キーンコーンカーンコーン



「はぁ、やっぱり実習が始まるまでは退屈よね」

「仕方ないよ。探索は昼からって、決まってるんだから」

「あぁーあ、お昼が待ちどおしいなぁ」

「そんなに探索が好きなんか?惣流は」

「あったり前じゃん!ストレス解消にもなるし、あの緊張感がたまらないわよ!!」

「「「・・・・・・・・・」」」

「勿論、馬鹿シンジと違って油断なんかしてないわよ」



そうこうしていると、ミサトが教室にやってきた

教壇に立つと、慌ただしく生徒達は席に着く

この辺は、普通の学校と変わらない

もっとも、中身は大分違う学校なのだけれど・・・・・・・・



「よろこべぃ、男子!!今日は転校生を紹介するわよ!!!」

「おおおおおぉぉぉぉぉ」



すっかり、ミサトに毒されているクラスメート達

このノリに毒されていないのは、シンジとレイとアスカ、その他数名というところである

ちなみに、トウジやケンスケは率先してミサト普及活動に乗り出した



「さ、入ってきて」

「はい!」



と、出てきたのは、栗色の髪の毛の少女

黒板に、カツカツと名前を書く



「霧島マナです!!戦略自衛隊士官学校中等部から来ました!!!よろしくお願いします!!!」



教室が凍った








君に吹く風


4月16日:転校生










<研究室>



「全くもう、冗談じゃないわよ!!!」

「何が?」

「転校生よ転校生!!!よりによって“戦略自衛隊士官学校”から来たなんて言ったのよ!!」

「そう。それで?」

「もう、教室が凍っちゃって、HR中ずっと空気がぎくしゃくしてたわ」

「その転校生を扱うのも担任たるあなたの仕事でしょ?」

「わかってるわよ!そう言えば、リツコのクラスの転校生は?」

「あぁ、河本ケイタ君ね。彼は普通だったわよ。
今、山岸さんに学校の案内をして貰ってるはずね」

「・・・・・・あたしだけが貧乏くじを引いたわけね」

「その通り」



数秒後、研究室から怒号と爆発音が聞こえてきたとか聞こえてこなかったとか

さて、何故“戦略自衛隊士官学校”から来たことがそんなに問題なのかというと、

戦略自衛隊、通称:「戦自」とジオフロント立ネルフ学園、通称:「ネルフ」は、犬猿の仲である

ネルフからすれば戦自は、



事ある毎に首を突っ込んでくる役立たずと能無しの集まり



で、戦自からすればネルフは、



怪しい独自の技術で全てを秘密裏に解決しようとする怪しい要注意人物の集団



と、なっている

実際、この隔たりは重要な問題である

ネルフ、冒険科の卒業生は、まずフリーの使徒狩りか専属のガード、教官になる

そのたびに立ちはだかるのが、戦自である

地上の使徒が縄張り以外で暴れた、という報告はほとんど聞いたことがない

しかも、「普通の軍隊」では使徒に対抗することは難しい。その時のためのネルフである

戦自は「普通の軍隊」なのである

にも関わらず、爆弾投げ込むはバズーカぶっ放すは、都市一つ位平気でぶっ飛ばすは・・・・・・

ネルフから見れば、人命と資源と時間の無駄遣い、でしかない

まぁ、そんなネルフに戦自の人間が来たって言うんだから大変である

監視の届かない所に拉致ってボコにする位で済めばまだいい

犯人捜して退学にするだけである

“事故”を装って殺しちゃったりしたらさぁ大変

ネルフと戦自の全面戦争で、日本は壊滅するかもしれない危機にあるからだ

勘弁して欲しい

ただでさえ地球人類は、滅亡の危機にあるかもしれないと言うのに・・・・・・・・・・










<休み時間>



「やっほー、ケイタ」

「?」

「あれ?マナは一人?」

「んー、まぁね。ところでムサシは?」

「さぁ。見てないけど?」

「で、隣の子は?」

「あ、クラス委員長の山岸マユミさん」

「初めまして」

「はっじめまして!霧島マナっていうの!よろしくね!」

「・・・・・はい」



ぼそりと呟いて、手を差し出してきたマナの手を、マユミは軽く掴んだ

