「へぇ〜」



ミサトは、発令所でドイツ支部からの報告書を読んでいた



「なかなか、やるようになったわね〜。あの子」

「?葛城一尉」

「ん、何?日向君」

「総司令がお呼びです」

「げっ!」

「・・・・・・・また、何かやったんですか?」

「心当たりは・・・・・・・・ありすぎて困るくらいだけど・・・・・・」

「あはは、今度給料入ったら奢りますよ」

「サンキュ。でも、気持ちだけにしとくわ。部下にたかるわけにはいかないもんね」

「そうですか・・・・・・・・あ、それは?」

「あ、これ?」



ミサトは、手にしている書類をひらひらと振って見せた



「エヴァ弐号機とセカンドチルドレンのシンクロ率から操機演習成績の報告書」

「セカンドチルドレンは、確かドイツ支部に・・・・・・・」

「そうよ。でも、本部に配属されることになったらしいわ」

「へぇ・・・・・・・」



マコトも、報告書を見てみる



「・・・・・・・・・優秀ですね」

「ん〜。まぁ、昔っから変なところで努力家なのよ。あの子」

「?セカンドを知ってるのですか?」

「えぇ、まぁね」



椅子から立ち、ミサトは頭をがしがし掻きながら発令所を出ていく



「さって、我らが辣腕なる総司令殿は一体何の御用向きでしょうかねぇ」









 風、薫る季節

 第4幕 彼女ってば淑女












<研究室>



「無茶苦茶な言い方をすると、魔法って言うのは思い込みの力なんです」



レイはそんな台詞をリツコにぶつけた



「完全にプログラムで制御されたコアなら、もっと出力を上げることが可能です。
でも、このコアはプログラム制御されていないので・・・・・・・・」

「成る程。それで、そのプログラム制御っていうのは?」

「私達は、プログラムによって魔法を使います。
剣によるスラッシュプログラム。
短剣によるエッジプログラム。
銃によるシューティングプログラム。
拳によるコンボプログラム。
弓によるエイミングプログラム。
これら以外は、マジックプログラムと呼ばれます」

