唐突ですが、この物語は剣と魔法の世界の物語です。あしからず
その時、僕はベンチで居眠りをしていた
春の穏やかな日差しは嫌でも眠りに導いてくれる
こんな良い天気の日に眠らない手はない、と思う
と、いうわけで、おやすみ・・・・・・・・・・・・・
「・・・・・・碇君」
「・・・・・・・・・ぐぅ」
「碇君」
「・・・・・・・・・・・・・・ぐぅ」
「くぉら、馬鹿シンジ!!!!」
「う、わっ!!!!?」
慌てて飛び起きると、そこには綾波と惣流がいた
惣流は怒り顔で腰に手を当てている
綾波は、困った顔だ
「あ、おはよ」
「おはよ、じゃなーい!!!あんた今日から三年生っていう自覚があるの!!?」
「ん、うん」
「碇君、寝てる場合じゃない」
「そうよ!!明日のオリエンテーションまでに購買に行かなきゃいけないでしょ!!!」
「・・・・・・何で?」
「あんた馬鹿ぁ!!?冒険科に進んだら探索用の道具一式を購買で買えって言われたでしょ!!」
「あ、そ、そうだったぁ!!!!」
「碇君、急ぎましょ」
「えっ?綾波もまだなの?」
「あんた探してたのよ!!先に行けばいいって言ったのに、
レイが探そうって言ったからあんたをずっと探してたの!」
「そ、そうだったんだ。二人ともごめん」
「別に」
「とっとと行くわよ」
僕達は、購買部に向かって走り出した
君に吹く風・序章
4月10日:入学式
えっと、僕達は、みんな15才の中学三年生
学校名はジオフロント立ネルフ学園っていう変な名前の学校です
その名の通り、校舎はジオフロントに建っています
設計した人のセンスは良くわかりませんが、ピラミッドみたいな変な形をしてます
え、「冒険科」って何なんだって?
えっと、「冒険科」っていうのは、ジオフロントの地下にある迷宮を探索したりします
歴史の授業で習ったけど、セカンドインパクトっていう大惨事のあと、
世界中で未発掘の地下遺跡やら洞窟やら迷宮が発見されたそうです
でも、そこには妙な怪物、「使徒」って言うのが出るから、
そいつらを退治するスペシャリストを養成するのが、「冒険科」の目的なんだそうです
え?
普通の軍隊に任せた方がいいんじゃないかって?
それもそうなんですけど、何だか使徒をやっつける方法に色々あるらしくて、
普通の軍隊じゃ太刀打ちできないこともあるそうです
つまり、僕達はこの学校の地下迷宮を探索することで単位を取って卒業しなくちゃいけないんです
普通の授業もかなり科目が変わってきます
例えば、剣術の訓練だったり、銃の取扱だったり、ロック機構の解除や、トラップの解除・・・・・
そうそう、「魔法」だって授業で習えるんですよ
まぁ、その辺りの詳しい説明は、おいおいしますから
「あら、シンジ。遅かったわね」
「う、うん、ちょっと、ね」
購買に着いた僕達を出迎えたのは、僕の母さんで非常勤講師にして購買の主
色々肩書きがあるけど、「購買のユイさん」で通ってるらしい
校内の施設はどこでも顔パスだとか・・・・・・・・
「こんにちわ、おば様!」
「こんにちわ、ユイさん」
「あらあら、今日は三人そろってどうしたの?」
「どうしたのって、明日から「冒険科」の授業が始まるから道具を受け取りに・・・・・・」
「まぁ」
と言って、大げさに驚いたりする
「あらあら、それは大変ね。お赤飯炊かなきゃ」
「いや、赤飯よりも道具一式を3セットちょうだい」
「はいはい。わかったわよ」
ホントかな?
疑問を口に出す前に、母さんは購買の倉庫に入っていった
「ねぇ、あの噂って本当なのかしら?」
「あの噂って?」
「碇君は聞いたことない?購買の倉庫は、呪われてるって言う噂」
「嘘!?」
「何でも、あたしが聞いた話によると、あの倉庫に一歩でも入ったが最後!
