ジオフロント立ネルフ学園

世界有数の「冒険科」を抱える学校である

そう、学校なのだ

当然、学校ならばコレがある



「・・・・・・・あぁ〜ん。もぉわかんないわよ!!こんな問題!!」:マナ

「うるせぇ!!黙ってろよ!!!」:ムサシ

「二人とも真面目にやってよ・・・・・」:ケイタ

「碇君、答えわかった?」:レイ

「・・・・・・ん〜、まだわかんない」:シンジ

「へっへ〜ん。あたしはできたもんね!」:アスカ

「・・・・・・アスカ」:レイ

「何?レイ。どしたの?」:アスカ

「・・・・・・・・違うわよ」:レイ

「・・・・・・・・・・・どぁりゃああああぁぁぁ!!!!」:トウジ

「す、鈴原!!」:ヒカリ

「ト、トウジ!!?いきなりちゃぶ台返しなんかかますんじゃない!!!」:ケンスケ



全くわからないかもしれないが

定期考査という奴である





君に吹く風


6月3日:中間考査







先ほどの9人は、学校の図書室で勉強中なのである

この中で、一番“できる”のが、委員長ことヒカリ

次がアスカ

アスカの場合、外国語や数学はできるのだが、国語や日本史がさっぱりなのである

トータルすれば、ヒカリの方に軍配が上がる

その次が、レイ

そして筆記の成績は安定しているシンジ

このラインまでだろう

合格ラインは



「マナ、さっきからページが変わってないけど・・・・・・」

「うぇぇぇ〜ん。だってわかんないもん!!!」

「うるせぇっ!!黙ってろっ!!!」

「・・・・・ムサシの方がうるさいよ、耳元で怒鳴らないでよ・・・・・・」

「うおおおおおお!!!!わからんぞ〜!!!!!!」

「だからうるせえんだよっ、トウジ!!!黙ってろ!!!」



トウジとケンスケは成績がよろしくない

いや、ケンスケはまだ這い上がれるラインにいる

トウジは致命的にやばい

そして、マナ達三人組は不利だ

何せ、冒険科への転校生である

ちなみに、冒険科に他校から転校生が入ったという前例は、希少である

士官学校で蓄えた知識なんざ、これっぽっちも役に立たない

特に、マナとムサシがやばい

ケイタはそこそこできている

何故かトウジよりも成績がいい



冒険科には、年に6回の定期考査がある

今回はその1回目、一学期中間考査である

7月には一学期期末考査、これには実技試験があるので、ある程度、筆記試験の成績をカバーできる

期末考査は、実技込みのテストなのである

その後は10月の二学期中間考査

12月の二学期期末考査

1月の三学期中間考査

ラストを締めくくるのは、3月の卒業考査である



そして、ネルフ学園の名物と化しているものを、この時期に見ることができる

ネルフ学園名物、「墓から蘇り、呪詛を呟くゾンビの群」である

物騒な文句だが、「ゾンビ」とは睡眠不足とストレスに締め上げられた挙げ句

心身共に絞りカスのようになってしまった生徒の姿であり、

「呪詛」とは、必死で頭の中に詰め込んだ暗記の語呂合わせを囀っているだけにすぎない

「墓」とは、勉強に疲れ果てて倒れ込んだ安息の地、「ベッド」

「蘇る」のは、「墓」に倒れ込むとかならず「赤点」の夢を見るからだそうだ

当事者は切羽詰まっているのだが、教員達はそんな様子を微笑ましく見守っている

悲鳴を上げながら職員室に駆け込んでくる生徒は救いがある

教員に聞くこともできないほどレベルが低いところで躓いた奴は終わりである

さらば、青春と仲間と大冒険の日々よ



まぁ、そんなことにならないように必死に勉強する生徒の姿を、教員達は評価している

ある程度は

教員殿は決して鬼ではない

まぁ、悪魔でもない

百歩譲って悪代官と言うところか

試験期間になると教員にもランクが付けられる(勝手に)

