリは力いっぱいアスカをひきとどめた、ぐいっと引っ張られたアスカ。
「な、なに?どうしたのよ?」
「アスカっ・・・その・・」
意気込んだわりには消極的にちーさな声で話すヒカリ
「だから、なによ?」
親友の相談を断るにはいかない、じっと待つ。
「アスカッ・・・って、つきあってるの?」
「だから誰と?どうして?なんなの?」
不思議そうな顔でヒカリに問い返す
「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・碇くんと?」
「ど、どうしてそうなのわけぇーー!?」
アスカの驚き様に引きながら、いうヒカリ。
「だっ、だって同居してるんでしょ?」
「しょーーーーーがなくっ、よっ!あの姿を見ればあいつの趣味がわかるでしょ!」
アスカの目がすわっている、アスカの握り締めた右手が心なしか震えてる、
アスカの頬がぴくぴくしてる、ヒカリはイケナイ話題を自分から出してしまった様だ。
「あ、はははははははははははは」
アスカの最後に台詞に、壊れた愛想笑いを続けるしかなかったヒカリ。哀れ。

「綾波んちってたいそーなトコロやなぁ」
周りの荒廃した集合団地とこの家を見ての感想をのべる。
「いいんじゃない?ゴミゴミしてるところよりはさ」
ミサト、アスカと部屋と比べていうシンジ、残念ながらトウジにはこの皮肉は通じない。
そう言いながらゴミを片付けるシンジ、黒いゴミ袋に次々に入れていく
「お、えじゃましとるでぇ」
帰って来たようだ、トウジが声をかける。
「あ、おかえり。ゴミ、片付けといたから」
ゴミ袋を示していう、綾波は珍しく取り乱したような雰囲気で、
「え、」
走って、机の所まで行く
「碇君、ここにあった・・もの」
紅い瞳がじっとシンジを見つめる
「キッチンの所にあるよ、大切なものなの?」
シンジが興味をひかれ、尋ねた。
「ええ」
いつもの雰囲気で答えた、本当にいつもの雰囲気で。
「帰ろうか、トウジ?」
しげしげとまだレイの部屋を見ていたトウジに声をかけた。
「あ、ああ」
「じゃ、またね。綾波」
キッチンに向かうレイに声をかけて帰っていった。
「さよなら、碇君・・」
少し思考した後そういったレイ、また・・・と言うには浅い絆だからだった。



「臆病者達が集い、形ずくっている街だからな。誰も傷つくことがないよう、傷つけないよう生きる臆病者が、
住むにはいいトコロだよ・・・まさにパラダイスだな」
冬月が窓の外を眺めながらいう
「楽園か、そんなもの現実にはどこにもありはしないよ」
単調にこたえるゲンドウ
「臆病者のほうが長生きできる。それもよかろう」
どこか達観したような言葉をはく冬月
「第三新東京市、ネルフの偽装迎撃都市。遅れに遅れていた第7次の工事も終わる」
冬月がゲンドウに話をふるが・・
「そういえば、委員会は四号機の消滅に焦っていた様だが」
ゲンドウはニヤリともせず、ぴしゃりと返す
「老人達にはいい薬だ」
ゲンドウ達が乗る列車の窓から見ると、集光ビルが集めた夕日の光がジオフロント内を照らし出していた。

加持が自動販売機の前でマヤに迫っている
「今夜、どう?」
ファインダーを胸の前で両手に持ち、加持との間に壁を作る。
「え?・・・いえ、私は遠慮しておきます」
マヤには逃げられた様だ、入れ替わりにミサトがやってくる
「お仕事、進んでる?」
のらりくらりと目を逸らす。
「まぁ、ぼちぼちだな・・・。」
キリリと、迫るミサト。
「この非常時にうちの若いのに手を出さないでくれる」
缶を口に当て、くいっと一口飲む。
「君の管轄じゃないだろ、葛城ならいいのかい?」
ずいっとミサトに寄る加持、平然と見返すミサト。
「これからの返事しだいね。地下のアダムとマルドゥック機関の秘密知ってるんでしょ」
「はて」
「とぼけないで」
「他人に頼るとは君らしくないな」
「都合良くフォースチルドレンが見つかるこの裏は何?」
「ひとつ教えておくよ、マルドゥック機関は存在しない。
陰で操っているのはネルフ自身だ、コード707を調べて見るといい」
「シンジ君たちの学校を?」