決して外に出ることはできないそうよ!」
「嘘だよ。母さんは平気で出入りしてるじゃないか」
「・・・・・・きっと、ユイさんは特別なのよ」
・・・・・・・そう言われると、反論できないような気が・・・・・・・・
「でも、誰がそんな噂を流したんだろうね?」
「あぁ、あの噂ね」
振り返ると、両手一杯に荷物を抱えた母さんが笑いながら倉庫から出てきた
ドアの向こうは・・・・・・・・暗くて見えない
「きっと、物がもの凄く多いからじゃないかしら?」
「そんな?でも、ただの倉庫でしょ?入る荷物なんてたかがしれてるんじゃ・・・・・・」
「あらあら、そんなことはないわよ。
食料品に始まり、衣類、生活雑貨、雑誌、家電製品、刃物、銃器、重火器
爆薬、軽車両、特殊車輌、戦車、小型艇、戦闘機、爆撃機、攻撃空母、潜水艦、弾道ミサイル各種
何でもあるわよ」
「「「・・・・・・・・・・・・・」」」
「冗談よ。攻撃空母なんか倉庫に入るわけないじゃない。爆撃機が入るくらいよ」
「って、爆撃機なんて入ってるの!!!?」
「そうよ。購買の倉庫は第三新東京市の空港や港と直結してるから、
空母だって無いわけじゃないのよ。ちゃんと港に停泊してるから」
「「「・・・・・・・・・・」」」
翌日・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
<男子寮>
初日くらいは遅刻しないようにと、僕は珍しく早く起きた
部屋の外からは、早くも足音や話し声が聞こえてくる
僕は制服に着替えると、部屋を出た
「おぅ、シンジ!」
「おはよ、トウジ」
部屋を出ると、すぐそこにトウジがいた
いつも黒ジャージを着てるからいつも目立ってる
まぁ、人が何を着てようが人の自由だと思うけど
「いよいよ、ワシらも三年生やなぁ!この日をずっと待ち続けたで!!」
「あはは、そうなんだ」
「そらそうや!男のロマンっちゅうもんやで!!」
「なに朝っぱらから熱くなってんだよ?」
トウジの後ろから声を掛けてきたのは、ケンスケだった
茶色っぽい髪の毛にニキビ顔で眼鏡
でも、軍艦や戦闘機や銃が大好きで、この学校にも銃が撃てるから入ったとか・・・・・・
「おはよ、ケンスケ」
「おっす。シンジ」
「おぅ、ケンスケ!!お前も聞けや。今ワシの思いの丈をな・・・・・」
「遅刻するぜ。行こう、シンジ」
「うん、そうだね」
「お、おい!!待ってくれや!!」
<体育館>
壇上で、市長だとか自衛隊の偉い人だとかが長々と喋り続けてる
あぁ、眠い
そうしていると、にわかに生徒達がざわめきだした
あぁ、父さんの話か
僕の父さんはこの学園の学園長なんだ
碇ゲンドウ学園長・・・・・・・・・すごく、似合わないよ
どう見ても、教育者には見えない。人相、悪すぎるから
「・・・・・・・・ふっ、問題ない」
壇上に上がった第一声がこれだよ?
僕はいい加減聞き飽きたけど、一般生徒はこれをジョークだと受け取ってるらしくて・・・・・・
オオオオォォォーーーー!!!!パチパチパチパチ!!!!
歓声と爆笑の渦に拍手喝采
違う、違うんだ!!!
父さんはただ単に極度の口下手であがり症なだけなんだ!!
決して狙ってやってるわけじゃないんだ!!!
「・・・・・・・・全てはシナリオ通りだ」
わけわかんないよ!!!!
<教室>
僕のクラスは、3年C組だった
何故か、綾波も惣流もトウジもケンスケも同じクラス
「はいはい。みんな席について!ホームルーム始めるわよ」
「もしかして、ミサト先生が担任なんでっか!!?」
「そうよ。みんな1年間よろしくね!」
・・・・・・・ミサト先生が担任?
この瞬間、僕は目の前が真っ暗になりそうな衝撃を受けた
何故かって!?
綾波と惣流のことでいつも僕をからかうからだよ!!