「何故、そのマジックプログラムだけは別なの?」

「マジックプログラムは、プログラム制御されていないコアでも実行できるからです。
これ以外は、専用のプログラムと武器が要ります」

「なるほど・・・・・・・急拵えのコアで魔法が作れたのは上出来。というわけね」

「はい。この腕輪もそろそろ寿命が近いようです」

「寿命?」

「はい。コアからATフィールドを引き出して魔法を作りますから。
そのうちフィールドを引き出せなくなってしまいます。これを、私達は電池切れと呼んでいます」

「成る程・・・・・・・・それは良くわかったわ。
でも、何故零号機で魔法が使えたの?」

「ATフィールドを展開する能力があったからです。
マジックプログラムしか扱うことができませんが、高純度なのでかなりの出力が出せます」

「・・・・・・・・・・わかったわ。新しい腕輪もなんとかしてあげる」

「はい、ありがとうございます」



そう言って、レイは席を立ち、研究室を出ていこうとした

その背中に、リツコが声を掛ける



「レイ」

「はい」

「もし、零号機のコアから全力で魔法を作ったら、どうなる?」

「サードインパクトを起こせます」



さらりと、とんでもない台詞を残してレイは去っていった

この世界で、その言葉が意味することを知らなかったから、そんな台詞が吐けた

リツコは、ぴたりと動きを止め、レイの言葉を頭の中で反芻する



「・・・・・・・やはり、あなたは存在してはいけないものなの・・・・・!!?」










<その頃の太平洋艦隊:艦長室>



「艦長。直、到着ですね」

「君か・・・・・・・お嬢はどうしている?」

「今は船員の皆さんに別れの挨拶をしているところですよ」

「はっはっは・・・・・・・・この航海は、今までで一番楽しかったぞ。
女の子が一人いるだけで、ここまで変わるものとは思わなかった」

「あの子は特別ですよ。それにしても、海の男でも家族が恋しいんですか?」

「海の男は感傷に弱いのだよ・・・・・・・・家族を思う心は誰よりも強い」

「艦長にも?」

「あぁ、娘がいる・・・・・・・もう、長いこと会っていない」

「会いたくなりましたか?」

「ああ、お嬢の所為だな」

「・・・・・・・・それでも、彼女は戦士です。人類の存亡を賭けて戦わなければなりません」

「・・・・・・・・・・・・・・無力な自分が腹立たしい。
子供を戦場に送り、ワシら大人はリングの外で観戦するしかない」

「まさか。セコンドくらいにはなれますよ」

「そうか・・・・・・・・・・そうだな」



コーンパイプをくゆらせる艦長

その時、艦長室の分厚いドアがノックされた

ドアの向こうから、微かに聞こえてくる女の子の声



「艦長さん。いますか?」

「ん、お嬢か?」

「はい、ちょっと失礼します」



入ってきたのは、赤毛の少女

何故かエプロンを付けている

所々に付いている白い粉は小麦粉だろうか



「ほぉ。ケーキでも焼いてくれたのか?」

「えぇっ?艦長さん何でそれをっ!?まさか超能力者なんですか!!?」

「ハッハッハッハ!見ればわかる」

「えっ?・・・・・・・あっ!」



慌ててエプロンをはたく彼女



「エプロンは外してくるべきだったな」

「あ、ここにいたんですか?」

「あぁ、もうすぐ横須賀に着くからな」

「もう着いちゃうんですか!?」

「あぁ、海の旅はどうだった?お嬢」

「楽しかったです!皆さんすごく親切でしたし」

「そうか・・・・・・・・艦長としてそれほど嬉しい言葉は無いぞ」

「そんな・・・・・・・あ、そうそう。
ケーキのことなんですけど」

「ん」

「今、ケーキが焼き上がったので・・・・・・・・・・」

「ほほぅ」

「早く食堂に行かないと食べれないと思います」

「何ぃッ!!!!!!!!!!!?」



飛びつくように船内通信を食堂のスピーカーに繋ぎ、マイクを手に取る艦長



「食堂に居る総員に告ぐ!!!ワシの分も残しとけ!!!!!」



通信が帰ってきた



『艦長!!如何に艦長いえどもこればかりは譲れません!!!』

「貴様!!上官不服従で艦から放り出すぞ!!!」

『それでも、であります!!!』

「ちいっ!!!」



マイクから手を離し、艦長はちょっと衰えてきた足腰を酷使しながら食堂へ向かった

その背中を見送る二人



「なぁ。たくさん作ったんだろ?」

「えぇ・・・・・・でも、他の皆さんの食べ方から考えると、もう残ってないかも知れません」

「・・・・・・・・・・・・まぁ、わかる気がするけどな」

「はい?」

「いや、何でもない。
それよりも、そろそろ到着だぞ。荷物まとめたり、着替えたりしろよ」

「あ、そうですね。私の準備が終わったら、お手伝いしましょうか?」