ちょうど通りかかるシンジ、ミサトは行ってしまった。
「シンジ君、どうだいちょっとお茶でも?」
ニヤリ、加持は軽く笑っていった
「男ですよ?まさか・・」
ふるふると顔を横にふりながら後ずさる、名演技だ。
「ちがうからな、俺は」
加持は真顔で言った、珍しく顔がひくついている。

「こんな所で缶のお茶なんですか?」
「まぁな、ちょっとそこまで来ないか?」
「何かあるんですか?」
「育てているものがあるんだよ」
スイカ畑について水をやっている加持、シンジが見るとまだ小ぶりだが実をつけていた。
「スイカ、ですか?」
「かわいいだろう、これでもなかなか手のかかるものなんだ」
「うちの家のよりですか?」
「すまんな、あそこまで手のかかるものは怠け者の俺じゃ無理なんだ」
「わかります」
「・・・・」
「・・・・・・・」
「・・・・・このまえ、行った時はすまなかったな」
このまえの時の醜態をさしているのだろう
「・・・ええ」
小玉のスイカを撫でながらこたえる
「エヴァ参号機の起動実験が松代である、パイロットのこと。もう、知っているんだろ?」
如雨露からでてくる水滴にキラキラと夕日の光が反射している
「さぁ、なんのことでしょう?」
立ちあがり加持に奇妙な微笑をむけていう
「食えないな、シンジ君は」
加持は幸運であったのかもしれない、シンジのその笑顔を見ずにすんだのだから
「・・・・誰でもそうです。本心なんてわかるはず・・・・ないですから」
くるりと周りを見て歩いていくシンジ
「だからこそ、おもしろいんだな。人生は・・」
なくなった如雨露を片手に遠くを見ていう
「そうですね、だから今は・・」
すこし間を置く
「・・・?」
加持がシンジの様子をうかがう
「こんなこと、しているんでしょ?」
シンジは懐から装飾の綺麗なナイフをだす、スイカの弦を切り、上に投げ上げる。
「ああ、バカなことしてる・・・」
加持は夕日の中、ゆっくりと落下する、黒い縞模様の、球体を目で追いながら言った。
シュン、シュ、シュン!
パシッ、シンジの手に平に落ちるスイカ。
「どうぞ」
シンジが差し出す、3等分されたスイカ。
「・・・・ああ、見事なもんだな。あとの一つは?」
「そこで聞き耳を立ててる人に」
振り返り言う、ガサッと音がした。
「あら、まだ熟れていないのね」
リツコがいつもの格好で現れた、シンジから一切れもらう
「おいおい、狙っていたのかい?」
たまたま通りかかっただけの様だ。
「知らないの?ミサトとか、みんな知ってるわよ」
リツコがそう飽きれていった、加持は秘密のスイカ畑の危機を知った。
「シンジ君・・・まだ熟れてないわ、これ」
しゃくしゃく、かじりながらリツコがそういった。そんな声も加持の耳には届いてなかった。

巨大な十字架に貼り付けにされ、空へとあがっていくエヴァ。
罪人のよう・・・、空は雨がふり、黒い雲は不安な旅を示しているかのようだった。
暗黒のボディ、十字に広げる両腕、すべて輝かしい未来を人類にあたえ、導く様ではなかった。

「フン、フフン〜♪」
ヒカリは台所にたち楽しそうに料理をしていた、雑誌を読みながら本当に楽しそう。
「おいしく食べてくれるかな・・」
料理をつくり続ける、ピッ―、やかんが沸騰した。
夕日がさしこむキッチンで、楽しそうに料理は作られていった。