はぁ、しかも、綾波と惣流のどっちが好きかなんて聞いたりするし・・・・・・・・
「碇シンジ君!!!」
「はっ、はい!!!」
「呼ばれたら返事をしなさい!」
「す、すいません」
みんながくすくす笑ってる
・・・・・・綾波とトウジまで笑ってるし
惣流は笑いすぎだよ!!
前の方の席に座ってるケンスケが半分後ろを向いて何か言ってる
・・・・・・あぁ、「気を付けろよ」か
サンキュー、ケンスケ
「さってと、早速行ってみましょうよ!!」
「そうね」
「そう、行ってらっしゃい」
そう言った瞬間、思いっきり惣流に殴られた
ビシッと僕を指さして
「あんたも来るのよ!!!」
「えっ!?僕はトウジとケンスケと一緒に行く約束を・・・・・」
「せやせや!!!惣流と一緒に行っとったら、シンジの身がもたへんわ!!」
「何ですって!!!?ジャージの分際であたしに文句付けようっての!!?」
「あぁぁごめん!!!トウジ!!!僕は惣流達と行くよ」
「・・・・・・大変だな、シンジ」
「ケンスケ・・・・・・・頼むからそんなにしみじみと言わないでよ」
「よっし、そうと決まれば、早速行くわよ!!」
僕と綾波の手をひっ掴んで、惣流は迷宮昇降口へと走り出した
・・・・・・・吹き流しって、こんな気分なのかな・・・・・・・
<迷宮昇降口:第4ゲート・・・・・・の隣の更衣室>
迷宮昇降口は、校舎の外にある
昇降ゲートは5つあって、僕らは第4ゲートの隣にある大きめのプレハブ
つまり、更衣室にいる
当然、男子更衣室と女子更衣室は別だよ!!!!
それにしても、校舎はあれだけ立派なのに、更衣室はこんなんだろ?
雑然と並んだロッカーに、ぽつんと置いてある石油ストーブ
真夏でも出しっぱなしにしてるって言うのは、本当なのかな?
シャワー室もないんだよね、ここ
取りあえず、僕は急いで着替えることにした
遅れたら、惣流が五月蠅いから・・・・・・・・・・
「えーっと、まずコレとコレと・・・・・・」
昨日受け取った道具セットには、大した物は入ってないんだよ?
1:戦闘用学生服
・一応、規定ではこの服で探索に入らなきゃいけないらしいよ
学生服にちょっと補強が入ったくらいかな?破れにくい生地で作ってあるらしい
燃えることもなく、丈夫で長持ち・・・・・・・どうやって処分するんだろ?
2:IDカード
・顔写真と名前とIDナンバー、取得単位数が書いてある
ゲートを通るのと、探索中にも必要なんだって
当然、僕の取得単位数はまだ0.0だ
3:簡易救急セット
・説明するまでもないよね?
ただのファーストエイドキットだよ
4:冒険科専用、小道具セット
・目印用チョークだとか、火打ち石だとか、保存食だとか、メモ帳、ボールペン、
シャーペン、消しゴム、お守り・・・・・・・半分くらいはいらないね
これだけ
どうも、学校の偉い人の考える事ってよくわかんないね
何で学生服で探索に行かなきゃいけなんだろ?
元々は自由な服装で良いらしいから、コレを着るのは最初だけだと思うけどね
購買に行けば、それこそ防具になる物なんて幾らでもあるから
教員の一人の青葉先生は、卒業生の一人なんだけど、
探索の時は、鋲付き革ジャンに真っ赤なバンダナという武装だったんだって
武器は拳銃だったんだけど、全部ギターケースに入れてたとか・・・・・・・・・・
そのせいで当時の先生に嫌な顔されたって言ってたね
「シンジ!!!さっさと着替えなさいよ!!!」
「わかった!!!」
ドアから聞こえてくる惣流の怒号に向かって、僕は怒鳴り返した
別に怒鳴ったことに深い意味はないよ。そうしないと聞こえないだけ
着慣れていないゴワゴワした制服に着替える
ちなみに、僕の武器は短剣
惣流は長剣
綾波は杖
それにしても、学生服着てこんな武器を構えてるんだから・・・・・・・・
まるで前世紀の漫画かRPGの学園モノ活劇のノリだよね
日向先生が「エッ○ス」だとか「○魔○戦」だとかいう漫画みたいだなって、いつも言ってる
まぁ、確かにこの恰好は異常だとは思うけどね
個人的には、こういうのは嫌いじゃないです
「お待たせ」
「遅いわよ!!」
外に出ると、惣流と綾波が待っていた
二人とも女子用の戦闘用学生服を着て、それぞれの武器を持ってる
・・・・・・・スカートで探索に行くの?