「俺の荷物なんて5分でまとめれるさ。トランクに突っ込むだけだからな」

「着替えはちゃんと畳まないといけませんよ!」

「わかったわかった、ちゃんとするよ」

「絶対ですよ!」



そう言い残して、ぱたぱたと走り去っていった

出来の良い妹を持った兄のような気分だった



「・・・・・・・・・・荷物なんて、アレだけ運びゃ終わりなんだよな」



煙草を取り出して、火を

ライターが切れていることを思い出した

艦長の物であろう、マッチで火を点ける



「昔は、こういう点け方して恰好つけたっけなぁ・・・・・・・・・ミサト」



廊下から足音

足音の主がドアから顔を覗かせて



「まだこんな所にいるじゃないですか!早く準備しないと駄目ですよ!」

「あぁ、わかったよ」



溜息混じりに、彼女の名を呟く



「アスカ」










<発令所>



「セカンドチルドレンって、どんな人ですか?」



シンジは、ミサトに聞いた



「アスカは、そうね。多分、一目見たら放っておけなくなる子ね。
ちなみに美人で性格も良し。料理もうまいときてるわ」

「ミサトとは正反対ね」

「うっさいわよ。リツコ」

「アスカ・・・・・・・惣流アスカ・ラングレー“が”ですか?」



レイが、確かめるようにミサトに聞いた



「えぇ、そうよ。惣流アスカ・ラングレー・・・・・・・って、レイはアスカを知ってたっけ?」

「向こうの世界で・・・・・・・」

「あ、そうか」



難しい説明をされても良くわからないので、そのまま納得してしまうミサト



「その、美人はともかく性格良しで料理もうまいって、確かな情報ですか?」

「えぇ、そうだけど。どしたの?」



違う!!そんなのアスカじゃない!!!

レイは、心の中で力一杯に叫んだ

本人が聞いたら怒るぞ



「で、私はこれから横須賀まで迎えに向かわなくちゃならないのよ」

「どうしてですか?」

「弐号機の引き渡しの書類を配達にね。それで、あなた達はどうする?」

「どうする、って何をですか?」

「一緒に来ない?紹介しときたいし」

「行きます」



間髪入れず、レイは言った

是が非でも、その性格良しで料理もうまい惣流アスカ・ラングレーというのを見てみたい



「OK、シンジ君は?」

「じゃあ、僕も・・・・・・・・・・・」

「あ、ミサト。ちょっと待って」



シンジが言いかけたときに、リツコが横から口を挟んだ



「何?」

「本部に一人もパイロットが待機していないというのは駄目よ」

「・・・・・・・・確かに、使徒はいつやってくるかわからないけど・・・・・・・
エヴァの状況は?」

「両機とも、生体部分の再生は完了しているわ。
でも、零号機の胸部装甲板の換装はまだ終了していないわね」

「そっか・・・・・・・・・いっそ、取っ払ってても構わないんじゃないの?」

「・・・・・・・そうかも知れないけど、そういうわけにはいかないわ」

「そうよね〜・・・・・・・・・・」



申し訳なさそうに、心底申し訳なさそうに、ミサトはシンジに向かって両手を合わせた



「ごみん!!!シンちゃんは留守番してて!」

「べ、別に良いですよ。こればっかりは仕方ないですし」

「ごめんね。今度お姉さんが美味しい物奢っちゃうから!」

「お姉さんって年でもないでしょ」

「リツコに言われたくはないわね」

「・・・・・・・・・・・・・・・・・・それに、給料日前じゃないの」

「・・・・・・・・・・・」

「あ、い、良いですよ。ミサトさん!!別に、そんな」

「えー、でも、シンちゃんには常日頃の家事とかして貰ってるんだからそのお礼も・・・・・・・」

「ちょっと待ってください!!!!!!」



かつて無いほどの大声だった

彼女、綾波レイ嬢はミサトの発言について確かめたいことがあった



「葛城先生・・・・・・・碇君に家事をして貰っているというのは、どう言うことですか!!!?」

「え、だって、同居してるから」

「同居!!?」

「うん、そうだよ。綾波」



一度だけ

一度だけ、レイは教員寮のミサトの部屋を訪れたことがある

大した用事ではなかった

ちょっと、届け物という程度の用事だった

まず、ミサトの部屋はドアからしてやばかった

何故か、「へぶんずどあ」と落書きされているのだ

「最終安全装置」と書いた札が下げられた鎖に南京錠

スラムに迷い込んでしまった観光客の気持ちを、一瞬で理解できた

全ての封印を外し、ドアノブを回せばそこはもう別世界

トリップできるぞ

いや、まぢで



「・・・・・・・・・・・・葛城先生!!!」

「な、何?」

「生徒の虐待は犯罪です!!」

「ちょ、レイ?虐待って、それに生徒って何!?

