シンジの肩をかする、体勢がくずれる。
「甘いね」
アスカの蹴りがぎりぎりあたらず、シンジは体勢を直し右肩を手前に出し姿勢をとる。
「な!このぉっ」
アスカの蹴り中心とした攻撃がことごとくあしらわれる、シンジは腕で防御せずよけつづけている。
「一方的な展開ね、アスカ。もういいわ」
「もう少しだけ様子を見ましょ?」
リツコが止めるがミサトは制する、レポートを片手に肩をすくめる。
「私はまだやれるわよっ、どうして当たらないよっっ!」
受け流すのも飽きたのか距離を取るシンジ、手をブランとたらして姿勢をやめる。
「くっ、なめてんのっ。セイッッッ!」
アスカは一気に距離を詰めて横なぎに攻撃、確実にヒットする軌道だ。
「しょうがないな、くっ!」
初めて防御をするがアスカの力に押されて体勢を崩した、すかさず連携しようとするアスカ。
「おおっ!」
ミサトの驚きの声が部屋に響く、リツコも少し眉を上げている驚いているのだろう・・。
「いったいなぁ、んっ・・」
崩された体勢のまま足払いをかけるシンジ、クイッと顔をそらせて顔が笑っているようだ。
しかし、その足払いはアスカに見越されていたらしく、アスカは対空技に移る。
「甘いのはあんたよっ!」
足払いが空振りになり完全に無防備となったシンジにアスカの攻撃がせまった、
しかし、ヒュッ、アスカの眼前を高速で物体が下から上へと移動していった。
「「「!?」」」
離れたところに居たミサトの眼にも不自然な動き方に眉をひそませる。
「なに?」
「力のベクトルを一気に逆に引き戻して、そのままとんぼを切ったのよ」
リツコの質問にミサトが言葉を慎重に選んでこたえる、その答えにも納得のいかないリツコはもう一度聞く
「どうしてあんな動き方が可能なの?」
「狙ってやったのよ、あの崩した体勢も、アスカにはずされた足払いも・・」
「とんでもないわね」
2人の会話がおわり、アスカとシンジに視線を移す。
「あららぁ・・」
「終わったみたいね・」
シンジがアスカの後ろからはがいじめにしていた。
「くっ・・・・」
「もう、おわっていいですよね?」
敗者と勝者、争いの結果に生まれる2つの存在。
アスカは今まで一度も圧倒的な差での敗者になったことはない、つねに勝者として生きるよう自分にかしてきた、
義務。そうでないと権利が得れないからだ、一番であると言うこと・・・自分の存在価値が。
「良い運動でしたね、ミサトさんもどうです?」
「あら、無駄なお肉はないわよぅ?」
「でも、ビールという血液が流れているんでしょ、
ちょっとくらい献血でもする気持ちで運動したほうがよいです」
「ありゃりゃ、そりゃないわよっ。1日5本までって決めてるし・・」
「ミ、ミサト?5本も」
親友の感覚にやっぱりついて行けないリツコ、主夫としてエンゲル係数をへらしたいシンジ、
やはり、ミサトの好物・エビチュは周りに多大の影響力がある。
「アスカ、どんなかんじ?」
「まぁ、ショックでしょうけど良い経験になるでしょう」
「そうね」
ミサトとリツコは部屋を出ていった、シンジは着替えるために待機室に行ってしまった。
「くっ、どうして・・・・」
アスカのつぶやきは誰にも届かなかった。


使徒?もう来たのか・・早いんじゃないかな?
スーパーの帰り道、携帯でミサトからはいった呼び出しにふと思う、
しかしネルフに買い物ぶくろを持ったまま行くのはやだな・・・。
あっ、アイスもあるんだよね・・マヤさんに預けておこうっと。
「でも、いつも思うんだけど、どうしてオペレーター席に冷蔵庫あるんです?」
マヤに買ったアイスなどを預けると尋ねた。
「あ、あのね先輩がコーヒーにこだわりがあるから、この冷蔵庫温度調節が市販のものより広いのよ」
「へぇ、べんりですね」
じぃーっと冷蔵庫を見て違和感を覚えた、家にも在ったような・・・
ペンペンの冷蔵庫もリツコさんが関わっているのか・・・。緊張感のない考えをしたまま初号機にのりこんだ。
「あんたも来るの?」
「そうみたいだよ」
通信を開くと弐号機からアスカの戸惑っているような表情が映し出された。
「そう・・・邪魔しないでねっ!」
本人の口は強がってみせているが、直情的な性格のため表情に本心が出ている。
「まぁ、頑張ってね。初戦なんだしさ」
「サード!エヴァの操縦じゃ私のほうが上手いわよ、そこでじっとしていればいいわっ」
さっきの戦闘がショックだったらしくシンジに対する雰囲気が違う、口調は変わらないが・・・
「来たよ」
「さぁ、行くわよ。とぉりやぁぁぁっ!!!」
真っ二つになってしまった使徒、あまりのあっけなさに唖然とするシンジ。
「(よわすぎない?まぁ、今までもそうだったけどさ・・今回のは特に酷いね)」
分裂する、弐号機が攻撃される。
「な、なんなのよー!」
「どうしますか、ミサトさん?」
「ちっ、しかけてみて」
チームワーク抜群の使徒、もちろん元々ひとつなのだからあたりまえだが・・・
そんな二体にワンマンプレーを得意とする二人・・・結果は見えている、
たとえ機体の性能が特出していたとしても・・・。
「はぁー、はじめての敗戦かぁぁぁーー。シンちゃんが負けちゃうなんてねぇー、
体も心も強いし芯もしっかりしてるのになぁーーやっぱチームプレイ教えないと駄目か」
「あら、それを言うならアスカもよ?」
「ふぇーー、問題は山積みよねー。アスカはプライドがメッチャ、メチャ高いしねぇ」
「とりあえず特効薬がひとつあるけど・・」
「えっ、使う使うさっすがリツコさまさまよねー」
「ちがうわメイド・イン・カジよ」
「うっへぇー、にがそー」
「そうでもないわよ、なかなか興味深い成分をふくんでいるわ」
「リツコの保証書つきか、大変な特効薬みたいね」


