星の片道キップ第7話 「ケイの休日」 

 

「ケイ、あなたに頼まれた物できたわ。もう知ってるわね・・・あなたも手伝ってたものね」

それはバズーカーのような形をした物だった、急造であるため形はいびつで
お世辞にも実践向きとは言い難かった。

「知ってると思うけどそれは強力ではあるけど接近戦でのプログレジックナイフによる
殺傷能力にはかなり劣るわ、敵を射程距離内つまり1キロの時点で撃破できなければ
接近戦を仕掛けて・・・・わかった?」

一通りの説明をリツコは素早く簡潔に伝えた。
急にかかる強いG、ケイは歯を食いしばって耐えた。
地上にその姿を現すエヴァ、待ち受けていたかのように佇む使徒。

「行きますっ!」

センターに目標を合わせて・・・・・
バシュッ―――――― ドカッッ――
ケイの駆るエヴァは使徒に走り寄りながら次々と俊敏な動きでバズーカーを撃ち込んでゆく。
使徒までの距離が一定以上を越えると使徒を中心に右に回り込みながら攻撃をし続けていく。

「彼女すごいですね・・・・」

マヤもリツコと同じようにエヴァの情報収集を行いながら感嘆の声を漏らす

「しっかし、50%のシンクロでこれって言うと・・・」

ミサトの使徒に対しての不安が自信と反比例していくのを感じた。

「そうね・・・彼女は確かに強いわね」

リツコも科学者としての立場からケイのエヴァに乗る才能に感謝していた。
使徒は攻撃を受けたが多少ATフィールドが中和し切れていなかったのか
平然と佇んでいる・・・・近くに寄ってこないエヴァに対して憮然としたのか
見た目の構造から見当もつかないほど素早く鞭をふるってバズーカーの
攻撃を迎撃し始めた、エヴァに近寄ろうとするがなかなかできない

「まずいわね、どっちも決定打がないわ・・・」

「どうしたものかしら?」

「接近戦しかないわね、零号機は使えないし」

「ケイ、聞いた?バズーカーは決定打にはならないわ。危険だけど接近戦に
もちこんでプログレジックナイフでコアを破壊して」

「はい、わかりました」

バズーカーを捨てるとプログレジックナイフを装備するエヴァ。

「シンクロ率上昇75%で安定!」

「まだ、上がるの?」

「いいえ、ハーモニクス、シンクロ率とも正常です」

「(なぜ25%も上昇したの!?)」

エヴァが跳躍した。
敵の背後をとろうとする、使徒も鞭を
まだ空中のエヴァに対して振るう。
エヴァは左手を鞭に捕らえられてしまう。
しかし、逆に鞭を掴むと使徒を引っ張り押し倒す。

「だぁぁぁぁっっ!」

コアにナイフを突き立てる火花を盛大に散らしながら鞭を
振るおうとする使徒、エヴァの右足を掴むと振り投げようとする
コアに亀裂が入り始め・・・パリッと乾いた音とともに砕けるコア。











学校に登校したケイ。

「おっはよー、ケイー。ひさしぶりー」

背後から声がした・・・驚きながら飛んできたキックをかわすケイ。

「マナ、危ないからそれはやめてくれない?」          
 
ケイは笑いながら目は笑ってなく、冷や汗がつぅーと頬を流れている

「なによー、私とケイの中じゃない。親友の再会を祝する軽い挨拶なのにーー」

拗ねたようにプッーと顔を膨らませてファイティングポーズをとるマナ。
ケイは相手をするのがイヤになったのかさっさと廊下を歩き始める
マナもそんなケイの後ろを着いていく・・・・ぶつぶつ何か言ってるが。

「あっー、お、おまえっー」

トウジがマナを指さしている、隣では少し申し訳なさそうになぜか
ケイにむかって謝っているヒカリが居る・・・。
どうやら、マナのことをトウジたちにばらしてしまったようだ

「ケイ、友達だったの?」

マナがケイの背中にぴったりくっついているのをみてヒカリがきいた、そしてケンスケが・・・

「ふっ」

ケンスケが新商品を見つけたときに見せる
眼鏡を持ち上げて光らせる仕草をした。

「ケイがマナに頼んで、鈴原たちを止めたことは間違っていたわけじゃないし
マナの止め方に多少の問題があったけど・・・」

委員長としての立場で釈然としない様子のトウジたちに話している。

「まっ、過ぎたことをグダグダ言うつもりはないんやれど、むっちゃ、効いたで・・・あれは」

「なに言ってんの?あんたたちが出ようとしたのが悪いんでしょ
おかげで一週間も早くケイに会えたのは嬉しいけどぉ・・・」

マナが言った最後の言葉を聞こえないふりをするケイだった。
その言葉を聞いて新商品にさらなる付加価値が付くと確信したケンスケだった。






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シンジは事故のあとすぐに「先生」のところに行くことにした。
事故が偶発的だったとはいえ、ゲンドウとは一緒にいたくない心境だったからだ
ゲンドウはそんなシンジをほかっておき、一週間の
失踪の後「人類補完計画」と「アダム計画」を開始した
そのときにはもう「先生」の所に向かうシンジの姿があった。
駅にはどう調べたのかゲンドウが来ていた・・・

「ユイの紹介でいくそうだな・・・」

「そうだよ」

「そうか、私は忙しい。」

「(何をしに来たんだろ?、とうさん)」








「んっ、きみが碇さん?」

戦略自衛隊の駐屯地に来て一通り手続きを済ませると「先生」が来た。

「ところでお母さんは?」

「母さんは事故でなくなりました」

「なんだって!?・・・ん、すまない。大きな声をだして」

「そうか・・・碇さんが、それでお父さんは一緒じゃないのかい?」

「父は忙しいので・・・」

「そうか、じゃ君のお母さんに頼まれたように、
少しの間私が君の親権者になるよ、いいかい?」

「いいです、父も必要になったら呼び戻すでしょうし」

「そうかい、それから私のことは実の父親のように慕ってくれないか、とは
いわないが堅苦しくする必要もないからね」

「ええ・・わかりました」

「・・・(やっぱり堅苦しく感じるかな?)」

「ああ、それからこの基地には子どもが何人かいるから紹介するよ」

幾つもの倉庫や演習場、研究所・・・ここには密集しているようだ。
そんな中を通ってひとつの建物に着いた。
どうやら、学校らしい。

「君にはいろいろ手続きがあるが明日からここに通ってもらおうと思う」

「あの・・・」

「なにか質問でもあるかい?」

「私の学力は大学院修了課程なので、研究所の方がいいんですけど」

「ん!?そうなのかい・・・(碇さんも恐ろしいな、もう大学院修了課程だなんて)」

「じゃ、テストを受けてもらってからだけどね」

「でも、碇さんにも頼まれたことだし半日はここに通って友達を作ってくれないか?」

「ええ・・・」

「紹介しよう・・・マナちゃんとムサシくんとケイタくんだ」

「はじめまして、碇シンジです。」

「よろしく、シンジちゃん。男みたいな名前ね」

しょうがない、事故までは男だったんだし、これがマナとの出会いだった









その後・・・
基地内でいろいろな事件が起きたが大部分はシンジ、マナ、ムサシ、ケイタに
よるものだった、シンジは大抵は研究所で戦自型マギの研究、疑似人格はユイをモデルにした、
マナは格闘技に精通しはじめ、ムサシと稽古に打ち込んでいた。
時たま、シンジとショッピングに出かけたりした。マナのアドバイス(?)のおかげで
シンジも慣れなかった女の子のファッショッン感覚や言葉遣いに磨きが掛かっていった。
だが、ときたま、ムサシとマナの身に起きてしまうことを考え 
じっとマナを見つめてしまうときがあった。