マナはマユミの手を握りしめると、ぶんぶん上下に振っている



「ね、ね、マユミって呼んでも良い?冒険科って、地下迷宮を探索したりするってホント!?」

「はい。そうですよ」

「すっごぉい!!!やっぱ、脱走してでもここに来たかいがあったわね!!」

「・・・・・脱走?」

「あ、な、なんでもないよ!!山岸さん」

「ね、探索って一度に何人のグループで組めるの?」

「一人〜三人までです」

「じゃぁさ、今度の探索の時、あたしとケイタの三人で組まない?」

「・・・・・・ムサシは?」

「いいのよ、あんな馬鹿は!で、どうかな?」



俯いて、マユミは答えた



「・・・・・・・・・・やめた方が、いいです」

「え?どうして?」

「私は、他人と一緒に探索に行ってはいけないんです」

「じゃ、いつも一人で!!?」

「はい」

「何で?どうしてなの?」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・」

「!?」

「ま、いいわ。じゃね」



マユミが微かに呟いた言葉に、ケイタは息を飲んだ

マナは手を振って走り去っていった

きっと、女子寮の自分の部屋に行くのだろう



(・・・・・・・誰かを好きになったら、“アイツ”がでてくる・・・・・・・・・
 ・・・・・・・・誰かを嫌いになったら、“アイツ”が殺しちゃう・・・・・・・
 ・・・・・・・・・私には、他人と触れ合う資格なんか、無い・・・・・・・・・)










<昼休み:男子寮>



自分の部屋まで帰ってきたシンジは、ドアの前で足を止めた

隣室のケンスケも、シンジと並んで足を止める

二人の視線の先には、非常階段、そこには人集りがあった



「ん?何かあったのかな?」

「さぁな?・・・・・・・あ!トウジじゃないか!?」

「?・・・・・ホントだ。何やってんだろ?」



数人の人集りに向かってトウジが大股に歩み寄り、突然一人を殴り飛ばした

近接格闘2級のトウジの拳の威力は、結構洒落にならない



「トウジ!!!何やってるんだよ!!!!」

「おぅ、シンジとケンスケか!!?ええ所に来た、加勢してくれや!!」

「加勢?」



トウジ目掛けて、数人の生徒が殺到する

手には、訓練用の木刀の大小や、ナックルを構えて



「おどりゃあ!!!何さらしとんねん!!!!」

「トウジ!!」



シンジは訓練用の模擬短剣を、ケンスケはモップ片手にトウジの援護に走った

トウジは獅子奮迅の大活躍

ケンスケはモップやら靴やら植木鉢やらで遠隔攻撃に徹し、

シンジはいきなり防戦一方

結局、大乱闘の末、トウジ側の勝利に終わった



「ぜぇ、はぁ・・・・・・おぃ、大丈夫かぁ?」

「あ、あぁ、済まないな」



非常階段の奥から出てきたのは、見慣れない顔の男子生徒だった

顔や身体のあちこちに傷を負っているところを見ると、今転がっている連中のリンチが原因だろうか



「すまねぇ。助かったぜ」

「おぅ、気にすんな。それより、見ん顔やけど、転校生か?」

「あ、あぁ。今日転校してきたんだ。名前は谷口ムサシ、よろしくな」

「ワイはトウジ、鈴原トウジや。で、こっちの手助けしてくれたんが・・・・・・」

「ぜぇ、はぁ、相田、ケンスケ。よろしく」

「・・・・・・・・・・い、碇、シンジ・・・・・・・よろ・・・しく」

「二人とも済まない。大丈夫か?」

「・・・はぁ・・・・・あぁ、なんとかな」

「・・・・・・・・君の方こそ・・・・・・・大丈夫?」

「あぁ、お陰さんでな」



四人は、取りあえずシンジの部屋に集まった

何故シンジの部屋かというと、一番片づいているからである

しかし、四人も入ると流石に狭い



「で、いきなりだけど、何であんな目に?」

「あぁ・・・・・・・霧島って奴が、転校してきただろ?同じクラスか?」

「「「霧島!!?」」」

「・・・・・・・相当、有名になってるみたいだな」

「そりゃ、転校初日の挨拶が

“戦略自衛隊士官学校中等部から来ました!”