「ミサトさん、今回の作戦名は?」
わいたやかんをもって聞く、湯のみを用意してお茶の葉も用意する。
「加持の特効薬にはユニゾンってかいてあったわね」
「特効薬?ミサトさんにとってはやせ薬のことですね。ユニゾンですか?でもどうしてダンスなんです?」
ピクッとミサトの耳が動く、器用なものだ。
「まぁ、日本人は形から入るものでしょ?」
「行き遅れの考え方ですね?」
ピクピクッと動く、眼がすわっている。
「まぁ、ずいぶんとおしゃべりな口ねぇ?(こ、こいつぅー!!!行き遅れですってぇっっっ!!!)」
ぐぃーっと頬を引っ張る、ものすごくやわらかく良く伸びるようだ。
「いいわくわ、へほほうひうさんはひはひふへすへほ(いいですよ、でも惣流さんがいないんですけど?)」
「ああ、もうすぐ来るとおもうわ、大量の荷物と共に」
シンジがミサトのおなかを引っ張って言った。
「のひはすね・・ほはかふよんふよんへふへ、ほうひうさんはひっははにですか?
(伸びますね・・おなかぶよんぶよんですよ、惣流さんがここに引越しですか?)」
かちんときたミサト、頬を引っ張るのをやめた
「むっ、まーね」
ピンポーン!
「誰か来ましたよ?」
「アスカね」
「ミサトーいるぅ?」
「ああ、惣流さんどうぞ」
出迎えにシンジとミサトがでていくと、両手に多少の荷物を持ったアスカがいて後ろに荷物がたくさん積んである。
「な、どうしてあんたがここにいるのよ?」
「僕の家だから・・」
「そうよんっ、しんちゃんは私の家族なのよん」
そういってシンジの肩に手を置いて頬を摺り寄せる、シンジがまともにイヤそうな顔をしたのは言うまでもない。
「な、なんですっってぇー!?ミサト・・あんた・・・そこまで飢えてたの?」
ぐいっとアスカの頬が引っ張られる、ミサトの手には力加減がない。
「いはひー、なあなはいっ(イッ、ターイ、やめろぉー!)」
「アスカ、そーゆーことはリツコかマヤにでもいってなさい」
「はーひ(はーい)」
ミサトの般若のような顔にかくかくとうなづくアスカ、シンジは楽しそうに見ている。
「ユニゾンー?こいつとぉー!?」
説明を受け終わるとダンッとテーブルに手を打ち付けて文句を言う。
「はぁ、アスカ命令よ」
ため息をつくミサト、卑怯な方法といえばそうなのだが感情的になっているアスカを黙らせるには
これがいちばんなのだろう。
「くっ・・・ふんっ」
悔しそうにうつむく、シンジと視線が合うと顔をそむけて、だされたお茶に手をつける。
「あっつーうい!」
「いっきに飲むからだよ、いれたばかりだし・・」
「・・・・・」
なにも言わないでじっーーっと睨まないでよ、シンジはそうおもいながら自分もお茶をすすった。
「おおー、うまく行くじゃないの」
ダンスを見てミサトがビールをのむ。
「昼間から何飲んでのよっ!ちゃんと監督しないとリツコにいいつけて『仕事』させるわよっ」
「あ、いーのいーの日向君に任せてあるから。
それにあたしがするより早く終わらせてくれるからたいした手間じゃないって」
こ、このひとは自慢にならないことを・・・装置のレベル設定を上げながらそうおもうシンジ。
何故かレイもここにいる、ミサトがつれてきたらしい。
「あ、僕。のど乾いたから水でも飲んできます」
ペンペンを連れてキッチンに向かった、後からレイがついてくる。
「あ、綾波も何かのむ?」
「ええ・・・みず」
「そう、ペンペンは?」
「くわっ」
「あ、ペンペンも水か」
キュッと蛇口を閉める、リビングではまだアスカが怒っているらしい。
「碇君?」
「んっ、何?」
「あなたは何か聞きたいんじゃないの?」
「そう?わかったんだ?」
「いえ、そんな気がしただけ・・・」
しばらく沈黙する二人、ペンペンはリビングに帰っていった。
「エヴァって何なのかな?」
「人の心が宿る兵器」
「・・・やっと答えてくれたね」
「・・・・」
「じゃ、使徒は?」
「・・・」
「まだ、答えてくれないの?」
シンジは笑いながら問う
「わたしはしらないわ」
「そう・・・・ユニゾンの続きしないとね」
コップを洗ってリビングに戻っていくシンジ。
夜、シンジの部屋。
「まいったな・・惣流の奴、合わせてくれる気ないみたいだ」
人ごとのようにつぶやいて携帯を取り出す、どこかに電話をかける。
キッチンではミサトがビールをあさっていた・・・。
ペンペンをおもちゃにし始めたアスカに酔っ払ったミサトがからんで騒ぎ出していた。
「リツコ、なかなか良い点数は出るんだけどね・・」
「どうしたの?もう、ギブアップかしら」
「アスカのほうが合わせてくれないのよねー、
性格的には似てる2人だと思って案外馬が合うかなとは思っていたけど」
「そうね、シンジ君のほうは一応協調性というものがあるみたいね」
「はぁ、プライドの高いアスカと・・・・シンジ君はプライドとか感じてなさそうなタイプなのよねー」
「そうね、それとこれネルフ内の被害報告書」
「なに?それがどうかしたの?」
「保護者さんは知らないのね、シンジ君が壊しちゃったのよ。トレーニング器具とかをね」
「はぁ?シンちゃんも才能あるわね」
ミサトはパラパラとめくっていく、ドア、木、バーベルと多岐にわたっている。
「総額15万2542円よ、まぁ、パイロットの給料よりは安くて助かっているわ。
エヴァでのミスはまったくない分いいけどね」
「そうねー、エヴァでゲイジとか壊されるよりはましってもんね」
「そうそう、彼言ってたわよ『ビール代より安いですね』って、被保護者に皮肉言われちゃおしまいよ?」
「いいの、いいの、家計は全てシンちゃんに任せてあるから。あんなにいい主夫、そうはいないわ」
「はぁ、彼も大変ね」
リツコが同情する彼はというと・・・。
「惣流、ちゃんとついて来れてないよ」
「くっ・・・あんたが、はや過ぎるのよ!」
「そう?」
「さぁっ!もう一回やるわよっ、絶対追いぬいてやるから」
「じゃ、準備して」
二日がすぎるころになるとアスカもスピードがシンジに迫るようになる。
「どう?この作戦終了後には私のほうが上になるのは確実ね?」
「そう」
「あんたやる気ないの?」
「ちゃっとやってるけど?」
いがみ合うように顔を近づけて口論になってしまった。
「あんたたち、よくケンカするわねー」
「ちがうわよ、こいつが食って掛かってくるの!まったく子供よね!」
「ふんっ、惣流こそ立派に子供してるじゃないか?」
「何よ、私のどこが子供だってのよ!プロポーション抜群だしぃー、大学卒業してるしぃー。
あんたは格が違うのよ!」
「(子供・・・ね、アスカ)」
ぐいっとビールを飲んでミサトが思った、
シンジの様子はとミサトが見るとサンマの焼き具合をみるのに気を取られているシンジがいた。
「はぁっっっーーー」
アスカとシンジのギャップにミサトが大きくため息をつく、
シンジがサンマを皿に盛り付けるとアスカが文句を言う
「なによー、ハンバーグにするって言ってたじゃない?魚って骨を取るの面倒くさいからイヤなのよ」
「べつに惣流が作ってるわけじゃないし良いだろ?食べたかったら自分で買い物行けばぁ?」
朝食、昼食、夕食と文句を言いつづけるアスカにシンジは呆れ顔で同じせりふを言っていた。