そんな生活も6年が過ぎ、戦自がネルフとの模擬戦を申し込んだ。
戦自のお偉方は駄目でも良いからネルフの実力を計ってくれと政府につつかれたらしい。

「・・・で、受けたんですか?」

シンジがひとりの研究員に聞いた

「すまない、君がいないと負けてしまうんだよ」

「でも、その日はマナとショッピングに誘われてるし・・・新しい服も欲しいなぁー」

「今度、新しい服買ってあげますからぁー」

今にも泣きそうな哀れな研究員・・・

「5着ね」

「んっ!3着」

「いいわ。特別回線を開いておくことね。気が向いたら手伝ったあげる」

「助かります。マギは君しか知らないことが多いし・・・(マギは私物化されてい
るってわけだよ・・)」

肩を落とし去っていく研究員、戦自の頭脳そして
この基地のマドンナに振り回された後はどんな人でもくたくたになる。
そして、ケイは罪のない笑顔でルンルンとスキップしていた









「・・・で私と一緒に来たデパートから模擬戦するってわけね?」

「そうなのよ、そこのベンチでも座って一緒にマギと遊びましょ」

「遊ぶって・・・(マギって言うと日本政府に繋がっているわねー)」

「じゃ、アイスでも買ってくるわ、マナは何がいい?」

「メロンとストロベリーのダブル」

シンジが駆けていくのを見送ってからマナはシンジの回線で戸籍を改竄した。
イタズラにしては酷いと思うのだが・・・

「んふふっ、やっぱり女の子でシンジは可笑しいわ・・・『ケイ』っと」

「なにしてるの、マナ?」

いつのまにか、チョコとメロンのダブルアイスとマナが頼んだ
メロンとストロベリーのアイスを持ったシンジが立っていた

「ひっ、びっくりするじゃない」

慌てたマナを不審に思いシンジは素早くマナから回線を奪うと・・・

「わっー!?なにこれ?ケイィィィィィィーーー!?マナも・・・ 
まったくぅー母さんもなに許可してるのよぉー」

「くくくっ」

と面白そうにそんなシンジの隣でお腹を抱えて笑うマナ

「マナァァァァァーーー!?何これ?」

「なにってシンジ、女の子だもんっっっ!!」

開き直ってるマナ、顔はすごく崩れて・・・口元がピクピクしている

「・・・・もういい、マナ変わって」

肩を落とし、気が重そうにため息をつくシンジだった
そして何か大切な物をなくした気がしたシンジ(ケイ)だった。

「もう、勝手に人の戸籍を・・・もうマギなんかぁぁぁぁ、
こ・う・し・て・や・るぅぅぅぅ」

ピッーーーーーー 
その頃の発令所・・・・・・・ 
「大変です、いきなり敵性コンピューターがパワーを上げました」 
「いけない!」 
「だめですっ!!!占拠されますっ。」 
ケイのストレスはネルフのマギに命中した






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「そういえば、3日後だっけ?戦自との模擬戦」

ミサトはドイツでの傷心も癒えたのか、おいしそうにコーヒーを飲んでいる。

「そうね、まあ、マギなら楽勝でしょうけど、ただ・・・
気になることにあっちもマギって名前を付けてあるのよ、
ただし1つのメインからなっている有機コンピューターらしいけど」

「気に入らないってこと?」

そんな気のない会話も3日後は笑えない状況になっていた







「模擬戦、始めます」

マヤは昨日から一睡もしてない、はじめての自分に任された仕事なのだ。
はじめの5分は相手もマギもつつき合って居る小手調べ程度だったが・・・

「だめです。先輩、押さえられません」

状況は一変した、マヤは内心穏やかではなかった。

「保安部にハック、第23防壁反転。
マギカスパー・・・大変ですバルタザールにハッキングしています。」

「なぜ、何故なの?」

刻々と変化していく状況の中、リツコは「女」である
一番しぶといはずのカスパーが簡単に陥落したことが信じられなかった。

「司令、バルタザール及びメルキオールに第666プロテクトを展開することを提案します」

「許可する」

「間に合わないかしら?いいえ、意地でも間に合わせて見せる」

「Bダナン型防壁を展開。以後62時間は外部侵攻不能です。」

「先輩・・・」

「信じられないわ、いまこれを使うことになるなんて」













「浸食されてる!?」

「バカな!?第666プロテクトを突破されたのか?」

「いえ、内部からです・・・メルキオールです。なんて速度だ・・・リプログラムされました。」

一気にマギのモニターが赤色に埋め尽くされる。

「・・・・戦自から通信が入ってます」

「・・・そう、終わったのね」

リツコは敗北感に打ちひしがれていた。

「はじめまして、私は第六戦自研所属の佐藤です。」

「そう、あなたがカスパーを・・・」

「いえ、ちがますよ。やった人は今頃、ショッピングでも楽しんでるんじゃないですか?」

「えっ?」

「いえね、その人は『めんどうだ』って回線で命令を出していただけなんですよ」

呆然とするリツコ、顔色は変化してない・・・いや、青ざめているのか 
怒りで赤くなっているのか判別がつかない。







ゼーレ・・・

「ネルフが簡単に落ちるとわな・・・」

「戦自の第六研をネルフの松代に全員強制雇用させろ、
強すぎる戦自は我々には必要ないからな、使徒戦で役に立つだろう」

「しかし、No12が落とされるなど・・・」

「奴は運がなかっただけだ、たまたまクーデターと 
共に恐慌が起きただけだ、それに『落とされた』のではない『落ちた』だけだ」

「しかし、株式市場が改竄されたという情報も有るぞ」

「そうだ、この件に関してネルフの介入はないのかもしれん」

「京都からのハッキングだと言う情報もあるが・・・」

「次回に各自報告しよう、今回はイレギュラーなことが重なっただけだ」











「シンジの作ったマギじゃ無理なの?
OSってケイのお母さんを入れたんじゃないの?」

「ええ、無理なのよ」

「サルベージってそんなに難しいの?」

「ううん、ちがうの、魂だけ、肉体だけに分離すると難しくなるのよ」

「じゃさ、シンジが男の子にもどるために・・・」

「駄目だよ。駄目なのよ。『僕』は多くの罪を犯したからね」

「でも・・・」

「いいんだ、アスカを助けるためなんだから」

「(もうシンジったら、変わってないわね。
初めてシンジが男の子だって聞いたときから・・・・
ある子を傷つけたから、その子の母親を連れ戻すためだからと言って
自分の父親と敵対して・・・母親と『さよなら』して
・・・でもまだ何か隠してるね、なんとなくだけど・・・
確証はないけどね・・・ケイ?シンジ?)」

