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『・・何をしている悠長に構えている時間はないと言ったはず、既に5つ、残された2つを掴まなければならないだろう?
冬木の遠坂が参加しないとでも寝言を言うつもりではあるまい?いいか聖杯戦争は開始をしたと告げておこう前哨戦も既に』

朝から聞きたいくもない声に心焦らせるほど遠坂凛は、人が出来ていないわけじゃないが急に機嫌が悪くなってしまった。


「人選ミスも甚だしい、監査役をあいつに任せる理由は何なのかしら?
・・・にしても、ひつこい催促ね。焦らなくても私が勝利を納めてあげるわ」


前回の戦争、参加した父親の夢を見たのが影響したのか力は逆に溢れて召還には都合が良かった。
昨日は探し見つけた遺産と解読したものの価値は高く、それでセイバーを呼ぼうと心地よい緊張を整え維持する。

普段の生活どおり、学校へと向かうが誰の姿も見えないことに不思議に思いつつ
やっと門のところで顔見知りに出会い、納得と完全を期した今日この日のテンション挫かれた思いになった。


「おはようございます」

「あ、遠坂か。今日は早いな」

「では」

「ああ、じゃいつか頼まれてくれ。それで如何したんだこんな時間に?」


弓道着姿の美綴と一緒に居た、白い彼女は私に何の挨拶もなく行ってしまった。


「別に理由はないわ、何話してたの?」


ライバルには決して血筋の呪いなどと言えるものか、それで反問してみる。
さっきのは確か師のところに居た、あの教会の娘ではなかったか?そんな彼女が美綴と何を話していたのだろうかと。


「うーん、関係ないこと。遠坂にはね。それより寄ってかない?時間はあるだろ?」

「何か納得してあげれないから、聞いてあげることにするわ」


私が珍しく興味引かれたのは美綴と彼女の話の内容が気になったわけでは、ないはずだ。
ただ、あっけらかんとする女丈夫が秘密を私に対して持つなんてマナー違反だと思ったのだ。


「で?」

「本性出してそんなに苛めないでくれ遠坂」

「ここには誰も来ないでしょうし、貸しにしてあげてもいいわ」


凛は優雅に微笑んであげたが、美綴綾子には真相を語らせたい子悪魔が開眼してウインクしたように見えた。


「どちらにしろ、すぐに噂になってるさ。でもいま私の口からは絶対に言えない」

「変に意地張って何故そんなに?あの子と因縁あったっけ?」

「変にもなるさ、実際あれを見れば・・・丘の上の聖女と言ってる男子には遠坂の本性よりは軽傷かもしれないけど。
あたしが昨日見た限りじゃ、凛々しさは遠坂以上のかもしれない。フフフ・・・でもあっちは聖女だから」

「ふーん誰が何と?まぁいいわ、そろそろ行くわ」

「こわいこわい、うんじゃまたな」


校舎へと向かうと間桐の長男と出合った、今日も弓道場には行かないつもりらしい。
主将との仲拗れていると噂程度には聞いていた。


「おはよう珍しいじゃないかあんな所から」

「・・・おはよう、綾子さんとお話していたのよ。ちょっとね」

「ふんそーかい。そう言えば昨日、桜に電話あったけど遠坂にはまさかあるわけないだろうし
それより折角来てくれたのにあいつに相手させて悪かった、今度からは」

「それどんな冗談?」

「・・・いいよ勝手に言ってなよ、後から後悔しても知らないぞ。
今日中なら空いてるから何時でも呼んでやっていいし、悪い噂たたせたくないだろう?」

「だからそれはどんなジョーク?
これっぽちも理解できない、大きなエゴ持て余してるなら他人との接触やめた方がいいわ」


この人物とは合わない、いつからのことだったか忘れたけど
今ほど関係悪化になってから随分長いのではないか、私もいくら縁あるとはいえ無条件に微笑むつもりはない。



■ ■ ■



昼食時にて私は珍しいものを見た、屋上へと至る階段の踊り場で蒔寺と会ったのだ。正確にはすれ違った。


「?」

「遠坂か、お前もあいつと同じ・・っっ!・・・や、ごめん。ちょっと感情的だ私」

「え?ちょっと何、何よー?」


行ってしまった、それにしても珍しかった。
制服姿であんなにも素直な楓はついぞお目にかかれない、いつもと調子違うので私も思わず素で返してしまった。
何故あんなに感情的だったのかと考えながら屋上へ出ると人の居る気配、すぐに消えた。


「今のなんだったんだろ、他に誰かいたようだけど」

「ここに居たか」

「柳洞くんだったの?違うか・・・で、こんなところに何の御用?」


出口はひとつだけ自殺願望者でもなければ、ここにいる私に気がつかれずに去ることはできない。
後から来た生徒会長もまた私以外に誰かを探していた。


「葛木教諭に呼ばれている一人でなければ誰がわざわざ、ここに言峰と蒔時も居なかったか?」

「さっき蒔時さんには会ったわ」

「昨日のことと違うらしいが、言峰もまったくお前とは別の意味で厄介だ」

「言峰さん?」

「ん、ああそうだ。言峰士陰も生徒会に一度呼ばれた事があって、あの性格だ
まさか素直に手伝うとは思わなかったが、テキパキ終わらせてな・・・残念だ」


柳洞一成の中では評価高いようだが、しかし素直に私に対して誉めないのと比べ
言峰士陰に対しては複雑な感情持ち合わせているような、気がする。


「時間あまり無いんでしょう?もう言峰さんには後で伝えたら?」

「う、うむ・・・一理ある、そうしよう」








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