「62秒で蹴りをつける、いい?」
「ええ、いくわよっ。シンジ」
飛翔するように空中に飛ぶエヴァ2機、良いタイミングだ。
「うおおおおおおおおっ!!」
「てえええっいっ!!」
蹴り上げて後ろ回し蹴り、武器を取って迎撃。
「(わかるっ、こいつは次こう動くって)」
「(惣流もわかってくれてるね、たのしいなっ♪)」
「「うおおおおっ!!」」
『使徒消滅しました』
「「「おっおーー!!」」」
歓声にわく第1発令所、エヴァのほうはと言うと・・・。
「ちょっとぉーーー、シンジィ!!」
「ぐぅー、すぅー・・・」
「ね、ねてるとは良い根性してるじゃないのォ!!」
アスカは文句を言うためシンジのところに移動する。
かなり足場が危ないのだが・・・発令所では歓声が大きく誰も気づいていなかったりする。
まぁ、初めての敗戦・・・そして勝利とくれば当然なのかもしれないが。
「シンジッ、この何ねてんのよっ。昨日の夜何してたのか聞いてないわよ!」
「むぅ・・キス」
「な、なんですってぇーー!起きなさっ、バカシンジ、こらっ!」
「すぴー」
「寝言・・?でも、キスって何よーーー!?」
グラグラゆする、そのうち覚醒に向かうよりもはやく気を失うだろう。
使徒殲滅、ネルフのお仕事は終わった。しかし、作戦部長の悩みは尽きない。
「何とかなったのはいいけどぉ・・」
「何、ミサト?」
「あの二人、どうにか何ないのかしら?アスカは毎日のようにシンちゃんに突っかかっていくし、
シンちゃんもそれを煽ってるみたいなことばかりいうのよ。
しかも、ちゃんと私のビールのこと言い忘れないし・・」
「あら、ミサト。もう家族ごっこは終わり?それに言ってたじゃない『あんなに優秀な主夫、そうはいない』って」
「優秀過ぎるのも考えモノよぅ・・。ううっ、ちびちゅーーーー」
たらーと汗をかくリツコだった。
「ラッキー、加持さんと一緒に買い物できるなんて」
休日、加持と買い物に来ているアスカ。
「アスカ、ちょっとハデすぎやしないか?」
水着売り場で赤と白のビキニを加持に見せる、居心地悪そうな加持。
「えっえー、このくらいトウゼンよ。スキューバダイビングもするんだし」
アスカはジュースを飲みながら、加持は昼間からビール・・・ミサトとの関係がここで立証された。
「どこ行くんだ、修学旅行は?」
「オ・キ・ナ・ワ、加持さんは修学旅行どこ行ったの?」
「ああ、おれたちはそんなのなかったんだ」
「どうして?」
「セカンドインパクトがあったからな」
「ええー、なんでぇ?修学旅行にいっちゃだめぇーー!?」
「待機命令よ、そ・れ・にアスカァ?
黙っていればばれないとでも思ったの、アスカが学校のテストで何点とっているか」
「な、なによ。旧態依然の減点式のテストなんか本気でやるわけないでしょ?それにシンジはどうなのよ」
「あっらぁ?シンちゃんはこうなのよーん、これも保護者たる私のオ・カ・ゲなのよーん」
ぱさっとシンジのテストをアスカにみせる、もちろんシンジの部屋からかっぱらってきたものだ。
「うっそぉー!?あいつ、いつ勉強なんかしてたのよー」
「あら?学校で結構まじめにしてるんじゃないの?」
「はぁ?何いってんのよ、朝からずぅーっとカタカタ、カタカタ・・リツコみたいにキーボード鳴らしてんのよ」
「なにそれ?」
「さぁ?」
お茶を飲みながら会話する2人、シンジはネルフでテストでここにはいない。
「シンジ、なにしてんのよ。アンタも泳ぎなさいっ!」
水着姿のアスカとシンジ、シンジは端末でお勉強中だ。
「勉強だよ、アスカはいいの」
ミサトに言われたのにプールで泳いでいるアスカ。
「いいのよ。大学卒業してるし・・何々、こんな数式も解けないの?簡単じゃん、こんなの」
「まっ、質より量に重点が置かれている教育だしね、時間がかかるだけだし。」
「なんてかいてあるのこれは?」
「日本語まだ読めないんだ、だからなの?」
「まーね、設問が読めなかっただけよ」
「熱膨張に関する問題だよ」
「ふぅーん、幼稚な問題ね。私のムネも温めたらおっきくなるのかな?」
「ムネがおっきくなったらバランス悪くなるよ、ミサトさんみたいに牛にでもなりたいの?」
シンジはあるものを取り出すと空気を入れ始めた、水に入るため長い髪は止めようと思わないがコレは必要なのだ。
「アンタ・・・結構、辛烈ね。何それ・・・浮き輪?・・・アハハハ、アンタまさか泳げないのーー!?」
シンジは浮き輪に入ってバタ足する、長い黒髪が水に漂っている
「べつにいいじゃん」
シンジはバタ足でプールを泳ぎながら、めったに見せない不満そうな顔で答えた。


