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ふたりのカスール










追われる生活を終えパシフィカもそれ相応の地位を持つに至ったが、相変わらず気ままにカスール兄弟と家族生活をしていた。
時々、年頃の娘ということでちらほらと婚約話も出なくはないものの、それは相手が性格を知らずにいる場合に限られたりする。
まだ広く外交の場にも正式には出ていない故でもあるが、誰が流したのか根も葉もない、大まかに分けて二つの噂が流れていた。
託宣に命奪われた儚いお姫様から始まる聖女説と、魔法に剣から始まる一騎当千説がまことしやかに出回っていたりする。

だが実際は一国の皇女に失礼な言葉だが、お転婆娘であり・・・またとても皇族の礼節などに慣れていない事から
些細なことから大事なことまで代理人任せで、王子の兄が幾度か本格的に復位の要請をして来たが
返事渋ったりしたパシフィカ本人にその気持ちが無いのを理解したようで、カスール家の名誉回復と再興以外は静かな生活だ。
このままの生活を続けられたら、もう歴史に名を残すこともないだろう。



「ふ、ふぁーぁぁ・・・え?あ、そっか昨日は」



彼女とは直接出会わなかったが、人の世の安寧を願い悲劇を防ごうとした人間たちは
二度と彼女が表舞台に出ずにいられる事を、そして行く末に幸在らんことを願っていた。
出会っていたらどうだろうか?パシフィカに幻想を抱いた可能性は少なくとも確実に少なくなっただろう。
その出自ゆえの呪われた試練を越えた事に、そしてカスール家の二女としての性格に好感を持つだろうか?

しかし、何故なら皇女という存在はただ其れだけで大きく、連綿と続く歴史の中で輝くもの。
だからもうすべてはここまでにして、ここからにしようとおもうのだ。

そんな大きな物語を終えた彼女は気品というものが感じられない寝起きを迎えた、それもこの荒れた部屋では当然だろう。
起き上がり、確認すると手に鎖・・・その先にシャノンの首。
きっと姉の発動させた魔法が終末的な現象を起こし、この部屋に齎された災厄。
その結果が今この状態なのであって、決してパシフィカに新しい趣味ができたわけではないし望んでこうなったわけでもない。
亡き者たちに誓ってそうですとも、ええ・・・たぶん。
昨日は獣姫との来訪を祝して、パシフィカも無理矢理に何杯も飲まれた記憶が微かにある。
それが現在の死屍累々に繋がっているのだと理解する。
何故か武具に抱きついて眠る姉を跨いで、シャノンを引きずりながら外へ
太陽がきつい・・・どうも頭がはっきりしない、二日酔いという奴がこんなものとは知らなかった。



「とりゃ、起きるっ。・・・気配ないなーこの寝ぼすけがー、っ、あたた・・そんなに飲んだかなぁ」

「ん・・んー」



自分の声が頭に響き、喉を潤したかったのでごくごくと水を飲む。
まだ唸るシャノンの酒気を抜くため、水を頭に掛けてやるが動き鈍く起きる様子がないので諦めた。
痛む頭をすっきりさせるため、朝の空気吸いに手から鎖を木に移してシャノンを番犬代わりにしておく。
なかなかにワルである、起きた兄の制裁が怖くはないのだろうか?
一流の剣士で数々の武勇を持つ大人物なのだが、彼女にとってはただの優しく妹に甘い兄で彼女の解釈でゆえば
こんな悪戯を許してきた我が身を呪えば良い話らしい。



「あ、起きたの?」

「はいー、ちょっとまだ昨日のは引きずってますけどー」



首をふらふらさせていたレオが挨拶をしてきた、いつもの頼もしいとは言えるかな?という微妙さが今は一段と増している。



「まだ起きてないの?私も実はちょっと水飲んだだけじゃ・・・
昨日のラクウェル姉と獣姫の決戦はどうなったか憶えてないよねー、あ、朝用意するの手伝ってくれる?」

「はい、本当に昨日は不甲斐ない所お見せしてすみません。
起きたらあの二人以外は既に後片付けしてくれてました、お兄さんは見ませんでしたけど」

「あー・・うん、鍛錬してるかも。朝早いから」



早起きの上に鍛錬、普通それは尊敬されるべき行動なのだが爺むささを感じてしまうのは相手がシャノンだからだろうか。
レオに薪を任せて鳥小屋に向かったパシフィカだったが・・・。