「(ごめん、マナ。真実を全て話してない・・・・それを知ったらマナは
私を軽蔑するからかな?・・・・いやだな、まだ私自分のことだけ大事にしてる
これじゃアスカを救えない・・・解ってあげられない)」





「ついたよ、マナ」

「ええ、へぇー・・・これがケイの倒した使徒なのね」

つかつかと歩いてゆく2人の美少女、
このような場所にピクニック気分できている一方の美少女こと霧島マナ。

「なるほどね。コア以外はほとんど原形をとどめているわ。
ホント理想的なサンプル。ありがたいわ」

「あら、ケイちゃんそっちの子は?」

「はじめまして、マナです。ケイが戦自にいたころの親友です。」

「じゃ、今はネルフってこと?」

「そうです、私ってどこに配属なのかっていうと・・・あっ! 
それより・・・将来の永久就職の希望は・・・(ポッ)」

たら〜と汗を流すミサト、気を取り直して

「でぇ?リツコ、何か分かった?」


『601』


「「なに、これ?」」

同時に声をあげるマナとミサト。

「「解析不明を表すコードナンバー・・」」

こちらも声がはもるケイとリツコ。
マナはつまんなさそうにリツコの説明を聞き流している

「ねぇ、ケイ。せっかくだから、お弁当つくってきたの食べない?」

「えっ?」

「いいでしょ、ミサトさん?」

「まあ、いいわそこらへんで食べてて・・・私の分は?」

「も、もっちろん、ありますよ」

「ああー、これでビールがあればねー」 
真顔でさらりといけないことを言うミサト、たらりとケイが汗を流す。
 
「職務中でしょ、ミサト!」






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その夜リツコがミサトのマンションにやってきた。
インスタントのカレーをだすミサト、マヤもリツコの策略により来てしまっていた。
ケイの策略によりマナもまでも・・・・ともかく恐るべしミサトカレー!!


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その後マナとマヤは言う「悪魔が笑った水曜日」と・・・・
 ――――――――――――――――――
「「ミサトさんが普通にカレーをつけてくれたんです・・・」」

だんだん声が小さくなるマナとマヤ、 

たまたま発令所と学校で同じ話を同じ時間にしている 

「「その後のことは憶えてません、思い出したくないんです」」 

当事者は語る、耳を傾けるクラス一同とオペレーターの2人・・・ 

「いいなあ、葛城さんの手料理・・・・そんなにおいしいのか」

何か勘違いしている日向、すかさずつっこむ青葉。 

「『葛城さん』かぁー、日向!?」 

「いや、おれはだな・・・」 

マヤはまだ、ミサトカレーを思い出しているのか身震いしている。 

マナもこんな具合だ、マナとマヤをはめた2人はミサトカレーから頭痛だけという 

比較的・・・いや、かなり軽傷で2人そろって苦いコーヒーを飲んでいた。
 

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第五の使徒が現れた。
ミサトとリツコがケイとレイに今回の使徒に対する
作戦を教えている、どうやら今回は初めての初号機と
零号機による共同作戦が実行されるらしい。

「ケイ、この前の第四使徒のときの影響で初号機は接近戦は無理なの」

「そこで使徒の形状から長距離からの直接射撃をします」

「でも、これ以上強力な武器は?」

「だから借りるの、戦自から」

「あっ、それからケイはあとで私の研究室に来て」

「何のようかしら?」

思い当たる節が有りすぎるのも問題だった。







「シンクロ率のことよ」

「そうですか、50%だとあそこまでの動きが無理なので・・」

「じゃあ、あなたは押さえていたの?」

「ええ、たぶん82%までは今までの訓練のおかげで出せると思います」

「さすがね。・・・ところで6年前、あなた戦自にいたそうね?」

「いましたよ、5年前にネルフに来ることになってしまったんですけど・・・」

「その6年前のネルフとの模擬戦、やってたのはだれ?
あの屈辱を味合わせたのは?ショッピング中にマギを制圧するという
馬鹿げたことをしたのは?絶対仕返ししてやる!」

リツコは6年前を思いだし熱くなっていた・・・
ケイはこのままでは殺されかねないので逃げ出していた。
まさか、『わたしです』なんて言えない。

「くっ。いらいらする、ね?ケイ?・・・・あれ?ケイは?」

リツコが正気にもどったのはそれから5分後のことだった。
 
 

 

 

 

 

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星の片道キップ第8話「満月」
 

 

綾波レイという女の子をある一面から見ると、確かに純真無垢な子供のように感じる時がある。
しかし、魂が引き継がれるという非常識的な能力、いや、補完計画の道具であると言うことが
彼女自身に大きな影を落としている・・・彼女の自由や意志を縛っているといえよう。
 

「どうして、これに乗るの?」
 

月が明るく辺りを照らしている、そんな中に2人はいた。
 

「絆・・・だから」
 

少し考えてから言う。
 

「私と同じね、でも・・・誰との絆?」
 

ケイはそう言って両手を見つめる、ここにケイの゛絆"がある。
 

「・・・・・・」
 

綾波は答えない。
 

「私はみんなとの絆かな?・・・学校のひとやネルフのひとたち。綾波さんは父さんかな?」
 

嘘をつく、綾波に告げたい、教えてあげたい。
・・・綾波との絆だって私の中では《特別》であるということを
 

「そう・・・」
 

ザザッーと木々を涼しい風が通り抜けていく
 

「・・・・・・」
 

「そろそろ時間よ」
 

レイが告げる
 

「じゃ、行きましょ。綾波さん・・・・守ってあげる」
 

「・・・?。私が」
 

「そうじゃないわ、私が救ってあげるの・・・死なないでね」
 

「・・・でも、・・・・その、・・・」
 

綾波が珍しく戸惑っていると
 

「さっ、時間がないわ。またね」
 

ケイは小走りに初号機に近づき、乗り込んだ。
レイはいつもの無表情にもどり、零号機に乗り込む。
 

 

 

 

 

 

 

スナイパーのごとく構える初号機、盾をもつ零号機・・・・静寂と電気を供給する
電圧車、変圧器の高圧電力特有の音だけが第三新東京市辺りを支配する・・・
そんな中、ボッーーーとサーチライトに浮かび上がる使徒
・・・闇が染める世界に不気味に浮かんでいる。
 

「(どうしたらいいのかしら・・・)」
 

思案するケイ・・・実は戦自型マギ(ユイの疑似人格)でシュミレーション済みなのだが、その結果・・・
一発目はかならずはずすし、今回のような使徒は今までの生物的な使徒とは
違って一言で言うと・・・・機械。だからコアに当てなければ貫通しても
痛みも感じなければ、その動きを鈍らせることも無理なのだ。
 