そりゃ戦闘用学生服のデザインって普通の制服とあんまり変わらないよ
でも、女子用のスカートはまずいんじゃないかなぁ
「・・・・・行きましょう」
「あ、うん」
考え事を頭から締め出して、
僕達は、ゲートのデコーダーにIDカードを切り下ろし、エレベーターに乗った
「・・・・・・なんだか、緊張するわね」
自分の長剣の柄に、購買で買っておいたというグリップテープを巻きながら、惣流が呟いた
グリップテープって言うのは、テニスラケットに巻いたりするような感じのテープだ
「惣流でも、緊張するの?」
・・・・・・・殴られた
「綾波は、緊張してる?」
「ええ。でも、まだ第1階層は比較的簡単なはずだから・・・・・・」
地下迷宮は、3つに区分されてる
一番上の層が、「セントラルドグマ」
真ん中が、「ターミナルドグマ」
一番下の層が「ヘヴン」って呼ばれてるらしいよ
父さんと母さんは「ヘヴン」より下の最下層に行ったことがあるって言うけど、眉唾モノだよね?
で、これから僕達が探索するのは「セントラルドグマ:第1階層」
つまり、全然序盤ってことだね
<セントラルドグマ:第1階層>
「何だ。全然迷宮らしくないね」
「確かに、そうね」
「でも、もう迷宮に入っているのよ。油断しては駄目」
・・・・・・・・綾波は、かなり緊張してるみたい
でも、壁床天井が舗装されてるなんて、何だか迷宮らしくないな
所々、照明まである
「じゃ、あたしが先頭ね。レイは真ん中。馬鹿シンジは一番最後」
「綾波が一番後ろの方がいいんじゃないの?」
「あんた馬鹿!?挟み撃ちにされたときや、後ろからの不意打ちにどう対応するのよ!?」
「・・・あ、そうか」
「・・・・・・・碇君、落ち込まないで」
「レイもそんな奴構うことはないわよ!さ、行きましょ」
ゆっくり、歩いてゆく
そうすると、ちょっとした広間に出た
惣流が立ち止まり、背負っていた長剣を抜く
「・・・・・・下級の使徒ね。レイ、援護はするまでも無いわ。馬鹿シンジ、準備は良い?」
「う、うん」
「行くわよ!!!」
一気に、僕達は広間に駆け込んだ
目の前にいたのは、惣流が言ったとおり、下級の使徒
まるで餅を50倍くらいに大きくしたような形の、半透明なスライム状の使徒
昔のゲームの定番で、こういう奴は「スライム」って呼ばれてる
・・・・・・昔のゲームって何なんだろ?
「たぁっ!!!」
惣流は、長剣を振り回してスライムを切り飛ばしている
遅れて飛び出した僕は1,2匹を斬りつけるのがやっとだった
先に飛び出した惣流はその間に、スライム数匹を切り捨てていたからだ
数秒で、呆気なく戦闘は終わった
「なんだ。全然大したこと無いね」
「・・・・・・・碇君」
・・・・・・・綾波が、こっちを睨んでる
「碇君は、明確に殺意を持った相手と戦って、怖くないの?」
「殺意?そんなこと言っても、スライムが数匹だよ?」
「・・・・・・・碇君。そんな気持ちでいると、早死にするわ」
「何言ってるんだよ?まだ第1階層なんだよ?いちいち緊張してたら、身が持たないよ」
「・・・・・・第1階層には出没しないような上級の使徒が出るかもしれない」
「出るわけないよ」
「シンジ!!!あんたさっきから聞いてれば、「冒険科」をなめてんじゃないの!?」
「なめてなんかいないよ!!」
「なめてるわよ!!スライム数匹切り倒したくらいで得意になってるんじゃないわよ!!!!」
「五月蠅いな惣流は!!!あぁ、だったら良いよ!!僕は一人で行くさ!!!」
「碇君!!単独行動は危険だわ!!!」
「レイ!!!いいからそんな奴ほっときなさい!!!!」
僕は、大股に歩き出した
二叉路になっていたので、右側をずんずんと歩く
道すがら、スライムや蝙蝠の使徒が出たけど、全然雑魚だった
・・・・・こんな奴らの、どこを怖がれって言うんだよ!