だもんなぁ」



額に手を当てて、ムサシは溜息をついた



「・・・・・あの馬鹿女・・・・・いきなり何言ってるんだよ・・・・・・」

「で、それがどうかしたんか?」

「あぁ、俺もそうなんだ」

「「「え?」」」

「俺も、戦略自衛隊士官学校中等部から転校・・・・・・脱走してきたんだよ」

「「「脱走!!!?」」」

「あぁ。マナともう一人、河本ケイタっていう奴と三人で脱走した」

「「「・・・・・・・・・・・」」」

「それで、この学園に転入届送って入学してきた、ってわけさ。転校生っていう形で、な」










<購買>



「それにしても、君にはいつも驚かされる・・・・・・ずずっ」

「あら、そうかしら・・・・・・・もぐもぐ」

「・・・・・・・戦自の士官の脱走を受け入れるとはな・・・・・・・ずずっ」

「あらあら、ちゃんと入学試験もしたんですよ・・・・・・もぐもぐ」

「ほぉ、どんな・・・・・・・ずずっ」

「例えば・・・・・ごっくん、面接とかしましたよ」

「ほぉ・・・・・・ずずっ」



購買の奥にある一室に、碇夫婦は居た

ゲンドウはユイが淹れた煎茶を啜り、ユイは鯛焼きを囓っている



「時にユイ」

「はい?」

「その鯛焼きは?」

「この鯛焼きですか?あの子達がくれたんです」

「・・・・・あの子達?」

「えぇ、件の戦自から転校してきたあの子達から」



と、言いつつ新たな鯛焼きに魔の手を伸ばすユイ

ゲンドウはこっそり溜息をついた



(・・・・・・・いい年をして、鯛焼きにつられたか)

「いやですね。そんなわけないでしょ」



ゲンドウの心を読んだユイが、つっこみをいれる



「・・・・・・・・・・ずずずずずずっ」

「あなた。誤魔化さないでください」

「・・・・・・・・問題ない」

「でも、聞いた話だとあの子達大変そうね」

「無理もない。しかし、誰に聞いたんだ?」

「色んな人から」

「・・・・・・・・そうか」

「よっし、可哀想なあの子達のために、私が一肌脱いじゃいましょう!」

「・・・・・・・・・・・・・」



良くないことが起こる

ゲンドウは確信した










<探索開始時間前>



「えぇぇ!!?実習に参加しちゃ駄目なんですか!?」

「申し訳ないけど、転校初日にして実習に参加させることはできないわよ」

「でも!!!」

「まぁまぁ、良いじゃないですか。ミサトちゃん」

「ユ、ユイさん!!?」

「あ、ユイさん!!!」

「ユイさん!この子達はまだこっちの訓練を受けていないんですよ!?
それなのに実習に参加させるのは危険すぎます!!」

「あらあら。だったら危険を少なくすればいいのね」



ユイは、携帯電話を取りだした



「・・・・・・あ、シンジ?母さんよ。
えっと、そこにレイちゃんやアスカちゃんはいる?
・・・・・そう、トウジ君やケンスケ君も、あぁ、ヒカリちゃんもいるの。
これから実習に・・・・・・・・ねぇ、みんなに聞いてみて。
バイト料出すから、ちょっとお仕事やってみない?
・・・・・・うん、来てくれたら話すわ。じゃ、購買でね」