「(しょうがないわ・・・初号機を傷つけてしまうけど、レイを助けるんだから・・・・
あとは母さんがうまく照準補正をしてくれるように零号機との回線を作ってあるしね)」
 

「全加速器、運転開始」
 

「強制収束機、作動」
 

「全電力、二子山造設変電所へ。第三次接続問題なし」
 

「最終安全装置、解除」
 

「撃鉄おこせ!」
 

「全エネルギー、ポジトロンライフルへ」
 

ケイは思考を終了させ、照準を合わせ始めた・・・・
照準が・・・・・・・使徒に ・ ・ ・ ・ 合った!初号機がトリガーをひく!
打ち出される巨大なエネルギー、合わせるように使徒も過粒子砲を打ち出す。
ちょうど使徒とエヴァの中間地点で干渉し合うエネルギー。
 

「砲身冷却急いで!」
 

「第5使徒に再び高エネルギー反応!」
 

「なんですって!」
 

 

 

 

 

零号機が背後から初号機に近づいて前に周り込もうとする。
ケイはライフルを持ち接続してあるケーブルの束を掴むと場所を移動しようとする。
使徒の過粒子砲が初号機を襲う!!!
零号機が守ろうと初号機の後を追うが初号機のスピードが素早く追いつけない、
使徒の過粒子砲が初号機の左半身にあたり装甲が溶け始める・・・・・
 

「くっうぅぅぅっっっ!!!!!」
 

ライフルを捨て強力なATフィールドを展開する初号機。
 

「ミサトさんっ!これじゃ撃てません、レイに撃たせてください・・・・」
 

言葉通り、この攻撃を避けれても初号機は傷ついて精度の高いオペレーションは無理だ。
 

「レイ!聞いた通りよ。あなたが撃ちなさいっ!」
 

追いついた零号機がライフルを拾い構える・・・
その零号機を守るためSSTOの底部を流用した盾を構えるが溶け始める・・・
盾が完全に溶ける零号機を守るため身をもって使徒の攻撃を受ける・・・
初号機は強力すぎる過粒子砲によって装甲が3割溶けつつある・・・・
零号機はじっと冷静にエネルギーがたまるのを待つ、しかしレイは
焦っていた・・・・・・・・・・・・・・・・・・・じっと待つ時間が長く感じた。
零号機の撃った陽電子砲はみごとに使徒のコアに当たり使徒は沈黙した。
使徒の攻撃を受けた初号機のエントリープラグを
取り出しゆっくり地面に置く・・・・自分も零号機から出る。
 

 

 

 

 

 

「だいじょうぶ?」
 

熱いエントリープラグを開け必死にケイの体を揺する
 

「ありがとう・・・・レイ」
 

「どうして?どうして、私はあなたが居なくなってしまうことを恐れたの?」
 

妙な焦燥感があるレイ、自分の気持ちが分からない
 

「あなたは碇司令の娘、でも・・・どうして?わたしと同じ気がする」
 

 

「レイも私も大事な人を守りたいだけなんだよ、だから・・・ね?」
 

 

ケイはレイを抱きしめてやり言い聞かせる。
 

 

「きっと、レイには碇司令しか居なかったのよ、
だから他人の存在なんて気にならなかったの・・・でもね。
ひとりの・・・・・・唯一の・・・・・・ものに・・・・・ひとに・・・・・執着しすぎるといけないわ。
その人は幸せとは言えないもの・・・・悲しいと思うの
きっと、みんな同じだけど・・・・違う物に“絆”をもつべきだと思うの、
他人にいつか裏切られるかもしれないけど・・・それでもいいの。
他人がいないのは・・・自分しかいないこと、一人は寂しいもの。
寂しさを癒すため人は他人を求めるの・・・それはいけないことじゃないわ。
だから、あなたには私にも“絆”を持って欲しかったの・・・それはとても良いことだから」
 

じっとケイの話に耳を傾ける・・・・・そして言ってみる。
 

「わたしは・・・・・絆がほしい。碇司令は・・・わたしを『わたし』として見てくれなかった
でも、碇司令しかいないから、だから・・・・・見て見ない振りをしていた・・・・」
 

 

「そう、いつか・・・(私にもアスカ以外の人が見れるのかな?無理だよ・・・そんなこと)
いつか・・・多くの人と絆がもてるわ、だってここにいるんだもの、生きているんだもの・・・ね?」
 

レイの体を放し表情をのぞき込むように問いかける。
 

「でも、わたしは人じゃないもの!!!だ、だから・・・」
 

「だから、どうだというの?レイは人よ。私が保証する!いつか3人目になるから
なんて言わないで!わたしにとってレイはひとりなの!あなただけよ!」
 

 

「なぜ?それを知ってるの、そのことは知ってはいけないこと・・・・・
碇司令に知られたらいけないこと・・・・それなのに『わたし』でいいの?・・・・・・・・」
 

レイはケイの胸にすがりつきギュッと抱きしめる、ケイも静かにレイの髪をなでていた。
 

 

 

 

 

それからのレイは少しずつ心を開いていった、まだ地下に“レイたち”が
居るがそれでも自分を支えてくれるケイがいて、優しくしてくれるヒカリやマナがいたから
クラスにも不器用だが馴染み始めた、そのことで一つ問題が生じた、それはマナのことだ。
マナはチルドレン候補生ではないためクラスは違っている・・・
そのことに初めは拗ねていたが、今はレイがケイに必要以上に近づくことに怒っている
例えば、レイのマンションに部屋の模様替えに行ったこととか、
ケイがマナにだまってレイと一緒にお買い物に行ったことがばれた日には
「ええっー!?デートじゃない!?それって。」と
ケイに詰め寄った所をケンスケに撮られ・・・高く売れたと言う。
ケイの子犬のように怯える表情は良い売れ筋だったとか・・・それと対比して
マナは冷たい目でじっーっとケイを睨んでいたが・・・何か思いついたのかニヤニヤ不気味に笑っていた
 

 

 

 

 

 

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星の片道キップ第9話「JA」 

 

私は司令のためだけに生まれました、でも

私は司令の人形じゃない・・・自分で絆を作れるもの。

そう教えてくれたのが司令の娘・・・碇ケイ。

私と似ている顔立ち・・・

でも、私と違って綺麗に微笑むことができるひと、

私はあんな綺麗に微笑めれない。

「どうしてあなたは私のことを気にかけるの?」

どうして、あなたは私のことを気にかけてくれるの?

どうして・・・私は司令の人形なのに・・・碇ケイさん?

親子は互いに慈しみあうものだと赤木博士は言っていた。

父親を私にとられて悔しくないの?どうしてあなたは幸せそうなの?

「別に理由が必要なことかしら?

仲良くしたいって思っただけなのよ。」

ジオフロントへ行く道を楽しそうにスキップをしながら

そう答えてくれた、私にはまだ分からなかった。




私の部屋・・・大切にしているものは司令の眼鏡。

ただ・・・それだけだったけど、今、私は分からなくなっている

司令との絆・・・ただこれだけ。

司令は私のことを大切にしてくれているの?

大切に思ってくれているの?