「さぁてと・・ん?アンタ目つき悪いわねー、む。むむむ?」



今日も獲物がウジャウジャと・・・思っていたら成長著しい一羽が足元に駆け寄って来て突付かれた。



「なっ、こいつぅ。やったなぁっ、この」

「ぎゃぁぁぁぁぁぁーーっっっっ!?」

「えっ?何、今のラクウェル姉?」



物騒なもの抱きかかえ安眠をむさぼっていた姉はずの聞いたことのない程、大きな叫び声にビックリしたパシフィカ。
起きていた他の人間たちも驚いたらしく、どたどたと足音が家の中から聞こえる。
何があったのかわからないが、パシフィカも鶏との戦闘態勢を解いて走り家の中へ入った。



「どうしたの!?」



一人唖然としているのは叫んだ本人のみ、獣姫は何事かとキョロキョロとしている。
従者さんはまだ眠ったまま、見かけによらず神経が図太いらしい。さすが獣姫お付きの従者と誉めるところか。
それより今は半虚脱状態の姉、揺すって問う。



「女?え?」

「何があったの?ラクウェル姉のあんな声初めて聞いた、だから、聞いてる?」

「パシフィカが居る、って事はここはカスール家で。
この服装だから、俺であるのは間違いないのに。女なのに。
まさか何か昨日ゼフィーに何か言われた?はずないはずで・・・」



ぶつぶつと様子のおかしい姉、ここまでおかしいのはいつものことでは済まされない。
怖い夢でもみたのだろうか?それにしては気分悪そうには見えないが、熱でもあるのならと
訝しがって姉の額に手をもっていこうとすると、いきなりダッと息がかかる程の距離に近寄られ
逆に問い詰められ思わず引くパシフィカ。



「ラクウェル?俺、ラクウェル?」

「・・・うっ、何を言ってるの。それにどーして俺なんて言って『変』だよ?」

「シャノン」

「え?呼んでこようか?あの酔いつぶれに用があるのなら」

「・・・シャノンカスール、はどこにいる?」

「うわ、何て粗暴で恥らいのないラクウェル姉ェ。・・・シャノン兄なら庭に居るけど。
え?ちょっと?待ってよ。・・・まだ酔ってたりするのかな?」



無言で出て行ってしまった姉の後を追う、獣姫は未だ何が起きたのか理解できておらず
眠っている従者に登り抱きついてキョロキョロしている。
パシフィカはあの姫様が初めて小動物みたいで可愛いかもしれない、と思った。
外に出ると目の据わった姉がシャノンを探している、木の下を指差すと何か睨まれてしまったような。
あの温厚な姉にしては様子がおかしすぎる行動が目立つが、とりあえずは何かシャノン兄に用がある
ようなので起こすために水を一杯汲んで持っていくことにした。



「ラクウェル姉。起きそう?水持ってきたよー」

「はぁ・・・」

「姉?」

「ああ・・・何でこんな事になってる?昨日は確かに記憶が飛ぶ程の騒ぎになりそうだったから」

「姉?」

「パシフィカなら分かるだろう?」

「え?何を?」

「俺がシャノンで、こっちがラクウェルだってことが」



笑顔だったので大真面目に冗談を言われたと思ったパシフィカは、あははと応じた。



「なぁーんだ、そうだったんだー。・・・で何処で頭打ったの?」

「ばか違う」

「う、こ、この言葉の掛け合いをいつの間に覚えたの?一瞬本当とか思っちゃっ」

「だから違うと」

「・・・本当に?」



神妙に頷かれてしまった、どう反応すれば良いのか分からなくなってしまい口を噤む。








奇妙な空白の時間を置いて








騒ぎを知らずに居たレオが暖めたミルクを片手に外に出ると、木の下に人が集まっていたのでなんだろうとよく見ると
麗しき姉妹たち、、、そう言えばお兄さんの姿を見ていないなと思いながら近づいていった。