「・・・・」
タン、タン、タン・・・、パシュ。
トウジが夕日がてらす運動場でボールをつき、投げ入れていた。
いつものふざけた様子はない、何かを抱え、何かを推し量っている様子だ。





「綾波かぁ・・・どないしたんや?」
もたれて振り向きもせずいう、その様子を見ているヒカリ。
「パイロットの・・こと」
ぽつりと話す、いつものように
「そないなこと・・・・・心配してくれとるのか?」
ぼぉーっとしながら話す、そしてくるりと姿勢を返したずねた。
「・・・・ええ」
無表情で話す、しかし遠くから心配そうに見ているヒカリには分かるはずもない。
「そか・・・・ありがとな」
めずらしく照れがはいりながらも礼を言う。

「シンジ、あのな・」
トウジが呼び止め話そうとする、ヒカリは聞き耳をたてる。
びくびくしながらも視線を泳がせしっかり聞いていた。
「わしな、こんどエヴァにな・」
ケンスケが大声でトウジを呼んだ
「トウジ、すごいぜちょっとみてみろっ」
ノートパソコンを操作しながらもシンジとトウジのほうを向いていう
「なーに?」
シンジがそちらのほうに行ってしまいトウジの話は途切れてしまった。
結局、トウジの話は続かず手持ち部沙汰にケンスケのほうに向かった


 


「誰?」
アスカは寝そべってきく、どーでもいいことの様に聞いているが実際はかなり興味を持っていたのだ。
「えっ、知らないの?」
シンジはエプロン姿で、キッチンでいつもの様にミサトのつまみを作っていた。
「誰よ」
アスカは繰り返しきく、やはり気になるにしい・・・顔をぐるっと回して繰り返し聞く。
「フォースチルドレンはねぇー・、っと良し♪」
話しながらも味見をする、今回のものは合格のようだ。
皿に盛り付ける、しかしミサトは今日はいない。気づいていないようだ。どこか抜けている。
「いい湯だったよ、お、上手そうな匂いだな誰のだい?」
風呂から上がってきた加持、顔をタオルでふきながら聞く。
「え、それはミサトさんのつまみ・・・・・いなかったんですね、そーいえば」
ミサトの箸を出してきたシンジは、たははと苦笑いした。
「あんた、ばかぁ?まったくりっぱに主夫しちゃって」
飽きれたアスカ、いつも手伝いをしない人がいうべきではないが。
「仲いいな、意外に」
シンジとアスカの様子を見て加持がいう、アスカは慌てていう
「な、そんなことない。私は加持さんだけだもん!」
シンジがそんな慌てた様子のアスカをみて一言いう
「誰もそんなこと聞いてないよ」
いきなり立ちあがりシンジを指差し一言いいはなつ
「う、うるさぁーい!何よ、バカシンジなんかっ」
部屋にかけこんで行ってしまった、残された2人はミサトのためのつまみを食べて話していた。
「アスカ・・大丈夫だろうか?」
アスカの憧れの人はぽつりと、そうもらした。
「今までもああだったんでしょ?じゃ、イイじゃないんですか?それより・」
食べ終わったので皿を洗いに持っていく、加持に背を向け話しつづけた。
「加持さんはそろそろダメになっちゃうんじゃない?」
怖い・・・加持はシンジにそう感じた、だから言葉を選んで答えた。
「そろそろ・・・・か?」
のどがカラカラになっていることに気づく、
今居るシンジの雰囲気はアスカと言い合っていた時のものと一線を画していた。
「ええ、時間がないって」
カチャ、カチャとやたらと皿を洗う音がキッチンに響く。静かだ。
「そういや、りっちゃんにもいわれたな」
リツコのことを3人の親友の間柄以外でそう呼んでいる事もわからずに。