ぴっ



「・・・・・・あの、ユイさん。何を?」

「この子達三人だけだと危険なんでしょう?
だったら、現役の生徒達と一緒なら良いじゃないですか?」

「ユ、ユイさん!!あなたには生徒の行動に干渉する権限は・・・・・」

「許可ならあるのよ」



ユイがミサトの鼻先に突きつけたのは



もんだいない、いかりげんどー



と、極太の毛筆で書かれた紙切れ&学園長碇ゲンドウの印鑑



「う、うそ?」



ほんとうだ、いかりげんどー



「じゃ、ね。さ、こっちよ」

「「「はい!」」」



マナとムサシとケイタを引き連れて、ユイは購買に向かった

後に残ったミサトは、真っ白な灰になりかけていた










<購買>



「母さん、バイトって何?」

「えっと、この子達と一緒に実習に行って欲しいのよ」



その場にいる6人と3人の子供達がお互いの顔を見る



「ワシは構わへんで」:トウジ

「俺も」:ケンスケ

「私も、良いです」:ヒカリ

「・・・・・・問題ないわ」:レイ

「ま、面倒くらい見て上げるわよ」:アスカ

「えっと、みんな良いみたいだね」:シンジ

「じゃ、みんなよろしくね。誰と組むかはみんなで決めて」



議論の末

シンジ、レイ、ケイタ

トウジ、ケンスケ、ムサシ

アスカ、ヒカリ、マナ

と言う組み合わせになった



「じゃ、頑張ってね」

「「「「「「「「「了解!」」」」」」」」」










<更衣室>



「へぇ、谷口君は重戦士コース志願なんだ」

「あぁ、やっぱり最前線こそが男の戦場だろ?」

「そのとおりや!!!」

「それと、俺のことはムサシで良いぜ?」



更衣室で着替えながら、5人は話していた

ちなみに、全員戦闘用学生服である

最初はきっちり着ていたようだが、トウジやケンスケ、ムサシはすでに着崩している

ちなみに、トウジとムサシはいきなり意気投合していた



「河本君は?」

「あ、僕はスカウトコース。手先は結構器用だから」

「へぇ、そうなんだ」

「僕も、ケイタで良いよ」

「シンジ達は軽戦士にガンナーに格闘家か」

「そう言えば、マナは何コースなの?」

「あぁ、あいつはスナイパーコース。戦自の士官学校にいたときでも、そうだった」

「スナイパー!?ガンナーとしては見逃せないな」

「あはは、ところで、綾波さん達は何コースなんだ?」

「綾波はスペルコース。惣流が剣士コースで、委員長は・・・・・」

「委員長もスペルコースや。この前はディフェンスで世話になった」

「そっか、ネルフには魔法があるんだよな」

「信じられない?」

「まぁ、士官学校じゃ銃とか武器の扱い方としか知らなかったからな。
魔法なんて言われてもはっきり言ってピンと来ない」

「まぁ、みんな最初はそう言うよ。習ってる本人もそう言ってた」



更衣室を出ると、ちょうど女子更衣室から女性陣も出てきた



「じゃ、早速行きましょ。ヒカリ、霧島さん、準備は良い?」

「OKよ」

「あたしも大丈夫。それと、マナで良いから」

「わかったわ。あたしがオフェンス、ヒカリがディフェンス、マナはバックアップね」

「ええ」

「よぉーっし!ガンガン行きましょ!!!」



姦しいグループは、昇降口へと消えた



「おっしゃ、ワシらも行くで!
ワシは突っ込むから、ケンスケはいつも通り頼むわ」

「オッケー」

「俺はどうすりゃ良い?」

「男の戦場は最前線や!!わかるやろ!?」

「了解だ。まぁ、お手柔らかにな。先輩方」



男三人組も、昇降口に消えた



「じゃ、僕らも行こっか?」

「・・・・」(こくり)

