●.14

昨日の大事でリンには悪いと思うが訪問予定はキャンセルした、だって王様が不機嫌なんだもの。
それで私はじっとしていないといけないのだけど、退屈な時間をお城に食わせてないと駄目なのだけど。
間桐桜を同行させて、メイドには了承をさせた。

そうして私は街へと降りた。

「驚いた」

「誰?こどもなのに愉快な仕組みで動いてるのね、ライダー出て」

人の途切れた空間だった、それでも偶然だと思った。狙ってはいなかった。
相手は白い女とその隣りに出現したのは宝石の美を持つサーヴァント、あれほどの連夜連戦にも関わらず
令呪はまだ一つも使用してはいないのでセイバーを引き寄せるのは楽だが、それよりも。

相手の匂い・・・何処か懐かしさを感じる血の色の虹彩に無垢の髪。

「ふぅん。誰だか知らないけど昼間からこの私とやりあうつもりなんだ?
懸命な選択じゃあないわよ」

サーヴァントなしでも殺害できる自信はあるが、話し通じる相手か確認だけはしておこう。
それにしても惹かれる、すらっとした外観は白で統一されていてきっとスノーホワイトは彼女に冠する言葉だ。
私はこれ以上増えないので足りないとは言わず、まして眠りを必要とさえするものなのか。
・・・外来は羽虫と考えていたが綺麗な蝶もいたとは驚きましてよ。

「そして、今はお遊戯の時間ではないの。あなた外来かしら?」

「英霊はいる?」

「近くにはいません、ですがシオンここは人が」

「そうねちょっと向かないし、あの子は黙ってはいないから
決断は先送り出来ない、私が直接さらってみるかしらね」

ダンッは地面を弾いて空中を一跳び、目指すイリヤはため息ついて迎撃に拳一つ突き出す。

「ぐっ、うそ」

「うそうそでもほんと、駄目だよお姉ちゃん見た目に騙されちゃ」

シオンが圧倒された、力の差は身長とは正反対。
大人の子供、そして子供と大人の勝負になってしまって
手出し無用を言われていたが、急ぎライダーはシオンを担ぐと宙へ退避する。

近くの電柱の中ほどにとりついた。
咳き込むマスターを心配そうに見てぎゅっと抱きなおす、まだ快調ではなかったのだ。表に出ている魔力が小さい。
また、まだ私は油断が過ぎていた。

下でイリヤが文句をいっている、その様子はかわいいが内容は最悪だ。
ほっぺ膨らせて子悪魔の笑みでシオンを見つづけていた。

「降りてこーい。この不出来な石の柱を壊すまでもないのよ、降りてきて私に捕まりなさーい。
今ならセットでお人形にしてあげてもいいのよー?壊さないからねー?」

「ちっあれが最強か納得いったわ、っ・・力は倍ほども違うみたい」

「あっそっかセイバーいないんだ。あなたのサーヴァント程度ならわたしとリズでも相手できそう。
一緒がいい?綺麗に飾ってあげる、ね。いいでしょー誰にも遊ばせないし見せたりもしないから」

その時一匹の猫、シオンの使い魔もどきと化した猫がすぐイリヤの近く、塀の上で鳴き始めた。
一目でそれを何なのか判断した実に優秀な魔術師は惹き寄せて抱き上げる。

「報告もって来てるまずいな」

「・・・へぇ・・・いいこねぇ何を見てきたの?ほーら教えて」

「壊す、私なら壊しちゃうな。よくない」

いくら適当に作ったとはいえ今手を出した私の使い魔だ、イリヤがそっとしておくはずない。
それに・・・何故か分かってしまう。
アインツベルンがどういう存在なのか、血が教えるというしかないのだが猫を素手で殺すのだろう。

「やめて返して、見たくないのよ。殺すのだけは」

「あら降りてきたの?サーヴァントはやる気じゃあないみたいだけど」

「過保護なのよ私けっこう周り見ないから、それで離してはくれない。もう二度としないから」

「猫のこと?いいわね結構優雅で気に入ったの、私にも教えてくれる?
だって此処に来てから不意打ちばかりで、約束も果たせなくて・・・ご招待に応じてくれるなら」

「人形にはしないの?」

「べつに、ライダーとシオンがいいなら遅くはないよー」

「それはご辞退させていただくわ」

「残念だわ。またねわたし帰るから人を待たせてるし」

最後までショーウィンドゥに飾られた商品を見る眼で名残惜しそうにシオンとライダーを見てた。
駆けては商店街に戻り、目的の人物見つけるとうしろから買い物袋持たない方の手に飛びついた。