「・・で、誰なの?シンジは知ってるみたいだったし」
アスカは登校する前に玄関でミサトにたずねる。
「参号機パイロットは鈴原君よ、・・・?シンちゃんって知っていたの?」
アスカの言葉にミサトは尋ねる、この情報はまだ知っているものは少数だったからだ。
「ええ、多分・・・加持さんに聞いたんでしょ。仲、イイらしいもん」
アスカにしてみれば加持をミサト、シンジに取られてしまったような感じだ。皮肉なのだろう。
「・・・・そう」
ミサトは考え込む、加持は言ってくれなかった・・・・また仕事にのめりこんでるのね、と。
「おはようございますっ!」
アスカが玄関をあけるとケンスケが大きな声で挨拶する。
「おはよう、な、なに?シンちゃんはもう行っちゃたわよ」
唖然としながらもケンスケに尋ねる。
「いえ、今日はお願いがあります」
いつになく、きりっとした感じのケンスケがいう
「おねがい?」
ミサトの頭にクエスチョンマークが浮かぶ、アスカにしても同様に。
「自分を、自分を参号機パイロットにしてください!」
頭に思いっきり下げてケンスケがお願いする。
「無理、もう決まっているわ」
アスカが横から言う、そのまま出ていってしまった。騒がしい胸のうちを隠したまま。
「そ、そんなぁーー」
落ち込むケンスケ、がくりと肩を落とす。
「そういうことなの、ごめんね」
ミサトは苦笑いをしながら、そういった。

「なんや、そうか・・・しっとんのか?」
トウジが朝の屋上にシンジを連れ出していった
「まぁね、ケンスケには・・」
シンジがそう言い出すのを聞いてトウジは
「だまっとくわ、やみうちされかねん」
そう言うと、苦笑する。シンジもつられて笑う。
「そうだね、くっ、く、あはははは」

「鈴原・・」
ヒカリはたまたま、職員室に行った帰りに
屋上に向かうトウジとシンジを見かけついてきていた、シンジと仲良く笑うトウジを見て
ムッっとすると教室に帰っていってしまった。

登校するアスカ、トウジの席をにらむ・・・いない。
「・・?ヒカリ、鈴原どこにいるの?」
気が立っているヒカリ、その質問はしてはいけないものだった。
「屋上で碇君となかよぉぉぉぉっくっ、し・て・る・わ・よ!」
ぎらぎらと殺気立った目ではき捨てる、アスカは見なれない親友に後ずさった。
「・・そう、わるかったわね」
そして、すごすごと自分の席につく。しかし視線はヒカリと鈴原の席をさまよっていた。


 


「やぁぁーーっと、おでましか。私をココまで待たせた男は始めてね」
「あら、帰って居たんでしょ?いつも」
ミサトは爪楊枝をオヤジくさくくわえて、青空にとぶ黒いそれに見ていた。
リツコがトラックから降りてきて、ミサトをほかって施設に向かって歩いていった。
「ちょっ、待ちなさいよー」
慌ててリツコの後を追い駆けていった。
リツコにとってミサトの過去のバカな話など、どうでもいい事なのだ、
いま、重要な事は参号機が動くかどうか・・・そのことだけだ。
アスカ、レイ、とリツコにとって良いカードと不特定要素であるシンジ。
これだけあれば足りるのだ、手元のカードはこれ以上あるとバランスがとれなくなってしまう
シンジを刺激しなくてもいいのだ、アスカとレイの間を不安定にしなくても、
トウジは邪魔なのである。しかし、使徒は来る。ゲンドウにとっては必要なチルドレン。
だから余計に起動できるかどうかが気になっていた。

「事故?松代でか?」
冬月が厳しい目をして電話に怒鳴る。
「はい、葛城三佐、赤木技術部長の安否はわかりません。
依然、現地の状況はつかめません。実験機の参号機などの情報もまだです」
慌しい発令所、アメリカの第二支部の二の舞になっていることも考えられるのだ。
余波がないのは爆発が大きくなかったのかも知れない、そう考えてS2機関の暴走も考えられるのだ。
「碇、どうするつもりだ?」
「まだだ、状況がつかめていないからな」
「そうか・・・」
慌しくなった発令所で、2人は沈黙を保った。