「何をしてるんですー?」

「あ、え・・・うん」

「・・・」



パシフィカの様子がおかしいのはすぐに気が付く、彼女の視線の先に眠りこけているシャノンを発見した。
やがてラクウェルさんのいつもより鋭い眼光に、心が動く・・・そんなっ!?僕はパシフィカさん一筋なのにっ!
と外見ラクウェル中身シャノンの不機嫌光線に勘違いしていると、寝ぼすけがようやく目を覚ました。



「ん、んんん・・・あら、これは?それにどうしてお庭に居るの?」



起き上がろうとして首に何かを感じて手を、首輪に触れると何事もなかったかのように周りを見て一言。
動揺が微塵も感じられないマイペースでいられると反応に困る、そんな兄妹と。



「え?お、お兄さん?」

「はい?」



無邪気といってよい笑顔などされてしまうと、いつも邪険にされている僕としては
パシフィカさんとの仲を認めて頂けるのかと期待を持ってしまうわけです。しかし何故、木に首輪で繋がれているのですか?



「こら」

「ぐぁ、つぅーいててて・・・何するんですかぁ。いま絶対捻り加えましたね?って、どうしてラクウェルお姉さんが?」

「姉兄と名前につけて呼ぶなとあれ程言ったのを忘れるな、お前とは知り合いでもなんでもない。ずっと赤の他人だからな」

「いきなり冷たくされてもめげませんよ、既にお兄さんで慣れましたから。ええ、たとえ敵中であろうとも」



鉄拳制裁で現実に戻してやったのに、演説始めてしまうレオに見切りつけて
まだポカンというよりポワンとしているラクウェルの方を向いて、手を貸し立ち上がらせた。



「知るか、今は取り込んでる。家族の問題だからお前は飯でも作ってろ」

「え?えーと、どちら様でしょうか?何処かで見たような」

「マジボケしないでよ、昨日から酷いよ〜本当にキツイんだから〜。毎朝、鏡で見ているでしょ?」



本当に不思議そうな顔で、自分の苦悩顔を珍しいものを見つけたと覗き込もうとした。
パシフィカはそんなラクウェルを引き剥がす。
妹の助言で事態の把握をし、納得したように見えたが相変わらず焦りはなく、やがて口に出た言葉は・・・。



「自分が増えるなんていう魔法使ったかしら?憶えないのよ、ねぇパシフィカは知ってる?」

「違うぞ」

「あら、シャノンなの?それ魔法?私になったりしてみたかったの?」

「ああっ、なんで一発で分かって分からないかなぁー」



双子の話さえ聞いてくれない症候群を発症させたラクウェルに、シャノンは
このまま夜風呂入るまで気がつかないかもしれないと心配し、パシフィカが持ってきた桶の水面を見せる。
とたんに百面相を始めたラクウェル、最後にはニコニコ笑って機嫌良くなってしまった。
何故か厭な予感がした、背筋を凍らせる発言が飛び出来そうな・・・そんなシャノンだったが冷静に話しつづけた。



「わかったか?この通り入れ替わって困ってる、俺は昨日は早く寝ちまったから分からないんだが」

「そうね、シャノンの言うことはわかるわ。入れ替わっている・・・ふふ」

「シャノン兄、こうなったら気が済むまでそっとしておいてあげよう?」

「お前は俺のことだからそんな簡単に、のほほんと気楽でいられるんだろ?」

「半分は正解、でもラクウェル姉?駄目だ聞こえてない・・・」



ひとつのことに気を取られいるラクウェルと話が通じないのは、いつものことなので
気にしないパシフィカだったが動じてくれないどころか、本当に嬉しそうに笑う兄の顔には複雑な心境で眺めた。