「わぁっイリヤちゃんいつの間にか居なくなってちゃ駄目ですよー」

「いいじゃないサクラ」

おさな子の特権を行使して困らせる。

「でもやっぱり不便ですよ、衛宮邸ならすぐに帰れます」

「セラが良いと言って、リズが邪魔しないならいいかもそれが桜の為にもなるんだし」

「え?わたしのって」

「だってマトウなんでしょ・・・桜は違う感じがするけど」

ズキリ
何を言われたのか分からず、また突然に会話を打ち切って走り出したイリヤ。

「ずぅっとお店が並んでるのね、この先はなにかあるの?」

「あ、待って。道をまっすぐ行くとお寺があるんですよ、昔街をつくる時は
そのような場所を起点と」

「そうなの。
あ、あれはなに?桜は物知りよね学校行ってるから?」

また転換、桜の話し聞かずまたメイドたちの許可も得るつもりない様子だ、奔放さに振り回される桜。

「そこに行ってるんでしょいつも。行って見ていい?」

「いつかね、先生の様子も気になるし帰りましょ?
もう起きて暇を持て余しているはずなのよ、いいイリヤちゃん?」

「そうね。大河は、アレって・・・リズ?」

「家出小娘こんなとこにいた、セラに言わないと、おうさま・・・どこ?」

オープンカフェにいたリーゼリット、イリヤは相変わらずのメイドに気にした様子もない。
しかし切嗣から、イリヤはお嬢様だから別荘が郊外の森にあると聞かされたとはいえ
桜は、衆目監視のなかで恥ずかしそうに周りの視線を気にしていた。

イリヤは己のサーヴァントが霊体化できないのに姿見えないのを不審に思い探して、見つけなきゃ
良かったと後悔する羽目になる。

「おうさまセラの分もたべたのに」

「な、言わない約束だったでしょう!あのお菓子は、あ!?」

「物欲しそうに料理番組見てないでください、あっ、思わず突っ込んじゃいましたが
イリヤちゃんの知り合いで良かったですか?」

「留守番してるんじゃなかったの、私が心配だって言って来たんでしょ。
口実くらいにしか思ってないならセラに報告ね、もう嘘つきのひどいおうさまね」

「うっぅぅすみません」

イリヤの視線の先には小柄な、それでもイリヤよりは背は高いはずの
今は威厳と風格台無しの綺麗な女の子がいた。うな垂れる姿は可愛いので桜は興味津々だ。

我関せずを決め込みジュースに口つけているリズ、手元にはケーキが入っていたろう綺麗な
箱開いていて中身からっぽ。隣りに広がってる空皿領域を展開した本人は、ばつ悪そうにイリヤに叱られていた。

「はじめて会ったときは尊敬さえしたのに、リズと一緒なの馴染んできたよね。
リズとセラとリア、三人とも私の召使いなんだからって似なくてもいいのに。セラに似てるとこも出てきてるし」

「・・・・いえあれは曲げない意志は生来のものです。あの、それでこちらが仮家の住人の桜ですか」

「うん。そうだよ切嗣のね」

「はじめまして」

「ええはじめまして聞いてますあとセラさんもご一緒に日本に来ていると、いつまでこちらに?」

「そういえばセラはどうしたの、別に居なくてもいいけど。
気難しいし口煩いし固いし、まあリズみたいに適当で安直で口下手で」

「・・・え」

「・・・イリヤ」

桜は指差して怖いものから一歩下がった。
空箱をリズとリアが、その怖いものの視界から協力して隠してマスターを薄情にも御供としようとした。

「アンニュイだったらあれは最悪になるんだけど、なによ二人とも私に」

「あの」

「イリヤ責任とる」「桜わたしたちは先に帰宅していましょう是非あなたの料理が、いえ急ぎ食材の鮮度保持を」

「ちょっと押さないでよ。後ろに何かいるって、ヒッ」

「イリヤいらっしゃーい」

白いのに黒いっ、目を細め口元は広がっていた。
ついでに何か言葉遣いも変だったりしたが、今はただただこわいこわいセラが手を伸ばしてくる事実。
それに生命の危険を感じて桜に掴まったが手を払われる。

ばしっと。

「くいもんは持ってく」

リズに。

「イリヤ・・・・・・・あなたの犠牲を忘れない」

桜の左手には今夜の夕食となるべきものがあったので、リアは冷静に状況解析して退路を確保しつつ
リズに負けず劣らない卑怯なセリフを爽やかな笑みではいた。

「裏切り者〜ぉ!!サド乳っ剣ふぇち〜ぃ〜・・・ぃ・・・」

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「いつだアインツベルンへ言峰がいうところの、祝福されしものを取りに行くのは。
待つのはもう飽きてしまったぞ、役者は揃ったのであろう?」

聖杯戦争の参加者は七名と定められているが、その開始とされるのは決して準備がなされてからではなく
マスターが令呪を手に受けサーヴァントと出会ってしまえば半ば戦争は起きたと言っていい。
また、一体で他六体を圧倒できるような強力なサーヴァントが召喚されようとも
魔術師にヨリシロになってもらい常世との繋がりを保持できなければ参加したとはいえない。