「そうだね」

「じゃ、僕が前衛になるから。二人は援護して」

「・・・・・わかったわ」

「うん」



何となく静かで頼りなげな三人組も、昇降口を降りていった










<その頃のアスカ達>



「とぉりゃああああぁぁぁ!!!!!!」

「ア、アスカ。前進しすぎよ・・・・・」

「あはは、聞こえてないみたい」



薪割りのような大振りに見えるが、そのたびに下級使徒の首が飛んでいる

マナは援護に徹し、確実に頭を撃ち抜いている



「ちっ!やばっ!!」

「マジックプログラム:ファンクション。フィールドレベル:1!
パワーシールド:ドライブ!!」



ヒカリの杖のコアから飛び出したATフィールドが、アスカの前で壁となる

下級使徒である巨大一角兎の前歯は、むなしく跳ね返された



「Danke!」










<その頃のトウジ達>



「うおらぁ!!!どありゃぁっ!!!」

「はっ、無駄無駄ぁ!!!!」

「・・・・・・・・・・・頑張れー・・・・・・・・」



普段に増してやかましい前衛二人の前に、ケンスケの仕事はないに等しかった



「切りが無いぜ!?どうするんだ!?」

「しゃあないな。ケンスケ!派手なん一発頼むわ!!」

「OK!!どいてろよ!!」

「おい、何をするんだ!?」

「魔法を使えるんはスペルコースだけや無いねん。ワシらだって、魔法は使えるんやで!」

「マジかよ?」

「大マジや」



ケンスケは、装飾が施され、弾頭がコアでできている弾を装弾した

そして、「呪文」を唱える



「シューティングプログラム:ファンクション!フィールドレベル:リミット!!
レイランサー:ドライブ!!!」



ケンスケが構えている大口径ショットガンから、極太の光の束が飛び出した

通路一杯に繁殖している下級使徒の群を、光の洪水が押し流してゆく

そのド迫力に、ムサシは声も出なかった



「ま、こんなもんか」



ケンスケが呟いた後、四角かった通路は丸くなっていた









<その頃のシンジ達>



「・・・・・・前方に敵性目標・・・・・27」

「ど、どうする?」

「・・・・・・・・多すぎるかな・・・・・僕が仕掛けるから、二人は援護して」

「わかったわ」

「わ、わかったよ」



広間にいたのは、蟻のような下級使徒の団体様御一行

蟻、と言うだけあって、群を成している

暗闇でも行動に支障がないので、始末が悪いことこの上ない



「じゃ、頼むよっ!!」



シンジは、短剣片手に突っ込んだ

手近な奴から触覚を切りとばし、顎に刃を突き立てる

後ろから、レイの「呪文」が聞こえてきた



「マジックプログラム:ファンクション。フィールドレベル:1。
コールド・ブレス:ドライブ!」



杖の先にはまったコアから、白い冷気が吹き出し、群れている蟻共を包み込んだ

その間に、自分の武器であるケイタも弩を射る

隠密行動が主だった彼は、銃器よりも“音がしない武器”である弓矢を好んで使う

そして、数が多くても所詮蟻は蟻である

ものの数分で、殲滅を完了した










<発令所>



「あらあら、みんな頑張ってるじゃない?」

「あぁ」

「あの子達もシンジ達と比べても遜色無いじゃない」

「そうだな」



その時、教員補佐である伊吹マヤが放送室から放送した



「あと10分で、下校時刻になります。
探索中の生徒は、最寄りの脱出口より帰還しなさい。忘れ物をしないように、注意しましょう。
繰り返します・・・・・・・」

「あら、もうそんな時間?」

「あぁ」

「あらあら、急いで帰らなきゃ」



ユイは、購買へゆっくり急いで帰っていった

そして、主モニターを見つめながら、ゲンドウは一人ほくそ笑んでいた










<放課後>



「ん〜・・・・・・ふぅ」



大きく伸びをするアスカ

顔は埃で汚れているが、表情はすっきりしたものである



「霧島さん。どうだった?結構、大変だったでしょう?」

「すっごく楽しかった!!ムサシやケイタはどうしてるかな!?」

「もう下校時刻だし、すぐ出てくるわよ」



と、そんな事を言ってると、トウジ達三人が出てきた



「よぉ、早かったな」

「何よ、馬鹿ムサシ!!で、どうだった!?」

「あぁ・・・・・・まぁ、疲れたな」

「まぁ、初日はそんなもんだと思うよ?」



シンジ達三人も出てきた



「あれ?みんな早いね?」

「あんたが遅いのよ。