例えば

伊吹マヤ:聖母

赤木リツコ:慈母

この二人は、最上級の尊称が与えられるのだ

聖母:マヤは教え上手である

わからないところでも、粘り強く付き合って理解させる

温和で優しい性格も、生徒から人気を集めている

慈母ことリツコは、マヤとは教え方が異なる

マヤは「理解できるまで付き合う」教え方

リツコは「理解できるまで解放しない」教え方なのである

本気でできない奴がリツコの所に行くのは自殺行為である

ただでさえ、睡眠不足とストレスにまみれた脳味噌を緊張に晒してしまうとさぁ大変

寮の消灯時間を過ぎても決して逃がさない

席を立つことが許されるのはトイレに立つときだけ

ちなみにトイレはリツコの研究室からかなり近いところにある

それでも、99%理解できる勉強方法である

研究室に年上で美人の女性教員と二人っきりという刺激的な状況に妄想を膨らませた殿方

そんな美味しい状況になるはずがないのであしからず



そして、役立たずのレッテルを貼られる教員もいる

葛城ミサト:嘘つき

碇ゲンドウ:外ン道

ミサトに質問するのは洒落にならない自殺行為である

専門外はほとんど未熟なのに、見栄っ張りな性格が災いして、とんでもない法螺を吹くことがある

実際に、それを信じて赤点を取った生徒もいる

まぁ、信じた方が悪いのだ

教員殿とて機械ではないのである

さて、ゲンドウに関しては弁護の余地がない

何を聞いても



「問題ない」

「全てはシナリオ通りだ」

「所詮、人間の敵は人間と言うことだよ」



という科白しか言わない

妻である碇ユイが博識であることに対して、彼は巫山戯たような態度しかとらない

実は、生徒に質問をされたことが嬉しくて舞い上がっているだけなのである

しかし、そんなことが生徒にわかるはずもなく、「外ン道」の汚名を着せられているのだ



さて、無駄話はこのくらいにして話を戻そう



「そろそろ、休憩しよう?」

「「「「「そうしよう」」」」」



ヒカリの涙が出るほどありがたい言葉に、先ほどから頭を捻っていた五人は即答した

机の上にべた〜っと身体を伸ばし、マナがぼやく



「・・・・・・はぁ〜、ど〜しよ〜・・・・・ねぇ、シンジぃ。ど〜しよ〜」

「まぁ、なんとかなるよ。まだ試験まで4日もあるんだし」

「・・・・・・・・・・・4日しかないじゃないの。でもさ、何でケイタはできるわけ?」

「普通に勉強してたからだよ」

「何よ、その言い方。まるであたしが勉強してないみたいじゃない」

「あのさ、マナは授業以外で一度でも教科書に触った?」

「ううん」



ケイタの言葉に、あっさり首を振るマナ

当然、横に

駄目だこりゃ

ケイタの顔にははっきり書いてあった

ジュースを買ってきたりして一息つく

10分間ほどの休憩

そして、問題集との苦闘は再び幕を開ける



「ねぇ、レイ。これってなんて読むの?」

「はやわざ(早業)」

「ありがと」

「鈴原、さっきの問題できた?」

「お、おぅ、わかったで」

「じゃあ、その問題を解く手順を最初から説明して」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「あ〜、委員長。質問」