「パシフィカさん?どうなってるんです、僕にはさっぱりです。お姉さんに叱られたりお兄さんに優しくされたり、混乱しちゃいます」

「えーい、五月蝿い。あーもう、レオは朝お願い出来る?だからまた後でね」

「ええ良いですけど、詳しく説明していただけるなら」

「うん、今は無理だから」

「そうじゃない、ちゃんと見れば分かる」

「魔法じゃない、じゃあどうやって、そうね・・・ゼフィーに頼んで、それなら何時頃が適当かしら・・・覚醒時?
意識は泥酔状態だったことと関係している、証拠に乏しい推論ね。まずはシャノンの方からっ」



あっちからいい加減戻ってきて欲しかったので、レオのときよりは軽く頭を叩いた。
それでも元々自分の体なのでかなり遠慮なくしてしまったが、思ったとおり頑丈にできていて何事もなかったかのように話し始めた。
腕力の他にも同い年でも成年となれば、女性と男性ではかなりの差が出ているので当然の帰結だが。



「普通まず自分の体の心配をしないか?」

「何かしたの?しないでしょ、シャノンはそうだもの」

「・・・して欲しかったのか?それに今はそんな話じゃない、お前は何ともないのか?
俺は特になんとも無かったが、お前は何故か庭の木に繋がれていたし・・・寝ている間に何かあったんじゃないかと」

「ほ、ほらっレオ!何ぼやぼやしてるの?早く行って作って来て、出来上がる頃には終ってるから。
あはははは・・・庭の木にー、どうしてだろうねー?」

「本当どうしてかしら?でも体は自由に動かせるし、何処も怪我してないし」



いつもと同じではない、姉と兄の風景を見ていると中身が入れ替わってる違和感だけでなく二人の態度に違いに気が付いた。
急いては事を仕損じると余裕を持っているのか?急ぐ様子ないラクウェル。
その反対に、誰よりも知っていると自負があるシャノンは何か起きても動揺を押さえ込め達観できる性格の筈なのに、
どうしてこんなに焦っているのだろうと思い悩むパシフィカ・・・実はちょっと心配だ。
けれど妹心は複雑で、シャノンとラクウェルがべたべた互いの体に触れ合うのを良しとしない。

パシフィカが誤解してしまってる事がある。
シャノンは年の割には確かにしっかりしているが、それはカスール姉妹に普通の青年がしない苦労をさせられた事が大きい。
そんな原因があって・・・そして家長として家族を守るために動いた時の活躍がパシフィカにはとても大きく評価していて・・・。
だから今シャノンは自分だけでなく家族をも巻き込む問題だから、今なお強く警戒してしまうのだ。

姉はマイペースで事実を確認している。
何を考えているのか幸せそうな雰囲気を崩さない、妹として思うこの姉は変だ。何か知らない理由できっととてつもなく幸せなのだ。
どうしてこんなに幸せそうなんだろう?
そう思って観察しているとピョンピョンと飛び跳ねてみたり、水桶を片手で持ち上げてみたり
シャノンの体で色々としていたが、やがて納得したらしく何故かやはり微笑んで嬉しそうに言った。



「本当にシャノンだわ、少しの力で簡単に持ち上げることが出来るし。剣があったら試してみたいわ」

「・・・何を?」

「もちろん、手合わせ」

「何、初耳だぞ。そんなことできたのか?あの親父が隠れて稽古つけてくれたのか?
あの手紙と言い、まだ何か色々わけのわからないもの残してそうだな・・・パシフィカも何かあるんじゃないか?」

「知らないわよ、ラクウェル姉だけ何それ贔屓ーと思ったんだから。
シャノン兄はまったく・・・うたがり深いとゆーか」

「仕方ないと思うもの、あの育てられ方でシャノンが今のようになるんだから。
それと剣技だけど違うわ、私がこの体の経験を得ているのか試したいのよ。
シャノン、あなたは魔法の基礎は出来てるから色々と試したら?私も手伝うから、魔法に関してはすぐにでもためせるでしょう?」

