お金の話
ヨダレを垂らしながらたこやきを見ているカヲル、レイが後ろでそのカヲルを無表情に見ている。
「お金はいいねぇーお金で心は買えないけれどお金は心を潤おしてくれる、そうは思わないかい綾波レイさん?」
「そう・・・おこづかいがなくなったのね、哀れね」
涙を流しながら悲しそうに笑うカヲルの一言を、レイはホントに軽く受け流したカヲルはその態度にクリティカルヒットして倒れこむ。
「僕にはたこやきが必要なんだ、わかるかい?」
「じゃあ、葛城三佐のディナー招待券を受け取って・・・ノルマなの」
ここに注目!激はぁと、と書かれたチケットを取り出して言うレイ、悪魔だ。
「僕には目先のたこやきと、3日先の三佐のディナーは等価値なんだ」
「そう・・・良い舌と思考の持ち主ね、あなた」
レイとカヲルの不思議な会話、たこやきを焼いている兄ちゃんは無視していた。
「・・・じゃあこれ」
ジャラ・・・お金、4枚。
「ありがとう、レイが居てくれて助かったよ」
「そう?」
素早くディナー招待券を渡すレイ、カヲルが逃げ出す隙も与えない。
「僕はレイのこと好きだったのかもしれないね?これは遺言さ」
「嬉しい・・・嬉しいのね、わたし」
ニヤリ顔のレイ、カヲルの言葉で喜んだのか、チケットのノルマを達成したことを喜んだのか不明であり
いや、もしかしたらこのチケットはレイの分だったのかもしれない・・・
「カエルなのね、だからいつも食べ物をねだっているのね」
「はんはむ、ぐぅぅんむむむ?(もぐもぐ、カエル?)」
そんなことを構わずカヲルはたこやきを早くも口の中でもぐもぐしている。ごっくん
「ああ、美味しかった。やっぱりお金はいいね、次のお小遣いまで何日だったかな?」
「3週間よ、あなた何に使っているの?」
がま口のお財布をスカートのぽっけにしまいながら尋ねるレイ。
「感触さ、感触はいいねー」
「?」
リツコにいつもソレ関係のことばかり聞くレイは、漢字変換がソレ系統になっていた。
「あのシンジ君の(作ったお菓子)は特にいいねぇーー、僕は太ってしまうよ」
「あなた・・・生きていてはダメ」
クエスチョンマークをつけるカヲルに、目つきの鋭くなっているレイ。

とめどもなく・・・それは涙
「ぐずっ・・・悲しい・・・そんなこと。知りたくなかった」
綾波・・・レイ・・・・悲しそうにシンジはレイを見る、アスカも珍しくこのライバルに同情を禁じえない。
「どうして?私・・・碇君?」
うるると涙を流してシンジに縋りつく、ハンカチでふいてもふいても止まらない。
レイ・・アンタこと嫌っていたの、でもかわいそ過ぎるわっ!こんな仕打ちなんて!
「レイ・・・・」
アスカが心の中でこんなに強く思っていても、言葉として出てくるのはこれだけだった。
「・・・!?弐号機パイロット?」
今までファーストとしか呼ばれず、壁があると思っていた相手。本当に嫌われていたのね、とおもっていたのに。
「・・・レイ・・ごめんね、あたし何にもしてあげれないよぉ」
くっ、と下唇をかむアスカ。
シンジもその様子に驚きながらもこれからレイに襲いかかる悪夢に悔しそうに握りこぶしに力を入れる。
「・・・ありがとぅ・・・私、2人にこんなに思われていた」
ぽたぽたと流れるたれていく涙、綺麗な表情で2人に笑顔を見せるレイ。
「・・レイ!」
ハッとするアスカ、目を奪われるその美しさに視線を外せない。
「綾波!」
その部屋に行こうとするレイの手を、思わず掴んでしまうシンジ。
「いいの・・私がきめたことだから」
沈黙・・・沈黙・・・沈黙・・・・・・・・・・。
「さぁ、どうぞ」
ニッコリとわらう、うれしそうに笑う相手は・・・・・葛城作戦部長。
「カヲルくんも、どうぞどうぞっ。遠慮したら撃ち殺しちゃうかんね♪」
ジャキとカヲルのでか口に標準をつける。
「シンジ君・・・僕は死すべき存在なのかい?」
レイのように2人に同情され、引き止めても貰えなかったのが堪えたのだろう。
3日前のたこやきを口の中に思い起こしながら、目の前のポコポコ泡を立てる物体をそのカエル口に押し込んだ。

