「よぉっし!!行くわよ!!!」

「何か、今日は随分気合いが入ってるね」

「そうね」

「何言ってるのよ!?今日からいよいよターミナルドグマに突入じゃない!!!」

「・・・・・セントラルドグマの使徒よりも、ずっと強いんだろうね」

「戦い方を間違えなければ、問題ないわ」

「そうそう!ガンガン行くわよ!!」





君に吹く風


6月19日:ターミナルドグマ









<ターミナルドグマ:第15階層>



中間考査も終わり、季節は鬱陶しい梅雨時を迎えていた

外はじっとりした天気だが、地下迷宮はひんやりしているくらいである

このくらいがちょうど良い



「・・・・・・一気に変わるね」

「そ、そうね」

「行きましょ。いつも通り?」



の作戦?

を省略している



「えぇ、じゃ行くわよ」



三人は、アスカを先頭に、レイを挟んで、後衛をシンジが勤める

壁、床、天井が舗装されたセントラルドグマとは違う

薄暗い通路は、岩壁に、土の地面、落ちてきそうな不安を与える岩の天井

まるっきり洞窟そのものの地下迷宮、それがターミナルドグマであった



「・・・・・・碇君。後方に反応、3つ」

「後ろ?」



振り返るシンジ

しかし、通路に掛かる闇のカーテンは全てを覆い隠していた



「このまま進みましょう。広いところに出るかもしれない」

「綾波、敵の速さは?」

「・・・・・私達と同じくらい」

「じゃ、進むわよ!」



三人は早足に歩き出す

後ろから追いかけてくる反応は、依然三人の後ろについて来る



「・・・・!!何て事!!?」

「行き止まり!!?」

「碇君、来るわ!!」

「くっ!!」



狭い通路で、シンジは短剣を抜いた

この狭い通路では、アスカの援護は期待できない

闇からのっそりと姿を現したのは・・・・・・・・・・



「・・・・・ウナギみたいね」

「!シャムシエル!!」



まさに、アスカの呟きが的を射ていた

空飛ぶウナギ

触手なのか、鞭なのか良くわからない物を揺らめかせながら迫ってくる

使徒シャムシエル

上級使徒ではないが、普通の獣の使徒とは違う

“名前”を持つ特殊な使徒である



「・・・・・・この状況なら、そんなに不利じゃない。綾波、お願い!」

「マジックプログラム:ファンクション。フィールドレベル:3。
アイシクル・ランス:ドライブ!」



レイの目の前に氷の大槍が現れ、逃げ出すように飛んでゆく

狙い違わず先頭のシャムシエルに突き刺さった



「たぁっ!!」



その隙をついて、シンジは腹のコアに向かってナイフを投げつける

長剣に関しては呆れるほど下手だが、投げナイフの腕はすぐに上達した

ATフィールドを纏ったナイフが、コアに吸い込まれるように突き刺さる



「まず一匹!!」



シンジは踏み出す

二匹目が繰り出す光の鞭を何とかかわし、脳天に短剣を振り下ろす

青い体液、恐らく血が飛び散った

しかし、そいつは動きを止めない

怒り狂ったように鞭を伸ばし、振り回す



「うわっ!!?こ、こいつっ!!」

「碇君!」

「馬鹿シンジ!!」



振り回された鞭が、腕をかすった

戦闘用学生服の袖は一瞬でぼろぼろに焼け焦げ、腕には軽い火傷を負った

どうやら、光の鞭を振り回して、高温で焼き切るつもりらしい

しかし、脳天に風穴が空いているシャムシエルは、めったやたらに光の鞭振り回していた