「あれか・・・」
素敵なオブジェにしてあげるわ・・・トウジクン。
「そうだ、使徒だ。必ず殲滅しろ」
ブッと回線が切れる、前衛が零号機、後衛が弐号機。
使徒はまだ接触していない・・・・緊張するものは多々いる。

「・・・・・・・いるわ、彼」
ためらい、そして・・・・・ドンッ、着弾。
「殲滅する・・・私が」
アスカにはさせたくなかった、こんなことは。
「そのために・・いるの、私は」
たとえ、その結果、恨まれても、もうひとりの私の友達に。
そしてアスカに。
しかし、力足りず組みふされる零号機。
「切断しろ、使徒の侵入を阻止しろ」
ドンッ、爆発により吹き飛ぶ腕。
「キャッァァァァァァァ!」

「殲滅します」
接近する、人型なのだから・・・・肉弾戦、そのほうが楽しめるのだろう。
「とぉりぁぁぁぁぁぁぁぁ!」
蹴りで吹き飛ぶ参号機、シンジは走り込み、ジャンプした・・・頭にねらいを定める。
「っ、くっと」
参号機が妙な動きでよけた、そして足払いをかけられた。
「・・・?」
腕、足をギ、ギギと動かす・・・妙な行動にシンジは不思議そうに見る。
「!」
ブォッ、あたりに強烈な風を巻き起こして上空に一瞬にして飛び上がった。
「なまいき・・」
肩からプログレジックナイフをぬく、着地を見計らって攻撃に移った。
しかし、伸びる腕にふさがれてしまう。
「何よっ、これぇ!?」
『シンジ』を演じる余裕がなく、本性を剥き出しにして激情のまま初号機を操る。
人型とかかって攻撃したのが裏目に出た、その結果、追い詰められる。
「弐号機をむかわせろ、初号機では役不足だ」
シンジは反抗する声を出すことさえ億劫だ。敗北・・屈辱だ。
「く・・・」
そんな呟きしかでない、目はまだぎらぎらと参号機を睨んでいる。
「しかし、碇。初号機のパワーでも足り得なかったのだ、弐号機では・・」
腕を組んだ格好、隠された口元はニヤリと笑っていた。
「ダミーを使う、シンクロをカットしろ」
ゲンドウの命令だが、マヤは反対する。
「しかし、まだ問題も多く・・」
リツコの不在が心配の主因だ、まだまだダミーに対する嫌悪感がのこっていることもだが・・。
「パイロットでは役不足だ、やれ!」
ゲンドウが強く指示する、マヤは反論することができなく命令を遂行した。
「弐号機、ダミープラグに切り替え再起動します」
初号機の救援に向かっていた弐号機がバランスを崩したよう転び停止する。
「いたぁ・・・なに?どうしちゃったの?」
不安げにメインモニターに目を移す、一瞬、弐号機の目が力強く光る。
「何?」
アスカはシンクロが切られたことを感じ、不安げに目を走らせた。

すでに弐号機は参号機の近くまできていた、初号機を攻撃する参号機を後ろから首をつかみあげる。
それから弐号機は獣のように獰猛な、そして圧倒的な力を発揮した。
「いっいやぁぁっっっっっっ!!??」
参号機の四肢をもぎとり装甲を引き千切るようにはがす、抵抗らしい抵抗もできない参号機。
「やめてっ、やめてよぉっっっっ!」
ただ、アスカは自分の無力が信じられない。
今起きていることが自分の力ではどうにもできないことだと信じれなかった。
「ちょっ、ちょっと!!!それは・!?」
エントリープラグ・・・・それを見つけた弐号機はくすくすと、薄笑いを浮かべたようだった。
アスカは初めて人の死というものを、今、理解したのかも知れなかった。
ただそれは悲しいまでの現実を見たから、そして・・・叫んだ。
「やめて!殺さないでぇーーーーーー!!!」
バシュッ、・・・・・・・・・・・
オレンジの太陽の光と、黒くおおきな影が静かにあった。
チーーーー、チチチチ・・・・と鳥の声が暑い今を、ひとつの風景を、惜しむかのように聞こえていた。