「ピンポーン」

声でチャイムの真似・・・変なの。でもまた、来てくれた。

碇ケイさん・・・私にとって大切なひと?

分からない、でも気になっている人。

「レイ、また来ちゃったよ。今日はねー

じゃあーん!みてみて綺麗でしょこの置物」

ケイさんはそう言って鞄の中からどんどんガラスでできた

お魚さんやアザラシさんの置物を出す、あんなに入れて

学校に何を持って行ってるのだろう?

「この前のプリン、美味しかったでしょ?

私が作ったのよー、自信作だったんだからー、

95点ぐらいだったけど、今日のはまぁ80点くらいかな?」

そう言ってまだ鞄からプリンとお皿やスプーンまで出す。

・・・・あなた、勉強してるの?

司令が言ってた、学校は勉強するために行くものだと。

・・・・あなた、本当に司令の娘?




私はそれからケイさんと一緒にプリンを食べた

私には今日のプリンとこの前のプリンと同じに感じたけど

ケイさんはやっぱりこの前の方が美味しかったと言っていた。

私が分からないと答えるとミサトさんと一緒のこと言わないで

って言われた、私も心外。前、赤城博士に言われたこと

「あれは料理ではないわ。劇物指定を受けた方がいいわ」

納得、一度だけ間違って葛城一尉の入れたコーヒーを

飲んだことがある・・・あやうく三人目になるところだった。

「でも、殺風景な部屋ねぇ・・・よしっ!決めた。

今度一緒に部屋の模様替えしようよ。

ミサトさんにレイの住居のこと頼んだけどダメだったのよね。

だから、この部屋を綺麗しようよ。私も一緒に壁紙とか選んであげる」

部屋の模様替え?必要なことなの?

でも、ケイさんに強引に決められてしまった。




朝、学校に来る途中にケイさんに会った。

隣にいる人・・・だれ?霧島マナさん・・・幼なじみ?

仲良くしている、ケイさんとマナさん。

マナさんの方が積極的に話しているけど

ケイさんも楽しそうにお喋りしている、私は二人の後について

学校にきた、教室に入っても特にすることはない。

ぼぉーっと窓の外を眺めている、白い雲・・・高いし大きい。

今日は午後から雨かも知れない、ケイさんとの約束。

午後からケイさんとのお買い物、小物や壁紙を買うとか言ってた。




「壁紙を選ぶけど・・・何色がいい?」

「分からない・・・」

私は即答する、ケイさんは困った様子の顔で

「じゃー・・・・・白は?」

「それでいい」

「そう・・・じゃ次はキッチン用品だね!」

壁紙を注文してカードで精算した後、

私は料理なんかしないのにそのままキッチン用品も買いに行く、

かれこれ二時間半も買い物している、

ケイさんも疲れたらしく・・・

もちろん私も顔には出さないが相当疲れていて、喫茶店で休む。




カタカタカタカタ・・・・・

「まったく母さんも肝心な時にアレなんだから」

愚痴りながらそれでも手は動いている、三日後のJAの

騒動を穏便に終わらすためだ。

仕方がないのでプログラムを作っている、このプログラムを

作っているのが教室でしかも、授業中だから

教師もキーボードをたたく音が気になっているのだが

ネルフの仕事を兼ねて学校にきていることを知っているので

何も言わないが・・・・・・

カタカタカタカタ・・・・・・・

カタカタカタカタ・・・・・・・

その中でじっーとケイを眺める視線がある。

一人は霧島マナ、一人は綾波レイ、

その他大勢は教室の男子だ、なぜかと言うまでもないが、

ケイは超優良物件だからなのだろう、エヴァのパイロットでありながら、

国連の特務機関ネルフの技術部に所属し、頭脳明晰、容姿端麗、

清楚で可憐・・・でも明るく誰にでも優しく接する性格の持ち主。

これで惚れなきゃ誰に惚れる!?こうなると女子からの

嫉妬の視線を浴びるようだが・・・マナがいるせいで

一部の怪しい噂が流れ、今のところは穏便に済んでいる。




ケイがうつキーボードの音も大きく感じる。

丑三つ時とでも言い表せばよいのだろうか?

未だ、プログラムを作っているケイ。本来ならばユイに

任せるべきなのだが、今ユイは検診中なのだ。

ネルフのマギと接続した際に・・・ケイも少しは危惧していたが、

やっぱりというのか、案の定ハッキングしてネルフのマギシステムを

不安定にしてしまった、特にカスパーに損傷を大きく与えていた。

誰にも気づかれないように連日、

誰にも知られないように修復していた、

ネルフに貸し与えられた研究室に泊まるときもあった。

その翌日は葛城家の朝食は酷いものでペンペンに同情するケイだった。

「ふぅ・・・久しぶりに紅茶でも飲もうかな?」

一段落したのだろうか、背伸びをして紅茶を入れる。

コーヒーばかり飲んでいるなぁ・・・私って。

まるでリツコさんやミサトさんみたいだ。

シンジだった頃は紅茶しか飲まなかったように感じる、だからだろうか?

久しぶりに感じたのは・・・・ふと、思いをはせるシンジだった頃に。




「かあさんっ、ここはどうすればいいの?」

まだ、よちよち歩きさえもおぼつかない足取りで

母親によっていって聞く。

「シンジ、それはね・・・」

優しく、暖かく、ゆっくりとした声で答えるユイ。

日本が永遠の夏になってから必須アイテムとなりつつある

機械たち、たとえばクーラーなどがそれに当たる。

だが、ユイの実家がある軽井沢の碇家はいつも涼しく

風鈴が飾ってあるだけだ、昔からの日本家屋らしく、すだれなど

情緒のあるものが多かったように記憶している。




また、場所は移る・・・

夕焼けが差し込むリニアの中をかけていく自分。

ドアを開けて少し駆けるように進んでいくと、一つの席に

座っている穏和な顔の女性・・・ユイが微笑んでくれた。




ガシャッ・・・

「博士本当にいいんですか?」

「ええ、発案者であり責任者である私が

成功する確信を持っていますし、なにより子供たちには

明るい未来を見せてあげたいのですから」

「でも、現時点でのタンデムは危険では・・・」

「いいんですよ、赤木さん。この子のレポートの

疑問に答えてあげたいですし。身をもって体験してみるのも

よい経験ですよ・・・ね?シンジ」

「そうだよ、かあさん。早く実験するんでしょ?」

この母親にこの息子ありか・・・ナオコは少し嘆息してみせる。

「赤木博士・・・実験の準備は整ったのかね?」

ゲンドウが声をかける、隣にたつ冬月は

「しかし、タンデムなど未知数の実験は・・・」

ブツブツ何か言っているのだが。




エヴァに久しぶりに乗る感覚・・・でも、魂が入ってないからだろうか?

寂しく感じる、隣ではLCLを深く取り込むユイの姿。

「母さん・・・ごめんね」

小さくつぶやく・・・・

やがて、電化され神経接続してエヴァに向き合う2つの魂。

1つは受け入れられ・・・1つは拒絶されるがその魂は

残った2つの入れ物を融合された1つの魂の入れ物に戻る。

まだ、慣れない入れ物だからだろうか?