辺りの壁、地面、自分自身の身体を、面白いように切り刻んでゆく

最後の一匹が、バラバラになった同類の死体を乗り越えて姿を現した

シンジは、「呪文」を唱える



「エッジプログラム:ファンクション!フィールドレベル:3!
三閃爪(さんぜんそう):ドライブ!!」



振り下ろされた獣の爪のように、三筋の閃光がシャムシエルを切り裂いた

それでも、光の鞭は弱々しくも動いている

シンジはコアを砕いた

今度こそ、完全に動かなくなった



「・・・・・はぁ、はぁ」

「へぇ、結構強いのね」

「・・・・・そんな、まだまだだよ」

「とーぜん!!あたしと比べればまだまだひよっこね」

「・・・・・そんなこと無いと思うわ」

「・・・・・・ううん。僕はまだまだ弱いよ・・・・・・・」



三人は、再び歩き出す

すると、広間で妙な物を見つけた

白くて、大きい・・・・・・・・・・



「卵、かな?」

「あんた馬鹿?こんな大きい卵が存在するわけないでしょ」



そう、真っ白な卵形の何か

高さは、3m程もあり、直径は2m位はありそうだ

こんな卵を生む生物は自然の動物にはいない

しかし、それは卵ではなかった



「・・・・・これ、卵じゃないわ。繭みたい」

「「繭?」」

「ええ、表面は糸のような物でできてる」



レイは、指先にその“糸のような物”を摘んで見せた

確かに、白い、極細の繊維のような物が絡み合っている



「・・・・・・でも、何なのかな?」

「これだけあると、結構不気味よね」



広間は、かなり大きなものだ

その広間の床、壁、天井に繭は犇めいている

その時、繭を触っていたレイが弾かれたように手を離した



「!!!?」

「レイ?どうかしたの?」

「・・・・・二人とも、気を付けて」

「「何が?」」

「この繭・・・・・・・動いたわ」



今や、繭の動きは目に見えるほど大きくなっている

明らかに、“中で何かが蠢き、外に出よう”としている

危険の匂いを嗅ぎ取り、三人が入り口に身を寄せ合った瞬間

繭が破れた



「し、使徒!!?」

「見て!!他の繭も!!!」



壁、床、天井の繭も、一斉に震えるように動き出した

そして、数秒後には繭は弾け、数体の使徒を産み落とした

あっという間に、広間は使徒で埋め尽くされる



「そ、惣流!どうしよう!?」

「に、逃げるわよ!!」

「待って!!」



レイは二人を制止した

紅い瞳は、冷静に使徒の集団を見据えている



「何やってるのよレイ!!とっとと逃げないとやばいわよ!!」

「待って、どうやらすぐには動けないみたいだわ」



レイを言うとおり、繭から羽化したばかりの使徒は、思うように動けないようだ

蝶や蛾が、羽を乾かすように、使徒もすぐには動けないらしい



「だからこそ、今のうちに逃げなきゃ!!」

「アスカ、この広間を閉鎖して」

「お、OK!任せときなさいよ!!
馬鹿シンジとはひと味違うところ、見せてあげるわ!!」



二人を下がらせ、アスカは長剣を下段に構える

使徒は、徐々に動き出す

アスカの唇から、「呪文」が紡がれる



「スラッシュプログラム:ファンクション!!フィールドレベル:5!!
ハウリング・オーバー:ドライブ!!!!!
いっけぇぇぇぇぇぇえええええええええ!!!!!!!!!」