「とにかく!!今すぐ現状を改善するか辞職してください!!
それができないなら学園長に直談判に行きます!!!」

「学園長って、碇司令に!!?ちょ、ちょっと待ってよ!!
私がシンちゃんと同居してるのは、碇司令が親子での同居を拒否したから・・・・・・・・」

「だったら、それ以外の手段は幾らでもあったはずです!!!」

「た、確かにそうかも知れないけど・・・・・・・」

「あ、綾波!!僕は、その、今、ミサトさんと同居してることが、嫌なわけじゃないんだ」

「・・・・・・・・碇君」

「確かに、ミサトさんはがさつで」

「どき」

「ずぼらで」

「ぐさ」

「アル中気味で」

「ざく」

「生活無能者のすっとこどっこいかも知れないけど、ミサトさんはホントはすごく優・・・・・」

「よぉぉっくわかったわ。シンちゃぁぁん・・・・・・・・・・」

「えっ?」

「私みたいがさつでずぼらでアル中で生活無能者のすっとこどっこいの世話なんてしたくないのね」

「え、その、ミサトさん?」

「まぁ、それが普通だと思うけど?」

「リツコ・・・・・・・あんたも私の敵になるのね」

「敵って、どういうことですか!?」

「さよならってことよ、シンちゃん。強く生きてね」

「ミ、ミサトさん!!待ってくださいよ!!それって、一体」

「あなたが帰るところは、私の家ではなくなったって事よ」

「うわぁぁぁぁぁっ!!!!僕を捨てないでぇぇぇぇぇぇぇっ!!!!!」



嫌に冷め切ったミサト

頭を抱えて叫ぶシンジ

対照的な二人を呆然と見守るリツコとレイ



「どうするの?収拾、付かなくなっちゃったわよ」

「時間には出発します。葛城先生の機嫌も三歩歩けば元に戻るでしょう」

「よくわかってるわね。レイ」

「教え子ですから」










<横須賀>



「ん、あの空母よ」

「あの空母って言われても・・・・・・・そこら中、空母だらけなんですけど」

「太平洋艦隊を総動員だからね〜・・・・・・・」

「それだけ、パイロットとエヴァが重要と言うことですか」

「そういうこと。これでも足りないくらいだけどねん」

「そうですね。通常火器では使徒に対して足止め程度にしかなりませんから」



ミサトの言葉に同意するレイ

こっちの世界の戦自も似たり寄ったりだったし

どうして、こう、軍人というのはプライドばかりが高いのだろうか



「じゃ、行くわよ。レイ」

「はい」










<甲板>



「総員ッ!!!!我らが、惣流アスカ・ラングレー嬢の未来に幸多きことを願い!!!!」



そんな声が聞こえてきた

レイは思う

惣流アスカ・ラングレー“嬢”!?