1ヶ月ほど遺伝子がYYとXXをランダムに変化したのだが

満月の夜に見た悪夢のせいだろうか?

結局は女性に落ち着いてしまった、

今ではこのほうがいいのかも知れないとさえ思っている、

女性ならばもう誰も傷つけることがないと思ったから、

アスカも、レイも、トウジも、ミサトさんも、カヲルくんも、

僕が傷つけてしまった人たちすべてを。




はっとするケイ、また再びキーボードを打っていく

こうして、夜はふけていった・・・・・・




「そ、そんな!?」

時田は自分の目が信じられなかった、暴走・・・あり得るはずがない。

こんなことが起きてしまうなんて!?

「奇跡を待つより捨て身の努力よ!停止手段を教えなさい!」

そして、刻々と進められていく準備。

今回は前回の使徒戦での初号機の損害が大きかったため零号機が

出ることとなった。

目標地点に到達し、輸送機から切り離され投下されるエヴァ。

JAはただ黙々と、進んでいく。

「パスワードは希望か・・・」

つぶやくミサト、誰も聞いてはいないが自分に言い聞かせる。

ハッチを手動で開け通路を全力で走り抜ける。

「すごい熱。こりゃ、まずいわね・・・」

パスワードを打ち込む・・・

制御棒が動き、内圧がダウンする。




「しかし、葛城一尉の行動以外に

何者かがプログラムを我々の後に上書きした模様です。」

「そうか・・・ゼーレか?」

「いえ、目下全力で捜査中です。」
 

 

 

 

 

 

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星の片道キップ10話「アスカ、来日」
 

 

ネルフ本部・司令公務室。
碇ゲンドウがどこかに電話をかけている。
「そうだ。その問題はすでに委員会と政府に話は付けてある。
計画のメドは君の仕事の如何による。
荷物は昨日佐世保を出港し、今は太平洋上だ。」
電話をおくとドグマに向かう、エレベターに乗って地下深くに降りてゆく、
やがて一つの扉の前に立つとカードで扉を開ける。
中には巨大な白いヒトが立っているようだ、足はなかった。
そして、十字架に張り付けにされたままじっとゲンドウを見ている。
「リリスか・・・シンジはどこへ行ってしまったのだ?
ユイよ、シンジは私から逃げ出してしまったのか?
シンジの代わりの娘・・・碇ケイ。委員会の回し者だろうか?」
この男のつぶやきは巨大なドグマの空間に吸い込まれ消えていく。
巨人もただそこにたたずんでいるだけだ。
 

国連軍のヘリが飛行している、眼下には陸地と海の境目の港・・・
やがて、海上にでるヘリ。遙か遠くの地平線は青い海と青い空で
見分け方は空に白い雲が多少あると言うことだけだろうか?
ヘリの中に乗っているのは霧島マナ、碇ケイ、相田ケンスケ、
鈴原トウジ、洞木ヒカリ、葛城ミサトの6名である。
 

マナは強引に、レイも強引に行こうとしたのだが本部待機を
命ぜられている、ケイがヒカリを誘ったのを見てケンスケが
頼み込み、なぜかトウジまでも巻き込んでいた。
機内の様子はというと、マナはケイの隣に座って眼下に
広がる海を眺めている、ケンスケは必死にカメラを回してヘリの
内部や眼下の様子を撮っているし、トウジはミサトの言葉にはしゃいで
帽子をかぶり直しご機嫌だが、ヒカリはジト目で睨む。
「豪華なお船で太平洋をクルージングよ!」
雲間から海上に大艦隊が見えてきた。
国連軍所属の太平洋艦隊である、ケイは複雑な思いを
抱えて眺める、マナはそんなケイの様子に気づかず艦隊の
数を数えている、ケンスケはそんなマナを後目に
「空母が1,2,3,4,5、戦艦4、まさにゴージャス!
さすが国連軍の誇る正規空母“オーヴァー・ザ・レインボゥ”」
「よく浮いてるわね」
「セカンドインパクト前のヴィンテージものじゃないっすか?」
馬鹿にしたようにケンスケとミサトが感想を述べる。
 

「フン、いい気なもんだ。オモチャのソケットを運んできおったぞ。
ガキの使いどもが」
空母のブリッジでヘリを見上げながら艦長らしき男が
いまいましそうにつぶやく。
空母に着艦しようと降下するヘリの爆音が響く。
そのヘリをブリッジの張り出しに立って見下ろしている少女がいた。
太陽がサンサンと輝き、空母の上には強風が吹き
服や髪がサアッとたなびかせている。
ヘリからミサト、トウジ、ケンスケ、ヒカリ、マナ、ケイの順で
降りる、と同時にトウジの帽子が強風によって吹き飛ばされる。
慌てて後を追うトウジ、その様子を見てケイはフッと
笑ってしまう、トウジがまたやってしまう・・・どうしても
ほほえましく感じてしまう、自分も足を進める。
ケンスケがワイワイとはしゃいで、撮りまくる。
ミサトとヒカリとケイは恥ずかしそうに後を追う、
マナはキョロキョロと周りを眺めながら進む。
 

「ヘローォ、ミサト、元気してた?
相も変わらず、生活不能者なままじゃない?」
見事にトウジの帽子を足蹴にしたアスカがミサトに向かって言う。
ミサトもなじみのある声、態度に顔がほころぶが・・・
「し、紹介するわ。弐号機の専属パイロット、セカンドチルドレン。
惣流・アスカ・ラングレーよ」
アスカの高慢な態度にこめかみを押さえながら紹介する。
まぁ、アスカ自身もわざとやっているのだから
そのとき、強風が吹きアスカのスカートが捲れあがる。
 

パンッ
 

パンッ
 

パシッ
 

「な、どうして?ファーストが・・・」
アスカが放ったビンタをケイが受け止める。
「危ないわねー、なにするの?」
顔立ちがレイに似ているから間違えたのかしら?とミサトは思い・・・
「アスカ?乱暴なってちゃって・・・ケイちゃんは女の子よ?」
ミサトがあきれたように言う、ヒカリとマナはミサトのうしろで
アスカには見えないが、憮然としている。
「なにすんのやっ!?」
トウジが叫けぶ、アスカはその声に反応して
ケイの方を向いていた顔を振り向ける。
「け、見物料よっ!安いもんでしょ?」
ふと、この後の展開を予想してアスカ、ケイとも目を閉じる。
「なんやて、そんなもん、こっちも見せたるわぁ!」
ジャージに手をかけ一気に・・・
引き下ろす!間違ってパンツまで引き下ろしてしまうトウジ。
「「きゃゃゃあああ!?」」
マナとヒカリはパニックを起こす、ミサトは飽きた様子で
チラッと見るだけ、ケンスケはカメラでじっーーっと撮っている。
「「何見せるのよっっっっ!!!」」
アスカの右フックとケイのローがトウジを沈める。
「碇さんの・・・白パ・・・」
何か言いかけて甲板に沈むトウジ、ケンスケはしっかり撮っている。
「ケンスケくん?もしかしてぇーー」
ブンブンと大きく首を横に振るケンスケ。
「はいはい、これは没収ね。」
マナがサッと後ろから現れてケンスケのカメラを取り上げていく。
「そ、そんなー?確かにトウジのもあるけど碇の・・・・」
トウジが沈んでしまって、周りにはミサト、ヒカリ、マナ、ケイ、アスカと
女性しかいない・・・・分が悪かった。
 

あれ?どうしてヒカリとスパイ女がここに???
シンジはどこよ?ケイ?こんな奴同じクラスにいたっけ?
アスカはチルドレン候補がクラス全員だということを
ママに聞いて知っているから
シンジがいないと言うことはケンスケかトウジ、
もしくはヒカリだと思っていたからだが
ファーストに似ている得体の知れない奴だとは思わなかった。
シンジはなぜいないのだろう???
 