下段に構えた長剣を、一気に振り上げた

純粋に破壊の力を秘めたエネルギーの奔流は、天井を打ち砕く

計算通りの角度

計算通りの着弾点

計算通りの破壊力

計算通りの天井の強度

計算通りに、通路は瓦礫で埋め尽くされた

アスカは全力で駆け戻り、二人と合流する



「閉鎖は済んだわ。多分出ては来れないと思うわよ」

「・・・・・・ふぅ、助かったね」

「えぇ、でもアレはいったい何だったのかしら?」

「繭の中から使徒が出てきた以上、使徒の卵としか言いようがないわよね」

「でも、使徒の卵なんて聞いたこと無いよね?」

「帰ったら、報告しましょう」



三人は、しばし休憩

通路に肩を寄せ合って、壁に背を預けて座り込む



「あっ!!」

「どうかしたの?」

「で、電池が切れた!!」



アスカの長剣のコアが、赤から黒に変色してる

明らかに電池切れだ



「・・・・・・あ〜ぁ、つい最近交換したばっかりなのに、もぉ!!」

「仕方ないよ。惣流の「魔法」は消耗が激しいんだから」

「・・・・・そうね、その分破壊力は折り紙付き」

「はぁ。ねぇ、今日の探索はコレくらいにしない?
さっきの繭だか卵だかの報告にも行かなきゃいけないし」

「・・・・・時間的には。まだ余裕はあるけど・・・・・」

「うぅ〜ん」



その時

通路を塞いでいる瓦礫が、ぼろっと落ちた

慌てて三人は武器を構える



「・・・・・・・・レイ。反応は?」

「・・・・まだ、わからない。瓦礫の向こうまでは見えないわ」

「どうする?早めにここを離れた方がいいかな?」

「そうね。後ろに向かって前進!!」



三人は走り出した

しかし、ある重要なことに気付く



「あ!!あそこって危険なんじゃないかな!!?」

「仕方ないでしょ!!?今あたし達が使える魔法じゃどうしようもないわよ!!」

「・・・・・そうよ」



そう言いながら、三人は脱出した










<ネルフ学園:研究室>



「使徒の繭?」

「はい」

「そうなのよ、信じられる!?
しかも、一つの繭から10匹くらいの使徒が出てくんのよ!!?」

「しかも、その繭は広間の壁、床、天井にくまなく張り付いていたんです」

「そうです」

「・・・・・・・確かに危険ね。どう処理したの?」

「とりあえず、通路を塞いだ程度です」

「それ以上はできなかったわ。電池が切れちゃったし」

「・・・・・・・・・成る程、わかったわ」



リツコは、席を立った



「どうするんですか?」

「そうね、そこに行くわ」

「「「ええぇぇ!!?」」」



リツコは白衣を翻して研究室のドアに向かう



「シンジ君。案内して」

「は、はい!!」

(どうして僕が!?)



と、心の中で叫ぶシンジ



「女の子に苦労させるつもり?」

「・・・・・・・」



見事に心を読まれていた

しかし、シンジの心に不安はある

あれだけの使徒を、リツコは一人で殲滅することができるのか・・・・・



「安心して。ミサトも呼ぶわ」



そう言いながら、白衣のポケットから携帯電話を取り出す

やはり、心を読まれているようだ










<迷宮昇降口>



外は、しとしとと梅雨の鬱陶しい雨が降っている

ゲートで二人はミサトを待っていた



「・・・・・・遅いですね。ミサト先生」

「何をやってるのかしら・・・・・・」

「まさか、道に迷ってたり・・・・・・・」

「・・・・・・ふぅ、いくらミサトでもそんな馬鹿なことはないでしょ」



しかし、ミサトは来ない

業を煮やしたリツコは、再び電話を手に取った



「もしもし!ミサト!!?あなた何処にいるの!!?
は?食堂!!?あなた、事の重大さがわかってないようね!!
良い?5分以内に来なかったら学園長に報告するわよ!!」

「・・・・・あ、あの、食堂って・・・・・」

「・・・・・はぁ、迷子になった挙げ句、お腹が空いたから食堂で3時のおやつを食べてたそうよ」

「・・・・・はぁ」

「苦労するわね。変な担任を持つと」



シンジは、何も言うことができなかった

リツコの警告通り、ミサトは全力疾走で3分後に到着した

減俸処分はご免らしい



「さ、シンジ君。案内して」

「・・・・・ちょ、ちょっと待って・・・・・脇腹・・・・痛くって・・・・・」

「行くわよ!!」(怒)

「は、はいぃ!」



きっと、シンジの頭にはでっかい汗が書かれていただろう










<ターミナルドグマ>



「ここです」



シンジが案内した通路は、先ほどよりも瓦礫が崩れかけていた

シンジは短剣を抜く

ミサトも大型の拳銃を構える

リツコは、右手にやや小振りの銃、左手には杖を持っている

直後、瓦礫が弾け、飛礫となって三人を襲った



「出てきたようね」



リツコが展開したATフィールドの楯が、全ての飛礫を叩き落とす

余裕の表情で、リツコは銃を構えた

撃つ

紅の光の筋が銃口から疾る

強力なATフィールドを纏った弾丸が、レーザーのように迸った



「来るわよ、ミサト」

「わかってるわよ。リツコこそびびるんじゃないわよ!」

「・・・・・・・・・・」



教員二人を前にして、シンジは何も言えない

そして通路に大量の使徒が雪崩れ込んできた!