「なによーーー、これぇーーー!!」
「耐熱耐圧装備よ、交代は不可だから」
「加持さんにあたしの勇姿を見せれないじゃない」
シンジは後ろを向いて笑っている、さっきのお返しだろうか?
「じゃ、私が」
「悪いけどあたしの弐号機に触らないでくれる」
レイに怒って、アスカは無残な姿の弐号機に言った
「がまんしてね」
「見て見て、ジャイアントストロングエントリー」
「ただ、足を開いただけじゃないか。」
飽きれるシンジ、上空には戦闘機が2機。
「これだけの高温高圧に耐えてるのよ」
使徒が羽化しはじめ、弐号機を襲う。
「「そうか、さっきの奴!」」
冷却ケーブルを使徒の口に押し込む。
「やだな、ここまでなの?」
沈んでいく弐号機、衝撃、降下がとまる
「何よ、カッコつけて」
初号機を見てアスカは、少しだけ笑って言った。


次の日、学校・・・トウジが回復して登校して来ていた。
気まずい沈黙、アスカもトウジのことを親友となったヒカリから聞いて知っており静観の構えだ。
「♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜♪♪♪〜〜〜」
ついでに事件の中心人物も静観というか、口笛吹いて無視しており・・・修羅場だ。
「ちょい、いいか?」
トウジがシンジに声をかける、ケンスケはじっーと様子を見ている。
「んっ、あっ、良くなったんだ?んっ、ふふぅー」
シンジは気がつくと笑いながらトウジの所に駆けて行く、無神経以前の問題だろう。
「トウジ・・・」
ケンスケの呼びかけにも無言で答えるトウジ。
ちなみに斜め後ろから恋する乙女の視線8割でみているヒカリには気づかないジャージ。
それから後の2割は心配という気持ちである。
「な、なんや?」
トウジの前にきても笑うシンジに引くつくトウジ、教室は緊張する。
「ごめんなさいっ」
「「「「へっ?」」」」
「この前の時はどうかしてたみたい、ひどいことしてごめん。妹さんのお見舞いも行きたいけどいっていい?」
「ああ、ええんや。妹も喜ぶで、来るものはこばまんし・・・こちらこそすまんな大事な顔に」
「うん、そのことだけ。イヤだったから、カッとなってしまって・・」
内心、私って名演技。将来役者でも務まるかも・・
「おぅ、ケンスケは碇のことどうや?」
トウジはなんだか一変に打ち解けてしまったらしい、ケンスケを呼ぶ。
「いや、あのときのことは碇も普通じゃなかったし気に障ったんだろ?髪も気にしてるだろ?」
「ありがと、相田君。うん、ごめんね・・・トラウマみたいで」
気弱そうにするシンジ、外見が外見だけに中々の名演技と合い待ってクラスの7割の嫌悪などの浄化に成功する。
「いや、ケンスケでいいぜ。そうか・・・あんまり聞かないほうがいだろうから聞かないことにするよ」
「うん、ありがと」
そういって天使のような微笑を返した。こうしてシンジはちょっとオカシナ形でクラスに馴染んだ、
『クラスの母』兼『トウジの良い人』ヒカリにはビンタを食らったがそれはご愛嬌だ。
「なんや、いいんちょ。シンジに何すんのや、乱暴やのォ」
「わ、わたしはね委員長としてクラスの中の不和を見過ごさないのよ!」という言葉をいう。
クラスの公然の秘密で訳すと
「私はね、あなたを傷つけた碇君がどうしても許せないの、
でもでも、碇君って女の子みたいだしトウジと仲いいし・・・嫉妬深い女の子だって嫌わないで!」
となる。しかし、皮肉にもジャージさんは男の友情やらでシンジをかばうことになってしまう。
「委員長も大変な奴を好きなったものだな」とは悟りを開けそうな一人の少年の声だ。

「ちょっと、シンジ?どこよ?」
暗闇の中アスカは問いかける、答えたのはシンジではなくレイだった。
「碇君はさっき、先行くからって」
「もう、レイもしっかり見張っててよ」
「碇君がアスカには言わないでって」
「何よ、シンジのことばかりしっかり聞いて。ちょっと聞いてるの?」
「人の声よ。」
「あっ、ホントだ。これは・・・日向さん?」
『使徒接近中・・・直ちに・・』
「使徒?急ぎましょ」
「ええ、次は左よ」
「アンタ、司令のお気に入リの人形なんですってね」
「・・・・」
「ひいきされているのね、何よ。すましちゃって」
「ひいきされていない、自分で分かるもの、次はこっちよ」
「(何でしっかり憶えてるのかしら?)」
もくもくと進む2人、一方では・・・。
「アナタだれ?」
「何ものだ?ネルフか、委員会か?」
男と対峙する人物、ナイフを振りかぶり投げる。
「ぐっ」
パンッ、銃声がひびく。
「おわりっ」
首から上がなくなり、血がふく。
「加持さんの仲間さんかなぁ、まっいいか?」
男の体からナイフを抜くと去っていく人物。
「シンジ、どこいってたのよ?しっかり使徒を撃退しなさい、
シンクロ率が高くても肝心なときに役に立たないなんてさ」
「うるさいな、使徒?きてたの(うっわー、ワタシの楽しみがぁぁぁぁ)」
「そうよ、レイと!あたしで!迎撃したんだから」
「ところでどうやってエヴァ準備したの?電気は来てなかったんでしょ?」
「司令のアイディアでひとの力で用意したのよ、アンタが来ないなんてさ」
「たはは・・、迷ったんだ。」
「はぁ、そんなことだろうと思った。まったくシンジはコドモなんだから」
「碇君は子供ではないわ」
「何よ、じゃ?」
「・・・・碇君は○×よ」
「「へっ?」」
アスカは自分の耳を疑り、シンジの耳をひきよせて小声でいう
「シンジ、ファーストの今のってシャレなのかしら?」
「さぁ、綾波はいまいちワカンナイから」
「そうよね、マジだったもんね。・・・・でも、いつも同じ顔だしワカンナイわね」
「もっと話してみれば?それに女の子同士だし名前で呼べばぁ?」
「でも、雰囲気がアレだし・・・」
「僕が手本を見せてあげる♪」
シンジはレイのすぐ側に行き、よびかける
「綾波」
「何?」
「いつも制服ばかりだね、司令には何か買ってもらってないの?」
「ええ、どうしてそういうこというの?」
「仲がいいじゃない?僕の父さんと」
「・・・・わからない」
「お・ね・が・いしてみたら?綾波には結構甘そうだもの」
「そう、でも・・・」
「じゃ、命令」
「そう、わかったわ」
アスカに向き直りいう
「ほら、簡単」
「アンタ、命令だったら何でも聞くの?」
シンジとレイのワカンナイ意思の疎通の仕方にあきれたアスカ。
第3新東京市を見渡せる高台で、1人だけ制服姿だがねころがっている。
「人は闇を恐れ、日で闇を切り裂き生きてきたわ」
「てっつがくぅ」
「使徒、僕たちの敵。何故襲ってくるんだろう?(ココに、アダムに)」
「アンタ、ばかぁ?降りかかる火の粉は払うだけよ」
「そうだね、使徒の好物でもあるのかな?」
的外れにもほどがある言葉をはくシンジ、アスカは飽きれた声でいう
「イヤねー、主夫根性、染み付いてるんじゃないのォ?」
「あっ、アスカ。今日の夕食から卵ずくしだよ、停電でヤバクなったから」
『主夫』といわれて思い出したらしい、ホント・・・主夫を立派に成し遂げている14歳だ。
「えー、何個ぐらい?」
「うぅーん、12個だね。綾波にもあげる卵焼きぐらいなら楽だし」
「何よそれー、卵だけ?それならレイにもお弁当作ってやんなさいよ?アンタ、男でしょ?」
「いい、肉嫌いだから」
「卵って肉かなァ?」
「わからない・・」
「レイも分からないなら。シンジッ!アンタなんかに分かるわけないでしょ」
「うーん、成長すると肉だけど」
なやむシンジ、無言のレイ、怒るアスカ。