レイ、どのくらいまで行けた?」

「セントラルドグマ第5階層まで制覇。現在、第6階層を探索中よ」

「へぇ、結構早いわね。あたし達も同じくらいだわ」

「なんや!!?ワシらは第7階層まで行ったで!!」

「何よ!!!すぐ追い越してやるんだから!!!」



騒ぎながら、更衣室へ向かう

埃っぽい戦闘用学生服を着替え、教室に向かう



「ねぇ、来週か再来週あたり、どっか遊びに行かない?」



マナがそう切り出した



「そうね。再来週なら買い物くらい行っても良いかしら?
レイやヒカリはどうする?」

「私は良いわよ。再来週なら予定は空いてるし」

「・・・・・・・私は・・・・・・・」

「良いじゃん。レイも一緒に行こ!?」

「・・・・・・わかったわ」

「ねぇ、嫌なら無理に誘わなくても・・・・・・」

「いーのいーの。レイは引っ張らないと動かないんだから」

「ね、シンジ達はどうする?」

「えっ!?」



いきなりファーストネームで呼ばれて戸惑うシンジ



「あぁ〜ら?いきなりファーストネームで呼び合う仲に発展してるの?」



いきなり険悪な目つきになるアスカ

何となく早足になるトウジ&ケンスケ&ムサシ

おろおろしているケイタは、ムサシが引っ張っていった

結局、孤立するシンジ



「だって、霧島さん。なんて呼ばれるの、恥ずかしいじゃない」

「・・・・・・そう?」

「そうよ!だから、あたしはマナって呼んでね。みんなも名前で呼ぶつもりだから」

「ふぅ〜ん。そうなの」

「う、うん。そうなんだ。それでなんだよ。だから、その・・・・・・」



しどろもどろになるシンジ

しかし、アスカはどうでも良いとでも言いたげに掌を上に向けると、シンジの横を通り過ぎた



「行こ。ヒカリ」

「う、うん」

「ふぅ」



シンジ、安堵の溜息



「えへへ、ごめんね。シンジ」

「うん、いいよ」

「碇君。急がないと」

「あ、教室が閉まっちゃうね」

「え?教室って何時に閉まるの?」

「実習の終了時刻、つまり下校時刻が6:00。
教室が施錠されるのは7:00。今、6:50だからあと10分しかないよ」

「でも、教室って目と鼻の先でしょ。のんびり行きましょ」



のんびりしている間に、先に教室に行ったみんなは既に寮に帰ったようである

教室の自分のロッカーに装備一式を放り込んで、とっとと寮の自室へ帰ろう

まずはシャワーでも浴びて、食堂で夕飯だ

きっと今日もトウジは人2倍は食べるだろう

ムサシと大食い合戦でも繰り広げるかもしれない

あれでけっこう、あの二人は良いコンビだ

シンジは鞄を片手に、そんなことを考えていた



「ねぇ、さっきの話。どうなの?」

「さっきの話?」

「再来週、遊びに行こうって言う話」

「あ、ごめん。僕は進路指導でミサト先生と面接があるから」

「へぇ、そうなんだ」

「ごめん」

「ん。いいのいいの。気にしないで!じゃ、ね!」



マナは、手を振って走り去っていった



「碇君」

「何?綾波」

「・・・・・お疲れさま」

「うん。綾波は大丈夫?」

「・・・・・えぇ。じゃ、さよなら」



シンジは軽く手を振ると、賑やかな寮に足を踏み入れた





つづく



今日の補習授業

・赤木先生のよくわかるコアとフィールド、呪文講座



ジオフロント立ネルフ学園、冒険科スペルコース担当教員で技術開発部主任の赤木リツコです
肩書きだけは結構長いけど、仕事は生徒の授業から研究・開発、何でもやるわ

今日は、コアとフィールドと呪文講座?わかったわ
まず、コアとフィールドについて説明しましょう

コアというのは、使徒の生体中枢部分である赤い珠のこと
そしてコアから発せられる特殊な力場が、アブソリュートテラーフィールド:絶対恐怖領域
略して、ATフィールド、フィールドとかって言うわね

使徒相手に通常兵器が役に立たない理由は、ここにあるのよ
ATフィールドは、ATフィードでしか中和、相殺することができないから
原爆や水爆くらいのエネルギーがあれば、ATフィールドは貫くことができるわ
でも、そんなことをしていたら地球がぼろぼろになってしまうわよね
フィールドの強さは、コアの純度次第ね
下級使徒のフィールドは、そんなに強くないわ
生徒は実習に行ったとき、下級使徒と戦うけど、意識しなくてもフィールドを中和できる程度なの
でも、上級使徒になれば話は違うわ
少なくとも、一人は中和に集中していないと歯が立たないような使徒もいたわ