「・・・」

「いきなり大技はまずいよな、暴走させたら止めれないし・・・手伝ってくれるか?」

「ええ」



それを聞き、パシフィカは一人疎外感を味わったが魔法であれ剣技であれ自分にはその資質がなかった事を知っている。
大人しく木にもたれ庭の真ん中に移動し魔法発動させる二人を見守った。



「いくわよ」

「ああ、・・」



巻き上がる力の光、その中心に空に手掲げ力強く謳うラクウェル=カスール・・・それをうっとりと見つめる眸があった。
元の所有者のラクウェルはナルシストという訳ではない、その対極あると言ってさえ良いだろう。
ただ素直に慕情寄せれる異性は彼だけで、他の誰より分かりあえ許しあえる相手と精神交換して色々と思うことあるのだろう。

抱きしめてみたい・・・その衝動はとっても強いわ、シャノンが無防備に目を閉じている今なら飛びつけば可能かしら?
とっても嫌がるだろうけど不機嫌シャノンはそれはそれで可愛い、どうしよう?
パシフィカの存在も計算に入れないと駄目よね、抱きしめ続けれる時間はそう長くないと解が出てしまうのよね・・・。

残念・・・でも今、もう一人の別の理想の私がここにある。
だから私が手を出すのは無粋、ただ見ているだけで幸せ。
それに・・・私が今いる場所がシャノン=カスールというのが、こうなった原因は分からないけど夢見ごこち。
もう少しこのままでも・・・もし原因を見つけても知らないふりしよう、二人には悪いけど私はすぐにこの夢から覚めたくないの。

やがて光が消えていく、乱れた髪を整えて目を開けるシャノン。疲労の色は見えない。



「乱れてはいなかったけれど。どう?上手く制御できてる?」

「ああ、すんなり行くとは思ってなかったが、安定しているようだな」

「シャノンは元々素質は申し分なかったもの。母さんが残念がってたわ、ちゃんと習えば私より大きくなれたって。
いつも父さんとパシフィカに付きっきりで・・・そうよね?」

「そうだったかな・・とにかく異常はなさそうだ。
それにしても何でこんなことに、どーせならパシフィカにはラクウェルが移れば良かったのにな」

「ちょっと聞き捨てならないよ、今のは。
レディに対して、これ以上無いってぐらい失礼だよ」

「そうだな確かにおしとやかなパシフィカは兎も角、乱暴者のラクウェルなんて想像するだけで失礼なことだ。
二人を足して二で割ったぐらいが丁度いいと思うぞ?」

「何よ・・・その訳わかんない言い草、根暗で微笑めない姉の方が絶対におかしい。似合わなーい」



初めて見るラクウェルの挑戦的な視線に思わずひるんだが、中身はシャノンだと思い直して喧嘩腰で言い争う。
微笑ましそうに、しかし少し寂びそうに見ていたラクウェル。



「二人は本当に仲良いわね羨ましい。パシフィカは子どもの頃から
すぐにシャノンの遊び方ができたし、それに私は一歩だけ離れてついて行ったけど、それは今も変わらないわね」

「こんなのと仲良いと言われたってなぁ、こいつが勝手に噛み付いてくるから・・」

「むー、ぅ?」



寂びそうな表情の兄など見たことなかったので、思わず見入ってしまったが・・・気恥ずかしくなって目をそらす。

姉の兄に対する憧れは知っていたが、単純な力に対するものだけではないようだ。
双子でありながら異性であり距離があった関係、近づき過ぎないようにだが離れるなど考えられなかった関係・・・
異なる心持つ者に対する興味もあろう、妹はいたが弟はいない比較できない家族、けれどそれだけでは説明できない何か。
パシフィカも二人に対しては抱えきれないほど沢山のものを抱えていた時期があった、だから今なら分かることなのだが。

でもまさか羨ましいと言われると思わなかった、自分はシャノン兄への独占欲みたいなものを姉に対しても振るっていたのだろうか?



「できましたよー」



朝ごはんの用意が出来たらしい、ともかく三人は家に入りご飯を食べながら話しつづけることにした。



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