学校、雑談とくればアスカとヒカリ・・・そして、この頃は何故かレイの3人が昼休みにしている。
この時間帯はヒカリのフリーな時間でもあるのだ、
何故なら思いの彼が食べ物を相手にしていて構ってもらえないからだ。レイは・・・云うまでもない。
何故か最後になったがアスカはシンジにしょうがなく作らせた(アスカ談)
お弁当をたべながらお喋りに興じるのはいつの時代でいでも女の子ならばトウゼンでもある。
しかし、女の『子』でもなくとも良い様で、第3新東京市の地下ネルフ本部の食堂では
三十路コンビにその弟子と下僕たちが雑談していたりする。
「レイって司令と良く一緒にいるわね」
「そうね」
「アンタってさ、いっちゃ悪いかもしれないけど人形みたいね・・・」
「アスカ、人形だなんて」
ヒカリがとがめる、レイは目だけアスカに移す。
「いいの、今の私はそうかもしれないから」
「レイ・・・」
レイの考え方に不安感を感じたアスカだった。
しかし、この頃はヒカリと「さぁ、今日は『アイス』よっ。」と宣言してヒカリと・・・「私もかしら?」
レイを誘う(アスカ主観より)
強引に連れまわす(ヒカリ主観より)
セカンド・・いえ、アスカさんが呼んでる(レイ思考より)
「そう、そうに決まってんじゃない!優等生も分かってきたじゃない」
こんな調子でアスカがレイを連れまわすことが多くなっていたりする。
レイにはアスカが『アスカ』と呼ばせることを強要(ヒカリ談)させている、
シンジと同居しているアスカだが何故かシンジが家にいることが少なく
しょうがなく(アスカ主観)レイを誘ってショッピングしているのだ。
しかし、少し事件が起きる。
「鈴原がぁ?」
「うん」
「まっ、まっさかぁ?あるわけ・・・ないよ、そう、ないってば」
アスカはどもりながら否定する、親友となったこの少女を傷つけたくはないのだ。
「そうかな?」
今一度問う、ずいっとアスカに寄って・・・アスカはずいっと後ろに下がってこたえる
「そうよ」
それでも問う、もう1歩近づいて・・・アスカはもう1歩さがってこたえる。
「そうかなぁ?」
問う、アスカは恐怖する。親友となったこの少女の思いの人の趣味は無視できるが
この親友の乙女チックに恥ずかしげにするところは苦手だ。
なぜなら・・・・そう、ひつこいからの一言にかぎる。
「そうよ」
アスカは肯定、ヒカリは否定しながら教室の反対側に進んでいく。
「そうかなぁ?」
「ちょっとぉー、レイも知らん振りしないで相手して上げてよぅ」
泣き言とは珍しい、しかも相手がレイとは。レイは知らん振りをしていたわけではない、見ていたのだ。
そう、見ていただけで興味がなかっただけの話。
ことの発端はこうだ、良くある話。
ゴシップ好きのオヤジになりかけている三十路直前の自称・おねーさんに云わせると
『酒のつまみになりそうな話ねー』と、なる。
ヒカリの話、今日の朝のホームルーム時のことらしい。
トウジ『シンジ、今日どおや?』
何故か頬を染めるシンジ『え、うん・・・いいよ』
ケンスケ『俺も混ざりたいけどいいか?』
イヤそうなトウジ『しかし、なぁー。2P専用やしな。あそこ』
ケンスケ『おれ、近くに4Pできるととこ知ってるぜ』
トウジ『そうか、じゃ。頭数、たりんなぁ』
シンジ『アスカたち連れていけば、いいんじゃない♪』
トウジ『綾波と惣流かぁ?ひとりおおなるな』
ケンスケ『委員長もだろ?(フォロー)』
トウジ『いいんちょ、固いしなァやりおるか?』
シンジ『アスカが言ってたよ、結構やってるって』
ヒカリの回想おわり、アスカは何やら不思議な顔。
「でしょ?」
ヒカリが同意を求める。
「はぁ?私にはその話のどこでヒカリが嫉妬してるのかさっぱりよ」
「だから、嫉妬じゃないって。もう・・」
いやんいやんしはじめるヒカリ、レイは静観している。
「レイ、わかった?」
「ええ」
「そう、私はさっばりよ。教えて」
「洞木さんは碇君に嫉妬してるのよ、鈴原君が碇君に・・」
「わぁわぁー、そんなことありえない、そんなことありえないわ!」
ヒカリは復活してレイの言葉をさえぎる。
「鈴原がァ?シンジにィ?・・・・・それってイヤ」
アスカは額におっきな汗をつけて言った。
「そう、そうよ。アスカは分かってくれるでしょ?」
「ええ、万年ジャージ男のどこが良いかは同意できないけど」
最後のほうはちっちゃく言う。
「うんうん、アスカ。そうよ、そうよね」
ひたすら、うなづき続けたヒカリ。このあとアスカたちはシンジたちに誘われて格闘ゲームに興じた。