リツコの思い
「ふ、ふぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ」
涙目、そしてゴシゴシする。
「徹夜ですか?」
マヤは自分もゴシゴシしながら、コーヒーを入れる。
「まぁね、しょうがないわ。それよりこれ知ってる?」
マヤに一枚の紙をみせるリツコ、自分もコーヒーカップを取り出してきていた。
「なんですか、これは・・・葛城さんの」
「ええ、昨日の急患2名はこのせいらしいわ。当然ね、マヤ、カヲルにお小遣いあげてる?」
「ええ?あげてますけど・・・いっつも食べもの買い捲って・・・」
困り顔のマヤ、毎月の初めの時のカヲルの食欲を、見て少しうらやましく思っていた。
「あんなに沢山食べて・・・いいなぁ・・・なんて」
ほんわかした感じのマヤ、リツコがクエスチョンマークをつけて呼びかける。
「マヤ?」
「あーんってカエルみたいな口に・・そう思いません?」
「そうね・・ミサトの逆鱗に触れたのかしらね?」
「また?太ったんですか?」
顔を諌め、コーヒーもなんだか苦く感じる2人。
「さいてぇーーーー」
「無様ね」

カエルはかえる
「マヤさん、今日も天気がいいよ。好意に値するね?」
「カヲルくん、・・・・・・・何かあったのね?」
割烹着姿のカヲル、いつもお寝坊な人物なのだが・・・今日は目の下に熊を作ってまでも朝食を作っていた。
「い、いや、なんにもありはしないよ。マヤさんもおかしなことを言うね、わっはっはっはー」
「カヲルくん、無理は良くないわ。言って御覧なさい、センパイに報告しちゃうわよ」
決して洞察力が鋭くないマヤだが、カヲルの巨大なカエル口がパクパク開いているのを見て不快感を感じたらしく
レイにもきく、『センパイに話しちゃうぞ♪』攻撃を繰り出した。
「すいませぇぇぇん、お小遣いがなくなっちゃったんですぅぅぅぅーー、うわぁぁーーんっ」
涙、だーだー流しながら、肩、びくびくさせながら、ポーカーフェイスも保てなくなるカヲル。哀れだ。
「そう・・・また、なのね。はぁーー、どうしてカヲル君は浪費型なのかしら?レイちゃんは財テク型なのに」
美少年との楽しいせいかつを謳歌していたミサトを見ていたマヤ、少しタイプは違うが
カヲルを見た時、いいなーなんて思っていた。もちろん表情には出さなかった、後ろにはリツコが居たのだから・・・
「その葛城さんも今は不幸なのよねー、世の中うまくできていないわ・・」
シンジとアスカのことを指しているのだろう、だからこの頃はミサトの料理の腕がある意味で上達して凄いことになっているのだ。
そして、その実験台に『ディナー』と称して人を呼び急患をだしている。
「マヤさん、君は好意に値するね。好きってことさ?」
マヤがお財布からお小遣いをとりだすと、餌をもらう犬みたいにキラキラとした目を向けるカヲルが居た。
そして、のたまい続けるカヲルに背を向けてキッチンのテーブルにつく。
「もう聞き飽きたわ」
そして冷たい言葉を吐くマヤ、毎月聞かされてはウンザリしてしまうのも当たり前だ。
最初の1、2回だけで聞き飽きる。
「ふん、ふんふんふん、ふん、ふん・・。」
「はぁー」
毎月の恒例行事を済ませ、お小遣いを貰ってすっかり御機嫌のカヲルとウンザリ気味のマヤが食卓に並んだ。


等価値
「シンジィー、えっとね・・・・」
ぎゅっと抱きしめて、うーんうーんとアスカはいう
「な、なに?」
戸惑うシンジ、いつものことだがアスカの行動は唐突でシンジには抱きしめられている理由がさっぱり分からない。
「・・・・」
シンジは戸惑って居たがだんだん恥ずかしくなってきた、いっそう強く抱きしめるアスカ。
彼女の行動には後々に理由を聞けば納得できることだったり、あっけない思いつきだったりと振り回される。
「ねぇ?」
顔を上げシンジをじっーと腕の中から見つめる彼女、シンジもちゃっかり腕を回していた。
「何かな?今回は?」
「今ね、シンジの腕の中でシンジのこと大好き大好き大好き大好き大好き大好きぃーって言葉にしたんだよ」
「どうして、そんなこと?・・・う、うれしいけど」
可愛い、この彼女にこんなにも思われていることにドギマギしながら問う。
「ふっふっ、秘密♪」
「ひ・・みつ?・・・」
ニコニコするアスカを見ながら、たまにはこんな事もいいかな?と考えるシンジ。
なんだか、うやむやでまだまだ成長途中の彼女彼氏たちにはこれが幸せなのだろう。