「で、噂のサードチルドレンはどれ?まさか今の・・・」
「違うわ、この娘よ。」
視線でケイをさす、アスカは不思議そうな顔でのぞき込み
「ふぅん・・・そぅ」
((あら?アスカ、サードを気にしてないのかしら?))
ミサトとケイの思考は一緒だった。
 

「オヤオヤ、ガールスカウト引率のお姉さんかと思っていたが、
それはどうやら、こちらのカン違いだったようだな」
艦長が皮肉る、内心おもしろくないのだ。
「ご理解いただけて光栄ですわ、
ではこちらの引き渡しの書類にサインを」
「まだだ!」
「ではいつ引き渡しを・・・」
「引き渡しは港についてからだ。それまでは我々の管轄だからな」
凛々しいミサトにトウジが赤くなっている、ヒカリがトウジの足を踏んづける
「あーら、ごめんなさい。私の足が失礼しましたわ。」
ケイがまるでアスカみたいだと思いながら横目で眺める。
アスカはそわそわして落ち着かない様子だ、どうしたんだろう?
「よっ、相変わらず凛々しいナ」
そこにはネルフ・ドイツ支部に派遣されていた加持リョウジが立っていた。
ゲッとした様子のミサトとキラキラした瞳で
「加持せんぱーい」と駆け寄っていくアスカが対称的だった。
 

すし詰め状態のエレベター、ケンスケが乗り込もうとしたところで
ピーッと重量オーバーとなった仕方なく
加持、アスカ、マナ、ケンスケとミサト、ケイ、トウジ、ヒカリに
分かれて2組に分かれて移動することとなった。
 

アスカは加持にべったりしながらマナをじっーと見ている、
マナはケンスケにカメラを返してほしいと懇願されている。
マナはメモリは消去したからもういいわと返してあげていた。
加持は・・・じっと何かを考えているようだ。
 

さて、もう一方のグループはというとミサトは顔色が悪い
たぶん加持のことを考えているのだろう、
ヒカリは自業自得とはいえトウジのことを心配して、
まだふらついているトウジを支えている。
「なんで・・・あいつがここにいるのよっ!?
迂闊だったわ十分考えられれる事だったのに」
ブツブツすっかり青ざめた顔のミサトのつぶやきがケイの耳に聞こえた。
・・・・・・でも、ミサトさんまた泣いちゃうのかな?
 

士官食堂でお茶を飲む八人、六人用のテーブルなので
マナとヒカリが隣のテーブルからイスを取ってくる。
「今、つきあっている奴、いるの?」
「そんなこと、あんたに関係ないでしょ!?」
「あれっ?つれないなぁ。君が碇ケイちゃんかい?」
「ええ、そうですけど」
「今、葛城と住んでるんだって?寝相の悪さ直ってる?」
「そうですね、もうちょっと保護者としての責任を持ってくれないと
そのうちにお嫁にいけなくなっちゃいますよーー」
「ケイちゃんーーーそりゃないわよぅ」
泣きつくミサト、だが加持の言外の意味をごまかしきれなかったのか
ケイ、アスカ、加持以外は変なポーズを取ったまま固まってしまった。
 

艦外のデッキに立つアスカと加持。
「ねぇ、加持さん。サードチルドレンって碇シンジって
いう男の子じゃなかったの?ドイツではそう聞いたけど・・・」
「ああ、そうだな。だが、彼は6年近くネルフの松代にいたらしい
彼が来た6年前にコンピューターのトラブルで
うやむやになってしまったらしいが
第三使徒来襲の際にネルフに来た時には“碇シンジ”と言う人物は
正真正銘彼女らしい、なにせ碇司令の血縁者だし
どう足掻いても血液鑑定とかで誤魔化せはしないだろう。」
しかし、碇シンジはなぜ碇ケイなのか?
俺にも分からないことだらけだ、委員会の差し金か?
調べてみる必要があるようだな・・・
「ふぅん・・・でシンクロ率はどうなの?」
「ああ、初回のテストでは50だったそうだ。
まぁ、アスカにはおよびはしないがいい結果だろう?」
「へぇ、まあまあね」
 

「サードチルドレン!ちょっとつきあって!」
アスカがワザと高飛車な態度で声をかける。
「ミサトさん、私はちょっと惣流さんについて行って来ます」
「ケイ?アスカさんって・・・
あのセカンドチルドレンの娘のことだったの?」
小声でマナがケイに聞く、ケイはそれには答えず
「じゃ、行ってきまーすっ」
エスカレーターを駆け上がっていった。
 

「零号機と初号機は開発過程のプロトタイプとテストタイプ。
けどこの弐号機は違うわ」
 

どんな反応を示すのかしら?
一応、シンジの代わりに出てきたコイツは・・・
 

「うん、確かに違うね・・・赤いわ」
 

真っ赤な弐号機、アスカのイメージカラーだね
けど、もう二度と弐号機自らの血で体を赤く染めるようなことは
防がないとね・・・わたしの・・・ぼくの命にかえても。
 

「わっ!?」
突然おそう衝撃、考え事をしていたケイはこけてしまう。
アスカは タンッ! タンッ! タンッ! タンッ! タンッ! と、
弐号機を降りてくると走って艦外のデッキに出る。
戦艦や空母を次々と襲う水柱、そのたびに真っ二つになって沈んでゆく船たち。
 

「な、なんやっ?」
オロオロするトウジに対してミサトは瞬時に状況を理解する。
「水中衝撃波よっ!」
「あたたた・・・」
マナは運悪くどこかに頭をぶつけてしまったようだ。
ケンスケはデジタルカメラのメモリを取り替えるときに
衝撃波を受けたらしく、床一面にメモリをまき散らしている。
 

「使徒?」
振り返って後から駆けてきたケイに尋ねる。
「そうみたい・・・どうしよう?ミサトさんに」
ケイの言葉を無視してアスカは
「チャーンス」
と余裕の笑みで弐号機を振り返る。
 

「くそう!何が起こっているんだ!?」
「ちわー、ネルフですが見えない敵の情報と的確な対処は
いいがっすかー?」
ミサトがブリッジに顔を出す。
「これは私見ですが、これはどう見ても使徒の攻撃ですねぇ」
 