「敬礼ッ!!!!!!!」



10秒ほどの沈黙の後

祝砲やら、ラッパやら、カラースモークを吐き出す戦闘機のフライパスやら



「な、何やってんの!!?」

「行きましょう、葛城先生」

「わ、わかってるわよ」



甲板に出る二人

そこには、

ラッパを吹き鳴らしている水夫

紙吹雪を撒き散らす管制塔

ごつい男達の人集り

その中心には、困った顔をしている赤い髪の女の子

そのはずれには、くわえ煙草をしてその様子を眺めている男

その男に、ミサトは激しく覚えがあった



「加持君っ!!!?」

「よっ、葛城」

「だ、な、何であんたがここにいんのよ!!!!?」

「加持先生!!?」

「先生?」



レイの言葉に、不思議そうな表情をする加持

無理もない

先生と呼ばれるようなことはないからだ



「君は、ファーストチルドレンの・・・・・・・」

「はい、綾波レイです」

「そうか、よろしく。レイちゃん」



そう言って、ミサトにそっと耳打ち



『おぃ、何だか随分違わないか?』

『・・・・・・・・その事に関してはあとで説明するわ』

『OK』

「あの・・・・・・・惣流アスカ・ラングレーさんは?」

「あ?あ、あぁ、アスカか?アスカなら・・・・・・・・・・」



あそこ、と加持は指差した

そこは、人集りの真っ直中

そして、そこにるのは赤い髪の・・・・・・・・



「アスカっ!!!!!!!!!!!!!」



思わず、大声で叫んでしまうレイ

思わず、動きを止める男達

思わず、振り返るアスカ



目があった



「はい?」

「・・・・・・・アスカ」

「あなたは、誰ですか?」

「・・・・・・・・・・・・」



ショックを受けなかったと言ったら嘘になる

しかし、何を言っても向こうは知らないのだ

アスカはアスカだ

でも、知ってるアスカとは違うから



「ハァイ、アスカ」

「あ、ミサトさん!!」

「随分、背が高くなったわね」

「そうですか?あんまり気にしていないんですけど」

「それに、ちょっと女っぽくなったんじゃないの?航海中に変なことされたりしなかった?」

「ミサトさん!!!船員の皆さんはとても親切な方々でした!!!!
幾らミサトさんでも、船員の皆さんへの侮辱は許しませんよ!!!」

「ご、ごめんごめん。軽い冗談のつもりだったんだけどね」

「あ、冗談だったんですか。それで、あの、ミサトさん」



視線をレイの方に送るアスカ

視線の先には、呆然としているレイ



「彼女は、綾波レイ。零号機操縦適格者、ファーストチルドレンよ。
まぁ、ちょっと事情があって色々よくわかんないことになってるけど・・・・・・」

「綾波、レイさんですか?」

「は、はい」

「はじめまして!私は、エヴァンゲリオン弐号機操縦適格者。
惣流アスカ・ラングレーです!」

「は、はじめまして。ア・・・惣流さん」

「アスカ、で良いですよ。さっきもそう呼んだじゃないですか」

「そ、そうだけど・・・・・・でも・・・・・・・」

「本人が良いって言ったら良いんですよ。
あ、そうだ!綾波さん。弐号機を見ていってくれませんか?」

「弐号機を?」

「はい!」

「でも、どうして・・・・・・・」

「綾波さんは、これから一緒に戦う戦友で、友達じゃないですか」

「・・・・・・・・・・・・そう、ね」

「じゃ、決まりです。早速行きましょう!」

「わかったわ。でも、私のことはレイって呼んで」

「はい、レイさん」



あまりに違うアスカに苦笑するレイ

もし、自分の知っているアスカがこんな風に笑っていたなら



自分などシンジの心に住み着く場所も無かっただろう










<弐号機輸送艦>



「これが、弐号機・・・・・・・・」

「はい!
エヴァの中では、最初の実戦仕様なんだそうです。
でも、そんなのはあんまり関係ないですよね。
結局、一番頼りになるのはパイロットの・・・・・・・」

「「知恵と勇気」」



顔を見合わせて、二人は笑った



「頑張りましょうね。レイさん」

「えぇ、アスカ」



その時、決して小さくない衝撃が舟を襲った

ぐらつく足場に膝をつき、何とか体勢を保つ二人



「水中衝撃波・・・・・・・・・一体、何が!!?」

「・・・・・・・・使徒、だわ」



呆然と呟くレイ

視線の先には、海面を打ち破ってジャンプするガギエルの姿