「二人とも下がって!!時間を稼ぐわ!!」

「ディスポは!!?」

「装填。詠唱合わせで一気にいくわ」

「OK!!」



詠唱合わせ

「魔法」の呪文の詠唱を合わせて、相乗効果をもたらす技

詠唱のタイミング、ATフィールドの力、何よりな心の完璧なユニゾンが無ければ成立しない

高度な魔法を「詠唱合わせ」で使えば、その効果は3倍にも、4倍にもなる



「マジックプログラム:ファンクション!!フィールドレベル:13!!
ウィル・オ・ウィスプ:ドライブ!!!」



リツコの杖の先から、無数の球体プラズマ(ウィル・オ・ウィスプ)が飛び出す

狭い通路の中でウィスプは飛び交い、次々と迫る使徒を消滅させた



「ミサト、良いわね?」

「OK!」



二人は、ディスポーサル・コアを装填した銃を構える

シンジはその後ろで呆気に取られていた

ウィル・オ・ウィスプなんて見たこともないような高次元の「魔法」を目の当たりにしたうえ、

詠唱合わせなんて高度な技まで繰り出されるのだ

シンジは既に目が点

通路の奥から、使徒の大群が出てきた

二人の詠唱合わせはまだ完成しない



「「スペルコード:エントリー!タイプ:ユニゾン・シング!!
シューティングプログラム:ファンクション!!フィールドレベル:リミット!!」」



3m

使徒はすぐそこまで迫っている

直前に、「詠唱合わせ」は完了した



「「デストラクト・ゲイザー:ドライブ!!!!」」



二筋の閃光が迸った

その軌跡を追うように、ATフィールドの爆発が巻き起こる

それはさながら間欠泉(ゲイザー)のような勢いで使徒を砕く



結局、残ったものは、ぼろぼろの通路、通路以上に朽ち果てた広間だけ

使徒の繭は一つ残らず破れていた

推定でも、200以上の使徒が産まれたはずだ



「ま、ざっとこんなもんね」

「・・・・・・マヤ?例のターミナルドグマ15階層のA−18ブロック。
処理が完了したから隔壁を下ろして。そう、この区画は破棄するわ。
・・・・・えぇ、お願い」



リツコは電話を切った



「さ、帰るわよ」

「・・・・・・・・・」

「シンジ君?」

「あ、は、はい!!」

「どしたの?シンちゃん。
まさかお姉さん達のかっこよさに言葉もない?」

「え、あ、そ、その・・・・・」

「ミサト。からかうのはその位にしなさい。帰るわよ」

「へいへい」



三人は歩き出す

リツコが、急に足を止めた



「ちょっと!急に止まらないでよ!」

「・・・・・敵性反応が2つか。問題にならないわね」

「何?使徒?」

「えぇ、2匹だけよ」



そう言って、リツコは杖を握り直し・・・・・・・

ふとシンジと目があった

嫌な予感に駆られるシンジ



「折角だから、シンジ君に単独で対処してもらいましょうか」

「ぼ、僕が単独で!!!?」

「そうね。じゃ、シンちゃん頑張って。危なくなったら助けてあげるから」



シンジは溜息をつきながら短剣を抜く

神経を研ぎ澄ませ、前方に集中する

出てきたのは、のっそりと歩く大型の熊の使徒

そして、見覚えがある・・・・・・



「・・・・・イスラフェル」



分裂使徒、イスラフェルの姿があった

シンジは、のろい動きで迫る熊の使徒に飛びかかる

刀身にATフィールドを集中させ、熊の額に突き立てる



「フィールド、全開!!」



刀身で迸ったフィールドが、熊の頭を砕き散らした

イスラフェルが鉤爪を振り上げる

バックステップでかわし、一旦距離を取る



さぁ、どうするかな?