魚雷が発射されるが、使徒の体当たり攻撃で
フリゲイト艦は真っ二つにされる。
「この程度じゃ、ATフィールドは破れないか・・・」
次々と魚雷を発射し砲弾を浴びせかける戦艦に対して
半ばあきらめの表情で加持が呟く。
 

「はいっ、これ」
「プラグスーツ?どうして?」
「あんたも来るのよっ!」
「ええっ!?」
物陰で着替えるケイ、目を閉じて集中して神経をとぎすます。
 

一つの船室で電話をして、ブラインドの隙間から
海上の様子を見ている加持、隣には整えられた荷物がある。
「こんなところで使徒来襲とはちょっと話が違うんじゃ
ありませんか?それと・・・」
「ん?なんだ・・・。そのための弐号機だ、
予備のパイロットも追加してある。最悪の場合、キミだけでも脱出したまえ」
「わかっています、後でお話があります」
「予備のことか?」
「・・・・・・」
沈黙で答える加持。
 

エントリープラグに乗り込んでいるアスカとケイ。
「L.C.L Fullung Anfang der Bewegung.Anfang des Nerven ansuhlusses.
Ausulosung von Rinkskleidung.Synchro-Start」
すんなりと起動する弐号機、
ケイはさすがにネイティブでないため少しは苦労している。
 

「エヴァ弐号機、起動中」
「ナイス!!アスカ!!」
「ケイも乗っているのね?」
「はい」
窓に張り付き輸送艦・オセローの様子を見るミサト。
使徒がオセローを破壊する、間一髪でイージス艦に着地する弐号機。
「ミサト!外部電源を用意して!」
「わかったわ!」
弐号機は艦上を次々に
飛び石のようにジャンプして空母の外部電源を目指す。
「内部電源残り35秒」
「わかっているわ、そんなこと!」
「エヴァ弐号機、着艦しまーすっ!」
空母に着艦する弐号機。
その衝撃で艦が傾き、甲板上の戦闘機が海中へ滑り落ちていく。
「外部電源に切り替え!」
弐号機がソケットを接続する。
「切り替え完了!」
「でも、武装がない」
「プログ・ナイフで十分よ」
弐号機の肩からプログレジックナイフが飛び出し、それを構える。
刃が伸びて発光するナイフ・・・
 

空母に向かってくる使徒、海を割って姿を現す。
「かなり大きいわ」
「思った通りよ!」
巨大な使徒は信じられないことに空母まで一直線に来ると
一歩手前で飛び上がり弐号機ごと海中に飛び込む。
 

エレベーターが上がってくる、垂直離着陸戦闘機に乗り込んでいる加持。
「あれって?」
マナが気づき指を指す、全員顔を向ける。
「加持!?」
「届け物があるんで、俺、先行くわ」
「じゃ、後よろしく、葛城一尉」
「に、逃げよった・・・」
 

「また、もどって来るよ?どうするの・・・」
「ふん!捕まえてやるわ」
「つ、捕まえるって?」
「あんた、ばかぁ?
エヴァはB型装備なのよ・・・・とにかく捕まえるしかないでしょ」
使徒がクワッと口を開けエヴァにかみつく。
 

海上では・・・アンビリカルケーブルが海中に引き込まれ続けている
「エヴァ弐号機、使徒体内に侵入」
「それって食われたんとちゃうか?」
トウジが率直な意見を述べる。
「まるで釣りやな・・・」
 

「生き残った戦艦2隻による零距離射撃!?」
「そんな無茶な!」
「アンビリカルケーブルの軸線上に無人の戦艦2隻を自沈させ、
罠を張ります。その間にエヴァ弐号機が目標の口を開口。
そこへ全艦突入し、艦主砲塔の直接砲撃の後、
さらに自爆、目標を撃破します。」
「アスカたちも聞いた通りよ、はやくそいつの口を開けてちょうだい」
「ミサトの奴は相変わらず無茶ばかり言うわね!」
うれしそうに文句をいうアスカ。
私は前とは違うのよ、ママがいるんだから。
 

「惣流さん、わたしも手伝うわ」
アスカはそれを無視して・・・
「あんたは黙ってみてなさい、高機動モード!」
うっさいわねっ!あんたは見てりゃいいのよ。
「でも!」
必死な顔で懇願してくるケイ。
「・・・・」
考える・・・あのときもシンジと一緒に倒せたし・・・
「私も何かしたいの!お願い私にも・・」
じいっーと見つめる黒い瞳に吸い込まれそうになる気がした。
「わかったわ、ちゃんとサポートするのよ?」
にっこり微笑んで・・・!?この笑顔どこかで・・・
今はいいわ!使徒よっ、使徒を倒さなければならないのよっ!
「うんっ!」
ケイがうなづくとアスカは単座から体を少し動かす
それを見て察したケイが体を入れてしっかりと手でつかむ
その上からアスカの手が重なり視線を合わせて頷きあう。
「強く念じて、開けっ!ってね?」
「わかったわ!」
 

「「開けっ!、
グッと手に力が入る2人、
     開けっ!、
エヴァは使徒の上顎と下顎を支える、
         開けっ!、
ググッと使徒の口がきしみ、開き始める。
             開けっ!!!。」」
 

そのとき、シンクロメーターの表示がレッドゾーンに突入し
弐号機の全身に力がみなぎり使徒の口をこじ開ける、
戦艦2隻が使徒の口内に侵入して、主砲の一斉放射によって
使徒の体がふくらみ大爆発を起こす。
 

新横須賀港についた、タラップを降りてくるケイを見つけ
駆け寄ってくるトウジたちミサトはリツコとともにジープに乗り込む。
「本当に貴重なデータだわ・・・」
ミサトの記録レポートを読み、ミサトはぐたぁ〜としている。
「うっわぁー、碇さん!どうしはったんですか、その格好!?」
「う〜ん?ケイに赤は似合わないわ。やっぱりここは・・・・」
「碇さん、なんなのその・・・」
「委員長なにいってんだよ?
あれがパイロット専用のプラグスーツだよ、そういや知らなかったけ?
とにかく、これは売れるぞ〜〜!」
マナはケイと一緒に話しているが
ケイの着ているプラグスーツが気になるらしくペタペタさわっている。
おのおの、感想を述べていくが・・・ケンスケは撮影に必死だ。
 

その様子を甲板上から伺うアスカ、ケイがはしゃいでいる。
何者なの?
私に対して妙にそっっけなくない?
でも、一度だけ
「私も何かしたいの!お願い私にも・・・」
って私に対して感情を激しくぶつけたわね、どうしてかしら?
それから、あの笑顔は・・・・・・・・・・・シンジに似ていた。
 

「・・・・・・・・・間違いなく、人類補完計画の要ですね」
「そう、最初の人間。アダムだよ。」
「・・・・それから、サードチルドレンはいったい?」
「・・・私は関わってはいない。」
・・・・・・・違う?
ゼーレなのか?
加持にはゲンドウの真意はわからなかった。
 

 

 

 

 

 

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