そして、生徒が使ってる武器にはコアが填め込んであります
刀剣類は柄頭や鍔に、
銃器類はグリップか弾丸に、
杖には先端に、
グレネードランチャーやロケットランチャーも、弾頭そのものがコアでできてるわ

でも、フィールドを引き出す能力は、個人個人でかなりの差があるわ
スペルコースの大抵の生徒は、フィールドを引き出す能力が高いけど、
近接戦闘コースの生徒、特に銃器系コースの生徒が展開するフィールドは、他と比べて弱いわ
フィールドに関しては、このくらいね

次は、魔法について・・・・・・・・・って言っても、本当に魔法を使うわけじゃないわよ
魔法というのは簡単に言うと、“引き出すフィールドのエネルギーの形を制御すること”なのよ
普通、どんなコアでも「魔法」を使うことができるわ
例えば・・・・・・・・

最初にレイが使った魔法

「マジックプログラム、ファンクション。フィールドレベル:1。アイス・ブレット:ドライブ」

という魔法を使ったわね

・「マジックプログラム:ファンクション」

この部分は、「魔法」の大雑把な種類を示すわ
「マジックプログラム」というのは、杖から作り出す杖魔法ね
この「プログラム」が一致しない限り、決して魔法は使えないわ

・「フィールドレベル:1」

この部分はフィールドのエネルギー量ね
コアのフィールドというのは、電池みたいなものなの
あまり高エネルギーを放出していると、光を失ってしまうことになる
フィールドを展開することができなければ、技術があっても意味がないわよね

・「アイス・ブレット:ドライブ」

この部分が、魔法の名前ね
アイス・ブレットというのは氷の弾丸を打ち出す基本的な魔法の一つね
制御したエネルギーの形次第で、ATフィールドは炎にも、氷にも、雷にもなるわ
勿論、純粋にフィールドのエネルギーを飛ばすこともできるのよ



でも、魔法は誰でも使える訳じゃないわ
訓練を受けて、フィールドを展開できるようになって、
そして、フィールドのエネルギーが暴走しないように制御できなくてはならない
コアのエネルギーを暴走させると、とんでもないことになるわ
地下迷宮の階層が崩壊しかねないほどのエネルギーの奔流が荒れ狂うことになる
だから、スペルコースの生徒は、魔法を使うときは細心の注意を払っている
主に防御系の魔法が多いけど、間接攻撃できる魔法も必要だから



そして、今日相田ケンスケ君が使った魔法

「シューティングプログラム:ファンクション。フィールドレベル:リミット。
レイランサー:ドライブ」

・「シューティングプログラム:ファンクション」

この魔法が、銃魔法であることを示しているわね
ただし、相田君は銃のコアからではなく、弾丸のコアから魔法を作ったわ
こういう、弾丸タイプのコアは、元々純度の低いコアを砕いて作った弾丸
通称:ディスポーサル(使い捨て)・コアよ(略してディスポ)
元が純度の低いコアなうえ、その破片だから、展開できるフィールドは弱いわ
でも、そこがディスポの良いところ
最大出力で魔法を作っても、破壊力は大したこと無いのよね
と言っても、下級使徒の団体御一行様くらいは簡単に殲滅できるわよ

・「フィールドレベル:リミット」

エネルギー量を限界で解放することを示してるわ
ディスポだったらリミットで魔法を作るのが普通ね
一回使ったら、二度と使えないんだから

・「レイランサー:ドライブ」

本当は、結構上位の魔法ね
純粋なエネルギーだけを敵に叩きつける魔法
消費量が大きいけど、ディスポだから使えるのよね



呪文に関してはこれくらいね
あ、勿論、杖魔法や銃魔法だけじゃなくて、剣魔法や格闘魔法もあるのよ
その辺りは、追々出てくることになると思うわ

次回は、「加持先生の一日:訓練編」?何考えてるのかしら





後書き

T.Kです

今回は、マナ達が登場して、探索の状況も描いてみました
まだまだ、書き切れていない設定があるので、
そういうところは“今日の補習授業”で書いていこうと思っています
続きも特急で投稿しますので、お楽しみに!