そんな視線を背中に浴びながら、シンジは短剣を鞘に収めた

意識を集中させる



「・・・・・・・・はぁぁ・・・・・」



ゆっくりと肺から空気を吐き出し、全身の力を抜く

イスラフェルを見る

奴の力の流れを見る

見切った!!



「だっ!!」



抜刀

ぴしっ

力の流れの中心に、短剣を滑らせる

イスラフェルは、真っ二つになった

普通なら、二つに別れた身体が、二体のイスラフェルになるはずだが・・・・・・・・



「・・・・・あれ?」



ミサトの拍子抜けしたような声

イスラフェルは、ぴくりとも動かない

力の流れの中心を切り裂かれた以上、どんな生物でも壊れてしまう

カヲルに教わった技だ



「大丈夫ですよ。こいつは死んでます」

「そ、そう・・・・・でも、どうやったの?イスラフェルを剣で倒すなんて」

「しかも、弱点であるコアを切ったわけでもなし。なにかさっきの攻撃には秘密がありそうね」

「・・・・・・・えっと、それは秘密ですよ」



二人の刺すような視線を背中に浴びながらも、シンジは歩き出した

とっとと帰らねば、命に関わるかもしれない



「でも、あの繭ってホントに何だったんでしょうか?」

「使徒の卵・・・・・・と考えるしかないわね」

「使徒の繁殖方法がわかったと思えばいいじゃない」

「馬鹿ね。あんなのがこの先そこら中で出たりしたら生徒が危ないわ。
斥候部隊の出撃回数を増やして、見つけ次第処理するべきね」

「そうですね」

「ま、そんなことより早く帰りましょ。
シャワー浴びて、つめたーいビールをジョッキ一杯・・・・・」

「「・・・・・・・・」」



溜息をつく二人

リツコがミサトの言葉につっこみを入れた



「ミサト・・・・・校内では飲まないでよ」

「わかってるわよ。ちゃんと寮で飲むわ」

「・・・・・・自室でやって」



三人はターミナルドグマをあとにした










<ネルフ学園:屋上>



「・・・・・ふむ、羽化拠点があそこまで来たか」



屋上で黒尽くめの男

カヲルは呟いた



「徐々に力を取り戻しているらしいな。
・・・・・・・奴の言う“実”を探し出せば、復活は間近だろうね」

(・・・・・・・・お兄様・・・・・・)

「どうかしたかい?サヲリ」

(・・・・・・シンジ様には、何と説明するつもりですか?)

「・・・・・彼には、嘘をつくことになるだろうね。
でも、知らない方がいいこともある。彼には関わって欲しくないよ。良い人だからね」



カヲルは、彼にだけ見ることができる妹に微笑みかけた



「お前が心配することはないよ。サヲリ」

(はい・・・・お兄様)

「・・・・シンジ君か・・・・」



カヲルは、ぼそりと呟いた



「・・・・・僕の目的を知ったら、彼は僕を許さないだろうか?」

(・・・・・・お兄様、心を痛めているのですか・・・・・)

「・・・・・多少はね。彼は僕らにとって最初で、最後の友人だと思うから」

(・・・・・私は、いつまでもお兄様の傍にいます・・・・・)

「ありがとう。サヲリ」



コートの中から、ロケットを握りしめる

その中には、幼い頃の二人の、カヲルとサヲリの写真が入っていた





つづく





今日の補習授業

・碇ユイ先生のユニゾン教室

みんなこんにちわ
この学校の購買の責任者で非常勤教師の碇ユイです
「購買のユイさん」の方がわかりやすいかもしれないわね?