月から見る地球、その1点が光る。これがセカンドインパクトだった、ミサトの胸に大きな傷痕をのこした。
「しっかし、突然降ってくるんだもんなァ」
「ホンマ、まいったですまんなシンジ、雨宿りさせてもろうて」
シンジは2人にタオルを渡しながら濡れた長い髪をふく、掻き揚げる。
「雷まで鳴って、ホント洗濯物乾かないよ」
「主夫やってるんだな」
ケンスケがいう、シンジは髪をまとめて後ろでとめると振り向いて言う
「まーね、ボランティアよ。生活破綻者の世話は」
「なーに!私のどこが破綻者なのよ!ミサトでしょ?
それにアンタたち、わたし着替えてるんだから。覗くんじゃないわよ!」
「そんなつまんないこと誰もしないよ」
シンジは制服を脱ぎながら自分の部屋に入っていく、トウジがその様子を見ていった
「シンジだけやな、男はこうでなくちゃあかん。どこかのじゃかあしい女とは大違いや」
ミサトが部屋からでてくる
「あら、いらっしゃい」
「「お邪魔しとります(してます)」」
ケンスケがミサトの襟章に気づいていう
「あ、御昇進オメデトウございます!」
「ぁ、ありがとう」
すこし困ったような顔でいう
「何?」
シンジが普段着に着替えて出てくる、すでにエプロンをしている。似合ってる。
「な、シンジ?」
トウジが情けない声でいう
「なさけないわ、ホンマ男か?」
「トウジ、さっき言ったこと簡単に否定するなよ」
ケンスケの意見は正しかったのかよく分からないがシンジのエプロン姿はとても似合っていた


「シンジ君?前より20も落ちてるわよ、集中してるの?残ってテストよ」
「それに比べてアスカは5ポイントの上昇か」
「レイは2ポイント・・・」
「シンジ君、このごろ浮き沈みが激しいんですよ」
マヤが言う、ミサトは浮かない顔。
「アスカ、よくやったわ。前より5ポイントの増加よ」
それでもアスカを誉める。
「まっねー」
やはり嬉しいのか笑顔で答えるアスカ、シンジはちらっとアスカをみただけ・・・。
「シンジ、これが私の実力よ。アンタも頑張りなさい」
「うん、まぁ・・」
考え事があるのかアスカの挑発にも曖昧な返事・・・
「えっえー!手で受け止めるぅ!?」
「そうよ、成功確立は54.23%・・。」
「でも、アスカもシンちゃんの最高シンクロ率に迫ってんじゃない。結構頼りにしてるんだからァ♪」
「何かおごりなさいよ、グルメスポット把握してこっ。」
どこからともなく『東京グルメ』という雑誌をとりだす
「げっ、アスカ。はしごするつもり?」
その雑誌を見てミサトがげっそりした顔でアスカに言う
「ふっふーんだ、せいっぱいキャッシングして来なさいよ?」
アスカは家計を預かるシンジから、葛城家の家計の危機的状況を知って、適当な言葉をミサトにかける。
「成功確立がふえましたね・・・」
シンジが正確に状況を把握した言葉でミサトにおいうちをかける
「そりゃないわよ・・・シンちゃん・・・」
ミサトの嘆きは誰にも届かなかった、レイは・・・アスカに話を持ちかけられて受け答えしていた。
ケイジに行くエレベーターの中でアスカがシンジに聞く。
「どうしてシンジはエヴァに乗るのよ?」
一瞬、レイのように「命令だから」と言いたくなってしまったシンジ。
「えっと、楽しいから・・・かな?」
「アンタ、かわってるわね。レイは?」
「私にはこれしかないもの」
「そう、私は自分の才能を世の中に示すためよ。レイもそうしなさい」
レイの儚さを知り少しだけ他人を意識するアスカ。
「そう、命令ならそうする」
「じゃ、命令ね」
「アスカ、強引だね。嫌われるよ」
「うっさいわね!」
「ATフィールドがあの子たちをまもってくれるわ」
「そうね」
「目標は光学観測による弾道計算しかできないわ。
よって距離一万まではマギが誘導します、その後は各自で判断して」
弐号機がプログナイフでコアを破壊し使徒殲滅する、
ゲンドウのねぎらいの言葉にシンジは「ありがとうござます」と返事をする。


「あっ、卵。おっちゃーん、サービスしてねぇ♪」
「ミサトの色気は色あせてるから無理よ」
アスカの素早い突っ込みにミサトの頬がピクピクしている。
レイはずるずると『にんにくらーめんチャーシュー抜き』をたべている、シンジは・・・
「あっ、おっかわりー。あっ、ラー油きれてるよ、いれてあげるねっ」
「おっ、すまんね。嬢ちゃん、しかし、いいたべっぷりだねーー」
アスカは今更シンジを女と間違えているラーメン屋のおっちゃんに間違いを教える義理はない
「家じゃおいしいもの食べれませんからねー、またきますよんっ」
「しんちゃーーん、それはどう云う意味ィー?」
「どう、って決まってるじゃないですか。リツコさんもこの前いってましたしねぇ」
とくとく、ラー油をいれながらいう、シンジはこれで素らーめん4杯目だ。
「あっ、シンジのチャーシュー貰うわよっ。いいわね?」
返事をきかず取って行ってしまった、不満そうなシンジ。
「もらいっ♪」
アスカのラーメンからお肉をかっぱらう。
「あー、なにすんのよ。乙女の大事な唇を奪うも同然の所業、許しがたしッ!」
「どこでそんな日本語覚えたんだよ、時代劇?」
「覚悟しなさいっ!とうぉおおおりぁ!?」
バキッ、割り箸でシンジの頭を直撃させる。
「あっ、折れた。って、わたしのラーメンどうして汁だけなのよッ!?」
「アスカも隙だらけね、レイがメンとっていってたわよ」
ミサトの忠告どおり、アスカのラーメンは一本のメンも残さず汁だけとなっていた。
しかし、真実はレイではなくミサトが取っていったと言うことだが・・・。
「なにだとぉー、オマエそうりゅーとか、カんせツキスをしたやとぉぉぉ」
「そうよ、それがなに?や・く・と・くって奴ぅーー?台所じゃ役に立ってくれないから、アスカ」
「「いやぁんなかんじ」」
「しっかし、男が食を預かるなぞなんて家や・・・」
「碇も案外、飼いならされてるってことさ」
「・・・なにそれ?」
顔をひくつかせて笑っているシンジ、アスカが切れる頃だ。
「あんたたちっ、誤解のないように言っておくけど私とシンジはただの同居人よっ!
仲なら私はレイとの方が良いの知ってるでしょ!」
「「「おっおー」」」
「希望は繋がれたぞぉ」
「アタックだぁ」
「不潔」
「あっあーん、そんなぁ」
ざわつく教室、レイと仲の良いアスカの発言でシンジの位置関係がはっきりしたからだ。
シンジの容姿の関係もあって、いろいろと噂が絶えなかったであろうし・・・