「・・・・・・・・・グルルルル・・・・・・・・」
「!?」
僕は、微かに聞こえた呻きに、足を止めた
目の前の闇から、生き物の気配を感じる
突然!!!そいつは飛びかかってきた!
ナイフみたいな長い爪を何とか受け流す
そして、闇にうっすらと浮かび上がる青みがかった銀色の毛皮
満月のような金色をした双眸・・・・・・・・・・
ま、まさか・・・・・・・・・・
「フェ、フェンリル!!!?上級使徒が、何で第1階層に!!!?」
「グオオオオオオオオォォォォ!!!!!!!!!」
「うわあっ!!!!?」
前足の爪が、右肩を切り裂いた!!
戦闘用学生服があっさり引き裂かれ、鮮血が迸る!!
僕は、急速に視界が暗くなっていくのを感じていた・・・・・・・・
(・・・・・・綾波の、言うとおりだったな・・・・・・・最低だ・・・・・畜生・・・・・・)
「碇君!!!」
「・・・・・・・・あや・・なみ?」
「マジックプログラム、ファンクション!フィールドレベル:1!!
アイス・ブレット:ドライブ!!!」
綾波の「呪文」が聞こえる
同時に、杖の先から氷の弾丸が飛び出していった
・・・・・・駄目だ、そんな初歩の呪文じゃ無理だよ
・・・・・・・・・早く逃げればいいのに!
「グルゥ・・・・・・グオオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
案の定、中途半端な攻撃でますます怒り狂ったフェンリル
僕は、ふらつく身体で、何とか立ち上がった
・・・・・・・くそっ、短剣さえもまともに持ち上がらない・・・・・・
「グオオオオオオオオォォォォォッ!!!!!!!」
僕の喉笛に喰らいつこうとしているのか、フェンリルは牙を見せて飛びかかってきた
・・・・・・・僕の人生も、もう終わりか
「駄目っ、碇君!!」
「ばっ!!!綾波!!!!」
綾波が、僕を突き飛ばした
当然、フェンリルの牙は綾波に向かう
フェンリルの牙が、綾波の真っ白な肌に喰らい・・・・・・・・・
「とぉりゃああぁぁ!!!!!」
がつんっ!!!!
・・・・・・・・・どさっ
・・・・・・・・付かなかった
白い首筋に、薄く切り傷を作っただけで、フェンリルの身体は空中で勢いを無くし、地面に落ちた
フェンリルの鼻面には、長剣が叩きつけられている
柄を握っているのは惣流
しかし、その表情は驚きに彩られていた
フェンリルの死体を見ると、胴体の半分を断ち切られている!!
フェンリルの毛皮は、いや、毛の一本一本はスペクトラよりも丈夫って言う評判がある
フェンリルのコートは防弾チョッキよりも丈夫なんだとか・・・・・・・
そんなのを、切り口を見たところ刃物で切るなんて!!!
「・・・・・・・・・脆弱な魂だ。好意に値しない・・・・・」
「!!」
「え?」
「あぁ、失礼。怪我は無いようだね」
「・・・・・はい。助かりました」
綾波は緊張の糸が切れたのか、ぺたんと座り込んでしまった
ぼやける視界の中で、綾波を助けたのは、銀髪に緋色の目をした男のようだ
・・・・・・・・綾波によく似てる?