さてさて、今日は「詠唱合わせ」についてよ

まず、「詠唱合わせ」っていう物について説明するわ
「詠唱合わせ」は、同じ種類の「魔法」の掛け合わせを行うこと
簡単そうに聞こえるかもしれないけど、本当はすごく高等な技術なの
「詠唱合わせ」は最低二人から何人でも
もっとも、二人ならその二人のユニゾンが完璧じゃないといけないの
詠唱のタイミング、ATフィールドの強さ、そして心のユニゾン

じゃ、まぁ、具体的な例を挙げて説明してみましょう



「「スペルコード:エントリー!タイプ:ユニゾン・シング!!
シューティングプログラム:ファンクション!!フィールドレベル:リミット!!
デストラクト・ゲイザー:ドライブ!!!!」」



ミサトちゃんとリツコちゃんの「詠唱合わせ」ね
この二人って仲悪いときもあるんだけど、ホントは大の親友みたいね
「詠唱合わせ」が出せるくらいなら、なかなかの付き合いだと思うわ
・・・・・・まぁ、それは置いといて



「スペルコード:エントリー!タイプ:ユニゾン・シング!!」



「詠唱合わせ」は特殊な「魔法」の扱いになるから、こういう呪文が入るわ
「ユニゾン・シング」は遠隔攻撃系の「詠唱合わせ」の時のタイプね
直接攻撃系の、剣術、格闘術の場合は「ユニゾン・ダンス」っていうタイプになるわ
ここから後は普通の魔法の詠唱と同じ

では、もう一つの例を挙げてみましょう



「「スペルコード:エントリー!タイプ:レゾナンス・ステップ!!
エッジプログラム:ファンクション!!フィールドレベル:19!!
閃空怒濤:ドライブ!!
飛燕一閃・杜若!!
幻翔舞・牡丹!!!
朱雀閃・茜!!!
白虎襲・白蓮!!!
青竜牙・竜胆!!!
玄武斬・黒百合!!!
麒麟撃・桜花!!!
夢想斬命・百花繚乱!!!!!」」



一度に9つもの「魔法」を「詠唱合わせ」してるわよね?
これは、実は私とゲンちゃんの「詠唱合わせ」なのですね
懐かしいわねぇ、この「詠唱合わせ」で南極点の上級使徒を滅ぼしたのよ

「タイプ:レゾナンス・ステップ」
ここが特殊なの
どう特殊かって言うと、簡単に言えば、「詠唱合わせ」の「魔法」の連携ね
ここまで完全にユニゾンを作れるのは、今の地球では私とゲンちゃんくらいかな?
あ、でもでも、シンジとアスカちゃんや、レイちゃんも仲良いし・・・・・

あの子達はどれくらいのユニゾンを作れるかなぁ・・・・・
あ、レイちゃんとシンジじゃ無理だわ
直接攻撃と遠隔攻撃はユニゾンできないからね

そうねぇ、あと「詠唱合わせ」に関することと言えば・・・・・・・
そうそう、太平洋にガギエルっていう使徒が出たことがあったのよ
その時はすごかったわよ。3日間の特訓で、簡単だけど50人以上のユニゾンを完成させたから!
アメリカの海軍と協力してガギエルの動きを止めたところに、
50人の「詠唱合わせ」の雷撃を使ったの
一人一人の強さはそこそこだったけど、単純に考えてその一人の雷撃の50乗の破壊力

その後は大変だったの
ガギエルが消し炭になったのは助かったわ
でも、アメリカ海軍も大打撃だったのよ
8割以上がこの時の落雷に巻き込まれて大破
お魚さんにも大きな影響が出ちゃったりね

「詠唱合わせ」は、確かに強力で頼りになるわ
でも、本当に頼りになるのは、
「詠唱合わせ」ができるくらい心の通い合ったパートナーじゃないかしら?

みんなも、頑張ってそういうパートナーを作ってね





後書き

いよいよ、ターミナルドグマ!
ついでに教員二人の実力も発揮させてみました
使徒は繭で産まれるんでしょうか?
卵よりもそれらしいかなぁ、と思って繭にしただけなんですけどね

感想、送って欲しいです
多分、特急が、超特急ぐらいになると思いますので・・・・・


では、さようなら