「S2機関?(使徒のものは流用できないかなぁ・・・開発はドイツでやっているのか)」
「まぁな、葛城には内緒だぞ?シンジ君」
「それより、かーじさんっ」
「んっ、なんだ?アスカのような呼び方して」
コーヒーを飲むのをやめてきく加持、シンジは書類をおいていう
「アスカが言ってましたよ?付き合い悪いって」
「たはは、葛城みたいだな・・・飲みに誘うにはアスカは幼いからな」
「そうですねーー」
「シンジ君はアスカをどう思っている?」
「えー、加持さんのお古はイヤだなぁ」
「酷いなぁ、アスカに言うからな」
「だって、ミサトさんが良い例ですよ。うちではエンゲル係数よりエビチュ係数ですからね」
「すまんな、葛城のことは頼む」
「このひとでなしぃーー」
双方とも本心を見せない点では同じ、ただシンジのほうがより現実を知っていること以外は。
加持の求める真実もシンジにとっては価値がないものであるし、
シンジは何を求めているのか加持には推し量れていない分、今はシンジに分がある。
「加持さん、用意できたんですか?」
「ああ、B地区の地下5階に設置してある。パスは『lain』だ、第2経由の1010011ルートでアクセスできる。」
「ありがとうございます、あと、新しい動きがあったらお願いします。
あ、それと『酒の里・弐』には近づかないほうが良いですよ」
「葛城の通っている居酒屋か?確かに飲むと荒れるからな、あそこでは特に」
「この前なんかジョッキ持ったまま帰って来ましたから」
「おいおい、ちゃんと返したのか?」
「ミサトさん気にいっちゃって、アレ以来ビールはそのジョッキなんですよォ」
「・・・・そうか、葛城のことは頼んだ。」
「あっ、逃げないでくださ・」
ガチャン、電話の受話器をおく加持。賢明な判断だ、こうでなくてはスパイは務まらない。



アスカは加持に誘われここ、ターミナルドグマに来ていた。
シンジもついでという形であったが、真実はシンジが加持に働きかけたのである。
「かーじさんっ、一体どこに行くんですかァ?」
「ははっ、もうちょっとだからな」
3人に沈黙が訪れる、重い雰囲気。
「ここだ」
暗い通路の突き当たりに大きな扉があった、その扉を開けるため赤いカードを取り出す加持。
「「・・・」」
アスカはゴクッと唾を飲みこみ、シンジはさめた目でそれを見ている。
「ここにあるものが、全てのはじまりだ」
そういって、カードを通す。
開く扉、中には白い巨人が十字架に磔にされていた。
「これがセカンドインパクトの原因、アダムだ」
アスカが驚き、問う。
「これがアダム?」
「そうだ、ネルフはいろいろと隠している事が多い」
「そう、アダム・・・でもダミーなんです」
「なんだって!?どの資料にもこれがアダムだと記してあるが」
加持がシンジの言葉に驚く、アスカはただいつもと違うシンジをそこに見ていた。
「僕たち、リリン。そしてアダム、リリス、そして・・・エヴァ。
人はエヴァに縋っています、それなのにエヴァにはまだ何か知らないことがあるんです」
「リリン?まさか、ヒトも」
「そう、使徒です。ただ、群体として存在するからエヴァに縋るしかないんです」
「ちょっ、ちょっと待ってよ!シンジッ、私達は人類を滅ぼす使徒を倒してきたのよ。
私達自身もあんなのと同類なの!?そんなはずないじゃない、ATフィールドも使えないし・・」
「じゃ、質問。ATフィールドが使えるのは使徒だけなの?」
「そうか、エヴァも・・だがそうすると」
「そう、セカンドインパクトからの真相はすべてヒトが自作自演で行ってきたものなんです」
黙っていたアスカが恐る恐る言う。
「・・・エヴァも使徒も、ヒトの手のひらで踊っているの?私、いままでそんなことしていたの?」
「だが、そうするとエヴァは何故チルドレンだけが動かせるんだ?」
「そう、結局。ヒトの力というものは無力だ、だからこそチルドレンが必要となるんです」
「そもそもチルドレンの選考方法とはなんだ?マルドゥックとは・・」
「エヴァ、そしてヒト・・・その乗り越えられない壁を突破するための生贄なんです」
シンジが喋らなくなると3人の間に沈黙だけが下りた。