「さて、それで、君達はここの人間なのかい?」
「はい、この学校の生徒です」
「生徒?・・・・・なるほど、そういうことか・・・・・・」
「・・・・何!?あんたこそ何者よ!!!?」
「まぁ、そんなことよりも、そっちの君は大丈夫かい?」
「・・・・・・・・ぅぅ・・・・・・・・」
「ふむ・・・・・・結構傷が深いな。早めに手当をした方がいいだろう」
やっと、その男を観察する余裕ができた
顔立ちは、やっぱり綾波となんとなく似てる
真っ黒なロングコートを羽織り、手には黒い革手袋
床には黒塗りの鞘に納めた刀が置いてある
・・・・・・・・これでフェンリルを切った?
・・・・・・・・だとしたらとても人間業じゃない!
「レイ!!あんた勝手にどこに行ってんのよ!!!!」
「・・・・・アスカ」
「・・・・・・・・・そう・・・・りゅう」
「馬鹿シンジもなんでいきなり大怪我してんのよ!!!」
「助けはもういらないようだね。僕はそろそろ失礼するよ」
「待って!貴方は、学校関係者ですか?」
「・・・・・・・・まぁ、そんなところさ」
コツ、コツ、コツ、コツ
規則正しい足音が、闇の中を遠ざかっていく
「これホントにフェンリル!!!?あいつって何者なのよ!?」
「アスカ、今は碇君の手当が先決だわ。手伝って!」
「わ、わかったわ!」
・探索記録:セントラルドグマ第一階層より探索開始
下級使徒スライムと遭遇、殲滅
上級使徒フェンリルと遭遇、殲滅
(事情聴取によると、学校関係者に助けられたという)
碇シンジの負傷により、セントラルドグマ第一階層より撤退
取得単位数:0.0
(フェンリル殲滅による取得単位は0とする)
<保健室>
「目が、覚めたようね」
「・・・・・・惣流」
「大丈夫?」
「・・・・・・・・綾波」
窓から射し込む光で、保健室は橙色に染まっている
もう、夕方だ
「二人とも、探索は・・・?」
「行ってないわよ」
「どういうこと?」
「・・・・・・ずっと、ここにいたから」
綾波が、呟いた
フェンリルに付けられた微かな切り傷の上には、絆創膏が貼られている
「シンジ、これだけは言わせてもらうわ」
「・・・・・・・・」
「第一階層にフェンリルがいたのは、運が悪い事故だったと思うわ。
でもね、あんたみたいな奴と一緒にいると、あたしやレイまで危険な目に遭う羽目になるのよ!!」
「・・・・・・・・・ごめん」
「謝れば済むとでも思ってんの!!!!?
一歩間違えば、あんただけじゃなく、レイも死んでたかもしれないのよ!!!!」
「・・・・・・アスカ、もういいわ。帰りましょう」
二人は、出ていった
僕は、何も言うことができなかった
(・・・・・・・・・脆弱な魂だ。好意に値しない・・・・・)
頭の中で反芻するあの言葉
・・・・・あの言葉は、僕に向かって呟いた言葉だったんだ・・・・・
僕は保健室の白い布団を頭まで被ると、情けなくて涙が溢れてきた
惣流や綾波に、何も言い返すことができなくて、自分が一番情けなくて・・・・・・・
「・・・・・・最低だ、俺って・・・・・」
心のどこかに、惣流が行ったように、なめている所があった
それ以上に、一歩間違えば死んでいたという事実を思い出してしまい
本気で泣きそうになった
<翌日>
「・・・・あ・・・・・綾波、惣流」
「・・・・・・・・碇君」
「・・・・・・・・・・フン、馬鹿シンジが朝から何の用よ!?」
僕は、女子寮の前で綾波か惣流が出てくるのを待っていた
・・・・・・昨日のことを、謝りたかったから
「・・・・・昨日はごめん。僕が間違ってた」
「・・・・・・そう」
「それで、もう一度チャンスが欲しい、とでも言うつもり?」
「・・・・・・・・・・・・・・うん」
「そんな甘いこと、このあたしが許すと思う?」
「・・・・・・・・・・・・・・・」
思ってないよ
ダメモトで来たんだ
「ま、今回は特別に許してあげるわ。次は見捨てるわよ」
「えっ?」
「・・・・・・・アスカ」
「次の探索日までには、少しは強くなりなさいよ」
「本当に良いの!?」
「嫌なら良いのよ!一緒に来なくても!」
「ううん!!そんなこと無い!!!あ、ありがと!!絶対頑張るから!!!」
そう言って、僕は走り去った
後ろで惣流が溜息をついたことになんか気付くわけない
「・・・・・・・はぁ、世話が焼ける奴」
「・・・・・・ありがとう、アスカ」
こんな感じで、僕の15年目の春は幕を開けた
そして、もう一度春を迎えるとき、とんでもない大事件に巻き込まれるなんて、
考えもしなかった
つづく
今日の補習授業
・葛城先生の学校案内
はい、本校の教員を勤めています、葛城ミサトです
えっと、本日は学校の案内って事で、ちょっち案内させてもらいますよ
さて、本文中でシンジ君が言ってたっけ?