「まだだ足りない」

「貴様なんといった?足りない?メガラスが早々に脱落して
消えた愚か者もいるのだろうが数には入っているだろう。如何な小物とてな」

「違う。あれに関してはしかし思っていたとおりだったぞ。
貴様の望んだ者になりつつあるようだ、しかしいいのか?」

「よい。そのために待ちつづけていたのだ、そうか果実は熟したか落ちるまで僅かなら待てるな」

ギルガメシュを入れても観測されたのは六体、イレギュラーはいないが
もう聖杯戦争は開始されていて監視者にはもう何をもっても止めるつもりないようだ。
セイバーを先回に引き続きアインツベルンが取っているというのに、あのセイギノミカタが
戻ってきたというのに、関心は無いようすだ。
・・・冬樹市内の被害を調べていくうちに、幾つかの興味深い事象に目を止めた。

「ふむ・・・まだ現れてはいないのか、いつあいつが変わるのかと観察していたのだが
時間は足りないと言うのに悠長なものだな。ギルガメッシュに任せるが」

「言峰おまえほど気安くはなれんが良いだろう、収穫には我が直接行こう」

先回に比べれば時期的には遅いくらいだが、聖杯戦争の行われる冬木の街には余波が確かに広がっている。
それでも予想されていたより幾分少ない、橋の被害、それと新都と学校での損壊があるだけだ。

期待していた住宅街での異変はない、上手くセカンドオーナーが働いてくれているようだが
まあ仕事を任せきりに出来るので使える。
有能すぎるのは困るが無能ではない分、今のところ邪魔にはなっていないので問題なしと判断をする。

「あやつは・・・うむ。余裕を失う性分なのかもしれんが、我がそう思われるのは心外であるからな
待ち続けたのだ、ほんの一日ぐらい待とう」

「時にキャスターが意外な戦略を採っているが」

「地を治めていくなど詐欺師風情ができるはずなかろう、現代だからこそあのようなモノがはびこるにすぎぬ」

柳洞寺から新都に伸ばしていた陣地からの手は、次に穂群原学園へとまで届いてライダーが既に
いたにも関わらず、不思議に現アーチャーとランサーとの戦争被害が余波として発生しただけだった。
まだ、人間が今より少なかったときには言葉使いなどできるのは占い程度と見下していたし今もそうだ。

「時機に潰れるであろ我が聖杯をしかるべき所に持ち込むまでにはな」

「最弱がする無茶は時に強者に思わぬ痛手をもたらすが、そう言うか。
それより間桐の動きが不可解で気になるが、今はアインツベルンを先に相手が先か」

「どちらも気にせずともよい。ところで今回のアインツベルンはどんなサーヴァントを用いたのだ?
セイバーと聞いたが、動きが緩慢なのはマスターが交代したせいなのかしらんが」

「同じだ、何もかも、いやあれは変質しているのだよ。
アインツベルンはどうやら先回のはじまりの時から仕組んでいたようだな、オートも動きが滑らかでない」

「奴か」

マスターでありながら外れた魔術師らしく、次から次に喰らっていった。
人の命と、魔術師なら捨て去ったはずの尊厳、使役されるサーヴァントが最強のセイバーであったのに
それさえ霞むほど凄まじい・・・幽鬼のような存在だった。・・・アインツベルン・衛宮・切嗣。

「ではサーヴァントは最後に我にたてついた女なのだな。
セイバーか邪魔になるのなら仕方ないが罠に嵌めてもかまわないぞ、どうせ我に無断で行うのだろ」

「ほう拘わるのはやめたのか」

「我と同じなのだろう?ならば一度座に戻さねば不都合があるというだけだ。
いやそうだな聖杯があるだからその必要はないか順序を間違わねばいいだけのこと」

「誰か来たようだ出ていくぞ」

教会の知られない一室から言峰綺礼は出て行く、閉まった扉は継ぎ目ない壁となった。
時は夜には入らない。
だから、道化役をしてくれるマスターが増えたとは思えないのだか・・・。
いや例外だろうラインを切られて無事に教会までたどり着ける悪運の持ち主、魔術の才能が枯渇した
最弱のマスター、知識で補いながらも知性を失った愚か者。

「何処行っていたんだ?」

「なんだいたのか大人しくしていろマトウのマスター」

「それであいつはどうして僕のそばにいないんだよ、このまま最後まで聖杯まで伏せているのか?
あいつを殺せよあの生意気な葛木を!手順が違うって理由で後回しなんだろ。
ならはやくアインツベルンのところへ」

「急くな。オーナーに任せておけば良いだろう、わざわざキャスターのマスターが操り人形であるのなら
漁夫の利を狙ったような下らない発想は捨てろ尊大に構えていろ。
乱戦の平定などつまらないことにギルガメシュを出向かせて、楽しいのか?」

「だ、だけど」

「もういい黙れ」

ただの寄生虫。いも虫にもなれないマトウを無視して聖堂に入ると客が一人居た。
予想通り脱落した哀れで愚かなマスターではない、だがどうだ、彼女は・・・。








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