「マヤ、そこA−8の方が早いわよ」
リツコがレポートを片手にキーボードを打つ、マヤの数倍は早い。
「・・さすが先輩」
マギの定期検診を行う、発令所のオペレーター席には機械が
ところ狭しとまではいかないものの、かなりの数が置かれていた。
ミサトがコーヒーをもって2人の前に現れる、様子を見に来たようだ。
「どう?」
「後少しよ・・マヤ、後頼むわよ」
「あ、はい」
洗面所で顔をふいているリツコ、ガラスに映った30の女を見ていう。
「異常なしか・・母さんは今日も元気なのに。私はただ年を取るだけなのかしらね・・・」
その日、実験棟では模擬体によるテストが行われていた。
チルドレン3人は十何回もボディクリーニングをされて、それぞれの個室にいた。
「ミサトさん、ホントーに映像カットしてあるのォ?」
「シンジッ、アンタ曲がりなりにも一応男でしょ!?」
シンジがアスカの方を向く
「なっ、見るなぁッ!レイのほうでも見てなさいっ!」
アスカは慌てて後ろを向いてシンジにいう。
「・・って、ホントに見るなァァァァ!?」
第1発令所にもその様子が声だけだが伝わっていた。
「あらら、騒がしいことで。映像切ってあるのがおしいわね」
隣のリツコにミサトが問い掛ける。
「今日のテストはプラグスーツの改良に必要なものよ、さぁ、その姿のままエントリープラグに入って」
にべもないリツコ、ミサトは少し悲しくなった。
「ミサトもっ、何、戯言、いってんのよっ。職務中にビール飲んでるんでしょ?」
少しぶるーな気持ちだったミサトにアスカの怒声が届く
「何、アスカ?あとでおぼえてなさぁーい?」
一気に機嫌が悪くなり声だけでも恐ろしいミサトの恨めしい声がアスカに向けられる。
「ひっ!?」
ミサトの夕食を思いだし、アスカは肩をビクッと震わせた。
その後、羽陽曲折はしたもののアスカ、シンジ、レイとエントリープラグに入った。
「ミサト、邪魔しないで。気分はどう?」
「感覚が変なのよ、右手だけはっきりしていて後はぼやけた感じ」アスカ、
「いつもとちがうわ」レイ、
「何かが違う気がする」シンジ、と答える。
「そう、レイ。右手を動かすイメージをしてみて」
リツコが指示をするとマギが対立モードに入る、リツコがつぶやく
「ジレンマか・・・作った人間の性格がうかがえるわね」
「何いってんの。作ったのはあんたでしょ?」
「私はシステムアップしただけ、作ったのは母さんよ」
リツコ達が実験を行っているおなじころ、発令所では青葉と冬月が所内の異変をチェックしていた。
「3日前に搬入されたパーツです。ここですね、変質しているのは」
青葉がモニターを見ながら説明する
「第87タンパク壁か」
「ずさんな突貫工事のせいでしょうね」
青葉の推論に冬月もうなづき処理を命じる。
「うむ、処理をしておきなさい。碇も雑用ばかりまかせおって」
第87タンパク壁の腐食箇所が映し出されている、たしかに腐食してカビの様だ。
「シグマユニットAフロアに汚染警報発令!第87タンパク壁が発熱してます」
マヤが報告し、騒がしくなる発令所。
「何ものかに保安部のパスが読まれています。くっ、こんな時になんて速度だ」
青葉、日向、伊吹とも慌しくしている所にリツコ達が現れた。
その数分前に実験棟で使徒を肉眼で確認しここに来たのだった。
「アレが使徒か?こんな時だからこそのチャンスだからな」
同じように、使徒を肉眼で確認した加持はそう言って通路を進んでいった。
汚染警報を耳にし、警戒するリツコ。
「汚染!?レーザーを装備させたポリソームに食い止めさせて!」
しかし、汚染はレイの模擬体にも及んでいた、伸びてくる手。
「模擬体が?」
リツコは素早く模擬体を破壊する、レイの叫び声。
「キャャァァ」
レーザーが照射される、が、
「ATフィールド!!」
それはマイクロサイズの使徒イロウルだった。
オゾンの注入で一時的に食い止めたものの、自己進化を続ける使徒にはいつまでも効かず。
シンクロコードを15秒単位にし、分離独立している3機のコンピューターの通信時間を変更して時間稼ぎをして、
発令所でリツコによる説明がなされた。
「このように知能回路を形成し進化し続けているようです。こちら側から自滅のプログラムを送りこみ殲滅します」
「間に合うの?間に合わない場合は物理的に」
「間に合わせるわ、マギは本部のそれと同義だから」
「さっそく、取りかかってくれ」
冬月がそう締めくくった。
警報が鳴る、一同が使徒の攻勢が早まったものかと騒然する。
「外部データ、浸入。カスパーがハッキングされます」
「「「「!!」」」
リツコがオペレーター達に状況確認をしている、マヤが報告する。
「使徒ほどではありませんが、・・・この浸入経路は第3新東京市内です」
「市内!?カスパーは大丈夫なの?マギがこの状態じゃ物理的に破棄するしかないわ」
「赤木博士、間に合わせろ。外部のほうは物理的に破壊する、諜報部を市内に配置しておけ」
ゲンドウが命令する、リツコはそれに答えてからミサトに言った。
「はい、分かりました。大丈夫よ、カスパーだけは守って見せるわ」
リツコも、マヤがプロテクト作業に入った。
ミサトはリツコの心中が今、どうなっているのか考え複雑な表情でリツコを見ていた。
リツコやオペレーター達が忙しく対処している、やがてリツコがミサトに言った。
「ミサト、外部のほうの場所が分かったわ」
「使徒は?」
ミサトはすかさずもっとも気がかりな事を聞く。
「大丈夫、外部のほうが使徒にもハッキングかけてたから間に合いそうよ」
マヤや青葉達が機器を持って階下のマギ本体へと走っていった。
「マギは大丈夫なのね?」
ミサトはリツコとマギへと急ぎながら話した。
「今から取りかかるけど、予定通りなら間に合うわ」
だが、まだ使徒の危機は去っていないためミサトとリツコの顔は厳しいものだった。
「わぁ、これなら早く入力できますね」マヤが喜ぶ
「母さん、助かるわ」リツコが感慨深げにいう
「ねぇ、マギのこと教えてよ」ミサトはリツコのとなりで手伝いをする。
「自分のことは面白くないから・・」
ミサトとそう話しながらも着々と進める。
「マギ、通常モードに移行します」
歓喜するネルフ職員、ミサトはリツコにコーヒーを渡す。
「年かしらね、徹夜がこたえるわ」
「約束まもってくれたわね」
「ええ、母さんが言っていたわ。
マギは3人の自分だって、母としての自分、科学者としての自分、女としての自分。
3人の自分がせめぎ合っているのよ、技と人間の持つジレンマを残したのね」
「私は母親にはなれないわ、母親としての母さんはわからなかったわ。
科学者としては尊敬さえしていたのよ、でもね女としては憎んでさえいたのよ」
「やけに饒舌じゃない」
「ミサトのコーヒーが美味しかったから・・・かしらね」
「カスパーには女としてのパターンがインプットされていたのよ、母さんは最後まで女であることを守ったのね」


地底湖、誰もが忘れていると思われるエントリープラグが3つ浮いていた。
一つは誰もいない、抜け出したその人物は発令所の様子を見ていた。
「・・・・・・・」
やがて、ネルフ内の何処かの端末をさわる。
「・・・・・ない」
どうやら目的の物はなかったようだ、少し残念そうにその場を立ち去った。


アスカをターミナルドグマに案内した、その翌日。
加持はシンジに貰ったカードで使徒浸入のドサクサにまぎれ地下深くに来ていた。
「(シンジ君、いったい何をしたかったんだ?)」
加持はシンジがアスカに真実の一部を見せたことへの疑問と、
自分の求めつづけていた真実そのものに疑問を持ち始めた。
そんなことを思いながらも手に持ったカードを機械に通した。
ガシュッ、ガァーー。
「なんだここは?ダミーシステムはここでつくら・れ・・!!」
加持はやたらと暗い広い部屋に入り、明かりのスイッチを探してつけた。
パッとオレンジ色に染まる室内、水槽の中の液体が蛍光灯の明かりで部屋の中に反射する。
漂う物体、加持に笑いかける。
「こ・・これが・・・」
数瞬、声を失う加持。
「・・・・・これが真実なのか?」
呆然とつぶやき、数秒過ぎた後、成すことを思い出して部屋をあさる。