その大きさは、空母ほどもある超巨大な魚だった



「レイさん!!弐号機で出ます!!これ、着てください!!」



アスカはレイにバッグを放り投げた

その中には、赤いデザインのプラグスーツが入っている



「これは、プラグスーツ?」

「そうです!!急いでください!!」

「わ、わかったわ」



物陰で着替える二人

着替え終わって弐号機に乗り込もうとしたとき、既に3隻が撃沈されていた










<弐号機エントリープラグ>



「基本言語を・・・・・・・レイさん、日本語以外は喋れますか?」

「片言程度なら、英語とフランス語が・・・・・・・・」

「基本言語は日本語にフィックス!エヴァ弐号機、シンクロ開始!!」



目前に迫りつつあるガギエル

起動した瞬間、アスカは問答無用で高起動モードを発動させる

ガギエルの突進を受け、爆発四散する輸送艦

間一髪で、弐号機は空中に飛び上がった










<空母、発令所>



「あ、あれが、使徒という奴かっ!!!?」

「エ、エヴァ弐号機が動いています!!」

「ま、まさか、お嬢なのか!!?」

「エヴァ弐号機より通信!!」

『船長さん!!!皆さん!!!ここは私に任せて、逃げてください!!!』

「馬鹿を言うな!!お嬢!!」

『えっ!!?』

「エヴァンゲリオン弐号機は、未だ我ら太平洋艦隊の護衛下にあるのだ!!!!
我ら太平洋艦隊の意地と名誉を栄光にかけて、化け物などに負けるものか!!!!!!」

『船長さん!!でも、相手は・・・・・・・・』

「ワシらはワシらにできることがある!!!お嬢のためなら命などくれてやるわ!!!!」

『船長さん・・・・・・・・・』



アスカの言葉に、力が籠もる

それは、決意を固めた戦士の力だ



『バックアップ、お願いします!!私が敵を押さえます!!!』

「任せろ、お嬢!!!
総員、甲一種戦闘配置!!!お嬢のためだ!!締めてかかれよ!!!!」



太平洋艦隊の各所で、漢達の怒号に近い雄叫びが轟いた

その時になって、ミサトは船長室に飛び込んできた



「船長!!」

「ネルフにも協力して貰うぞ!!異存はないな!!!?」

「え?」

「協力しろ!!」

「りょ、了解!!通信士、ネルフ本部に緊急回線を!!」










<ネルフ本部:発令所>



発令所も、喧噪の真っ直中にあった

使徒襲来はこっちでも感知しているからだ



「予備バッテリー、接続確認!!」

「ウイングキャリアー、発進準備完了!!」

「エヴァ初号機、発進準備よろし!!」



ミサトに代わって、リツコが指示を出している



「別のキャリアーに予備装備を運ばせて!!
シンジ君、準備は良いわね!!!?」

『はい!!!』



プラグからの通信

緊張したシンジの声



「向こうにはミサトがいるから、横須賀に着いたらミサトの指示を仰いで、いいわね!!?」

『はいっ!!』

「それと、弐号機も起動しているわ。連携して叩くのよ!!エヴァ初号機、発進!!!」










<横須賀:太平洋艦隊>



弐号機は、苦戦していた

不安定な足場の上では、戦いにくい

海に入れば、それこそガギエルを捉えることはできなくなる

陸に上がれば対処できたかも知れないが、それでは太平洋艦隊が餌食になってしまう

そんなことは、惣流アスカ・ラングレーの性格が許さない

艦隊を可能な限り護りつつ、戦っている

はっきり言って、自殺行為に等しい



「くっ!!」

「状況が好転しないわ。何とか手を打たないと勝てない」

「でも!迂闊に動くと・・・・・」

『アスカ!!聞こえる!!!?』

「ミサトさん!!」

『レイもそこにいるのね!!?もうすぐ本部から初号機が来るわ!!
だから、それまで粘って!!!』

「「了解!!」」



プログナイフ一本で、ガギエルに立ち向かう弐号機

しかし、ガギエルの方は弐号機を、アスカを嘲笑うかのように太平洋艦隊に目標を変えたりする

その度・・・・・・・



「だめーっ!!!!!!!!!!」



弐号機が飛ぶ

空母から空母に飛び移って

勿論、空母の甲板も破損する

それでも、ガギエルの突撃を喰らえば一撃で撃沈なのだ

弐号機は健闘している



「何とか、しないと!」

「アスカ、ウェポンラックを排除して!今は少しでも運動性を上げる必要があるわ!」