学校名はジオフロント立ネルフ学園!
名物は、「碇校長のダンディトーク」と「購買のユイさん」!!
世界で最初に「冒険科」を作った学校として有名ね
日本以外にも、「冒険科」がある学校は、アメリカ、ドイツ、ロシア、イギリス・・・・・
世界各国に増えつつあるわ
「冒険科」っていうのも、本文中に書いてあったわね
セカンドインパクト後、どういう訳か世界中で遺跡や迷宮が出て来ちゃったのよ
どういうわけか、そういう所には「使徒」とかいうわけのわかんない化け物がいて、
それを殲滅するためのスペシャリストを養成するための学校が、この学校ね
あ、そうそう。遺跡って言ったけど、他にも古城とか、洞窟とか、砂漠とか、無人島とか
世界の色んな所に「使徒」は出没してるらしいわね
でも、うちの学校はちゃんと結界を張ってるから外に出ることはないわよ
それにしても、何でターミナルドグマの下層くらいに出没するレベルの使徒が、
セントラルドグマの第1階層なんかに出てきたのかしら?
・・・・・・・結界が、効かなくなってるのかもね・・・・・・・
さて、学校の案内をしなくちゃね
ネルフ学園の主な構成は、次のようにわけられるわ
・校舎、管理部
・訓練施設
・男子寮、女子寮、教員寮
・各迷宮昇降口
こんな感じね
・校舎、管理部
授業を教えたり、購買があったり、教員室があるのもここね
学校運営の中枢って所かしら?
あ、そうそう。「魔法」の授業もここでやってるわね
でも、なんで校舎がセントラルドグマから続く地下迷宮の蓋みたいに建ってるのかしら?
ピラミッドみたいな形なのも疑問よね
ま、食堂のご飯が美味しいから文句はないけど
・訓練施設
剣術や格闘とかの肉体的な訓練だけじゃなく、銃器の扱いとか、
原始的、電子的なロック、罠の解除方法
探索に必要な技能の全般はここで教わるわね
スポーツジムやプール、シャワー室から大浴場、サウナ、まであるのよね
暇なときは、身体動かしに行くのも悪くないわよ
・男子寮、女子寮、教員寮
言うまでもないわね。各寮よ
原則的に、男子寮には女子は入れない。女子寮には男子は入れない
教員寮は基本的に生徒は入ることができない
オートロックとかも完備してるから、プライバシーの保護はパーペキよ
まぁ、そこまで厳重に警備するのもどうかと思うけどね
・各迷宮昇降口
これも、言うまでもないわよね?
セントラルドグマに降りるためのゲート
それと、迷宮には次の回に降りる階段の前にチェックポイントがあるのよ
そこでIDにチェックしとけば、その階層はとばして行けるわけ
エレベーターで最深到達階層から再スタートってね
まぁ、取りあえず更衣室は直して欲しいわ
教員も、あそこ使ってるから
まぁ、学校案内はこんな所ね
次回は、「赤木先生のよくわかるコアとフィールド、呪文講座」だって
命が惜しくないなら出席してみれば?
後書き
はじめまして、T.Kです
今回の連載、“君に吹く風”という題名で始めさせていただきました
ジャンルで言うと、学園ファンタジーラブコメシリアスという感じのわけわかんない物です
これからも、頑張って続けてゆくので、応援してください。お願いします
最後に、こんな駄作を掲載させてくださったnanaさんに感謝、感激!
では、さようなら