「何?相田君」

「スリランカの首都って、何処だっけ?」

「スリランカの首都?確かスリジャヤワルダナプラコッテ」

「ス、スリ・・・・・?も、もう一回」

「スリジャヤワルダナプラコッテ」

「えっ!?スリランカの首都ってスリジャヤワリダナプラコッテじゃなかったっけ?」

「そうだったかしら?確かスリジャヤワルダナプラコッテで良いはずよ」

「・・・・・・あの、書いてくれると嬉しいんだけど」



どうやらケンスケには聞き取れなかったらしい



「?レイ、これってなんて読むの?」

「・・・・・?ごめんなさい。わからないわ」

「ん〜、ね、シンジ。これってなんて読むの?」

「え〜っと、確かしりめつれ・・・・」



シンジは問題集を見る

ついでにムサシも見た



「惣流はこんなのも読めないのか?“しりはれつ”って読むんだよ。次のは“うんどろのさ”」

「えっと・・・・・しりはれつに・・・・うんどろのさ、ね。サンキュー、助かったわ」



メモるな



「・・・・・・・・違うよ。ムサシ」

「えっ!?」

「しりめつれつ(支離滅裂)と、うんでいのさ(雲泥の差)が正解だよ・・・・・・」



ぼそぼそというケイタ



「・・・・・・あ〜、すまん。惣流。しりめつれつと、うんでいのさが正解なんだって」

「ふんっ!!!知ったかぶりするなんて最低!!!」

「あんだとぉ!!?お前だって知らなかったんだろうが!!?」

「うっさいわね!!あたしは日本はまだ短いのよ!!
日本語の言葉なんてそんなに詳しくないの!!」

「へっ!!」

「ふんっ!!」



お互いそっぽを向いて勉強を再開する



「それにしても、何か楽に勉強できる方法って無いかなぁ」



がたっ!

ケンスケのぼやきに、トウジは席を立つ

周りの声を無視して図書室を飛び出した









<研究室>



「ねぇ、リツコ。テスト問題ってもうできてるの?」

「えぇ、全教科できてるわよ」

「ね、ちょっち見せて」

「・・・・・・問題を生徒に売ろうなんて考えはやめた方がいいわね。
減俸処分では済まないわよ」

「や、やーね。そんなこと考えてるわけ無いじゃな〜い!!」



額に大汗をかきながら研究室を立ち去るミサト

どうやら図星だったようだ



「・・・・・まったく」



今のところ、研究室はリツコ一人である

助手であるマヤは今頃、生徒の相手をしているだろう

今日はリツコの所に来た生徒はまだいない



「たのもー!!」



防音、防熱、対爆、対衝撃、腐食にも耐える頑丈なドアを突き抜けて、そんな声が聞こえた

きっと、力の限りの大声を出したのだろう

ドアの前に立っているのは・・・・・・鈴原トウジだった

リツコはコンソールを操作し、ドアを開ける



「失礼します!!」

「鈴原君。ノックをすればドアは開くのよ。大声を出さなくても」

「し、失礼しました!!!」



・・・・・・・やかましい



「で、いったい何の用なの?」

「ほ、本日は赤木“博士”にお願いがあって参りました!!!」

「へぇ、“教員”ではなく“博士”の私に?」

「は、はい!!!」

「わかったわ。それで、何なの?」

「あ、赤木博士のように頭が良くなる薬を分けてください!!!!」



彼女の名誉のために言わねばなるまい

彼女の知識は、全て彼女自身の努力によって築いた物である

薬で知識を造ることはできない



「そう、わかったわ」

「ほ、ほんまにあるんでっか!?」



思わず関西弁が出てしまうトウジ



「えぇ、はい。コレ」



リツコが差し出したのは、瓶に入った不安な色の錠剤だった



「・・・・・・・コレの服用方法は?」

「これが一回分よ。テスト前にでも飲みなさい」

「ひ、一瓶が一回分!!!?」

「そうよ」

「お、おおきに・・・・やなかった。ありがとうございます!!!」



歓声を上げて飛び出してゆくトウジ

リツコの手の中には、「未実験」と書かれたラベルが隠されていた

























後日、全員が人事を尽くした中間考査は終了した

何故か、鈴原トウジはダントツで学年トップに立った

しかし、その本人は数週間寝込んだという



「・・・・・・改良の余地があるようね」



ごもっとも





つづく





後書き

今回は、ちょっと短いですね
試験の話でした
いえ、試験の話なんですけど・・・・・・・・
試験、あんまり関係ないですね

どうでも良いことなんですけど、T.Kの友人には赤点を一度に6つも取った人がいます
勉強教えてくれって、泣きつかれました



・・・・・・よく考えると、後書きになっていないような気が・・・・・まいっか