「!!そうですね!!」



両肩のウェポンラックを外す

どうせ、中に入っている武器はプログナイフがもう一本入っているだけだ

余計な重りなど、本当に余計なだけだ

修理担当のリツコは嘆くだろうけど



「あ、あれっ!」

「ウイングキャリア!?碇君!!」



アスカが指差した先には、確かに見覚えのある全翼型輸送機の機影があった

そして、落下してくる巨体

満艦飾に武装した、紫の、エヴァ初号機










<空母、発令所>



「シンジ君!!聞こえる!!?
右側の3番艦に予備のソケットを出してあるわ!!外部電力を確保して!!」

『はいっ!!』

「弐号機は、初号機がソケットを確保するまで奴を引きつけるのよ!!」

『『わかりましたっ!!!』』

「艦長!!」

「うむっ!わかっておる!!」



コーンパイプをくわえた艦長は、全艦に指示を出す



「全艦、目標に対して包囲展開!!砲門を開け!!一斉発射だ!!!」

「アイアイサー!!!!」



威勢の良い返答

使徒ガギエルを取り囲むように太平洋艦隊が展開する

魚雷の一斉発射

それは、全てATフィールドで阻まれてしまう

当然だった

しかし、その隙に初号機は外部電源を確保

増設バッテリーを外し、その場に置いておく

パレットライフルを両手に構え、海面に視線を向けた



「みんな、聞こえる!!?
これから、太平洋艦隊が包囲陣形を取るわ。
一斉射撃の後、隙を見て攻撃するのよ!!!!」

『『『了解っ!!!!』』』

「全艦、魚雷を一斉発射だ!!海面にあぶり出せ!!!」



無数の魚雷が海中に放たれる

360度、全方位から襲いかかる鋼鉄の牙は、全てATフィールドで跳ね返される

それでも、ガギエルの動きを止めることには成功した



「来るわよ!気を付けて!!」



ミサトがそう言うと同時に、海面からガギエルが跳ね上がった

イルカのように、力強いジャンプ

初号機がフィールドを中和、パレットライフルを乱射する

空母の上、武装を極限まで絞った弐号機が甲板を蹴る



『『だーっ!!!!!!!!』』



プログナイフが、易々と口の端から胴体を切り裂いた

血を撒き散らせながらも海中に逃げ込もうとするが、弐号機がそれを許さない

初号機が血で汚れた海水越しに何とか見えるコア目掛けて



パレットライフルを撃った










<10時間後、ネルフ本部:発令所>



「三人ともご苦労様」



ミサトは、そう言って三人の子供達の労をねぎらった



「じゃあ、改めて自己紹介でもしない?」

「はい!私は惣流アスカ・ラングレーです。皆さん、よろしくお願いします!」

「改めて、綾波レイです。よろしく」

「あ、僕は、碇シンジです・・・・・・その、よろしく。惣流さん」

「あ、アスカで良いですよ」

「う、うん。よろしく、アスカさん」

「ぶっぶ〜、ア・ス・カ」

「う、うん・・・・・・・・・・・・・アスカ」

「アスカ、あんまりシンちゃんいじめないでやってよ」

「耳の裏まで真っ赤になってるものね」

「ミ、ミサトさん!リツコさんもからかわないでくださいよ!!」

「からかってなんかいないわ。ただ、事実を口にしただけよ」

「結果がからかっているんなら同じじゃないですか!!!」

「怒らない怒らない」

「はぁ・・・・・・・・・・・・・・・」

「あ、そうそう。そういえば、レイさん」

「何?」

「空母で初めて会ったとき、随分驚いていましたけど・・・・・・・・何かあったんですか?」

「えっ!?・・・・・・・それは・・・・・・・・・・・・」

「その説明をすると長くなるのよね・・・・・・・」

「えと、実は私は・・・・・・・・・・」










「ええええぇぇぇぇぇええぇぇぇぇぇぇぇぇぇええぇぇぇぇっ!!!!!!!!!!!!!!!?」





つづく





後書き

久しぶりの更新です
T.Kです

夏休みなのですっかり休んでいました
海に連れて行かれて、日焼けした所の皮がボロボロ剥がれてきています
恥ずかしながら、私は泳げないんですよね〜・・・・・・
海に行っても、あまり楽しくないです
ていうか、精神的に海に行くというだけで疲労感を感じてしまうのです
プールもまた然り!!!!
冬にならないかな〜

では、関係ないことを一頻り書き綴ってみました
さようなら